LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 融合 Part7

 すぐさまリンは動いた やはり並のグロテノスとは違う 静止は命取りになる。 それに合わせ残った2体のアギラも動いた。 動くと同時 頭に生える2本のくの字型の角を発射した キラーブーメランと呼ばれ技である。 ブーメラン同様 高速で回転し目標物を切り裂く テレパシーで自由にコントロールも出来る
4本のキラーブーメランが別々の方向から同時にキャラン(浩司)を襲った。 瞬時に避けるも動きが制限される。 その隙をリンは逃さなかった。 キャラン(浩司)に再接近し至近距離での肉弾戦勝負を挑んできた。 得意のカンフー、空手などの各種武道の技が炸裂する。 リンの顔には戦闘による快楽の表情が浮かぶ、だが技を見切られていた キャラン(浩司)の身体をかする事も出来ない。
リンの表情に焦りが浮かび始めてきた。 過去こんな経験は、遥かに格上のデストロである龍(ロン)とのデモストレーションでの練習試合以外無かった。
キャラン(浩司)も表情こそ変えていないが、かなり苦しい状況であった。 どこまでが上限なのか解らないレジェンスのエネルギー 過去にない程エネルギー量を上げていた。 元々コントロール不能の驚異のエネルギーである。 エネルギー量を上げれば上げる程 よりコントロールが難しく 暴走の危険性を孕んでいた。

その隙に川村は、ヘリの操縦レバーを思い切り引いた 浩司が、3体のハイパーグロテノスを引き付け ヘリに注意をする者はだれもいない 逃げるには今が最大のチャンス ヘリは更に高度を上げ 全速で逃走を図った。
みなっちは、目にも止まらぬ速さで動く浩司を心配顔で見つめていた 今ここで留まっていたら浩司の邪魔になるのは解っている。 早く安全と思われる場所まで避難し 浩司が自由に戦える事が重要であった。
だが自分だけが逃げるのに、割り切れない思いがあった。
"こーちゃん 早く無事に戻ってきて・・・" みなっちの今の切なる思いである。

キャラン(浩司)は、ヘリの逃走を瞬時に把握した。 リンの猛烈な攻撃、それを援護する2体のアギラ だが瞬時攻撃を避ける 避けるだけで、こちらからの反撃に出ようとしなかった。 みなっちの乗るヘリの逃走の時間稼ぎが目的だけである。 
ヘリが視界から遠く離れていった。 "そろそろ潮時か・・・" ふっとそう思った。
"多分 飛行能力のあるグロテノスは、増援が無いところを見るとここにいる3体だろう・・・ 飛行能力さえ奪えば・・・" そう考えた。
僅かな隙に、2体のアギラの翅をフィンガービームで焼き切った。 2体のアギラは、飛行能力を失い海へと落下する。
残るは、リン1体となった。
リンの凄まじい攻撃もエネルギー量を上げているキャランにとっては、対応出来るスローな動きでしかない。
リンの飛行を可能にしている2枚の翅を焼き切る事も考えた しかしリンは女である それも見たこともない世紀の絶世の美女だ。 翅とは言え傷つける事にためらいがあった。 
2体のアギラの落下を見てリンは、接近戦による肉弾戦を諦めた。 全ての攻撃は、瞬時に避けられまるでヒットしない 少し距離を置くと大技の1つセクシービームを発射した 豊な両胸からパルス状の強力なエネルギービームがキャラン(浩司)を襲う。
瞬時避ける セクシービームは、何もない空間を空しく切り裂いていく 移動地点を把握すると 今度は両腕のジェノサイドニードルを発射した しかし結果は同じであった もうそこにはキャラン(浩司)の姿はない。
何度も狙いを付けキャラン(浩司)の動きを予測し 大技のセクシービームやジェノサイドニードルを発射したが、結果は同じであった。
特に、セクシービームは、大技の為 エネルギーチャージにある程度時間を要した。
元々大量破壊用の技である。 先程の失敗体のグロテノスに対して使ったように、エネルギー量をコントロールして使用していなかった。 この場合なら それ程エネルギーチャージに時間を要しない。
相手にある程度のダメージを与えて、最後の切り札として、ピンポイントもしくは、多人数に対して、一気に片付ける時などに、使うべき技である。
しかしキャラン(浩司)の動きが早く、得意の接近戦による武道、カンフーの技も見切られ、避けられ、苦し紛れに、MAXエネルギーまで上げて使用していた。 その分 エネルギーチャージに時間を要し、簡単に逃げられてしまう。
「もう勝負はついている」 リンの目の前にキャラン(浩司)が姿を瞬時に現れた。
「後追いはしないから 逃げろ・・・」 キャラン(浩司)は、両腕を組んだ。 これ以上戦っても無駄であるのは、明白であった。
レベルが違い過ぎる。 無益な戦闘を避けたい それに、レジェンスのエネルギーの変動が激しくなり始めた いつ暴走を起すとも限らない。
「後追いをしないから逃げろだと・・・よくもそんなセリフをこの私に・・・ 私をそこまで愚劣する気か・・・まだ勝負はついていない!!」 両目を吊り上げいきり立つリン 全身から激しい怒りの炎が燃え上がる。
力勝負まで負けを認めたくなかった。
「それだけの美貌 こんな下らない事に使わず もっと社会の為 有効的に使ったらどうだ? 銀幕(ムービー)スターにでもなれば、世界を虜にできるぜ」 冷ややかな目で、キャラン(浩司)は、リンを見つめた。
「キャラン(浩司)・・・貴様に・・・貴様に私の気持ちが解ってたまるかー!!」 リンは猛烈にキャラン(浩司)に襲い掛かった またも接近戦に肉弾勝負を挑んできた。
「たいしていい男でもないくせに、あんなたかが小娘の彼女にいる貴様に私の気持ちの何が解ると言うのか!!」
リンの脳裏には今までの人生が、フラッシュバックしデジャブー現象のように流れていた。
リンは、中学、高校時代と背が高いだけで、かなりやせて華奢な体型であった。 今とは違いルックスもごく平凡 周囲の同級生に合わせスカートは、ミニを穿いていたが、背が高いと言う以外全く目立った特徴もなく 物事に対して、消極的で内向的な性格も災いし、どちらかと言うと地味で影の薄い希薄な存在であった。 もし外交的で、物事に対して、積極的な性格であったならば、その後の人生は、変わっていたかも知れない・・・。
当然、彼氏なと゛出来るはずもない。 リンに声を掛ける男性など全くなく、リンの方からなけなしの勇気を振り絞って、ラブレターなどでアプローチをかけても無視されるだけであった。
高校卒業後、ストレートで平凡な4年生大学へ進学したが、それも女子大 よく合コンに誘われ参加したが、常に他の参加者の為の引き立て役 もしくは、数合わせの為だけの存在であった。
合コンの場でも参加している男性から声も掛けらた事がなく、リンの方から勇気を振り絞って声を掛けても簡単にあしらわれてしまう。
笑顔いっぱいで、参加している男性と楽しい会話が弾み きらびやかに光輝く友人達 その姿を見ながら1人目立たないように小さくなり周囲を願望の眼差しで見つめる以外何もする事がない惨めな自分自身。 一緒に参加している友人達に、強いコンプレックスを感じていた。
"いつの日か美しくなって周囲全てを見返してやる・・・" 内心強い気持ちが積み重なっていった 美に対する強烈な想いが、コンプレックスに対する裏返しであり 力こそが全てと言う気持ちを募らせていった。
大学3年生時のある日 たまたま大学内に設置しているPC(パソコン)でネットドライブしていた時 あるサイト(ホームページ)内の記事が目に止まった。 中国のある研究所で、どんな女性でも見違えるように美しくなると言う 画期的な方法が考案され 被験者募集中 と言う内容であった。
それは、女性グロテノスの開発を進めていた龍(ロン)の実験用人材集めの手段の1つであった。
何も知らないリンは、その話に飛びついた。 アルバイトで稼いぎ貯めていたお金をはたき サイト(ホームページ)に記されていた住所を頼りに、中国のその研究時へ向かった。
幸運にも被験者に選ばれた 当初は、主に平凡な健康チェックと今まで歩んできた人生に対する心理面のカウンセリングが中心であった。
それこそが龍(ロン)の狙いであった。 健康チェックで採取した血液からグロテノス向けの適性DNAの所有者かを判別し、心理面では、心に深い心理的トラウマ(精神的外傷)を持ち、強烈なコンプレックスを持つ女性を探していたのだ。
こう言うタイプの女性は、コンプレックスを上手に取り除く事で、取り除いた相手に対して、絶対的忠誠心が生まれるケースが多々あり、テレパシーによる精神支配をしなくとも 絶対的忠誠心を得る事が出来るからである。
特に、リンの場合 DNAの適性率が際立っていた 過去にない高い数値を記録した。 まだ研究開発段階であったハイパーグロテノス向けであった事 そして、心に深い心理的トラウマ(精神的外傷)を持ち、強烈なコンプレックスを持っていた事 まさに龍(ロン)の望みうる最高の人材であった。
ポットの中での治療いや改造とその後 リハビリ及び戦闘訓練の日々が続いた。 まだハイパータイプの改造が確立していない為 当初は、ノーマル(通常)タイプのグロテノス ビューカーへの改造であった。
ポットでの改造受けるたび リンは見違える程美しく、そしてより強くなっていた。
アポリスの計画を少しずつ知らされ 当初は戸惑いも隠せなかったが、新たな人類の種への進化 改造を受ける事により美しく、より強くなっていく自分自身 リンの望んでいた物が現実になっていく それらを与えてくれた龍(ロン)への絶対的忠誠心へとなっていった。
今まで辛い日々を送ってきた自分自身への決別 今では、自分自身が望む男性を手に入れる事の出来る 最高の美貌と完璧なスタイルに自信を深めていった。
最後に完成したばかりのハイパータイプへの改造を率先して受け より美しく、より強くなり 当初の友人達への見返す復讐など取るに足りないものになっていった。 全てを与えてくれた龍(ロン)の野望を達成させる為の絶対的忠誠心と 達成時に、得る事が出来る リンへの美しさと強さに対する あらゆる絶賛、賞賛に思い描くようになっていった。
歴史上最高の美貌と完璧なスタイル、強さを合わせ持つ歴史上史上最強の美女リン これが今のリンの最大目標であった。
しかしキャラン(浩司)相手に、今までとまるで違っていた。
旧人類(ホモサピエンス サピエンス)でありながら、グロテノスを超える 戦闘能力、スピード、パワーを誇り、旧人類(ホモサピエンス サピエンス)では、不可能な強力なエネルギー弾まで使う 体型ですら 胸板が厚く一見スホーツマン風に見えるが、実は平凡な中肉体型で、筋肉隆々のボディビルダー風、マッチョでもなければ、均整が取れ引き締まった鋼のような体型のスポーツマンタイプでもない、ルックスにいたっても 極平凡 並より少しマシな程度である。 性格にいたっては、問題外(実はこれが原因で、キャラン(浩司)は、恋人のみなっち以外 他の女性に全く相手にされない リンはこの時点 全く知らなかった。 キャラン(浩司)の壊滅的性格・・・) 変に皮肉しか言わない。 そんなレベルの低い男がまるで、リンを相手にしない どんなに甘く、切なく、艶やかな色目を使っても まるで無視。
生まれ変わってから初めての経験であった。 過去のトラウマ(精神的外傷)の日々が蘇り、最大の屈辱であった。
落とすか、殺すか、どちらかでなければ、気が済まなかった。
そんな時だったリンの身体に異変が起こり始めた。
リンは、接近戦をあきらめ少し距離を置くと、両肩で大きく息をし始め 全身から大量の汗が噴出し始めた。

「いかん・・・」 モニター画面を注視していた 龍(ロン)は叫んだ。
リンは、グロテノスの能力を最大限以上に引き上げた ハイパーグロテノスである。 戦闘能力の大幅向上は、エネルギー消費量と比例していた。 つまり膨大なエネルギーを利用する為 消費量が異常に早い、グロテノス、デストロなどのネクストノイドは、人間の本来持つ生体エネルギーを遥かに超えるエネルギーを利用して戦闘を行っている。 そのエネルギーを供給しているのが、頭の額にあるネクスタルである。
ネクスタルは、高エネルギー状態の多重宇宙の1つと常時繋がっており そこからエネルギーを得ている。 しかしネクタルの種類により供給されるエネルギー量の上限が決まっている。
膨大なエネルギーを使用するハイパーグロテノスは、使用量が供給量を大幅に上回る。
ハイパーグロテノスは、短期決戦型の一撃必殺、大量破壊向けである 通常 1回の変身 戦闘後 24時間以上人間の姿のままエネルギーの回復を待たなければならない。
だが龍(ロン)を始めとする その配下の科学者は、そのことをまだ知らなかった。 ギルからハイパーグロテノスの改造データーを得ていたが、この時点 ギルは、ハイパーグロテノスの開発は、まだポット内の試作段階であり 完成体は存在せず 各種実験データは無い。
龍(ロン)は独自に、ハイパーグロテノスを完成させていた。 ギルは、アピリムの勅命により ある物を取り出す事に重点を置き ハイパーグロテノスの研究、開発を後回しにしていた為であった。
リンは、先程 デモンストレーションで、1度変身 戦闘を行い エネルギー使用量の大きい大技を使用しいた。 それに、今キャラン(浩司)との戦闘でも、大技を何度も使用している。 もはやエネルギー切れ直前であった。

「わしも出撃する。 直接戦闘指揮を執る。」 龍(ロン)は立ち上がると、そのまま屋上直行のエレベーターへと向かった。
"このままでは、リンまで危ない" 龍(ロン)にとって、リンは虎の子の存在であった。 リンは他だのハイパーグロテノスではない、ギルですら知らない 龍(ロン)の配下の科学者達が極秘裏に開発したある秘密を施していた。
今 この時点で、リンを失うのは得策ではない。
リンまで失っては、龍(ロン)の大いなる野望に支障をきたし大幅な後退を余儀なくされる。
"まさか・・・" こんなにエネルギーの消費量が早いとは思ってもいなかった。
龍(ロン)を始めとするデストロ、ノーマルタイプのグロテノスは、供給量と消費量がほぼ同じで、理論上長時間の戦闘も可能であった。
もはやまともに対決出来るのは、龍(ロン)自身しかいない エレベーターに乗り込み 屋上へのボタンを押す。 その時ある事に気づいた。 "何故? キャラン(浩司)のやつ 止めを刺さぬ・・・ チャンスは何度てもでもあった・・・"
戦闘とは、殺し合いである。 止めを刺さなければ 自分が止めを刺される 自分自身が生き延びる為の必須である。
この基地での戦闘で、キャラン(浩司)は、変身前の兵士対しては、気絶させるだけ 変身後のグロテノスに対しても 戦闘不能の状態で、止めを刺していない。
修復などでまた次ぎの戦闘に使えるレベルの損害でしかない。
"大甘か・・・" 戦闘とは、綺麗ごとで片付けられる世界ではない。 生か死どちらかだ 相手を殺し 自分自身が、生き延びなければならない。
キャラン(浩司)は、正当防衛とは言え 何体ものグロテノスを殺してしまった事を悔いていた。 もう2度と殺しはしないと固く誓っていた。
元来反戦主義者で、戦争などを極度に嫌っていた。 非情の掟が支配する世界には不向きなタイプである。
非情の掟が支配する戦闘で、非情に徹し切れない 精神的に脆く、弱く、甘い・・・ その欠点を龍(ロン)は見抜いた。
どんなにすごい力を持っていても、精神的に軟弱で、脆い構造の持ち主は、必ず自滅し滅ぶ。
非情の掟 修羅の世界の鉄則である。
屋上へ到着すると 龍(ロン)は、変身もしないまま そのまま上空へと高速で、飛行を開始した。

突然 キャラン(浩司)に向かって 複数の強力なエネルギービームが 螺旋状渦巻き 1つの強力のエネルギービームとなって襲い掛かった。
慌ててエネルギービームを避けた。
A-13ポイントに集結した 長距離砲を持つグロテノスがキャラン(浩司)に向かって 一斉射撃を開始した。
その第一波である。
間を置かず、別の方向から 超強力な火球のエネルギー弾が襲った。
キャラン(浩司)は、避け切れないと思い 左手をエネルギー弾の方向へ突き出し 強力なバリヤーを左手正面にピンポイント張った。
バリヤーに、エネルギー弾が衝突 すさまじいソニックブーム(衝撃波)が発生 今までのグロテノス、ハイパーグロテノスのエネルギー弾とは、ケタ違いの威力であった。 先程の複数のエネルギービームより更に強力である。
ソニックブーム(衝撃波)に押され キャラン(浩司)は、少々弾き飛ばされた。
強力なエネルギー弾の発射方向を見ると、そこには、ホバーリング(空中停止)状態で、ちょうどへその前で、右手を下、左手を上に向け何らかの球体を包むような構えで立つ 龍(ロン)がいた。
「よくぞ バリヤーとは言え、このわしのファイヤーボールを防ぐとは・・・ 大したものだなあー だがこの次ぎは、どうかな?」
「ん・・・」 気合を入れる言葉を発した。 龍(ロン)の両手の間に、赤い光を放つエネルギーが、1つの火球となって発生した。
「はっ!!」 更に気合を込め キャラン(浩司)目掛け更に威力を上げたファイヤーボールを発射した。
キャラン(浩司)も バリャーでは防げないと思い 反撃に出た 右腕を龍(ロン)のファイヤーボールへ向け マグナムアタックを発射した。 エネルギー量などコントロールしてる余裕などない。
2つの強力なエネルギー弾は、中間点で激突 大爆発を起した。 爆風を伴う前回より更にすさまじいソニックブーム(衝撃波)が発生。
「いかん・・・」 龍(ロン)は、高速で移動 ヨロヨロとホバーリング(空中停止)状態で、2人の戦闘を見ていたリンの前に立った。
すぐさま球体のバリヤーを張りリンも包み込む。
キャラン(浩司)も顔の前で両腕をクロスさせ、球体のバリヤーを張った。
強力なエネルギーを伴うソニックブーム(衝撃波)が、キャラン(浩司)とリンを包んだ龍(ロン)のバリヤーを飲み込んだ。
「何てやっだ・・・」 キャラン(浩司)も龍(ロン)も強力なエネルギーを伴うソニックブーム(衝撃波)に耐えながら今戦っている相手に対して、同じ思いであった。
"さすがにデストロ・・・将軍と呼ばれる事だけあるぜ・・・ 変身前でこのエネルギー 変身後 更にエネルギーを上げられるネクストノイド それも将軍と呼ばれる ケタ違いの戦闘力をもつデストロ・・・ 半端な相手ではないぜ・・・" キャラン(浩司)は、龍(ロン)の強さを認めた。
"まだこんなエネルギーの余力を残していたのか・・・? あやつどこまで、能力を隠しているんだ・・・" 龍(ロン)もまた同様 キャラン(浩司)の底知れぬポテンシャルの高さ、まだ能力の限界を見せないキャラン(浩司)に驚異を感じていた。
長時間の戦闘状態で、大技のエネルギー弾を何度も撃っている そしてエネルギーの消費量の多いバリヤーも何度もだ 目立った供給元も見当たらない 普通ならば、エネルギー切れである。
それに、"変身前とは言え このわしのファイヤーボールと同じ威力のエネルギー弾を撃つとは・・・"
同時に、先程思った 非情に徹し切れない精神面の軟弱さの共存である。
二律背反(アンビパレンツ)・・・ 2つの正反対の異なる事を同時に行おうとするパラドックス(矛盾)
これ程の能力、エネルギーを持ちながら、戦闘に関しては、ずぶのど素人 相手に対し止(とど)めを刺そうとしない。
龍(ロン)には、キャラン(浩司)が、理解出来なかった。
強力なエネルギーを伴うソニックブーム(衝撃波)が、収まり始めた。
同時に、次の戦闘に移るためキャラン(浩司)も龍(ロン)もバリヤーを解除した。
A-13ポイントからまたも強力なエネルギービームが、螺旋状渦巻きキャラン(浩司)を襲った。
慌ててる避けるも、その一瞬の隙を龍(ロン)は、逃さなかった。
瞬時に間合いを詰め 至近距離から昇竜波と呼ばれる技をキャラン(浩司)の腹部に叩き込んだ。
余りのスピードに、戦闘モード時中 相手の動きがスローにしか見えないキャラン(浩司)も目線が追いつけないスピードであった。
この瞬間 レジェンスからのエネルギーが、急激に低下した為であったが、低下しなければ、ギリギりで避け切れたはず・・・
レジェンスのエネルギーの気まぐれである。 融合者自身 エネルギー量をコントロール出来ない。 常に不安定な状態であった。
昇竜波とは、手の平の前に強力なエネルギー球を作り出し 直接相手に叩き込む技である。
直撃・・・いや瞬時の差でレジェンスの防衛機能が働き 身体表面数cmにバリヤーが張られた。 しかし強力なエネルギーを伴う 威力までは、全て吸収出来ず、キャラン(浩司)は、そのまま大きく弾き飛ばされた。
ホバーリング(空中停止)状態を保って何とか停止したものの 頭、両肩を力なくだらっと垂らした状態であった。
意識はかなりもうろうしていた。 今まで喰らった事のない強力なエネルギーの直撃である。
瞬時にレジェンスの防衛機能のバリヤーで防げなければ、跡形も無くきれいに消し飛んでいただろう。
だが、ダメージも相当なものであった。 内臓がかなりやられているのがわかる。
大きく息をする事も激痛を伴い出来ない。 何とかホバーリング(空中停止)状態を保っているだけである。 いつ墜落してもおかしくない状態であった。 誰の目にもエネルギー切れ寸前の状態のように見える。
「よくぞ このわしの昇竜波に耐えたなあー・・・ 褒めてやりたいところだが、ここまでだ、キャラン(浩司) 貴様には、もはや戦う力などの残っていまい」 龍(ロン)は、勝利を確信した。
キャラン(浩司)は、力を振り絞り右手人差し指を龍(ロン)に向けた。 フインガービームである。 もうろうとした意識の中で、龍(ロン)の頭の額にあるエメラルドに輝くネクスタルに向け 一条の光が放たれた。
しかし龍(ロン)の額に届くかなり手前で、エネルギーは四散し消えた。
"ここまでか・・・"  誰の目にも最後の悪あがきに写った。 レジェンスからの無限のエネルキーが、身体を駆け巡らない。
最低レベルで、何とかホバーリング(空中停止)を保っているだけで、意思でエネルギーを上げようとしてもまるで無反応で上がらない。
"さすがーデストロ 将軍と呼ばれるだけの事はあるなあー" グロテノス、ハイパーグロテノスなどの比較にならない強さであった。 それもまだ変身前である。
力の差が歴然としているように感じられた。
「最後に、もう1度だけ聞く わしの部下になれ そうすれば命は助けてやる ここまで、わしを手こずらせた褒美じゃ 部下になれば、NO2の地位を含む提示した全ての条件 貴様にやってもよいぞ。 どうじゃ悪くない話じゃろう」
龍(ロン)の最後通告である。
「答えは 同じ ノーだ」 もうろうする意識の中で、キャラン(浩司)の返事であった。
「バカなやつだ 仕方あるまい なら今ここで死んでもらおう」
龍(ロン)は、両腕を前方へ突き出し両手首を立てた 「ん」気合を入れると手の前にエネルギーの集中を始めた。 手の前には、巨大なエネルギーの球体が発生した。
サラマンダーキャノン(火龍弾) 龍(ロン) 最大の必殺技の1つである。 自由に方向をコントロール出来 エネルギー球に取り込まれた物体は、瞬時消滅する。
「とどめだ、キャラン(浩司)は、このわしをてこずらせた褒美じゃ 楽にあの世へ送ってやる」
その時だった。 龍(ロン)にテレパシーが届いた。 基地の兵士の1人からである。
「龍(ロン)様 大変です」
「今 大事なところだ 後にしろ」 龍(ロン)は、撃つのをためらった。
「基地内にいた 科学者、技術者達が、一斉に反乱を起しました」
「さっさそと鎮圧すればよかろう」
「それが、1部の科学者が、反物質反応炉にアクセスし、暴走を起させました 現在限界点を突破 このままでは・・・」
「反物質反応炉が暴走を起しただと・・・」 龍(ロン)は、サラマンダーキャノン(火龍弾)のエネルギーチャージを解いた。 巨大なエネルギーは、瞬時に消滅する。
「現在 正物質と反物質の遮断を行っていますが、このままでは基地が・・・ わあー・・・」
テレパシーは消えた 同時に島全体が巨大な地震に襲われた如く 大きく揺れ始め 海面も大きくざわめき始める。
「いかん・・・」 龍(ロン)は、後ろで何とかホバーリング(空中停止)状態を保っているリンの前へ行くと、最大エネルギーで球体のバリヤーを張りリンも包み込んだ。
「まだ生きている・・・ 龍(ロン)のやつ 何故とどめを刺さない・・・」 キャラン(浩司)は、もうろうとした意識のなかで、今何が起こっているのかさえ解らない状態であった。 
その時だった キャラン(浩司)の前方にある 島全体が、何の前触れもなく目も眩むばかりの怪光を発したかと思うと、突然大爆発を起した。
巨大な爆発エネルギーを伴う、光、熱エネルギーが球体状に大きく膨らみ始めた。
瞬時に、キャラン(浩司)及び リンを最大級バリヤーに包み込んだ龍(ロン)をも飲み込んだ。
ここでもレジェンスの防衛機能が働いた。 巨大な爆発エネルギーを伴う、光、熱エネルギーが、キャラン(浩司)に届く寸前 球体のバリヤーがキャラン(浩司)を包み込んだ。 先程まで、最低限しか供給されていなかったエネルギー量が急上昇したのだ。
意思ではエネルギー量をコントロール出来ず、常に、エネルギー量が大きく変動するレジェンスのエネルギーである。
しかし巨大な爆発エネルギーを伴う強力なソニックブーム(衝撃波)のエネルギーまで耐え切れず、キャラン(浩司)、リンを最大級バリヤーに包み込んだ龍(ロン)もホバーリング(空中停止)状態を維持する事が出来ない。 内部の至る所で発生しているエネルギーの渦巻きに翻弄される。
龍(ロン)は、リンの左腕を自分の首に回した リンは限界であった。 その瞬間リンの美しい翅は、背に格納されると意識を失った。
龍(ロン)は、早くここから脱出しようと飛行を開始するが、荒れ狂うエネルギー渦が至る所で発生し思うように飛行出来ない。
その時 龍(ロン)は、同じように荒れ狂うエネルギー渦に、翻弄されるキャラン(浩司)の姿を見つけた。
この爆風で、きれいに消し飛んだと思っていた。
キャラン(浩司)の周囲に球体のバリヤーが、張られている事を見抜くと 「なんてやつだ、まだこれだけのエネルギーを残していたのか?」 バリヤーは、膨大なエネルギーを必要としている 先程まで、エネルギー切れ寸前であったのに、いつここまで回復したのか?
しかしキャラン(浩司)は、両腕、頭を下に垂らし意識を失っている様子であった。
とどめを刺す絶好のチャンスのように思えたが、バリヤーを解いて、攻撃に移れる状態ではない。
あっと言う間に、キャラン(浩司)が、大きくエネルギー渦に流された。
流されている途中 キャラン(浩司)の姿は、突然 目にも止まらぬ、猛烈な速度で、忽然と姿を消した。
「テレポーテーション・・・? まさか・・・? そんなバカな!!」 唖然とその光景を見送った。 驚きの表情を隠せない。 テレポーションは、龍(ロン)を始めとする8大将軍 デストロでさえ不可能な特殊能力である。 龍(ロン)の知る限り この世でたった1人しかいない 龍(ロン)を始めとする8大将軍をも総括しその頂点に君臨するあいつのみ・・・。
"まさかあいつにそんな特殊能力があるはずがない・・・" もしそんな特殊能力があれば、変身後の龍(ロン)でさえまともに戦う事が出来ない膨大で無尽蔵に近いと思えるようなエネルギーを必要としていた。
もしそうならば、龍(ロン)は、変身して最大エネルギーでの戦いを余儀なくされたはず。
しかし現実には、てこずったとは言え変身前で後1歩のところまで追い詰めていた。
龍(ロン)は、レジェンスについて、何も知らなかった。 確かに、レジェンスと融合しているキャラン(浩司)には、テレポーテーション能力を持ち合わせている。 しかし龍(ロン)の考えているテレポーテーションとは、違っていた。
龍(ロン)は、膨大なエネルギーを1点集中による、3次元ワームホールを発生させ テレポーテションした思っていたが、キャラン(浩司)の場合 バリヤーにより1つの量子状態を生み出し エネルギー、次元、時空などの壁を通り抜ける 量子論のトンネル効果を利用していた。 
キャラン(浩司は、この能力を この時点まで1度しか使っていない。 色々な面で、かなりの不安感を持っていた。
よって、テレポーテーションしたのではなく、レジェンスの無限のエネルギーによる 超高速移動したに過ぎなかった。
キャラン(浩司)自身さえ 気づいていなかったが、レジェンスと融合しているキャラン(浩司)は、光速を超えるスピードを出す事も出来る。
意識を失いかけていたキャラン(浩司)は、恋人のみなっちの事を強く思っていた みなっちの気配を感じる方向へ 瞬時にスピードを上げ移動した過ぎなかった。 しかしそのスピードが余りにも速すぎた為 光速にこそ達していないが、龍(ロン)の目には、テレポーテーションしたように写ったに過ぎない。
ようやく爆風が収まった。 かなり遠くまで飛ばされた龍(ロン)達である。
基地のある島ごと吹き飛ぶ様子を見ていた龍(ロン)であった。 もはや基地は、島ごと吹き飛び何も残っていない。
日本における最大拠点を失ってしまった。
今後 日本での活動が、大幅な後退を余儀なくされてしまった。 大きな損失である。 今後の計画を大幅に修正せざるえない。
しかし 今 それよりも更に重要な問題があった。
リンである リンは、龍(ロン)にとって貴重な存在であった。 並のハイパーグロテノスと違うある秘密を施してあった。
今リンを失う理由には行かない。 龍(ロン)の大いなる野望に必要不可欠な存在である。
リンは、完全にエネルギー切れの状態であった このままでは体内のナノマシーンが、活動を停止し自己崩壊が起こる。
一刻の猶予もなかった。
早く基地へ戻り ポット内でのエネルギーの補給と修復が必要であった。
龍(ロン)は、バリヤーのエネルギー量を最低レベルに下げると、リンを抱えたまま 最高速で飛行を開始した。
目指す目的地は、龍(ロン)の東アジア方面 最大の拠点のある中国にある基地であった。

その頃 みなっちを乗せ川村が操縦するヘリが、本土上空に到着した。 川村は、慎重に着陸ポイントを探している。
追手は来ない とりあえず逃げ切れたと思った。
海岸線よりかなり内陸部に入った場所に、小高い場所を発見した。 平坦で広い空き地がある。 かなり前に廃校になり今だれも使われなくなった田舎の学校のグランドであった。
「前方にあるあそこに着陸しまっせ」 川村は、その方向を指差しながら後ろに座るみなっちに言った。
みなっちは、ひたすら浩司の無事を祈っていた。
やはり浩司1人を残し 逃げてきた事に対する自責の念があった。
ヘリは、無事 廃校となったグランドに着陸した。
ヘリのエンジンを切り2人はヘリを降りた。
グランドの外にある道へ向かって歩き出した。 何となく今逃げてきた方向を見つめた。 空は、茜色に染まり始め 太陽は水平線の彼方へ沈み始めている。
突然 何の前兆も無く 目も眩むばかりの怪光が発したかと思うと 巨大なきのこ雲が湧き上がった。
「いかん・・・」 川村は、何が起こったか瞬時に理解した。
みなっちの右腕をひっ張り ある方向へ向かって走り出した。 そこは盛り土が固められ小高い山となっており 廃校になる以前 遊戯具など固定されていた場所であった。
そこに身体を隠すようにすると、みなっちに向かって叫んだ。 「早く伏せて!」
みなっちは、何が起ころうとしているのか? 理解出来なかった。 他だ 何度も危険な場面に遭遇した経験が、危機的状況であるを知らせている。 言われるがままに、盛り土が固められ小高い山かげに身体を伏せた。
同時 轟音を響かせ爆風を伴う強力なソニックブーム(衝撃波)が襲ってきた。
爆風を伴う 強力なソニックブーム(衝撃波)は、周囲にある木々を大きく揺らし あるいはなぎ倒し荒れ狂った。
みなっちは、思わず大きな悲鳴を上げた。
時間にして、数分程度であっただろう しかし永遠の時間のように感じられた。
ようやく収まり始めた。
爆心地の孤島からかなり遠く数10km以上は離れていた為 威力は大幅に減少していた。 それに、盛り土が固められ小高い山影に身を伏せた為 直撃による被害を避けられた。
もし川村が気づくのが遅れ 廃校のグランドにいたならば、爆風を伴う 強力なソニックブーム(衝撃波)に飲み込まれ どうなっていたか? 想像すら出来なかった。
周囲は、巻き上がった砂煙などで、視界がかなり悪い。
まるで、大爆撃を受けた後のように、あらゆる物が壊れ、倒れ散乱している。
2人が乗って来たヘリも倒れ大きく破損。 他だし燃料がほとんど残ってなかったのが幸いし 爆発、炎上は避けられた。
「どうなっているの?」 みなっちは、周囲を注意深く観察し始め川村に聞いた。
「わからん・・・? 他だ 爆心方向が、逃げてきた基地のある孤島の方向だ それに・・・」 川村には、思い当たる可能性があった。 それは、仕掛けてきた爆弾であった。 しかし何ヶ所に仕掛けた爆弾は、逃げる時の為の陽動用で、威力はたかがしれている。 それに、基地の動力源など、想像を絶する大被害の出る場所は慎重に外してあった。
仕掛けてきた爆弾の可能性は、ほとんどゼロに等しい。
その時だった。 「あっ・・・」 みなっちは声を上げある方向を指差した。
その指差した方向 グランドの上に、何か? 人影みたいのものが倒れている。
みなっちには、それがだれなのか? すぐに気づいた。 「こーちゃん・・・」 思わず声を上げ走り出した。
川村も後を追う。
先に着いたみなっちが、うつぶせに倒れている人の顔を見た 「こーちゃん 無事・・・」 間違いなく浩司であった。 しかしかなり様子が変である。 まるで死人のように、顔色が鉛色で生気がない。 それに意識を失っている。
すぐ後から着た川村に、みなっちは言った。 「ゆっくり慎重に身体を仰向けに・・・」
浩司の身体を仰向けにさせると、みなっちは、浩司の身体を丹念に調べ始めた。
「息はある まだ生きている」 みなっちは小さくつぶやいた。 他だし意識は無い。
「何か、わかるのですかい?」 川村は聞いた。
みなっちは、一般開業医を営む家庭の長女として生まれた。 幼い頃から医師である父親から初歩、基本的な応急救命措置を叩き込まれ 緊急時、災害時における救急救命士の資格を持つ ある程度 医学に対する知識、処置を心得ている。
「内臓がひどくやられている このままでは・・・」 みなっちは、浩司の状態を的確に見抜いた。
しかしここは、廃校となった学校のグランド 近く小さな集落があったが、先程の爆風を伴う 強力なソニックブーム(衝撃波)で、壊滅的打撃を受けているはず ヘリも大きく破損し使い物にならない。
時間的余裕はなかった。 早く医療設備の整った医療機関で、適切な処置を施さなければならない状態であった。
その時だった 海の方向から大きな地鳴りが、こちらに向かって響き渡ると同時に地面が下から突き上げるよう大きく揺れ始めた。
「きゃー・・・!!」 みなっちは大きな悲鳴を上げると共に浩司の上に覆いかぶさった。 浩司を捨て身で守ろうとした。
更に川村も2人の上に覆いかぶさり 自分自身を防御壁にした。
震度7の猛烈な激震であった。 大地は大きく揺れ グランドの数ヶ所で亀裂が走り地割れが起きる。
同時に海から巨大な津波が襲ってきた。
信じられない出来事であった。 通常 巨大地震の後 ある程度タイムラグ(時間差)をおいて津波が襲ってくる。
同時に襲うなど、まず有り得ない。
永遠に続くかのように思えた 地獄のような時間が数分程続いた。
揺れが収まった 小高い丘の上だったのが幸いし 津波による被害は避けられた。
まず川村が起き上がった その後すぐに みなっちも起き上がる
「どうしょう・・・」 みなっちはつぶやきながら周囲を見渡した。 1階平屋建ての廃校の校舎を押しつぶされ グランドは、数ヶ所亀裂が走り 1部大きく隆起しずれている。 亀裂に飲み込まれなかったのが、奇跡に等しい状態であった。
それよりも早く 浩司を医療設備の整った医療機関で、適切な処置を施さなければならない しかしどのようにして連れて行くのか? 今下手に動かす事も出来ない。
気長に救助隊を待っている余裕などない。
「仕方ありませんねー 最後の手段を取らせていただきます」 おもむろに川村は言った。
まさか 浩司をここに置き去りにして見殺しするのかと思ったが、違った。
左腕にはめてあった腕時計の小さなボタンの1つを押すと そこから小さく細い金属棒が延びた 2つ折式携帯電話のように本体が開く みなっちには、理解出来なかったが、ヤーナの1部の人間だけに、特別に寄与された現代科学を遥かに凌駕する超高性能通信機であった。 ある特定の信号を発信すれば、こちらの位置を知らせる事も出来る。 圧倒的 テクノロジー、戦力差などがありながらヤーナが、しぶとく生き残ってきたのは、ヤーナもまたエルの残した スーパーテクノロジーの1部を手に入れて利用していた為であった。 後に、浩司とみなっちは、それを知る事となる。
川村は、腕時計に向かって、何か小声で話し始めた。 その言語は、地球上のどの言語に属さない不思議な言語であった。
多分 秘密の暗号だと みなっちは思った。
「今 仲間に救助を求めました。 こちらに向かっているそうです。 しばらくすれば、救助隊が来ます」

ヘリは、大きな巨大貨物船のヘリポートに着陸した。 周囲は暗く夜となっていた。
車輪の付いたタンカの上に乗せられた浩司が、ヘリから降ろされる 点滴を打ち、酸素マスクが付けられている。
その傍らに、みなっちと川村とヘリにいた医師もいる。
救助を求めて、数10分後に、救助隊の乗った大型ヘリが1機現れた。
機体表面には、C宗教のシンボルマークである大きな十字が描かれている。
地割れを起し 1部隆起しているグランドへの着陸は、困難を極めたが、神業と思える操縦テクニックで無事に着陸に成功 タンカに乗せた浩司と共に、みなっちと川村はヘリに乗り込んだ。
ヘリが到着するまでの間 みなっちは、自分自身が出来る限りの応急措置を施した。
いつまた大きな余震、津波が押し寄せてくるかわからない。 その恐怖と戦いながらみなっちは、やれるだけの事をした。
ヘリの中では、すぐに浩司の左腕に点滴注射が打たれ、口には酸素マスクが付けられる。
輸送用の大型ヘリなので、応急医療器具以外何も無い。
一緒に乗って来た医師は、簡単な往診を始めた。
医師は、みなっちの施した応急措置に驚いた。 あの状況下 何もない場所で、ここまでの応急措置は、かなりの専門的知識、技術がなければ不可能である。
もう1つ驚いたのが、浩司の状態であった。
確かに、内臓がかなりのダメージを受けている。 かなりの出血している可能性が高い 1部臓器が瀕死しているかも知れない。 普通時間の経過と共に悪化していくものだが、悪化するどころか、悪いなりに安定していた。
ヘリポートでは、マーク、ピエール神父を始め、医師、看護婦、護衛などが待っていた。
着陸誘導灯や周囲のサーチライトに導かれ、ヘリが着陸した。
真っ先にマークが駆け寄り 医師に問いかけた。 「浩司殿の状態は?」
「内臓がかなりのダメージを受け 重症です。 今 点滴と睡眠薬を投与しています。  ただ・・・不思議な事に状態が悪化するどころか? 安定状態が続いています、しかしいつ悪化するかも知れません 一刻も早く集中治療室で、適切な処置が必要です」 
「よし わかった 浩司殿を死なせる理由に行かん」 マークはうなづくと 周囲にいた数人の護衛を呼んだ。 「浩司殿を 聖なる場所へ連れて行く」 マークは、ピエール神父の顔を見た。 「ピエール神父 よろしいかな?」 ピエール神父は小さくうなづいた。
「聖なる場所って・・・」 みなっちは、隣にいた川村に聞いた。
「ヤーナ最高機密で・・・ 詳しくは言えませんが、今 最も安全と思われる場所ですよ」 川村は、答えた。
一団は、船内のある場所へ向かった。
立ち止まると、床がゆっくりと沈み始めた。 エレベーターとなっている。
船の船底へ着く 正面のハッチを通り抜けると そこには、白銀色に輝く直径20m 高さ5m程の円盤型物体があった。
「UFO・・・」 信じられない表情を浮かべみなっちは、つぶやいた。 UFOの存在については、懐疑的だったみなっちには、驚くべき光景である。 浩司の神々=EBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)説の根拠の1つで、もしUFOの存在を認めれば、神様が宇宙人だと認める事になる。 しかもここにいる みなっちの信仰する 宗派こそ違うが、C宗教の神父であるピエール神父ですら はっきりと神々は宇宙人だと言っている。 もはや認めざるえない状況まできてしまっている・・・ そんな感じだった。
「そんなところですかねー」 何事でもなかったように、川村が答えた。
表面が白銀色に輝く物体 しかしどこがハッチだか解らない。
ピエール神父が前にでると、何かのコントロール装置を取り出し スイッチを押した。
表面の1部が上から下へとスライドする 下部からタラップが伸びて来る。
浩司を乗せたタンカを押し一団はタラップを上り始めた ぼんやりと立ち止まり その光景を見ていたみなっちに、ピエール神父は呼びかけた。 「美那美さん 早くこちらへ」
慌ててみなっちは、小走りにタラップを上った。
総勢15名もの人間が乗り込んだ。
全ての遮断壁が降りる 船体上部のハッチが大きくゆっくり横にスライドする。 UFOは、淡い白銀の光を発しする。 下部のランデングギヤが格納される UFOは音も無くゆっくり上昇を始めた。
ある高度まで達すると、UFOは、猛烈なスピートで飛行を開始した。
UFO内部は、何も無い空間であった。 壁全体が、淡い光を発し半球体状になっている。 これと言った機械、操作類など見当たらない。 だが何故だか、古ぼけた感じがする。
他だいくつかの長いすや1人掛けのいすなどが整然と並べられている。 これだけは、間違いなく地球の現材品だ。
医師、看護婦を除く人達は、各々それらのいすに座った。
「エルの残した 1万2000年以上前の代物だよ」 驚きの表情を見せ周囲を見渡すみなっちの気持ちを察したのか? マークは、言った。
浩司を乗せたタンカは、車輪が固定された。 医師、看護婦は、浩司に取り付けられた心電図などのモニターをチェックしている。
2人の男が、壁の1部が上から下へとスライドした向こうに消えた。
みなっちは、気づかなかったが、その先は、メインコントロールルームであった。 操縦などの全ての操作はそこで行われていた。
壁の1部が変わった モニター画面のようである。 そこには、外部の景色が映し出された。
想像もつかない猛烈なスピードで、空中を移動している。
乗り物に乗り スピードを出せば、G(重力)、振動などの身体に感じるものがある しかしこのUFOは、全く何も感じなかった。
UFO内部では、重力がコントロールされ 推進動力は、反重力が利用されている為である。
僅かな時間で、ある場所で、急停止した。 かなりの高度である。 下の景色には、大小様々な島々から人間の生み出した人工的な光がこぽれ、モニター画面に映し出されている。 美しい夜景であった。
「ここは?」 みなっちは、近くに座っていたマークに聞いた。
「少しは、話しても良かろう・・・」 マークは、みなっちの方へ振り返った。
「ここは、日本の最西端のO県Y島の沖合いの上空じゃよ」 マークは答えた。
「O県Y島・・・」 みなっちはつぶやいた。 随分遠くまで来てしまったと思った。
O県は、日本の最西端に位置し大小いくつかの島々からなる ここY島は、県庁がありO県最大面積を誇るO本島よりさらに西に位置していた。
それと、ここO県Y島について、よく浩司が語っていた事を思い出した。
考古学にも精通する浩司は、1986年ここO県Y島で 沖合いで、ダイビングポイントを開拓中に島の南端新川鼻海底に奇妙な地形を発見、インカの遺跡に似ている所から遺跡ポイント(レリックス・ポイント)と命名された古代遺跡らしき地形に、かなり注目していた。
まだ本格的調査は行われていなかったが、水深数m以上の深さにある為 人工的なものでなく自然に出来た物とされていたが、直角、階段、アーチ門、ループ道路など人工的としか思えない場所が多数発見され 引き上げられた遺物の中には、Oのロゼッタストーンと呼ばれる岩板状の石版に、船、高倉、農耕具などを描いたと見られる刻画、また記号あるいは文字かと思われるものが刻まれている。 この記号あるいは文字は、今だ解読されていない。 それ以外にも打製石器など多数見つかっている。 だれが、何の目的で、こんな海中に人工的な物が作ったのたか? 議論になっていた。
現在 自然に出来たと言う説が主流を占め 見つかった遺物も信憑性に、疑問が持たれていたが、浩司はある説を唱えていた。 今から約1万2000年以上前 地球は現在の間氷河期(かんひょうがき=氷河期と氷河期の間で、割と温暖で安定している時期)ではなく、小氷河期もしくは、最後の氷河期と呼ばれる時代であった。 当時 海面は、今より数m以上は低く 日本列島は大陸と陸続きであった。
証拠に、O県K島の有名なダイビングスポットに、海底鍾乳洞が発見されている。 海底では、鍾乳洞は形成されない。
発見された古代遺跡らしき地形のある場所も 今から1万2000年以上前は陸上であった。 その頃 記録にない古代文明が栄えた可能性を否定する事は出来ない。
もし人工的に作られた古代遺跡ならば、世界最古と言われ 今から5000年以上前とされる メソポタミア文明、インダス文明よりも更に7000年以上遡る人類最古の文明となる。
今から約1万2000年程前 氷河期の終了に伴う急激な温暖化で、海面が急上昇 縄文大海進と呼ばれる。 約6000年程前 最大ピークを向かえ 現在の関東平野、濃尾平野など、現在の世界各地の低地は海中に没したが、その後やや持ち直し 現在の海面で落ち着いる。
現在 世界規模の問題となっている急激な温暖化現象と関連性もあるのかも知れない。 他だし現在の温暖化現象は、主な原因が人為的であるが・・・。
他だし 浩司は、この古代遺跡らしき地形を、1部オカルト神秘主義者、マニアックな連中が唱える 太平洋上にあったとされる ムー大陸との関連には、否定的であった。 (こう言う連中とは、浩司は、一線を引いて、全く相手にすらしていない) 地質学及びプレートテクトニクス、スーパープルーム理論にも精通する浩司である。 今より海面が数m以上低くても、太平洋上に大陸は出来ない。 大陸移動を繰り返してきた地球であるが、その間、何度も大陸が1つなり超大陸を形成している、今から1万2000年以上前は、現在と大陸の位置が一致しており、太平洋、大西洋上に巨大な大陸の形成は、プレートテクトニクス理論上 不可能である。 (他だし 海水面が今よりも数m以上低ければ、島と島の距離は、今よりは短く、航海は、より簡単であったはず、航海による、環太平洋文明?みたいなものがあった可能性については、否定も肯定もしていない) ムー大陸そのものの存在については、否定していた。 同じ理由で、古代ギリシャの哲学者プラトンの著書ティマイオス及びクリティアスの中で、エジプトの神官から聞いた話として語られている ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の向こう(大西洋)にあったとされ 今から約1万2000年前 一昼夜にして突如海中に没したというアトランティス大陸も同様である。 他だしこちは、「ロマンが・・・」 と言う他愛もない理由で、余り否定的な事を言わないのは、浩司らしい一面であった。
他にも ノアの大洪水もしくは、方舟伝説(原典は、ギルガメシュ叙事詩と言われる)を始め 似たような世界各地に残る大洪水もしくは、方舟伝説、神話は、全て今から約1万2000年前と時期が奇妙に一致している。 やはりこの時期に何らかの原因で、小氷河期もしくは、最後の氷河期と呼ばれる時代が終わるとと同時に、急激な温暖化で、氷河の急激な融解 それに伴う、地上での猛烈な暴風雨、溶け出した氷河による河川の大反乱、海水面の急上昇が起きた事が、容易に想像できる。
他だし1部 カルト的擬似科学の奉仕者であり最強のトンデモ系の大御所の1人 A,Aとその弟子と言われるT,Mが嘯(うそぶ)く 惑星? 遊星? MだがXだか知らないが、地球に近づいた際 その惑星? 遊星? MだがXだかが持つ大量の水が地球の引力に引っ張れ 地球に降り注ぎ 大雨となって地球上の至る所で洪水を起こした・・・ などと言う説には、"全くのナンセンス 論評にも値しない・・・"と言って呆れ返っていた。 他にも地球の軌道の太陽を挟んだ反対側には第12番惑星ヤハウェ(反地球)が存在し、その存在をNASAが隠蔽している等の説など呆れるばかりである。 これらをマンガや小説のネタ、擬似科学として扱っているならば、まだしも、これらを極秘の真実だと嘯(うそぶ)いているから手に負えない。 重力論、量子重力論、一般相対性理論 その他 本当に理解しているのか・・? (これらについても否定的見解の持ち主と見受けられるが・・・いや全く理解力無し) 呆れて反論する気さえ起きない。
2人揃って自らをスーパーサイエンス(超科学) サイエンスエンターティーナーと称し フォトンベルト(超電磁波帯=全くの荒唐無稽、現在完全否定とれている)や、その裏に隠されたプラズマ・フィラメント、それにより太陽が、熱核融合反応で水素がヘリウムに変換している恒星ではなく、固体出てきた惑星で、太陽の周囲を覆うプラズマ・フィラメントの下 地表が存在し、その事実をNASAが隠匿している・・・ 木星もしかり、主に水素とヘリウム(液体化していると推測されている)で出来たガス惑星でなく、固体惑星で、大赤班(Great Red Spot)は、巨大火山クロノスの噴煙説など その他多数 幼児向けのマンガより更に低レベル。 これでも熱心な支持者いや熱烈狂信的信者を獲得、出版物は、もはや宗教の聖典として扱われ 極致的カリスマ教祖化している。 まさに世も末・・・
(A,Aは、自ら信じるC宗教の1つカルト宗教のM宗派の熱心な信者(以前から問題の多いカルト教宗派として知られる)で、その教義を読者に広め、終末予言を利用 布教と受け取れる活動をし、そうした活動により、実際多数の熱狂的熱心な読者が入信している)
現在 世界最古とされる4大文明全てが、天空より神々が降臨し 当時その場所に住んでいた人類に、農業を始めあらゆる科学、技術を教え文明が起きたと各伝説、神話は記述している。
(現在南アメリカのペルーの太平洋海岸地帯で発見された シクラス文明圏とでも呼ぶべきか? ピラミッド型建造物中心とした高度な複数の遺跡群がある。
不思議な事に、4大文明は、大河の周辺地域に発生しているが、こちらは、小さな2本の河沿いに、複数の古代都市が、発生している。
その成立年代は、今から5000年程前で、エジプト、シュメールとほぼ同時期だ。
ようやく本格的発掘、調査を開始し、まだ研究がはじまったばかりであるが・・・
これを含めると5大文明となる、近い将来、歴史及び歴史の教科書は書き換えられるであろう)
その証拠に、オーパーツ(OOPARTS=Out Of Place Artifacts 場違いの工芸品もしくは、出土品)と呼ばれる 当時の科学技術とかけ離れた技術で作られた工芸品もしくは、出土品も多数見つかっている。
有名な物では、古代ギリシャの天文コンピューターと言われる アンティキラティラの歯車、南極大陸が発見される遥か以前に、南極大陸の正確な地図が画かれているピリ・レイスの地図、今から4000年以上前のヒッタイト古王国時代の遺跡の1つアラジュホユクから見つかったエレクトロン合金の牡鹿像、中国 秦時代のクロムメッキ剣、世界遺産にも指定されている インドの錆びない鉄柱など・・・挙げたら切がない・・・ 全て当時の科学技術では製作不可能 中には、現在のテクノロジーですら超えた工芸品もしくは、出土品まで存在している。
これら伝説、神話、物的証拠(多数のオーパーツ)も根拠の1つとして、浩司は、神々=EBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)説を唱えている。
もし海底にある古代遺跡らしき地形が、古代 神々が降臨し 教えた科学、技術などで作られた遺跡ならば、浩司の言う神々=EBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)説が、真実味を帯びてしまう。
浩司とのケンカの主だった理由の1つは、神様が宇宙人か否かなどだ。 後は、浩司のあの性格・・・。
これでは、浩司が、真実を語っている事になる・・・。
C宗教を素朴に信仰し、その経典である、旧約、新約両聖書を信じるみなっちにとって、絶対認められない。
神様が宇宙人で、我々人類は、その宇宙人によってDNAを操作され生み出されたなど・・・ 
UFOは、海面に向かって、ゆっくり降下を始めた。 海面に、着水すると、そのまま海中へと潜行を始める。
UFOから発せられる光がある場所を照らし出しUFO内にあるモニター画面にアップで映し出された。 やはり古代遺跡らしき地形である。  少し距離が離れているが、浩司に、ネット上で発表されている 古代遺跡らしき地形の写真を何度も見せられていた。
海底の地面が、大きく横にスライドした。 UFOは、その中へ入っていく。
下部のランデングギヤが出る 着陸すると、上部の地面が、スライドし閉じた。 周囲の海水が排出される。
またUFOを乗せた着陸台が、下へ降り始めた。 まるで、特撮SF映画、アニメなどの1シーンを見ている気分である。
"こんなシーン 今日これで何度目・・・" ふっとみなっちは思った。 まるで異世界に来た気分である。
次ぎから次ぎへと、とても信じる事が出来ない事ばかり起きる。
下降が止まる 正面の壁がスライドする。 そこを通り抜けると 大きく広い場所に出た。
そこは、巨大な格納庫であった。
大小数機のUFOがあった。 それぞれタイプが違う。
タラップが伸びてきたUFOとドッキングする。
UFOの1部がスライドする。
「さあ降りますよ」 マークに促され みなっちは立ち上がり歩き出した。
浩司を乗せた車輪付きタンカを先頭に、数人がタラップの上に立つと自動走路となっていた。
正面の大きな通路を入った 通路を抜けると、メディカルルームと書かれた入口の前で止まった。
「さあーこちらへ」 言われるがままに、みなっちは正面の入口から中へ入った。
歩きながら浩司の様子を見ると、ある変化に気づいた。
いつもみなっちは、浩司の健康に、細心の注意を払っていた。 元々浩司は、健康管理には、全く無関心である。
自営業者である浩司は、ほとんど休日も取らず、長時間働くのが当たり前であった。
身体のあらゆる部分を悪くしていた。 酷使に酷使を重ねてきている。 浩司の健康管理の一環として、よくつぼをはじめ、筋肉マッサージなどで、ほぐして上げていたのだが、"さあーうつ伏せなって、マッサージ!!"と言うと、急に顔が青ざめ、音もたてず、そーと逃げ出そうとする有様であった。
すぐに首に縄をつけ 引き寄せ 逃げないようにベッドに縛りつけ 強引にマッサージをするのだが、少しも力を入れていない状態ですら、ものすごく痛がり、悲鳴を上げていた。
"北斗神拳反対〜!!・・・ 経絡秘孔を突かれた 俺はもう死んでいる・・・ (マンガ 北斗の拳参照 原作 武論尊さん、作画 原 哲夫さんありがとう)"
"死にたければ、勝手に死になさい!! 誰の為だと思っているの!! (怒) (みなっち談)" と言う余りの低落ぶり 情けないにも程がある。
"男でしょー 少しは我慢をしなさい!!" いつものみなっちの口癖である。
みなっちは、浩司のちょっとした身体の変化はすぐ見抜ける。
今 タンカに乗っている浩司は、信じられない事に、はっきと見る事が出来ないが、ぼんやりと身体全体から淡く、薄い白い光を発していた。 みなっち以外だれも気づく事が出来なかったであろう・・・
人間は、自ら発光する事が出来ない。
だが、1度だけだが、この光景に見覚えがあった。
みなっちの住むマンションで、レジェンスと言う 不思議な球体のついた、ペンダントを外そうとしても外せず、最後に包丁で首を切り落とし外そうとしたのだ、 慌てて止めたが、首筋には、深い傷を負いかなりの出血をした。 その時だった 浩司は気づかないみたいであったが、傷を負った首筋からはっきと見とれない程の淡く、薄い白い光が発せられたかと思うと、出血は止まり、見る見る傷口が塞がれ 何も無かったように元通り 傷跡も消えた。
その時と全く同様であった。
みなちは、ある確信にいたった。
浩司を乗せたタンカは、医師、看護婦と共に、集中治療室に入っていく、それ以外は立ち入り禁止だ。
まずは、レントゲン、CTスキャンなどで、怪我の状態の確認からである。
しばらくすると、困惑した顔で医師が出てきた。
集中治療室前の待合室で待つみなっち達の顔を見つめた。
「どうしたのか?」 真っ先にマークが聞いた。
「いやー そのー 何も写らないですよ」 困惑した表情の医師が答えた。
「何も写らないとは、どういう事かね」 ここまで、余りしゃべらず成り行きを見ていたピエールが立ち上がった。
「機械の故障かと思い 点検したのですが、どこにも故障もないのです。 これでは、目視による手探りのオペ(手術)しか・・・」
「ちょっと待って」 ここまで、黙って聞いていたみなっちが、口を挟んだ。
みなっちも立ち上がり、全員の顔を見ながら 確信にいたった事を言い出した。 みなちは、何故だか? 解らないが絶対的な自信があった。
「このまま集中治療室で、絶対安静とモニターチェックで、しばらく様子を見て、私には自信があるの、マークさん、ピエール神父様 それに、川村さん こーちゃんのあの不思議な力、能力 見たでしょう? とても普通の人には、不可能な事を・・・ こーちゃん その不思議な力で、自己治癒する事も出来るの 小さな怪我なら直ぐに治せるけど、今回は、かなりの大怪我で、少し時間がかかるだけなのよ その証拠に、あれだけの大怪我でも、時間と共に悪化するはずが、きわめて安定しているのよ 普通では、考えられないはずよ」 みなっちは、必死に訴えた。
「確かに・・・」 マークは、腕を組んで言った。

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