LEJENS  レジェンス

 LEJENS以外のSF小説です。
 LEJENSとは全く無関係のオリジナル小説です。
 この小説は、I LOVE YOU-COMPANY社と契約した歳 書き下ろしたサンプル用のオリジナル小説です。
 その後 新企画が思いつき オムニバス方式のシリーズ化決定 その第1弾と位置づけた作品です。
 2011年12月 契約しているI LOVE YOU-COMPANY社 主宰のManiac-1グランプリの参加、出展用に修正 投稿後 更に、思いついた事を加えた修正版 ワームホール 修正版 こちらが、本来描きたかった作品内容により近いですので、こちらをお読みいただければ幸いです。


 宇宙開発開拓シリーズ 第1弾

 ワームホール

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 いよいよこの日が来た。
 人類史上初の福音をもたらす偉大な成功、輝ける第1歩となるか、偉大なる失敗となるか?
 だれも解からない。
 人類の夢と、未来と、命運を賭けた実験であった。
 量子論と、アインシュタイン博士の特殊、一般相対性理論の組み合わせよる 亜空間跳躍ドライブ航法(3次元ワームホールを人工的に発生させ通り抜ける) つまり人類史上初のワープ航法の実験であった。
 時空間に虚無の特殊なエネルギーを加える事により穴を開け、そのトンネル つまり3次元ワームホールを抜ける事により別の場所 数光年以上先に、瞬時にワープする実験である。
 非常に微細な世界にある粒子が、古典的には乗り越える事の出来ないポテンシャル・エネルギーの障壁を 量子効果すなわち、時間とエネルギーとの不確定性原理により乗り越えてしまう(透過してしまう)現象 量子トンネル効果である。
 この量子トンネル効果を時空間に応用したのが、ワープの基本理論で、3次元ワームホールである。
 ワームホール計量(metric)として、通過可能なワームホールの一例としての方程式が以下である。
 ds2=-c2dt2+dl2+(k2+l2) (dθ2+sin2θdφ2)
 更に3次元ワームホールの応用の4次元ワームホールを利用すれば、我々の住むキューブ状に表す事の出来る3次元宇宙の連続体である4次元宇宙時空間内での別の時空間への移動 つまりタイムマシーンも可能であり 更に、無数に存在し共存する多重宇宙・・・ 我々の住む宇宙以外の異なる物理法則の支配する別宇宙への移動 0(ゼロ)次元から11次元以上存在すると言われる別次元 つまり5次元、6次元・・・ への移動も可能と言われている。
 実際 宇宙を構成する4つの力(エネルギー) 強い力、弱い力、電磁気力、重力の中で、重力だけが異常に弱く 理論値よりも16ケタも低いのは、この量子トンネル効果により 波として伝わる重力が、5次元の世界へ通り抜けている可能性が指摘されている。
 (リサ・ランドール ハーバード大教授のワープする宇宙―5次元時空の謎を解くを参考)
 光の速度では、例え10光年先でも 10年もの時間を費やしてしまう。
 光の速度でも 約30万km/sec(秒)しかない。
 我々の住む銀河系ですら直径約10万光年もある。
 この太陽系に1番近いとされる恒星のケンタウルス座アルファ星でさえ約4.37光年もの距離にある。
 光の速度で移動しても約4.37年もの歳月がかかってしまう。
 光の速度に近づいた宇宙船は、特殊相対性理論による 双子のパラドックス、もしくは時間のパラドックスの効果により 時間の流れが遅くなるのだが、実際宇宙船が光の速度に到達するのは不可能で、無限に光の速度に近づくのが限度である。
 宇宙旅行、探検 更に、新たな居住可能な惑星、衛星への植民するには、SF界 お得意のワープ航法が、必要不可欠であった。
 それには、量子トンネル効果を利用した3次元ワームホールが、最も現実的な理論であった。
 この時代 もはや人類は、危機的状況に置かれていた。
 20世紀後半から続く人口の大爆発で、新たな居住地を求め我々の住む太陽系内の居住可能な惑星、衛星への植民が行われ 地球軌道上には、多数のスペースコロニーが作られたが、資源などの問題で、もはや限界に達していた。
 この時代 まだテラフォーミング(惑星、衛星改造)のテクノロジーは、確立されておらず、月、火星、タイタンなどに植民しても 狭いドーム内での生活を強いられ、重力の問題も何ら解決の糸口を掴めずにいた。
 新たなフロンティアのコロニー(植民地惑星、衛星)を求め 太陽系外への進出の必要に迫られていた。
 人類最高英知と称せられる、科学者、工学技術者の総力を挙げたプロジェクトにより 夢のワープ機関が完成 コンピューター・シュミレーション、何度も行われ、無人実験機による予備実験を繰り返し 何度もの挫折の末 ようやく完成にこぎつけた。
 今日 これから初めての有人実験が行われる。
 その名誉ある第1号のパイロットに選ばれたのが、宇宙軍所属のエリートテストパイロット フォッカー少佐てあった。
 年齢は、28歳 ちょっとニヒルな伊達男で、プレイボーイとしても有名であり その戦績は、宇宙軍随一と自ら豪語している。
 豪胆さが売り物のフォッカー少佐もこの日ばかりは、緊張の色を隠せないでいた。
 コンピューター・シュミレーション、無人機の実験では 何ら問題が見つかっていない。
 だが、ワームホールへの突入後 ワームホール内での人体に対する影響、特に精神面での影響は、コンピューター・シュミレーション、無人機による実験ではデータ化する事が出来ない。
 有人機による実験でしか知り得ない貴重なデータである。
 何度もコンピューター・シュミレーション、無人機によるデータでは、無人機の周囲を電磁場によるバリヤーに包み込む事により 人体に対して、何ら影響を及ぼさないと言う結果が出ていた。
 しかし 虚無の世界であるワームホール内での精神に及ぼす結果は、全く未知であった。
 「どうだね フォッカー少佐 今の気分は?」
 正面下のモニター画面の1部に、上官である林崎准将の顔が映し出された。
 この計画の最高責任者でもある。
 バイザーを降ろしたヘルメット越しに、「気分は最高ですよ、それより成功時の約束 忘れていませんですよね?」
 不安感を打ち消すよう 陽気の声を上げた。
 その表情、声を聞き 林崎准将は、少し苦笑いを浮かべる。
 成功時には、多数の美女との成功パーティ・・・ いやハーレム・パーティだなあーあれは・・・ を開く約束が含まれていた。
 もちろん パーティ終了後 何人もの美女と、ベッドの上で成功の2次会を行う予定でいるのだろう・・・
 この男は、名誉や、勲章よりも そちらの方が重要だと思っている。
 この男に、敵うパイロットは、他に存在しない。 宇宙軍随一のエースパイロットである事を疑う者はだれもいない。
 問題は、無類の女好きである事。
 「英雄 色を好むか・・・」 林崎准将は、つぶやいた。

 ワープ機関が搭載されたのは、中型の航空宇宙機であった。
 これより小型の機には、虚無の特殊なエネルギーを生み出す為の動力源を設置するスペースがなかった。
 全長30mクラス デルタ(三角形)の主翼のフォルムを持つ航空戦闘機タイプ 20世紀後半から21世紀前半に使用されていたスペースシャトルに似ていた。
 コックピットを除いて、全て各種データを得る為のセンサーなどが設置されており コックピット内も非常に狭い あらゆる計器、各種データが表示されるモニター画面が所狭しと、機能的に並べられている。
 パイロットと言え 他だの機械を操作する為の部品の1つ・・・ と言わんばかりに感じられる。
 フォッカー少佐は、ある嫌な噂話を思い出されずにいられなかった。
 有人機による実験の前 モルモットを使った実験が密かに行われ その中のいくつかの実験で、信じられない結末があったと言う噂話であった。
 それは、20世紀中盤 第2次世界大戦と歴史に記される 地球規模の大きな多国間戦争で、当時アメリカ合衆国が、海軍艦艇にレーダーに対して不可視化する装置を開発中の実験で起きた悲劇と同じ結果であったと言う。
 フィラデルフィア・エクスペリメントと呼ばれる 今だに、信憑性に疑問を持たれる実験であった。
 モルモットを搭乗させ 何度か行われた超短距離ワープの極秘実験 全て成功していたが、実験機内を調べた所 実験機内に搭乗していたモルモットの体が機体に溶けてしまったり、身体の大部分が、機体の金属と同化したモルモット・・・ あらゆる惨劇が、起こっていたいたと言う・・・
 その為 電磁場を利用した バリヤーを開発 バリヤーによって、身体を守る方法が採用されたと噂されていた。
 地球を守る 磁場線による磁気シールドと同じ原理である。
 北極のN極と、南極S極による磁場線によって、太陽や、太陽系外から届く太陽風などの有害な陽子、電子からなる放射線を防いでいる。
 その為 地球の周囲には、バン・アレン帯と呼ばれる 2重構造の高密度の放射線帯が存在するのだが・・・
 "嫌な話だぜ・・・" フォッカー少佐は、頭を少し左右に振り 嫌な噂話を脳裏から振り払おうとする。
 その後 バリヤーを張ってでの実験でも モルモルッの体には、何ら異常をきたさなかったものの 何体かのモルモットに、精神の異常を示す行動があった・・・ ワームホール内の虚無の世界では 精神が耐えられず、崩壊すると噂が流れていた。
 全くの未知の領域である。
 手探りの状態であった。
 出所不明のホラー紛いの噂が絶えず流れ続けている。
 その為か? テストパイロットへの志願者は、ほとんど集まらず、ようやく集まったテストパイロット希望者も 肉体の訓練の厳しさには、耐え抜いても 特に、あらゆる想定での 厳しい精神面での訓練に耐えられず、脱落者が続出した。
 そこで白羽の矢が立ったのはフォッカー大尉(当時階級は、大尉であった) 何と言っても怖いもの知らず 小型の戦闘用航空宇宙機をオモチャの如く扱い アクロバット飛行などお手の物。
 特に、精神面のタフさはスバ抜けていた。
 「ちょっと 待って下さい・・・ この俺が・・・ いや失礼しました 小官が 何故 例の実験のテストパイロットなんですか?」 フォッカー当時大尉は、腰を上げ デスクに座る目の前の林崎准将を睨んだ。
 両手でデスクを叩く 任務、命令と言え こんな話し 到底受け入れられない。
 「フォッカー大尉 君以外 適任はいない」 毅然とした態度で、両腕を組む林崎准将。
 ここで、フォッカー少佐の過去の経歴、戦績などが読み上げられた。
 宇宙軍士官学校卒業後 実戦部隊に配備 数々の武勲と同様 上官とのトラブル 何度もの営倉入り・・・
 「どうせ 小官は、トラブルメーカーですよ・・・」 皮肉まじりフォッカー少佐は言う。
 憮然とした態度を取るフォッカー少佐を林崎准将を睨む。
 押し問答が暫く続いた後 フォッカー当時大尉は、ある条件を出した。
 成功後 例の多数の美女とのパーティの件であった。
 こんなバカげた条件であったが、林崎准将は承認した。
 この男は、どんな危険を伴う任務でも、1度決めたら とことん最後までやり抜くプロ根性を持っていた。
 名誉や 勲章よりも 美女と甘い一夜を過ごす事の方が 重要だと思っている。
 政財界のお偉い様の集まる成功祝賀パーティなど眼中にない。

 「フォッカー少佐 カウントダウン5分前」 女性オペレーターの声が響いた。
 「よう ジュンちゃん 相変わらず 巨乳から出る声 色ぽいぜー」 正面のモニター画面の1部に映し出された女性オペレーターにウインクし 口元で少しキザな笑みを浮かべる。
 女性オペレーターの名前はジュンコ 可愛い顔と、アンバランス程の巨乳を持つ。
 フォッカー少佐からは、その点で、いつもからかわれていた。
 「少佐 こう言う時は、真面目にやって下さい」 少しむくれる。
 「成功したら 必ずパーティに出席しろよ」
 「嫌です」
 「こりゃー 上官の命令が聞けんのか!!」 怒りの声とは裏腹に目が笑っている。
 「プライベートの命令は無視します」 ジュンコは、そっぽを向いた 同時に豊な巨乳が揺れる。
 両手を少し上げ フォッカー少佐は、呆れたポーズを取る。 だが顔はにやけている。
 相手のジュンコは、数少ない 今だに落とせない女の1人であった。
 「カウントダウン3分前」 怒ったジュンコの事務的 情け容赦のない声が響く。
 フォッカー少佐は、全てのスイッチを入れ 計器の最終確認を行う。
 全てグリーン 何ら問題点がない。
 エンジン音が 1段と高く鳴り響き 機体全体に電磁場を利用したバリヤーに包まれる。
 虚無の特殊なエネルギーを生み出す為の動力源のエネルギーチャージが 目標の100%を超える。
 ワープインポイントと、ワープアウポイントの座標を確認する。
 ワープインポイントは、地球軌道上から ワープアウトポイントの木星軌道上である。
 ワープアウトポイントでは、宇宙軍の艦隊が待っている。
 「カウントダウン2分前」
 フォッカー少佐は、アクセルペダルを踏み機体をゆっくり前進 宇宙空母から目標ポイントへ移動とせる。
 正面のフロントウインドウからは、漆黒の闇の世界に光輝く無数の小さな光点 星々の世界が広がる。
 いつ見ても感動的な美しさであった。
 一瞬 星々の美しさに心が奪われてしまう。
 「カウントダウン60秒前」 感動的な気持ちを打ち消すように、情け容赦のない事務的声が響く かなりご機嫌斜めの様子だ。
 フォッカー少佐は、虚無の特殊なエネルギーを生み出す為の動力源のスイッチを押す。
 バリヤーに包まれた機体の周囲の時空間が、突然揺らぎ始め 周囲の漆黒の闇の宇宙空間とは異なる 虹色の極彩色へと変化を始める。
 発生した虹色の極彩色の中心には、宇宙空間の漆黒の闇とは、明らかに別次元の漆黒ではない 全くの色すら存在しない無限の彼方に続く何も存在しない世界が続く。
 そう この世界こそ これから突入する虚無の世界。
 「カウントダウン30秒前」
 操縦桿を握るフォッカー少佐の両手に大量の汗が滲み出る。
 「10秒前 9,8・・・3.2.1.GO!!」
 GOのサインと共に、「行くぜ ベビー!!」 フォッカー少佐は、雄叫びを上げる、アクセルペダルを思い切り踏み 操縦桿を引いた 機体は、猛スピードで加速 同時に、バリヤーで包まれた機体は、周囲に発生していた虹色の極彩色の中心に向かい吸い込まれるように消え 機体が吸い込まれると同時に、周囲の時空間を揺らいでいた虹色の極彩色も消えた。
 人類の命運を掛けた実験が開始された。
 結果は・・・
 はたして、人類に未来はあるのか・・・?
 虚無の3次元ワームホールに突入した フォッカー少佐の運命は?
 その答え、数秒後に出るはずである・・・・


                                                            THE END


                                                     TOPページへ



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