LEJENS  レジェンス

 LEJENS以外のSF小説です。
 LEJENSとは全く無関係のオリジナル小説です。


 妖魔ハンター

 作者 飛葉 凌(RYO HIBA)

 高校2年生編
 Part3

 月日は流れ 6月 衣替え 真美 朝から憂鬱 今までは何とか学校指定の白のブラウスの上に、薄いカーデンガンもしくは、ベストで隠していた下着 つまりブラが、隠す物がなくなり薄らと透けて見える・・・・・
 真美に取っては、大問題 本人が、全く想像すらしていない 全く望んでもいない ラディエンスの力と言う神秘の特殊能力の覚醒による性転換、それに伴い年齢退行・・・ もう1年以上の月日が流れているのに、諦めも悪く 自身まだ男 それも40歳代の・・・・ が抜けていない。
 どうしても女装している・・・・ 変態だと思われる・・・・・ が抜けず、憂鬱にさせる。
 それもタイミングも最悪 自身 この日から隠語で、女の子の日などと呼ばれる状態に突入 さらに気分が滅入る。
 約1ヶ月に1度の規則性を持つ間隔で突入であるはずが、真美の場合は、非常に不規則。 それも症状が、多い日には、精神的にも不安定になる。
 表情、態度にこそ出さないで、我慢しているが、相当イライラ。 落着きが無い為 周囲にいる詩織、綾、香、加奈にバレバレ。  からかわれている。
 そんな日の出来事だった。

 「ねえー 知っている 明日 この学校の それもうちのクラスに、極秘で転校生が来るって・・・・」
 お昼の昼食 いつもの食堂の いつもの6人掛けのテーブル席 いつものフルメンバー 真美、詩織、綾、香、加奈、薫。 それに何故か? いつの間にかこのグループの一員になっている1年生のともちんこそ友美も補助椅子に座り このテーブルの一角を占拠している。 そんな中突如 綾が切り出した。
 2日前の大騒動の後である。
 ヨーロッパの小さいが、超お金持ちの王国の次期国王である皇太子(プリンス)が、突如日本に極秘来日 何のアポなしで、突如輝星高校に電撃視察に訪れ 大パニック。
 まだその余韻が覚めていなかった。
 その皇太子(プリンス)は、1部真美を含む女子生徒を除く 女子生徒の心を鷲掴みする程の超美形の美少年、イケメン。
 全男子生徒のひんしゅくを買っていた。

 「本当ー!!」
 残り全員が声を揃える。 そのはずである。 ここ輝星高校は、基本的に、途中編入を認めていない。
 「ねえー 真美 ここは、あなたの両親が経営者 何か聞いていない?」
 当然の質問であった。

 「何もー」 言葉を濁す・・・・
 そう真美は、何も聞かされていない。
 いつもそうだが、経営者一族ま中核に位置しながら重要な案件は、全て事後報告。
 パパ義人の 「今 話した・・・・・」 の一言 まるで子供扱い。

 その夜 プライベートルームで、家庭教師兼任のメイドと、学校の宿題取り組んでいる最中 別のメイドから「奥様が、お呼びです・・・・」と、呼び出される。

 「そこに座って・・・」 ママである由美の書斎のソファーに腰を下ろす真美。
 「噂で聞いていると思うけど、実は、あなたのいる2年A組に、明日転入生が入るの・・・・・」

 「それでねー 真美ちゃん・・・・・」

 「実は、その転入生 あの2日前 突如輝星高校に電撃視察に訪れた あの皇太子(プリンス)なのよ・・・・」
 由美に話に、思わず驚愕の表情を浮かべる真美。
 「それでねー 真美ちゃんに重要なお話があるの・・・・ それはねー あの某王国 我が星沢コンチェルンと昔から取引先の1つで、重要に取引先なの それでねー 外交ルート それも政府間で、正式ルートで、途中編入の打診が来たの 当初難色を示すつもりであったのだけど、重要な取引先の1つだし 正式な国家間の外交ルートを通じてだから 断るにも断りきれなくて・・・・・」
 詳細を話す由美 だが、まだ何か重要な案件が、隠されている。

 「それでねー 先方は同時に、極秘だけど、真美ちゃんに対して・・・・・」 いよいよ重要な案件だ。 でももはや決定事項 嫌な予感がする こういう時は、ロクな話は絶対にない。
 その証拠に、もはや全身に鳥肌立っている。

 「あなたに、正式に、婚姻を求めてきているの・・・・・ はっきり言って、皇太子妃として・・・・・」
 少々語尾が、濁る 余り言いたくない様子である。
 「まだあなたは、16歳だし 日本の法律では、親の承諾があれば、結婚は可能だけど、あなたは、この星沢家を継ぐ身 そして、婿養子をもらわなくてはねー・・・・・」
 困った表情を浮かべながら 大きくため息を付く由美。

 はっきと言って イヤイヤの表情が浮かぶ真美。
 だが、何も言わず、ただ黙って聞いている。
 最後に、はっきと断るのであろう。

 「それでねー パパに頼んで、極秘の外交ルートを通じて、婚姻の話はお断り入れたのだけど、どうしても と言われ ならば、本人達で・・・・・ それでダメならば・・・・・ と言う話で決着したのだけど・・・・」
 またも少し困った表情を浮かべる由美。
 「私としてもはっきりと、NOと突き付けて、・・・・ それは、真美ちゃんの気持ち次第だけど・・・・」
 煮え切らない気持ちが現れている。 由美としてもまだ、気持ちの整理以前の状態であった。 まだかなり突然の事で困惑している。
 多分 真美の事を 裏サイトなどで知ったのであろう 真美自身気付いていないようであるが、色々な裏サイトの中で、特に、有名な1つに全日本美少女女子高生・・・と言う物があり、ある意味で当然だが、真美は、堂々ぶっちぎりの全国NO1の美少女女子高生に選ばれ その座をキープしている。
 その裏サイトは、当然全世界からネットで、閲覧可能 その線から真美の事を知ったのであろう。
 あれだけ神秘的オーラを持つ美少女は、まずいない やはり私の娘? だが、その裏サイトを放置していたのではない、あらゆる手段を通じて、どんなに強引に閉鎖に追い込んでも、直ぐに、別の海外のサーバー利用し復活 結局モグラ叩き・・・・・。
 真美も国家最高機密の妖魔ハンターの一員 色々露出により正体を明らかにされてはいけない。
 もし妖魔の存在が公になれば、全世界が大パニックに陥る。 まさに、未知の致死性の高い病原体の大流行によるパンデミック(汎発流行)の様な大騒ぎになり世界経済そのものが、崩壊の危機に陥る。

 「・・・・それでねー 明日から2-Aの編入する事になったの・・・・」
 由美の話に、もう どうににでもなれ・・・・ そんな表情を浮かべる真美 少し投げやり気味 いつも大事な話は、蚊帳の外。 決定してから決定事項が伝えられるだけ、「今話した・・・・」の一言 反論すら許されない。
 もはや諦めムードの表情を浮かべる。

 次の日の朝。
 落ち込んだ表情を浮かべ 元気のない真美。
 朝のホームルームもどこか上の空。
 内心 こう言う時こそ 妖魔の大軍が現れ 人類絶体絶命の危機 非常徴収・・・・ ここから逃亡・・・・ と、都合よくはいかない。

 教壇に立つ桃花を見つめる。
 顔が、何故だろう・・・? 蒸気し赤面している。 心 ここに非ず・・・・と言った雰囲気。
 それもそのはず、今日迎える国外からの転入生 それも皇太子(プリンス) それも超美形のイケメン。 心ときめかない女性は、1部の除いて皆無。 だれもがあわよくば・・・・ 気持ちになる。
 「・・・・」 いつになく右手を握り口の前に置き もったいぶるように、1度咳き込む桃花。
 「今日 大事なお知らせがあります・・・・・」
 何故だか? 急にまるで、静水の如く音1つたたなくなる教室 妙に、雰囲気が重い。
 「みなさん ご存じのはずですが・・・・」 またもう1度 もっともらしく両目を閉じ 握った右手の拳を口元の前におき1度咳払いの桃花。
 「噂の転入生が、今日 このクラスの一員として・・・・・」
 妙に緊張感が漂う長話。 1部女子生徒は、恋する乙女の乙女ちっくな表情丸出しに、もうハートの眼で、今や遅しと、その瞬間を待ち焦がれている。 憧れの皇太子、プリンス・・・・・ 私を夢の世界へと誘(いざな)う白馬の王子様・・・・ ピンクのLOVE×2光線を周囲に発散。
 うってかわって男子生徒は、全員殺意むき出し?のどす黒いオーラを殺気だって発散 嫌悪の雰囲気 何か?あれば、周囲は血の海?
 何故ならば、目的が、真美である事を知っている。
 極秘来日の際 あるマスコミの突撃インタビューで、思わず、「・・・・今回の来日の目的は、ある美少女女子高生を将来の妃として、連れ帰る・・・・」と思わず口走っていた。 後時間後 発言を全面撤回したが・・・・

 ただ1人真美だけは、もはやうんざりの表情 非常に重い空気が漂う。 周囲とは全く異質のいやいやオーラを、1人暗く落ち込んだどす黒いオーラ?をまき散らしている。 出来る限り 無視 を決め込んでいる。
 まさに異常な雰囲気。

 「・・・・いよいよ噂の転入生の登場・・・・・」 桃花が演出効果抜群に、大袈裟なゼスチャーを交え高らかに宣言する。
 教室のドアが開く、まさに少女マンガの世界? 真っ赤なバラの花びらが飛び交う雰囲気。 そこから現れたのは、まさに少女マンガに出てくるような金髪碧眼の水も滴る超イケメン、ハンサム 爽やかな笑顔を振りまき堂々と教室に入場。

 女子生徒からの そう真美以外からの熱き視線と、大歓声 あの綾、香、加奈ですら 他の女子生徒程でないが、かなりのぼせた熱き視線を注いでいる。
 逆に、男子生徒からは、これ以上絶対にないどす黒い殺意・・・・・・ あの輝星始まって以来と言われる小林ですら 冷たい・・・・ これ以上ない冷酷な 決してライバル視ではない ダークサイド(暗黒)の鋭い視線を浴びせている。
 噂の転入生 女子生徒からの熱き視線には、爽やかな笑顔で答え 半数のその他男子生徒の暗黒のどす黒い視線は、スール。 かなり場馴れしているのか? それともモテない男の単なる妬みとして、スールしているのか?
 教壇正面の黒板の前に立つ転入生 桃花が、顔が蒸気し赤面した面持ちで、黒板にアルファベット表記で、転入生の名前を書く。
 「彼が、今日からクラスメイトの一員になられる アーベル公国の次期国王序列第1のプリンス(皇太子)でもあられる ジークフリート・ハインリッヒ・フォン・シュトラーゼ殿下・・・・・」 高らかに名前を読み上げる桃花。

 「初めまして、今担任の大倉 桃花先生から紹介していただいたジークフリート・ハインリッヒ・フォン・シュトラーゼです。 長い名前なので、クラスのみなさんには、ジークと呼んでいただけれはと思います」 流暢・・・・いや完璧な発音の日本語で話す。

 「まあー素敵 日本語お上手ですね」 数人の女子生徒からピンクのハートマーク入りの声が飛ぶ。

 「ええ 母国語以外 第1外国語として、古くから最重要友好国である日本語は、必須ですし・・・・・」 爽やかな花びらが舞う笑顔で答える。

 「他にも外国語は話せるのですか?」 他の女子生徒の質問。

 「はい 他にも英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語なども・・・・」 満面の爽やかな笑顔。

 更に女子生徒から教室が大爆発したような大歓声 他だし男子生徒は、全員椅子から少し腰が浮いた。 今にも飛び出すかのように・・・・

 その様子を 我関せず・・・・ 呆れて見つめる女子生徒1人 真美。
 早く通常の苦痛のまさに我慢と言う精神鍛練を伴う授業に・・・・ そう言う表情。

 「・・・・そんなプリンス(皇太子)ともあろうお方が、何故 ここ日本のこの学校に転入を?」
 ある女子生徒の当然の質問。 このクラスの1人を除く全女子興味深々。

 「はい それは・・・・」 にこやかな笑顔で答える。 「実は、ある女性に一目ぼれをしました・・・・」
 たたずをのんで聞き入る1人を除く全女子。
 「・・・・その女性を是非私の皇太子妃と迎える入れる為 この学校に転入しました。 それは、我が国国民の総意でもあります・・・・」

 その答えを聞いた瞬間 全女子からの もちろん全く聞き耳持たずスールしていた約1人除く。 歓声が、まさにビックバンを起こす。
 教室内は、その歓声で、巨大地震でも起きたかの様に 大きく揺れる。
 そのビックバン歓声すら 耳に入っていない約1人 当然無視 1人話題に入らず、そっぽを向いていた。

 色々余分な事を考えていた。 今何が起こりつつあったのか? 全く気付いていなかった。
 気づくと、そこには、ジークが、右斜め前立ち 真美に向け、深紅のバラの花びらが舞う笑みを浮かべ立っている。
 思わず、驚きの表情を浮かべ、少し後ろにのけぞる。
 何やら良からぬ悪感伴う寒気が全身に走る。

 「お初にお目にかかります フロイライン・真美・星沢」 そう言いつつ礼節を持って西洋のナイト(騎士)が、レディに対する社交儀礼的な片膝を床に着けるポーズを取る。
 「あなたの噂 まさに天から降臨した美少女女神すら嫉妬する美しさ 我が国にも その評判が及んでいます・・・・・」 何やら良からぬ話が・・・・・ 防御態勢に入る真美。
 何故か? 静まる教室 先程の大騒動は、どこへ行方不明なったやら 今は、静寂の世界 だれもが、ジークの話を固唾をのんで聞き入っている。 それも何か とてつもないハプニングを期待している異様な静けさ 他だし女子生徒のみ。

 全身に鳥肌が立つような寒気が走る。 今は、早くこの場から逃亡・・・・ それしか考えない真美。

 「・・・・実は、この学校に転入したのは、先程の質問にもお答えしましたが、一目あなたに会いたい為でもあります。 あなたを見た瞬間 まさに稲妻に撃たれた様な衝撃を受けました 私は、あなたに一目ぼれを・・・・」 ジークの話 何かここから本題?

 「・・・・フロイライン・真美・星沢を 私めの妃として向かい入れる為この学校に転入しました。 今すぐにとは申しません この学校を卒業した歳 我が国の次期国王なる私の妃として、それは、我が国国民の総意でもあります」 同時に、微笑みを浮かべ真美を見つめる 白い歯が、これ以上ない程 輝く。

 同時に、この言葉を期待していたように、女子生徒から割れんばかりのピンクのハートの大歓声がわき起こる。
 それは、まさに、宇宙誕生直後 最初のビックバンの後 起こった CP対称性の破れに伴う まさに2度目のビックバン。
 この展開を期待していた一言 つまり会ったその場での恋愛少女マンガの世界顔負けの美男子による美少女への一目ぼれの愛の告白、プロポーズ。 まさに地で行くそのもの。
 女子生徒が、大騒ぎになるのも無理がない。 期待していた通りの展開。

 当然告白された真美の方は? ただ突然の出来事で、思考回路が停止状態 意味そのものが理解出来ない表情を浮かべ呆気に取られきょとんしていた。 予想外・・・・ 少女マンガ、恋愛小説、ラノベ・・・など全く読んでいない。 何より恋愛に対しては、超ーーーー奥手・・・・等などなど。
 この辺については、全くの鈍感。 何が、何なのか?
 両親によって、見ず知らずの相手 今眼の前にいるジーク の正式国家間の外交ルートによるいきなりの婚約の話は、お断りしたはず、それでも諦めず、いきなりの転校してきた。 まあこの辺は、事前に知ってこそいたが、この場で、いきなりのプロポーズ? 想像を絶する・・・・ 何だかんだ言って近づいてくるとは、予想していたが、超激辛、ウルトラ塩対応で、無視、スルーで、諦めさせる? 男と結婚? する気など元々無い。 などの予定で、撃破? 撃沈? この手で、行く予定であった。
 何か? 思惑と、全く異なる展開?

 隙だらけの真美 ジークは、更に大胆な行動に出た。 やはりこのチャンスを逃さない強い決意の表れ?
 真美の右手を右手でやさしく持ち 自身の口を右手で持った右手の甲に、やさしく口づけ つまりキス 真美に向け微笑む。
 「これは、あなたへの永遠の愛の誓い・・・・・」
 この瞬間 女子生徒の間から起きる大歓声は、遂に大爆発 まさにメガトン級・・・・いや全地球にある全ての核爆弾が、大爆発を起こした様であった。
 このクラスの女子生徒 全員 口元を握った両手で隠し まさに恋に恋する乙女チックな潤んだ瞳で、まさに恋愛ラノベそのもののシーンを見せた2人を? 憧れの瞳で見つめる。

 「あ・・・・あのうー・・・・・」 ようやく言葉を出す真美。 全くこの大騒ぎ当事者?でありながら まるで他人の話の様な表情。
 それも仕方がない・・・・ と言えば弁明に聞こえるが、実は、別の事が、気になっていた。
 真美は、ラディエンスと言う神秘の力を持つ ある意味の特殊能力者。 真美が所属する国家超極秘機関である妖魔ハンターの一員。 ラディエンスの力とは、異質の特殊能力である霊能力者部隊員同様 敵である妖魔が発する力の源である妖力を ラディエンスの力を解放 戦闘形態へ移行(もしくは、変身と呼んでも良いかも知れない・・・・)しなくても妖力と、そのクラスの力を感じる事が出来る。
 だが、眼の前に現れ まさに絵に描いた様な美少年であるジークからは、全く妖力を感じない 人間の姿に変身能力を持つ妖魔の存在は、過去数例確認されている。 だがその妖力を消す事は出来ない。 妖力を消してしまえば、それは死を意味する。 妖力によって、変身しているのだから 妖力を消す事は、変身そのものが出来ない。
 ジークによる 多分社交儀礼にしても程があると思うが、右手の甲にしたキス 思わず何が何だか? 意味も解らず呆気にとられどう対応すべきなのか? 思考回路が思わず停止した。
 多分 普通の女性ならば、恋のときめき・・・・ による・・・ などと思われるだろう。 だが真美は、DNA、RNAレベルからも間違いなくれっきとした女性であるが、それは、ラディエンスの力の覚醒後に起きた性転換、年齢退行によるもの 元々は、くたびれた40歳代の男性であった。 だれも知らない秘密でもある。
 その為 精神構造は、以前くたびれた40歳代の男性そのもの 自身あきらめが悪く未だに男だと思っている。 現在の姿さえ 変態と思われる様な女子高生の それも超カワイイ制服を女装して着込み 高校へ女子高生として、通っている・・・・ そう認識している。
 その為 はた目から見れば、美しい それも美少女女神すら嫉妬する美少女が、美しい森の中 美しい湖のほとりで、1人佇んでいる所を 白馬に跨った美しい貴公子 プリンス(王子様)が、突如 颯爽として現れ 美しいプリンセス(姫君)に一目ぼれ 愛の口づけを 永遠のナイト(騎士)の誓いとして、右手の甲にした・・・ と映っただろう。 数多くの女性が、自らをその美しいプリンセス(姫君)として、ヒロインとして思い描くシチュエーション。 まさに憧れの世界。
 だが真美は、前述にある様に、今 目の前に現れた まさに白馬に跨った美しい貴公子 プリンス(王子様)であるジークを 異性である男性と見ていない。 ただのルックスに恵まれたキザな野郎・・・・ 程度の認識 男である俺が、何故? 男からプロポーズ・・・・・ 俺は、同性愛者じゃねえー そう言いたい気分であった。 BL(ボーイズラブ)など・・・・ 全く無縁。
 だが、それと同時に、全く異質なものを感じ取っていた。
 確かに、妖魔の発する妖力を感じない・・・・ しかし何 この薄気味悪く、嫌悪、すさまじい冷酷な・・・・・ まさにS級 いやそれ以上の妖力に似た・・・・ いやそのもの様な異様なプレッシャー・・・・・
 妖力を消す事の出来る妖魔など存在しない。

 色々考え事をしていた。 その為 今 眼の前で起きている出来ごとについうっかりしてしまっていた。
 「・・・・私の 愛の告白 受け取っていただけたでしょうか? マインフロイライン(我がお嬢さん)?」

 急に現実に引き戻された様に、我に返る。 それは、決して甘いお菓子に似た夢からではない。
 だが。周囲には、夢の世界にトリップしていた様にしか見えない。

 「あ・・・・あのうー・・・・ えっと・・・・・ 何の話でしたか?」 きょとんとした真顔で答える真美。

 「一言 YES そうお答えいただけるかと・・・・」 少し困った表情を浮かべるジーク。 まさにYESの返答を期待している。

 その時だった 「ちょっと待った!!」 男女それも若い声が数人 いやそれ以上の大声が鳴り響く、同時に教室のドアを強引にこじ開ける音が、教室内に響く、我先に争う様 数人・・・・・いやそれ以上の1人の女子生徒を中心に、男女問わず数十人を超える規模の生徒が、突然乱入。 
 そう真美に取って、従姉にあたる詩織が中心。
 真美とジークの間に立ち塞がり両手で真美を固く抱きしめ これ以上ない強い憎しみ? を持つ強い眼光でジークを睨む。 絶対に渡さない強い決意。 ここから1歩も近づけさせない。 そしてものすごい剣幕 まるで眼つきだけで相手を殺しかねない。
 「真美ちゃんは、私の妹分にして、私の大事な所有物 何人たりと私の許可なく近づくのは禁止・・・・・・」 詩織のまさに絶叫と共に、一緒に乱入した男女の生徒が、まさに、絶対崩れないと言うエリコの壁?を築く。

 その様子に、さすがに度胆抜かれた様な表情を一瞬見せるジーク。 しかし直ぐに、元に戻る。 両肩を少し上げ少し呆れた表情とポーズ。
 「ウォールズ・オブ・ジェリコ (Walls of Jericho)ですか?」 一瞬白い歯が光る。 何か?悪巧みと、意味を持たせている。

 「何よそれ?」 意味が理解出来ない詩織 勉強、教養など、大の苦手。 常に低空飛行。

 そこへ今まで大騒動を傍観者として、楽しんでいた綾が、割って入る。
 実は、この大乱入劇 こっそりスマホで、LIVE中継 詩織を始め真美に異常に興味を持つ他のクラス、別の学年の生徒にリアルタイムで流していた。
 当然 この結果になる事を予想、いや期待、いやこうなる事を知っての事 実に小悪魔。 ハプニングを楽しむ魂胆。

 最もらしい表情を浮かべ綾が解説に入る。
 「ウォールズ・オブ・ジェリコ (Walls of Jericho) 日本では、エリコの壁と呼ばれている オールドバイブル(旧約聖書) ヘブライ語に書かれているエリコと言う街に築かれていた難攻不落 絶対に破られないと言われた城壁 ヨシュア記6章には、こう書かれている モーセ(モーゼ)の後継者ヨシュアは、エリコの街を占領しようとしたが、エリコの人々は、城門を固く閉ざし、誰も出入りすることができなかった。 しかし、主などと呼称する神々などと呼称する物の言葉に従い、・・・・・」 自慢げに語る綾の言葉をジークが突然遮り ジーク自身が説明する。

 「・・・・イスラエルの民が、現在 Lost Ark(ロスト アーク=失われた聖櫃)とも呼ばれるモーセ(モーゼ)の十戒石版を収めた契約の箱を担いで7日間城壁の周りを廻り、角笛を吹くと、その巨大な難攻不落と言われたエリコの城壁が崩れた・・・・・」 こんなの一般常識ですよと言わんばかり表情で語るジーク。 それも「巨大な難攻不落と言われたエリコの城壁が崩れた・・・・」と言う部分を 特に強調していた。

 難攻不落と言われ 全く異性である男性に興味を持たない それでいて同性である女性に対しても・・・・ 今まで口説き落とそうとした数々の男性全てを葬り去った真美を口説き落とす自信の表れ?

 少々知的で、教養が問われる話 詩織の頭脳もはや 理解不能の状態 何の話か? さっぱり理解出来ない。

 その後ろで、全く自身がその中心地でありながら 全く第3者の表情の真美。
 内心 下らないバイブル(聖書)の逸話・・・・・ ただ呆れていた。 そう真美もこの程度の知識は、常識以前 大の宗教嫌いである この作品の唯一絶対の存在である作者 あらゆる矛盾点、欠点、問題点などを鋭く探しだ、穴探し、当然 たっぷりとした皮肉と言うスパイスをふりかけ 辛辣な毒舌非難をまき散らすはず・・・ そう思っていた。

 そこへようやく怒りの罵声が飛ぶ 「もうー いい加減にしなさい!!」 ヒステリックの大人の女性のキーン耳に響く甲高い叫び声。 そうこのクラスの担任の大倉 桃花教師の怒鳴り声。
 一瞬 きょとんとした静寂。
 朝のホームルームが、これ以上ない大騒ぎ。 間を置かず、この大騒ぎを聞きつけ校長を始め 職員室に残っていたクラス担任を持たない教師も このクラスに乱入 その中心は、体育会系の体力だけは、ずば抜けている森井の姿も・・・・
 強引に他のクラス、他の学年の生徒を強制排除 ようやく平穏?が訪れる。 この騒ぎを起こし乱入した生徒全員 後で、職員室に呼ばれる事になった。

 お昼休みの昼食の時間。
 いつもの6人様のテーブルに、真美、詩織、綾、香、加奈、薫、それに補助椅子を持ち込んだ+(プラス)1の友美。
 このテーブル席に座るだれもが、ぶっすっとした表情で、口1つ開かない・・・・ いや何か? 言葉を出す事さえ許されない 重い まるで巨大な重しに押しつぶされたような重い雰囲気。
 だれもが、口を開かず、ただもくもく食べるのみ。 いつも話の中心となる詩織が、どす黒いオーラを充満させこの雰囲気を作り出している。
 その周囲には、男女の生徒による人垣が築かれており だれも近づけさせない。
 そして、ジークは、体力だけが自慢の男子生徒に連れられリンチ・・・・ それはない 真美達の座るテーブルと、1番離れたテーブルに着かされ、体力だけが自慢の男子生徒に、腕組みによる鋭い監視下 黙々と食事。
 時より近付き、ジークに憧れの瞳で見つめ声を欠ける女子生徒に、笑顔で答えている。
 その中の半数以上は、真美狙いの女子生徒 真美から引き離す為のフェイント。 残りは、本当に、白馬に跨る王子様狙い。

 1人大柄の男子生徒が、低い少し平和的? ドスの効いた声で、ジークに語りかける。
 「やい 転入生・・・・ ちょっと失礼かな? プリンスさんよ!!」 ここは、平和的に話し合いによる解決? と言う指向であろう。
 「我が校の真美姫様に対する礼節、礼儀、マナー、ルールを 1つご教授してやろう・・・・・」 睨みを効かしジークを睨む。

 余りの人気を博す真美 当然すさまじい争奪戦を男女問わず繰り広げられていた。 余りの激しさに、真美狙いの男女が、ある協定を暗黙ルールとして、結んでいた。
 真美に、平穏な学校生活を送ってもらう為と言う大義名分であったが・・・・ 抜け駆けさせない為の相互監視の意味が強い。
 一応礼節を重んじて、丁寧(脅迫?)な物の言いであった。 力ずくで、・・・・ いや平和的に従わせる?

 「・・・・そうですかー・・・・・」 一応合意したかのような返答のジーク。 何か? 不遜なことを企んでいる様な不敵な笑みを浮かべる。

 その日の夕方。
 今日は、妖魔ハンターのバイトのシフトはない。 いつもの帰宅部恒例の憩いの時間 あれは単なる寄り道。 何故か? 竜虎高校の武道会系の生徒による周囲の護衛? もはやジークのプロポーズ知れ渡っている。
 詩織姉ーもいない。 今日は、妖魔ハンターのシフト日。 かなり心配していた。 片時も手放したくない様子であった。
 いつもの詩織の周囲に集まる 詩織の親衛隊の女子生徒の中 緊張した面持ちで、いつもの聞き役に徹していた。
 この年齢の女子 話題は、芸能界、おしゃれ、異性・・・・ 真美には、別世界に聞こえる話ばかり。
 「・・・・お家での習い事があるから・・・・」 全くのウソであったが、少し早めに切り上げ、竜虎高校の武道会系の生徒の護衛付で、自宅であるお屋敷・・・いや宮殿の正門まで送り届けられる?
 途中の地下鉄の車内など、周囲の乗客に、何事? の様な好奇な眼で見られ いつも以上に神経をすり減らしていた。
 正門で執事の中本の顔を見た瞬間 どっと疲れが出た 珍しく頭がくらっと・・・ つまり立ちくらみ 少々貧血。 近くで同じく帰りの挨拶に来ていた数人のメイドに支えられる始末。
 そのままプライベートルームのベッドに倒れ込んだ。
 「真美お嬢様に、アーベル公国 王室から公式のプレゼントが届いております・・・・」 少し困った様子で、真美専門のメイド長が、ベッドに制服を着たまま倒れ込んだ真美に言う。 正式な外交手続きを踏んだ公式のプレゼント 余り粗末に出来ない。
 「それと、こちらに手紙が同封されていました」 真美に白い封書が渡される。
 宛名には、Dearフロイライン・真美・星沢と記されている。
 差出人は、アーベル公国 プリンス(皇太子) ジークフリート・ハインリッヒ・フォン・シュトラーゼの名前が、自筆で書かれている。
 裏を見ると、シュトラーゼ家の家紋が押されている。 間違いなく公式の封書。
 「プレゼントは、3着のドレスと、・・・・」 届けられたプレゼントの内容を説明するメイド長 「・・・最後に、3着の高級ビキニの水着・・・・・」
 ドレスに合わせた飾り、宝石、下着、それにビキニの水着・・・・? 大きく呆れた溜息をつく真美。
 ジークの真意が、読めない表情。 「まだ誕生日でもないのに・・・・」 ぼっそりと呟く。

 封書を開き、手紙を読む そこには、習字の有段者? と思わせる程の達筆の美しい日本語で書かれていた。
 「Dearフロイライン・真美・星沢・・・・・」 内容は、以下であった。
 来週の土曜日 午後18:00から 都内1等地にある アーベル公国の大使館内庭園にて、2-Aクラス全員と、担任の大倉 桃花教師も入れ クラス全員の親睦を温めたる為のパーティを行う・・・・ 公式社交パーティに付 男子は、フォーマル、女子は、ドレスアップが必須・・・・ クラスメイト全員は、まだ未成年者に付 保護者同伴 保護者も男子は、フォーマル、女子は、ドレスアップが必須・・・・などと書かれていた。 男女共 公式和装は、可 と書かれている。 庭園には、プールがあり 泳ぎたい人は、大使館内にある更衣室で、水着着替えればOKとの事 最後に、真美の為 心ばかりの僕からプレゼントを用意しました。 気に入ったドレスを着て是非ご参加下さい・・・・と、PSiは、一緒にプールで泳ぎましょう・・・・ 一文が加えられていた。
 思わず両手で頭を抱え込む真美。
 パパとママの事 もはや2人の耳に、この情報は、届いている。
 どんな重要な仕事があろうと、全てキャンセル 絶対同伴する。 それに執事の中本、メイド長と、数人のメイド 史上最悪の大部隊編成で・・・・
 何と言っても、日本国に取って、最重要友好国の1つであり 星沢コンチェルン全企業グループに取って、最も大きい最重要取引先の1つが、このシュトラーゼ王家。 一応婚姻話は、正式に、お断りしたが、これと、商取引は別の問題 更に、大きな商談の絶好のチャンス。 今 アーベル公国との間に、大きな国家プロジェクトの話が、進められており その重要に根幹部分に、星沢コンチェルン全企業グループの中核企業のいくつかが絡んでいる。 更に大きな取引にしたいと、パパが内密に話していた。
 次期国王であるプリンス(皇太子)と、直接謁見出来る それも公式社交パーティで、これ程のチャンスは、滅多にない。 必ず物にしょうとする。
 星沢コンチェルンの会長でもあるママと、社長兼CEOで、実際 星沢コンチェルン全企業グループを動かしているパパとのトップ会談・・・・・ もうそれだけでも気が滅入りそう・・・・・
 キャンセルなど絶対に許されない。 無理やり連れて行かれる・・・・ 家出したい・・・・ 切実に思う真美。
 現在 妖魔の出現はあるものの どうも妖魔は、本格的戦闘に入る様子を見せない。 スパイ つまり偵察要員を送り込んでいるだけで、本格的戦闘は、皆無の状態。
 妖魔出現 こちらが駆けつけても 直ぐに亜空間フィールドに入り逃走するばかり。
 大規模侵攻の前触れ? だが、その割には、余りにも動きが大人しすぎる。 ただの様子見・・・・と言った言葉の方が適切な状態であった。
 その1部は、妖魔の間で極秘に結成されたファンクラブ、親衛隊であった。 こちらの妖魔は、実に平和的で、人類と敵対する気など全くない。 ただ真美を 人目に触れず追っかけているだけ。
 「この日妖魔の大軍 それも人類存亡の危機・・・・・」 などと物騒な願いをひたすら祈っていた。

 何も起こらず 当日。
 アーベル公国大使館周辺のビルディング街の人通りの余りない一角の角 まだ夕暮れ時 太陽が大きく西傾くこの時期 だが、ここは、太陽の光が、1日中届かない まるで闇夜を思わせる薄暗く陰気な空間 そんな中闇夜に紛れ蠢く怪しい黒ずくめの異様な殺気を放つ男女数人の集団 そうこの話を聞きつけ 職場放棄? 妖魔ハンターが全員集結 実は残っているのは、室長の神楽 小夜子1人残すのみ、苦虫を潰し 怒りの表情を露わに、デスクに両足を乗せて腕組んだポーズ。 後で超ド級の雷が落ちる。 周囲の少し上空には、同じく殺気立つ聖龍神が、チャンス伺う鋭い眼を光らせているだろう。
 だが、大事な真美を どこの王子だが、プリンス(皇太子)だか知らないヤツに渡すのなど、彼らの心情が絶対に許さない。
 特に、殺気だっているのは、詩織 日本有数の大財閥の1つ中崎家の1人娘 公式の社交パーティならば、堂々と参加資格を持っているが、公式と言っても 実は、プリンス(皇太子)であるジークの 転入先のクラスメイトとのプライベートのパーティ。 当然 クラスメイトでも同学年でもない 1年上の3年生である詩織は、パーティに呼ばれていない。
 中崎家の権力を利用したが、あっさりと断られた。 ・・・・公式ではあるが、新たなクラスメイトとの親睦を図るパーティ・・・・と書かれていた。

 アーベル公国大使館周囲は、通常よりも多くの警官隊が配置されおり 大使館内は、多くの武装警備員が、眼を光らせている。
 この程度レベルを相手にするならば、世界最強の霊能者部隊と呼ばれる妖魔ハンターの敵ではない。
 最新最強の歩兵装備で武装した師団規模の部隊でも 妖魔ハンターの敵ではない。 簡単に殲滅させる。 実力が違い過ぎる。
 だが、乗り込んでどんちゃん騒ぎを起こせば、それこそ国家間の大外交問題に発展する。
 それに現在妖魔ハンターは、国家最高機密の超特殊部隊であるが、最大のスポンサーは、国家ではなく、星沢コンチェルン。 下手な手出しは出来ない。
 ただ猛烈な瘴気と、殺意などを 周囲にまき散らす・・・・ 以外何も出来ない。
 妖魔が、アーベル公国大使館内に現れ 殺戮を始め 日本国政府に救援を求める・・・・ 以外 外交特権により潜入出来ない。
 ここにいるだれもが、それを望み ただ待つ 今は、それだけ 他だし 世の中 そう都合よくはいかない。
 「妖魔 今こそ現れよ・・・・」 小声ながらドスの効いた声を上げていた。

 数台の警備車に囲まれた黒塗りのロールロイスが、アーベル公国大使館の正面から入っていく。
 そう真美の乗る 星沢コンチェルンの専用車。
 当然 乗り込んでいるのは、助手席には、パパ義人 後部座席には、今日のヒロイン? となるはずの真美 その横には、ママ由美 そして運転手は、執事の中本。
 前後を守る警備車には、運転手以外 2人づつのメイドの計4人が乗り込んでいる。 ちなみに武装など、危ないオモチャは、持っていない。 だが、その手、足などは、それ以上の凶器に変貌。 全員 各種武道の 特に優れた有段者。 いざテロなど襲撃者に襲われ時 武器などを持たず素手で戦う。 妖魔ハンターの三村隊長程ではないですが、その実力 各国女性特殊部隊員最強クラス。
 一応メイドとしての責務を果たす為が表向きですが、いざ言う時 その生命を差出ても星沢家の3人を守るが、使命。
 良く真美が、嫌なことから逃亡しようとすると、この4人のメイドに簡単に取り押さえられ御用となっていた。

 真美達を乗せた黒塗りのロールスロイスが、正面玄関のエントランスに停車する。
 まず先に、到着を待っていた黒の燕尾服を着た多分執事だろう 非情に品の良い初老を迎えた男性が2人 前後のドアを開ける。
 まず前席の助手席から義人が降りる 続いて後部座席から由美 そして、奥から義人のエスコートで、真美が降りる。
 そこへ今日のパーティのホストになるジークが、白のフォーマルスーツを着込んだ姿で向かい入れる。
 社交界の挨拶を始める。
 「ようこそ 私のパーティへご出席いただきま大変うれしく思います フロイライン・真美・星沢」 右手を左胸に当て 頭を少し下げる。
 礼節を重んじる社交界の挨拶。
 「お招きいただき感謝です 皇太子殿下」 真美も社交界の挨拶 少し左足を下げ 両手でドレスのスカートを少しつまみ持ちあげ頭を下げる。 レディの挨拶。
 今着ているドレス ジークからのフレゼント 当初 プレゼントされた全てを丁重に返却しようとしたのだが、由美に言われあえなく着る事になった。 先方からのプレゼント 失礼にあたる・・・・ などの理由。
 結局 どれを着るか? ドレスに対して、極度のトラウマ(精神的外傷)を持つ真美。 最初どれも絶対着ないと、ダダをこねたが・・・・ 由美のコーディネイトで決定。 それの時の由美の表情 どんな悪魔、鬼だろうと、余りの恐怖に、震え上がらせる程のスマイル(笑顔)であった。 同時に、一緒に送られたジュエリーも身につけさせられた。
 もうイヤイヤモード。 顔から血の気が引き まるでゾンビ。
 ちなみに着用したのは、淡いレモン色のフリルで飾られたワンピーロングドレス。
 さすがに何を着ても華麗に、上品・・・・ まさに美の美少女女神すら思わず嫉妬する美しさ。
 
 それと打って変わってこの社交界特有の挨拶 今日この日まで、散々選任教師 それも各国の王侯貴族、上流階級に社交界のマナーを教える女教師 それもまさに鬼婆に、徹底的叩きこまれ うんざりしていた。
 「・・・はいそこ!!」 ちょっとでも作法がぎこちないだけで、罵声の嵐・・・・ 思い出すだけで、悪感が・・・
 何度も練習してもぎこちない。 まるでやる気なし。
 元々 性転換、年齢退行前の 氷室 拓真の時代 "がさつ" が、1つの売りだと自負していた。
 かなり精神的葛藤が・・・・
 それと、女性特有の頬笑み返し 最大の苦手。 引きつった業務用のスマイル かなりぎこちない。 由美の鋭い視線が飛ぶ。

 「私の家族を紹介します こちらが父である義人・・・・」 右手を向ける。 黒のフォーマルスーツを着込んだ義人 さすがに、場馴れしている 優雅に、ジーク同様の挨拶のポーズを取る。
 「私が、真美の父である義人です 皇太子殿下」 全く卒が無く、それでいて威厳に満ちている。 パーフェクト。
 「こちらが母の由美」
 真美同様 レディの挨拶 さすがに、真美と違い こちらも優雅に、気品に満ちている。 美しくパープルのシンプルなロングドレス まさに社交界に咲く一輪の華麗な華 思わず古代エジプト最後の女王 絶世の美女と謳われたクレオパトラ 正式には、クレオパトラ7世フィロパトルであるそうだが、古代エジプト プトレマイオス朝最後のファラオ。 まるで彷彿させる。
 特に、あの有名な古代共和制ローマの将軍 ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)をハニートラップ(色仕掛け)で陥れる歳用いたのが、パープルのドレスを身に着けていたと言う逸話もある。
 「私が、真美の母 由美です。 お初にお見えにかかります 皇太子殿下」
 少し驚きの表情を浮かべるジーク。 噂には聞いていたが、まさに美を体現した美熟女とは、この女性の為にある言葉・・・ と言った表情に見えた。
 それに母娘と言うより 少し年齢の離れた姉妹・・・・ の方が適切と思われる程 まだ30歳前後にしか見えない程若々しい。

 ここへ来る前の出来事。 ここは星沢邸。
 「ちょっと華麗過ぎないか・・・?」 妻である由美のドレスアップの姿を見て、そのままの感想を述べる義人 それもそのはず シンプルなパープルのワンピードレスであったが、余りのゴージャスに感じらずにいられなかった。 素体の良さの為でもあるが、我が妻由美は、どんなドレスを着ても 華麗に、ゴージャスに、着こなしてしまう。 ある面では、考え物でもあるが・・・・
 「今日のパーティのメインで呼ばれているのは、真美だぜ 少し控え目にした方が・・・・」
 だれもが、同じ感想を抱くだろう。
 「だって・・・ 今日のパーティのホスト アーベル公国の次期国王であるプリンス(皇太子)でしょう 娘の母として、失礼のない程度のマナー、それにあなたあの国の巨大国家プロジェクト 更なる参入 狙っているんでしょう? あのプロジェクト 裏で中心になっているのは、あのプリンス(皇太子)だし・・・・ 今日 真美の保護者同伴のパーティに、全ての仕事キャンセルして、同伴するのは、直接プリンス(皇太子)に会って、トップ会談 それと、もう1つは、真美の件については、もう1度 直接お断り・・・・ でもそう都合良くいく?」
 確かに、その予定であった。
 あの巨大プロジェクト 更に、権益を手に入れれば、全グループ企業に大きなメリットをもたらす。
 だが、これとは別の問題である真美の件。 真美は、星沢家の次期当主であり 星沢コンチェルンの次期会長でもある。 いかなる事情があろうと、嫁に出す事は出来ない。 婿を貰う それ以外選択肢はなどない。
 「・・・・少しでも先方の心象を良くする為にも・・・・ 何と言っても第1印象 特に大事でしょう この様な大きなビジネスチャンスの時こそ・・・」 由美の話は続いた。
 少し呆れ表情を浮かべる義人 「女の心理は・・・・」 そう言う表情 全く理解不能・・・・

 「そして、我が星沢家の執事である中本」
 「私の様な者が、この様な場へ御呼びいただき大変光栄に思っております」 こちらも百戦練磨の強者 かなり場馴れしている。 全く隙がない。
 「そして 後ろに控えるのが 我が家のメイド4人」 真美の紹介に、それぞれお付きの者の挨拶 こちらも丁寧。

 「それにしてもお美しい・・・・・」 溜息まじりの感想を述べるジーク。
 自らプレゼントしたドレスの1着を着ていた。 目立て通り。 真美の美しさを更に引き出している。

 「型苦しい挨拶は、この辺にしておきましょう さあーこちらへ」 ジークが手招き。
 途中 2人のジークの執事から簡単な注意事項が、執事の中本と、4人のメイドに言い渡される。
 お付きの者は、後方に控える様にとの事。

 庭園には、先客が待っていた。 どうやら真美達が、1番最後であったらしい。
 つまり今夜のパーティのゲストの主役?

 庭園での立食パーティスタイル。
 先に着ていた加奈が、最初に気付き 真美に寄って来る。
 「真美ちゃん」 そう声を掛けながら小走りに近づく、ドレスではなく和装 つまりカラフルな晴れ着姿の加奈 その後ろから少しゆっくりと、同じく黒の上品で、気品のある着物の正装である訪問着の老女も来る。
 「随分遅いじゃないの?」
 「えっ?」 少し驚く真美 集合時間は、確か午後18:00 時間には間に合っている。
 「みんな午後17:30までに集合よ・・・・・」
 加奈の話に、自分達だけは、別の時間? 間違いない招待状何度も両親を含め確認した。
 ゲストの主役? 1番の貴賓は、ラストに到着するのが慣例・・・・
 「それよりも 紹介するはね、私の祖母の初枝・・・・・」 うれしそうな笑顔を向けた先に立つ気品のある訪問着の老女 気品のある笑みを浮かべ ゆっくり丁重に頭を下げる。 お淑やかな人柄。
 「いつも孫娘がお世話になっております。 祖母の初枝と申します」 品が良く柔かな物腰 東北地方の小さな地方都市であったが、古くから代々続く旧家 血縁、地縁が、最も重視される土地柄 東北地方の実力者、名士などと親戚関係を多く結んでいた。 その為だろう 嫁に来て数十年 決して、人には言えない苦労があったはず、品が良く柔かな物腰に、それが、お淑やかな人柄となって現れている。

 それに気づいた香が現れる。
 ドレスアップしている。 それも少しでも大人びて見せたいのか? 深紅のドレス だが・・・・ やはりロリ系ファッションに見えてしまう。
 そして、手を繋がれ一緒に少し後を付いてくる そう20歳代中盤の青年 この場で物おじないナチャラル(自然体) かなり場馴れしている雰囲気 どう見ても執事、顧問弁護士等には、見えない。 新進気鋭の若手経営者?
 「こちらは、私の長男の博幸兄ー」 そう紹介する香。
 香は、4人兄弟の末っ子で、上の3人は男。
 現在、アメリカ合衆国の有名な大学院に、経営学を学ぶ為留学中であったが、現在 諸事情で、一時帰国していた。
 多忙の両親に替わって、今日 無理やり 可愛い最愛の妹の為 本人は、余り乗り気でなかったが、保護者として、同伴するハメになった。
 真美を見た瞬間 驚きの余り開いた口が塞がらない。

 そして、優雅に、こちらも大部隊を引き連れ綾が現れる。
 白のシンプルながらも背中が、大きく開いたSEXYのドレス。
 豊かなロングヘアーをアップでまとめ 気品ある良家のお嬢様を 物の見事に演出。
 真美の様に、覚束ない足取りと違い 優雅に軽やかな上品な足取り。 シンデレラの物語に出てくるガラスのヒールを履いても同じであろう。
 全く履きなれない踵の高いヒール。 真美は、悪戦苦闘中。 日頃のトップアリスートに近い、運動、反射神経 何故か? こう言う時に限り いつも雲がれ・・・・・
 何度か、コケそうになり その都度 引きつった誤魔化し笑いを全身に冷や汗をかき浮かべていた。

 綾も両親と執事 それに2人のメイド。
 綾の両親 特に、母親とは、何度も面識がある。 父親と執事は、綾の誕生日会で、家に招かれた時 少し挨拶程度の会話をした程度であった。

 「相変わらず綺麗だね」 気さくに、微笑みを浮かべ真美に声をかける綾の父親。 温厚でナイスミドルの言葉が良く似合う。
 「いつも綾は、君の話ばかりでねー」 少々照れ笑い浮かべる。

 そこへワイングラスを2つ両手に持つ義人が現れる。
 「よう 元気していたか?」 そう言いつつ綾の父親に、ワインの入ったグラスを1つ渡す。
 そう義人と、綾の父親章之(あきゆき)は、互いの妻を通してだが、旧知の仲となっていた。
 互いに、経営者として、最強にして、最良のライバル視しているが、互いに補完関係し合う仲でもあった。
 1部共同事業で、多大な利益を上げている。

 互いにジョーク、娘談義、母親同士も高校時代からの親友、大いに話が盛り上がっている。
 真美もいつもの仲良しの綾、香、加奈と、互いに着ているドレス、晴れ着の品評会?
 こう言う事に疎く、興味も無い真美 作り笑顔を浮かべひたすら聞き役、結構精神修行?

 重厚なクラッシック音楽が流れだす。 オーケストラによる生演奏。
 それに合わせある1点にスポットライトが集中。 真美達がいる場所より少し先にある本館への階段数段上がった所にある丁度左右に大きく広がったテラス そのテラスの1点に、スポットライトが集中している。
 どうやら 今日のパーティの主催者でポスト登場である。
 会場の至る場所から拍手が起こる。
 拍手の中に、小さく聞き取りが難しい小さな囁き声? が僅かに漏れている。
 いわゆる妬み? 必ずこう言う人物が少数ながらいる。
 「・・・・ふん カッコつけやがって・・・・」
 男らしくないなあー と真美は感じた。

 「ここへお集まりのみなさん・・・・・」 ジークの  聞く者全てを魅了する まるでオペラ歌手の様な澄んだ聞き心地のよい美しいホーイソプラノ声が、パーティ会場内に響く。

 「・・・・私 アーベル公国の次期国王継承権序列第1のプリンス(皇太子) ジークフリート・ハインリッヒ・フォン・シュトラーゼの留学先の学校のクラスメイトとなったみなさんと、親交を深めようと、個人的なパーティに、ご参加いただき光栄です・・・・・」
 スピーチは、短い方が・・・・ 内心思う真美。
 周囲の正装、ドレスアップ姿のクラスメイト 女子生徒のほとんとが、もはや恋の魔法にかけられたプリンセス(姫)の様に、ハートの眼差し、ピンクのLOVE×LOVE光線を発射 もう浮き上がった状態。
 1部保護者として、同伴の母親、お付きのメイドも・・・・
 男子生徒全員 黒き、どす黒い、漆黒の闇のオーラを 周囲にまき散らす。 異常な雰囲気。 真美と正式に婚約しました・・・・などの発言すれば、ここは、間違いなく血の海と化す?
 「・・・・今日はささやかながらのパーティです。 中央部では、社交ダンスをお楽しみいただけるよう 会場を設置 左側には、夜間ですが、プールもあります・・・・・」 話は続く。
 ようやく 話が終わり 階段を下りるジーク。 その横には、出迎えに同列していた執事を従え 1人、1人の生徒 そして、同伴者の父兄と、儀礼的な挨拶を始める。

 真美は、綾、香、加奈とまた下らない? あくまでも真美に取ってはだが、雑談 主に、オシャレ が始める。
 真美以外 綾、香、加奈も真美程ではないが、他のクラスメイトの女子生徒程、ジークには、関心を寄せていない。
 その時だった 突然後ろから右肩を叩かれる。
 驚きの表情 顔が・・・・
 振り返ると、満面笑みを浮かべ、白い歯を光らせるクラス委員長の小林が立っている。
 黒のタキーシドを華麗に着こなしている。
 「真美ちゃん 私めと、Shall We Dance・・・・・・」 華麗に誘う。
 そう言えば、先程からオーケストラによる生演奏が始まっており それも社交ダンス用の 1部同伴している父兄・・・ いや夫婦は、若き恋人時代を思い出すかの様に、華麗に社交ダンスを楽しんでいる。
 そのダンス会場に、小林は、真美を誘った。
 小林は、運動系は、全て弱小クラブの輝星高校のクラブでは、唯一全国レベルの社交ダンス部のエース。 昨年全国新人戦に出場 第5位で入賞の実力者。 パートナーの女子に恵まれれば、優勝争いをした言われる程であった。
 突然の誘いだが、ここは、受けるのが、マナー。 だが、顔から血が引き真っ青になる真美。
 「えーっと・・・・私・・・・・」 しどろもどろの煮え切らない返事。
 そう そのはず 真美は、運動神経、反射神経共 トップアスリートに近いレベルなのだが。
 「私・・・ダンス・・・・・」 うつむく真美。
 「どうしたの真美ちゃん?」 やさしい笑みを浮かべ 更に、強引誘う小林。 ジークに取られる前に、強引に真美を独占しようと企てている。 それも得意の社交ダンスで。
 「私・・・私・・・ダンス 踊ったこともなく・・・・ 全く・・・・何も知らなくて・・・・」
 この言葉に、驚きの表情を浮かべる小林、それに周囲にいた綾、香、加奈 まさかの表情。
 世界有数の大財閥、コンチェルンの1つに数えられる星沢家の1人娘にして、次期当主 まさか社交ダンスなど、社交界のマナーの1つとして・・・・と思っていた。
 このパーティに呼ばれ、上流階級のマナーなど全く知らず、慌てて専門の教師に、マナーを叩き込まれ それを覚えるだけで、苦労の連発状態。 こう言う事に関しては、物覚えが悪い。
 直ぐに、猛烈な雷を落とされていた。 よって社交ダンスどころではなかった。
 招待状には、社交ダンス・・・・の文字が記されていたが、それどころではない。
 雑談で、非常に興味深い 宇宙物理学を中心とした科学全般で乗り切る・・・・ 真美の得意の超マニアックな専門知識で、それしか方法がなかった。
 ここに集まる父兄の大半は、超大企業のオーナー、会長、社長などであり 今 目の前で真美を社交ダンス誘う小林の家 小林重工業などは、その比重を現在 他に先駆け宇宙開発に重点を置き始めている。
 星沢コンチェルンの1部門である 宇宙開発、開拓部門も 小林重工業と並び、世界最先端企業の1つであったが。
 得意の宇宙物理学を中心とした科学全般の知識で、雑談の中心に据え乗り気る。 こう言う場で、非常に興味深い話となる。
 例えば、地球以外の 他の太陽系の惑星、準惑星、衛星等で、地球型の炭素系、有機化合系の生命の存在する可能性 かって存在したでもいい 可能性の高いのは、火星よりも 木星のガリレオ4衛星のエウロパ(ユーロパ)、ガニメデ、土星の衛星 エンケラドゥスなどの様に 表面数Kmに渡って厚い氷に被わられているが、内部は、放射性物質の崩壊 もしくは、他の衛星との共鳴関係、本星の潮汐力などにより 内部につまりコア(核)の部分に熱源があり 地下海を形成。 地球の深海にあるブラックスモカー、ホワイトスモカーの様な熱水噴出孔がいくつもあり そこから生命に必要な化学物質が噴出 そこで、太陽エネルギーを必要としない 地球同様の生命が存在し 生態系を作り上げているかも知れない。
 地球外の生命体である。 それを手に入れ研究すれば、そこから得られる巨万の富は、多分 計り知れない可能性がある。
 それに、ガス状惑星である 木星、土星のコア(中心核)付近には、推測であるが、この宇宙の最も豊富にあり 一般的な基本を構成している素粒子の1つ C(炭素) それを超高温、超高圧状態で圧縮 固定化した物質、結晶体 永遠の輝きを持つ 女性に取って憧れの光物 そうダイヤモンド。 その固体ダイヤモンドの上限温度が8000ケルビン、摂氏約7700度であることが判明、それ以上になると融解することがわかった。 液状化 約1000万トン以上と見積もられる層 まさにダイヤモンドの海が存在する可能性が示唆されている。 それに氷惑星である 天王星、海王星には、ダイヤモンドが融解 液状化しておらず、固体化した状態で、大量に、まさに空中浮遊し存在する可能性が報告されている。

 お得意の宇宙物理学、天文、天体学などを総動員 非常に、有意義で、興味を得られる話だ。 ここに集まる父兄の大半は、超大企業のオーナー、会長、社長などであり新たなビジネスチャンスの1つになる可能性がある。

 話がそれたが・・・・

 恥ずかしさの余りか? 顔は、赤面 モジモジしながら下ばかり見ている真美。
 何とか、断る手立てを模索しているが、妙案など直ぐに浮かばない。
 そんな真美を見て、「大丈夫 僕が教えながらうまくリードするから・・・・」 そう言いつつ 笑顔を向けつつ 大胆に、真美の右手を掴み 強引に引っ張る。

 数組のペアが躍るダンスフロアー その中心に連れ込む。
 「僕の背中に左手を回して・・・・・」 やさしく解説。 「音楽に合わせて・・・・」
 ステップも知らず、足の踏み出し方も解らない。 ずぶのド素人。 1つ1つ丁寧に教える小林。
 ハタから見れば、美男美女ペア 美しく舞い踊る夢の世界・・・・ 周囲からそう期待された視線 だが、現実は、無様の一言。
 元凶は、言わず知れた真美。 転倒だけ逃れていたのは、小林のフォロー、カバーと、真美の本来持つトップアスリートに近い運動、反射神経のお蔭。
 何度も転倒しそうになった真美を うまく支えていた。

 そんな時だった。
 「そろそろパートナーを代わってもらえませんか?」
 その声に、一瞬敵意を剥き出しに、キレかかった表情を浮かべる小林。
 それもそのはず、その声の持ち主は、いつの間にかあのジークが、ここへ来ていたのだ。
 やんわりとした笑みを浮かべるジーク。
 社交界のマナーに精通し、このパーティの主催者は、だれかを知る小林。
 仕方なさそうに、真美とのダンスを止め 譲る。
 「憶えていろ!!」 声にこそ出さないが、その表情が、痛烈に語っている。

 早速 真美とペアを組むデューク。 178cmのやや長身の小林よりも 更に高く180cm超えている。

 「私・・・・」
 「何も言わなくてもいいですよ フロイライン ステップなんか気にしなくていい ただ音楽に合わせ 私のリードに従っていればいい それだけですよ」 やさしく微笑み真美を見つめる。

 小林の時よりは、かなりさまに見える。
 ステップは、間違いなくデタラメ。 だが、小林の時以上の超美男美女ペア まるで神話の世界を彷彿させような華麗なダンスに見せてしまう。

 何か耳元で、小さな声で囁くジーク。
 何か 暗示 いやマインドコントロール(精神支配)に掛けられたような錯覚を一瞬襲われる。

 聞いた事の無い 多分音波の領域も異なっている。 真美はそう感じた。 普通の人では、決して聞き取れない領域。

 それと同時に、初見から感じ取っている何か得体の知れない違和感 強大な何かの力をあえて、オブラートに包みこんでいる様な感覚。
 もし相手が妖魔なら その持つ妖力を感じられるが、ジークからは感じられない。

 パーティは、終了 各々が帰宅する。

 真美は、両親と、執事の中本、メイド達と、帰宅する。
 見送るジーク。

 真美達を乗せたロールロイスが、大使館を出る。

 その様子を最後まで見つめていたジーク。
 周囲のだれもが、決して気付かれない程の一瞬であったが、何と表現すべきか? とてつもなく何かを企てている 不気味な笑みを浮かべた。




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