LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 融合 Part6

 長い廊下を5人に囲まれながら キャラン(浩司)は、何気なく右側の透明チューブの窓の外側を見た。 透明チューブの外は、大きな空間で、何本のエレベーター用の透明チューブが並んでいる。 この基地の基本構造は、大きな円柱状に地下深く掘られ 真ん中は、吹き抜け構造の空間 吹き抜け空間の周囲に各階事に、広がっている構造になっていた。
"エレベーターを利用しないと 上には逃げられないなあー" みなっちを救出後の脱出ルートを色々考えていた。
"まず先に、この場からどう脱出するかが先決 あんな女(リン)と72時間も缶詰にされるのは、真っ平ごめんだぜ・・・!!" そんな事を考えている時だった。 突然 轟音と共に、基地全体が、下から突き上げる地震に襲われたように、大きく揺れた。
「どうした?」 リンは、通信機を兼ねるブレスレットで、問いかけた。
「B78階において 爆発事故発生・・・」 アナウンスが廊下全体に響き渡る。
その時だった 6人の左斜め後ろで、爆音と共に爆発が起きた。 6人は慌てて身を伏せる。 土煙が充満し 周囲の視界がぼやけた。
一瞬 キャラン(浩司)の両横の2人の大男達の手が緩んだ。 このチャンスをキャラン(浩司)は、逃さなかった "しめた・・・" と思い 大男達の手を振り払い 立ち上がると爆発の起きた後ろへ走り出した。 
直ぐに気づいたリンは、「逃すなー!!」 と叫ぶ。
大男達は、立ち上がり慌ててキャラン(浩司)を追いかけようとした。 その瞬間 キャラン(浩司)の右側からまたも爆発が発生 その爆風で、透明チューブが破れ キャラン(浩司)も破れた箇所から吹き抜けへ爆風と共に吹き飛ばされてしまった。
「しまった!!」 叫ぶリン 透明チューブの窓から下を覗き込むが、キャラン(浩司)の姿は見えない。
爆発と同時に、レジェンスの防衛機能が働いた。 瞬時に、キャラン(浩司)の周囲をバリヤーが包み込む 戦闘モード時以外でも、レジェンスは、融合者に強力な物理的攻撃を加えられると 融合者の意思とは無関係に、融合者を守る為 各防衛機能が働く場合がある。 他だし 気まぐれとしか言いようの無い超不安定なレジェンスのエネルギーである 必ず働くとは限らないが、今回は働いた。
しかし爆風の威力までは防ぎきれず、吹き抜けに吹っ飛ばされてしまった。
意識は、はっきりとしていた。 奈落の底へと墜落して行く 墜落中 ある事を思い出し試みてみた。 "やはり・・・" キャラン(浩司)の墜落は何も無かったかのように、突然 空中停止した。 死火山で、最後に空中に浮いていた事を思い出したのだ。
"やはり 空を自由に飛べる能力もあるのかー・・・" そう思いながら周囲を見渡した。
すぐそばの階の一画で、10人ばかりの白衣を着た科学者、技術者と2人の兵士がもみ合い・・・いや乱闘になっている。 変身こそしていないが、さすがに,ネクストノイドである 10人を瞬時に制圧した。 キャラン(浩司)は、バリヤーを張ったまま その一画につ込んだ。 透明チューブは粉々に砕け 一画に入ると すぐ2人の兵士に、しばらくの眠りにつかせた。 白衣を着た10人全てが死んでいる・・・いやよく見ると1人だけ息がありそうであった。
その白衣を着た男の傍らへ寄ると 左腕で頭を持ち上げた。
男は、白髪まじりの髪を七三にきれいに分け 眼鏡をかけていた 年齢は、60代中盤か? 一見科学者と分かる顔立ちである。
「しっかりしろ!」 キャラン(浩司)は、声を掛けた。 薄っすらと目を開けた。 キャラン(浩司)の顔を見ると 何故だか安心した表情を見せた。
「君は、・・・確か? キャラン・サンダンス君・・・?」 今にも消え入りそうな声だ。 かなりの深手を負おっているらしい。
「そうだ しっかりしろ。」 キャラン(浩司)は、必死に呼びかける。
「これも・・・何かの運・・・会えてよかったよ・・・ 君は、アポリスの間では・・・ちょっと・・・有名人・・・」 男は咳き込み血を吐いた。 そして、右手を白衣の左 内ポケットっに手を入れるとコンパクトサイズのケースを取り出した。 「き・・・君が、捕まったと・・・聞いてたが、・・・これを・・・ある人物に・・・渡して欲しい。」 声が、弱々しくなっている。
「これは、私の知る限りのアポ・・・リスのデータ・・・小型・・・CD-RWに・・・い・・・入れてある・・・これを・・・逃げてくれ・・・。」
「この爆発は、あなた方が・・・」 キャラン(浩司)は、聞いた。
男は、小さく首を横に振った。 「・・・これは、偶然に起きた・・・だれかが、仕掛けた・・・爆発したらしい・・・避難しようとしたら・・・持ち場を離れるな・・・揉み合い・・・この様だ・・・」 男は、今にも消え入りそうな声で答えた。 「私は、・・・だめだ 早くこれを・・・逃げて・・・」
「あんたも一緒だ!」 キャラン(浩司)は叫んだ。
「き・・・み・・・女・・・7つ・・・し・・・た・・・」 男は息を引き取った。 キャラン(浩司)は。そっち頭を床に降ろした。 男から手渡された コンパクトサイズのケースをジーンズの左後ろのポケットに押し込んだ。 "どうやらアポリスと言えども 一枚岩ではないらしい 白衣を着ている科学者? 技術者? の間には、反逆者もいるらしい・・・。" 上部でまた爆発が起きた 基地全体が揺れる。
"確か みなっちは7つ下の階と・・・?"
まずは、みなっちを救出が先決と思い 戦闘モードに入った 球体のバリヤーを張り 先程突き破った穴から飛び降りた。 7つ下の階で、先程と同じ要領で進入する。 この階のフロアは、だれもいない ただ何となく みなっちの気配が、近くに感じられる 気配がする方に向かい探し始めた。
幾つかのドアを破り 部屋の中を探したが、全てただ広いだけの何も無い部屋であった。
あるドアを破った。 進入した瞬間 ドアの両側に隠れていた 2人の兵士に 奇襲攻撃を受けた。 この部屋に入るのを待っていたのだ。 しかしドアを破る前 キャラン(浩司)は殺気を感じていた。 金属棒で殴りつけられたが、もうそこには、キャラン(浩司)の姿はない。 空振り 体勢が崩れた瞬間 キャラン(浩司)の両手の拳は、2人の兵士のみぞうちに叩き込んだ。 2人の兵士は、そのまま倒れ込んだ。 しばらくの眠りである。 変身していない為 この程度の攻撃でも効果がある。
ここは、牢獄となっていた。 奥へと鉄格子か続いている。 「みなっち・・・みなっち・・・」 呼んでも返事がない。
奥へと探しに入った。
左右 鉄格子の部屋を1つずつ探す ある鉄格子の前で立ち止まった。 間違いなくみなっちがいた。
両腕で、両膝を抱え込み その中に顔を埋めている。 「みなっち・・・!」 浩司の叫び声にようやく気づいたのか? 顔を上げ何気なく浩司の方を向いた。 その顔・・・いや表情を見た瞬間 浩司は、思わず数歩 後ずさりした。
一瞬 みなっちの顔が、頭の額の両側から 世にも恐ろしい鬼の様な角が生え 両目は、鋭く吊り上り 野獣の様な鋭く尖ったキバを剥き出し・・・ 全身からは、地獄の業火が渦巻いている・・・ のように見えた・・・。
「こーちゃん いったい 今まで、何をしていたの・・・?」 地獄の底から響き渡るような声だ。
「な・・・何って 助けに来たんじゃないか・・・」 声が上ずっている。
「それにしては、随分 ごゆっくりじゃないの?」 みなっちは立ち上がると 2人を隔てている鉄格子へとゆっくり近づいてきた。
"何か? とんでもない事を疑っている" 浩司は、何故だか? そう予感した。 悪い予感は必ず当たるものである。
「こーちゃん・・・」 浩司の顔は、何故か怯え引きずる。 
「あの女(リン)と 変な事 楽しんでいたんじゃないの?」 みなっちは、鋭い眼差しで、浩司を睨みつけた。
全くの冤罪、事実無根、誤認、勘違い、誤解・・・である。 確かに "やばい" 場面もあったが、運良く逃れている。
「な・・・何も無い・・・嘘じゃない・・・」 その声は悲鳴に近い。 浩司は、必死に身の潔白を証明しようとした。 
しかしみなっちは、信じていない。 「嘘 おっしゃい そんな事 女の感で解るわよ いっぱい楽しんでいたんじゃないの? 余りにも激しいから、逃げて来たんでしょう?!!」 みなっちの表情は、一段と凄みを増している。 こうなると手に負えない。
「俺が、そんなにモテる男に見えるか?」 浩司は、身の潔白に必死である。
「確かに・・・」 鋭い眼差しで浩司を睨んだ。 "確かに、こーちゃん 私以外の女に相手にされた事がない。 あの忌々しい壊滅的性格 他の女が、まともに相手をするはずが無い。" と みなっちは思った。 「だからと言って、浮気していない証拠にはならないわよ・・・!!」 全く信じていない。
また上部で爆発が起きた。 こんな所で、グズグズしている暇は無い。 "身の潔白の証明は、ここを無事脱出してからでも遅くない・・・" 浩司は、すぐ鉄格子のロックを見た。 コンピューターシステムの、IDカード、パスワード、生体認証などが必要タイプで、極めて強固に作られていた。 簡単に開けたり、壊したり出来ない。
「くっそ・・・」 浩司は、思わず悪態をついた。 「みなっち・・・」 みなっちは、相変わらず浩司を睨んでいる。
「1番後ろの隅に隠れて・・・」 浩司の言った意味が分からず、一瞬キョトンとするみなっち。
戦闘モードに入った浩司は、 「早く下がって、この鉄格子 破壊する。」
仕方なさそうに、みなっちは従った。
それを確認し、ロックに向かい 右腕を突き出し手首を立てた マグナムアタックの構えである。 手の平の前にエネルギーを集中させようとした しかし瞬時に止めた。
"くっそ・・・エネルギー量が大き過ぎる 撃てば、みなっちも危険・・・" そう思った時 ある事を思い出した。 龍(ロン)の使った技である。 "あれが俺にも出来れば・・・" と思い そのまま手首を水平に戻し 人差し指を突き出し エネルギーを集中させた。 瞬間 一条の光線(ビーム)が、浩司の人差し指から放たれた。 瞬時にロックを焼ききった。 後にフィンガービームと呼ばれる技である。
"うまく行った" そう思い 鉄格子をスライドさせた。 
「みなっち 早く ここから逃げるぞ!」 しかしみなっちは、腕を組んだまま 睨み まだ怒っている。
その時だった こちらへ向かって 数人の兵士が、突撃してきた。 変身していない。
すぐ気づき振り返るキャラン(浩司) 手には、長さ1m程度の金属棒を持っていた。 銃、エネルギー兵器の類は見当たらない。 数を数えると5人だ。
"もう 見つかったかー" どこかで、モニターされていたのだろう ここは牢獄である。 監視システムが無いはずが無い。
他だし ここは狭い 一斉に飛び掛れない キャラン(浩司)は、まず先頭の兵士にしばらくの眠りについていただいた。 みぞうちに拳を叩き込んだのだ。 身体を二つ折りに倒れる瞬間 金属棒を拝借する。 鉄格子の後ろに隠れ その様子をみなっちは見ていた。
あっと言う間に、残り4人の兵士にも 眠りについていただいた。
みなっちは、浩司のそばに寄った。 「大丈夫?」 ようやく怒りが収まりつつある。 必死に戦う姿を見て、ようやく信じる気になったのである。
「逃げるぞ!」 浩司の問いに、小さくうなづいた。

「まだ 誘爆が収まらないのか?」 龍(ロン)は、苛立っていた。 どこから進入してきたのか? スパイが、潜り込んでいたのだ。 そのスパイが仕掛けた爆弾が、タイムラグ(時間差)を置いて、数箇所で爆発したのだ。 逃げる時の常套手段である。
この基地のメインエネルギーは、反物質反応炉から得た高エネルギーを利用している。 一部除いて、ほとんどの場所で、爆弾、銃、エネルギー兵器の使用を厳しく禁止している。 低エネルギーを除いて、下手に使用すると、エネルギーが過負荷の状態になり 容量を超えたエネルギーは、出口を求めて爆発を起すのだ。 爆発を起した階は、エネルギーの供給を止め 完全に遮断しなければならない。
超高エネルギー兵器を使うグロテノスを始めとするネクストノイドの変身なと絶対禁止である。 屋外や、1部シールドで遮断する闘技場などは、別だが・・・。
「龍(ロン)様。」 リンが司令室に戻ってきた。
「リンか。」 龍(ロン)の声にリンは、片膝を着き頭を下げる。
「はっ」 顔を上げ 龍(ロン)の顔を見た。 「ご報告申し上げます。 あのキャラン(浩司)と申す者 この爆発事故の爆風に飲み込まれ 中央の吹き抜けへと転落 死亡したと・・・」 その時 龍(ロン)は、マルチディスフレイ画面の1つを指差した。
そこには、牢獄から抜け出し 広い通路をみなっちと2人 走る姿のキャラン(浩司)の姿が映し出されていた。
「どうやって あそこへ・・・?」 リンは思った。
「どうやら キャラン(浩司)も空中を自由に移動出来る能力も持ち合わせているらしい・・・」 龍(ロン)は、少し考え決断を下した。
「全エレベーター停止 反重力クラフト部隊 直ちに出撃 目標 牢獄のあるB117階 あの2人を捕まえろ!!」

エレベーターのスイッチを押した しかし反応が無い。 「くっそ・・・」 悪態をつく浩司。 完全に逃げ道を閉鎖されてしまった。 どこかに階段があるかも知れない だが途中 待ち伏せされていないとは言い切れない。 それに、こんなに地下深くからは地上まで、みなっちの体力では登れない。 一瞬 テレポーテーションも考えたが、2人で、果たしてうまく出来るのか? 下手するとレジェンスのエネルギーの暴走を起すかも知れない。 その場合 時空間に何らかの悪影響を及ぼす可能性もある。
「どうするの?」 心配そうに浩司の顔を見つめるみなっち。 
「仕方ない・・・」 浩司は、エレベーターを諦めると みなっちを連れて、この階に突入する時 開けた穴の場所へ向かった。
"この際 目立って危険だが、やるしかない" 浩司はそう思った。
穴の近くに立った。
「みなっち・・・」 浩司は、みなっちを見つめた。 
「俺 信じられるか?」 浩司は何かを決めたように真剣な表情である。
「うん・・・」 みなっちは小さくうなづいた。
「俺の首の後ろに両手を回して」
「えっ? どうして?」 みなっちには、理解出来ない。
遠くから数人の兵士が現れた。 2人に向かって突進して来る。 余り時間が無い。
「いいから早く!」 浩司の叫びに、仕方なくみなっちは、言われた通りにした。 2人の顔が近づく 両手を浩司の首の後ろに回した。 浩司は、腰を少し低くし 左腕をみなっちの背に、右腕をみなっちの両膝関節に入れ みなっちを持ち上げた。 体重の軽いみなっちは、軽々持ち上がる。 お姫様だっこである。
「何するの?」 みなっちは、急に浩司が、大胆な行為に及んだ事に赤面した。
「この穴から飛び込む」 浩司は、真剣である。
「えっ・・・?」 みなっちは、浩司が、逃げ場を無くし 飛び降り自殺でも図ると思ったのか? 少し怯えた表情を見せた。
そんな表情を見て、浩司は、 「心配するな 空も飛べるんだぜ!」 やさしく微笑んだ。
みなっちは、信じられない表情を浮かべた。 もう逃げ場は無い 死ぬなら2人一緒 覚悟を決めた。
穴まで、数歩歩いた。 瞬時に戦闘モードに入った。
戦闘モードに入る時 浩司は、レジェンスのエネルギーが、みなっちに及ぶ事を心配したが、何ら影響がない様子である。
数人の兵士が、後少しの所まで近づいて来た。
みなっちは、いきなり浩司の口に軽くキスした。 小さく微笑む 「幸運のおまじない・・・」
浩司も微笑んだ。
まず2人の周囲に、球体のバリヤーを張った。 見えないエネルギーの壁が、2人を包み込む 正面の穴へと飛び込んだ。
同時に、襲い掛かった数人の兵士も飛び込んだ。 しかし数人の兵士は、そのまま転落していった。
「落ちるー・・・!!」 みなっちは、目を固く閉じ悲鳴を上げた。 しかし周囲の空気は、下から強く吹き上げない 落下する感覚も無い 全くの無風状態である。 恐る恐る目を開けると周囲の景色は、下降していない 逆に上昇している。 浩司は、上を見上げている。 信じられない光景である。 思わず我が目を疑った。 浩司は、みなっちを抱きかかえたまま 空中をゆっくり上昇しているのだ。
周囲の景色の流れが速くなってきた。 スピードを上げ始めた。
「ねえ ちょっと・・・速過ぎる もう少しゆっくりにして」 思わず甘えた口調で、浩司に言った。
「ごめん・・・」
急に上昇スピードがゆっくりになった。
みなっちの顔がほころぶ 夢の様な光景だ。 映画スーパーマンで、恋人のロイス・レインを連れ 空を飛んでの甘いデートシーンが、脳裏に浮かんだ。 しかしこちらは、状況がまるで違う。 今 命がけで逃げている。
浩司の顔が、急に厳しくなった。 直径1m程の円形の土台の下に、半球体が付いた物体が3基 上空から降りてくる。 新手の出現だ。
先程 龍(ロン)の命令で、反重力クラフトに乗った兵士3人が、1基ずつ乗り込み 2人が、空中へ飛び上がったのを知ると ゆっくり下降しながら待ち構えていたのだ。
反重力クラフトとは、1人乗りで、反重力を利用して空中を移動する 主に島の偵察用乗り物である。 円形の土台の下に半球体の反重力発生装置がついており 土台の上には、周囲に4基の金属パイプを立て、丁度腰の高さに、パイプを1周させてある 乗員の安全確保の為である。 専用のコントローラーで、操作する仕組みになっていた。
上空を3基の反重力クラフトに覆われ 仕方なく上昇を停止し ホバーリング(空中停止)状態なった。
「どうするの?」 みなっちは、聞いた。
「強行突破しかないなあー」 浩司は真剣に言う。 みなっちを抱きかかえている関係上 戦う事が出来ない。 それに、目に見えないバリヤーを張っている。 バリヤーで弾き飛ばせると踏んだ。
「行くぞ!」
「うん」 みなっちは、浩司にしっかり抱きついた。
ホバーリング(空中停止)状態から いきなり急加速で、上昇を始めた。 
予想通りだった。 バリヤーに接触した3基の反重力クラフトは、弾かれ大きくバランスを崩した。
何とか体勢を立て直し 2人を追うが、スピードが違い過ぎる。 あっと言う間に引き離されてしまった。
「どうやったの?」 みなっちは、反重力クラフトに、衝突直前に弾き飛ばされたのが、理解出来ない。
「何・・・ ちょっとバリヤーを・・・」 浩司は、さりげなく答えた。
「バリヤーって・・・? こーちゃん バリヤーも張れるの?」 みなっちは、驚いた。 浩司が、子供向けのスーパーヒーローそのもの信じられない能力を幾つも見せている。
「何 お姫様だっこの後 直ぐ張っていたんだけど・・・」 浩司は、ちょっと自慢げに答えた。
「すごい・・・」 みなっちは、思わず感激した。
最上部に着いた。 上は、強固な天井に覆われている。 
そのまま透明チューブの壁を破り 最上部へ進入した。 着地と共にバリヤーを解除した。
「さて・・・出口は?」 そう言いながら みなっちを降ろした。 みなっちの方は、このまま抱っこされていたいらしく、少し不満な表情である。
3人の兵士が現れた。 前に2人 その後ろに1人立った。 手には、金属棒を持っている。
やはり人間の姿のままである。 額に赤いネクスタルがある。 ネクストノイドそれもグロテノスである。
"何故? やっら変身して戦わない? それに、武器は、金属棒などで、銃やエネルギー兵器を使用していない? それと、あの後ろにいる1人・・・ ネクストノイドでは無い ネクスタルが無い ただの人間だ。" ふっと浩司は思った。
浩司は、みなっちを自分の背に回し 構えた。
突然 後ろにいた1人の兵士が、前の2人の兵士の後頭部を金属棒で殴った。 殴ると同時に強力な電流がほとばしる。
2人の兵士は、その場に倒れた。
唖然とした 表情で、その光景を見つめる浩司と、みなっち。
2人の兵士を殴った兵士が、ヘルメットを外すと、浩司とみなっちに向かってウインクした。
「あっ・・・ あの時 確か・・・川村と呼ばれた・・・」 浩司は、驚きの声を上げた。 
大都市のカフェテラスで、宗教のプラカードを持ち 近づき そして、ピエールに引き合わせた 川村と呼ばれた男であった。
「変な所で、再会しましたね ご両人」 ヘルメットを投げ捨てた。
呆気に取られている2人を尻目に、不適な笑みを浮かべ、顔で、ある方向を示した。
「詳しい説明は、後 こっちでっせ!」 川村は、そう言いながら 顔で示した方向へ走り出した。
浩司とみなっちは、川村の後を走り出した。
前回会った時とは口調が違う どうやらこちらが、オリジナル・・・地の口調らしい・・・ ふっと浩司は、そう思った。
ようやく3基の反重力クラフトが到着した。 
3人の兵士は、反重力クラフトから飛び降りると 浩司、みなっち、川村の後を追った。

「やっか・・・ この爆発騒ぎの首謀者は・・・」 しきりに歯軋りし 机を叩いた。 龍(ロン)である。
この爆発は、川村が仕掛けた爆弾が、爆発したものであった。
「忌々しいやつだ。」 両手を強く握り締めた。
「どうりで、こちらの情報が、時々漏洩していると思った。 良くぞこの基地に潜入出来たものだ・・・? 多分 内部に何人か? 協力者がいるのだろう? 一枚岩ではないからなあー・・・」
そう言い終わると オペレーターの声が飛んだ。 「逃亡者3人 建物外部へ出ます」
「よし 外に出次第 外にいる警備兵を グロテノスに変身させ 3人を捕まえさせろ。 場合によっては、殺しても構わぬ!! まだネクストノイドで無い者は、内部で、爆弾処理、爆発場所の消化などの処理にあたらせろ!!」

「ヤーナのお仕事の一環でね、時々やつら(アポリス)の秘密基地に潜入して、プレゼント(情報)を貰いに来ていたんですけれど、ちょっと今回 どじってねー・・・」 走りながら川村は、事情を説明し始めた。
「おっとと・・・」 川村は、ストップのサインを送り 物陰に隠れる。 浩司とみなっも後に従う。
複数の兵士が、通り過ぎるのを見計らい また3人は走り出した。
「見つかった時の為の超小型爆弾を仕掛けていた時 やつらの兵士に見つかってしまってねー」 また川村は、話し始めた。
「その時 偶然 起爆装置のボタンを押してしまって、あれよ、あれよと言う間に、この様で・・・ 本当はDr.中井からプレゼンとのCD-RWを貰う予定だったんですけどねー」
浩司は、ズボンの左後ろのポケットに入れたある物を思い出した。
「それにしてもご両人が捕まっているとはね・・・ ところで、どうやって逃げたの?」
「爆発の隙に・・・」 浩司は答えた。
「まあー 偶然って所? それともピエールのおっさんの言う 神の思し召し・・・?」
"ヤーナの人間にしては、出来過ぎた人材・・・?" と浩司は思った。 かなり癖の強い人物と見た。 ピエール神父の配下の人物でありながら、ピエール神父の事を "おっさん"呼ばわりしている。
「ちょっと 待ったー!」 川村は、突然止まった。 「このドアの先は、外 やつらの兵士は、変身して待ち構えているはず、覚悟を決めてもらわなければならねえー」
「ここを一気に突き抜けて、ヘリポートまで走る そこでヘリを拝借して逃げる。 いいか・・・」 川村は、念を押した。
浩司は、スボンの左後ろポケットから小型のケースを取り出すと、みなっちに手渡した。
「それ・・・?」 川村が、驚いた。 それは、川村が受け取る予定のCD-RWの収められている小型ケースであった。
「みなっち 無事安全な場所へ着くまで、だれにも渡すな いいかい」 
川村、横取りしょうとしたが、浩司に阻まれた。
みなっちは、肌身離さず持っていた持っていたショルダーバックの中にしまった。 バックの中は、みなっち自身のと浩司の貴重品が入っている。
2人が捕まった時 これだけは、取り上げられなかった。
一応中身は調べられたが、"女性としての身だしなみ・・・ " リンの一言で、返還されたのだ。
「俺が囮になる その間に逃げるんだ」 浩司は、みなっちに対して有無を言わせなかった。
「囮って・・・大丈夫なんですか・・・?」 川村は、心配そうに言う。
「何故? 俺をピエールに引き合わせた」
「それ? 何も聞いていない マークじいさんの名前を使えと言われただけ 後 どんな手段を使ってもつれて来いって・・・」
「今 分かるよ 先に俺が出る 注意を引き付けている間に、行け」 浩司は、ドアのノブに手を掛けた。
「こーちゃん・・・」 みなっちは、両手でバックを抱え 心配そうに見つめた。
「大丈夫 俺の能力 見ただろう? 信じろ すぐ後から行く」 
外へ出ると そこは、余り使われていない通用門の1つだった。 連れて来られた時の正面の入口とは違う ある程度セキュリティを施してあるのだろうが、 "川村が破ったのか? それとも内部協力者か? まあそんな事は、どうでもいい" 浩司は、そう思いながら周囲を見渡した。
だれもいない 浩司は、サインを送ると みなっちと川村が出てきた。
瞬時 浩司は、殺気を感じた。 "どこかで見張られている。" みなっちと川村をその場所で、ストップさせた。
周囲を警戒しながら1人 先へ進んだ。 このまま建物沿いに、正面入口に出なければ、ヘリポートへ行く道は無い。
頭上から 1体のグロテノスが、襲い掛かって来た。 蜘蛛に似たリアンズである。 キャラン(浩司)は、瞬時に戦闘モードに入った。
レジェンスのエネルギーが身体を駆け巡る。
リアンズは、建物の屋上から飛び降りると同時に、6本の手からスパイダーネットを発射した。
瞬時にスパイダーネットを避ける。
逃げる方向を予想していたリアンズは、着地と同時にその方向へ 口からニードルハリケーンを発射 キャラン(浩司)の動きを封じようとした。
しかし動きの速いキャラン(浩司)は、すぐ反転し避ける ニードルハリケーンの攻撃が止むと その隙に、リアンズに最接近し 右回し蹴りを繰り出した 狙いは左首筋。 まともに食らったリアンズの身体は、大きく蹴り飛ばされた。
その隙に、キャラン(浩司)は、隠れていた みなっちと川村にサインを送る。
動きが速過ぎて、みなっちも川村も 何が起きたのか? 余り理解出来ない。 
只 川村は、妙に感心していた。 グロテノスに対して、普通の人間では、変身前でも勝負にならない 不意打ちさえ食わらせれば、何とか気絶させる事が出来るが、それが限度である。 変身後のグロテノスでは、まるで勝負にならない。
それが、変身後のグロテノスに対して、互角以上に戦える人間の話など、聞いた事が無かった。
"だから ピエールのおっさん 熱心に連れて来いと言ったんだ・・・ 何と言っても あのスピード 普通の人間では不可能 目にも止まらぬ速さとは、あのスピードだろう・・・それに、一蹴りで、グロテノスをぶっ飛ばすパワーといい・・・ ネクストノイドの新型で、裏切り者? いや額にネクスタルが無い するとバイオニックかサイボーグか? いやまだ初期の基礎研究の段階で、完成などかなり先の話だ それに、動きが違い過ぎる・・・一体何者だ・・・?" と考え込んでいた。 キャラン(浩司)のサインを見ると 慌ててみなっちと共に 走り出した。
"無事 帰れたならば ゆっくりお話しを覗わねば・・・" と思った。 他だし生きて脱出に成功すればの話である。
蹴り飛ばされたリアンズは、数回首を振った程度で、すぐに立ち上がった。 普通の人間なら即死 変身前なら意識を失っていただろう しかし変身後のグロテノスでは、大した効果が無かった。
ハイパー化していないとは言え さすがにグロテノスである。 あらゆる面で、強化されている デフェンス(防御)面でも怠りが無い。
グロテノスに変身後は、滅多な事では、意識を失わない 失う時は、死ぬ時である。 そうでなければ、生体兵器としての意味が無い。
レジェンスのエネルギー利用した 技を使用すれば、簡単に倒せる相手であったが、使用すれば、相手を殺してしまう。
今度こそ 殺しはしないと硬く誓った以上出来ない。
かなり手加減しなければ、蹴り1つでも相手を殺しかねない。 相手にしばらく眠っていただける程度に、エネルギー量をコントロールしなければならなかった。 
しかしキャラン(浩司)は、自分の意思で、レジェンスのエネルギー量をコントロール出来ない。
手こずっている間に、もう3体のグロテノスに取り囲まれてしまった。
先程 反重力クラフトに乗っていた兵士が変身し 追いついたのだ。
亀に似た カータル、チーターに似た テーメム、初めて見るタイプが2体 後1体は、対戦経験もある トカゲに似た バルドスである。
こうなると レジェンスのエネルギーにある程度依存しなければならなかった。
4対1では、不利である。
リアンズ1体に対したように、スピードと手加減したパワーだけで対抗出来ない。
死火山でのフォーメーションプレイが頭をよぎった。
"何とか1対1の対戦へ持ち込み 先程 みなっち救出の時に利用した あの技(後にフィンガービームと呼ばれる)で、足元を薙ぎ払って、動きを止めるしかないなあー" キャラン(浩司)は、そう考えた。
後ろにいたテーメムが、間合いを詰め 牙を剥き出しに、飛び掛かって来た。
今までのグロテノスとは、比較にならない速さである。 ハイパータイプではないが、スピード、俊敏さでは、グロテノスの中では、ズバ抜けている。
目にも止まらぬ速さで、不意を突かれた テーメムの牙をよけたものの 鋭い前足の爪が、キャラン(浩司)の左腕に、引っかき傷を与えた。
いつもなら瞬時に、バリヤーで、防げるのだが、今は防げなかった。
レジェンスの気まぐれである。 突然エネルギーの供給量が、最低レベルに落ち込んだ。
"まいったなあー こんな時に・・・" キャラン(浩司)は、右手で、左腕の引っかき傷を押さえた 血がにじみ出たが、すぐ塞がり 何も無かったように、傷跡が消えた。
レジェンスの防衛機能の1つで、融合者が、傷などを負った場合 そのエネルギーを利用して、直ぐに修復、再生する。
しかし 非常に不安定なエネルギーである。 暴走もほとんど供給されない場合もあるのだ。
最高速で、襲い掛かったのを外されたテーメムは、面白く無かった。 過去だれ1人外された事がなかったのだ グロテノスの間でさえである。 自分より上位のネクストノイドならいざ知らす、下等と見下している 旧人類(ホモサピエンス サピエンス)にである。
噂に聞く キャラン・サンダンスの能力の一端を知る結果となった。
"この俺様より速く動けるのか・・・?" そう思いながら着地と同時に反転 再度最高速で襲い掛かった。
今度は、テーメムの方が、何か見えない強力な壁にでも激突したかのように、弾き飛ばされた。
バリヤーである。 今度は、レジェンスの防衛機能が働き 瞬時に、バリヤーで攻撃を防いだのだ。
通常のバリヤーでは、相手の勢いまでは、抑えられないのだが、今回は、弾き飛ばす程の強力なバリヤーである。
エネルギー量をコントロール出来ない難しさが、またも浮き彫りになった。
しかし そんな悠長な事は言っていられない。 直ぐにバルドスのヘルファイヤーが、キャラン(浩司)を襲った。 すぐ横に大きくジャンプし避けると同時に、右腕をバルドスに向け突き出し 人差し指で構えた。 フィンガービームの構えである。 
人差し指の先からビームが、一直線に、バルドスの両足 太もも部分を薙ぎ払った。
苦痛に満ちた表情で、バルドスは、前のめり倒れた。
死んでいない 両足に深傷を被い 立ち上がる事が出来ない。
"うまく行った" そう思いながらキャラン(浩司)は、着地した。
振り返り際を リアンズのニードルハリケーンが襲う。
瞬時に、高くジャンプし後ろ返りに、1回転 カータルに狙いを付け もう1度フインガービームを発射しょうとした。
しかし 空中で一瞬無防備になった瞬間をテーメムに狙われた 猛スピードでジャンプ キャラン(浩司)を襲い掛かった。 一瞬の差で、交わし際にフィンガービームを発射したが、狙いは外れた。
ビームは、カータルの甲羅に直撃した、しかし弾かれた。
バリヤーを持たないグロテノスであったが、カータルの甲羅の強度は、グロテノスの中では最も強度に優れており バリヤーに近いレベルを誇っている。
足を薙ぎ払う程度の威力では、簡単に弾かれてしまう。 これ以上エネルギー量を上げれば、甲羅を貫通出来るが、相手を殺す結果となる。
"ちぇ・・・" キャラン(浩司)は、舌打ちをし 着地した。 
今度は、リアンズの2本のスパイダーネットが、キャラン(浩司)の左腕を捕らえた。
バリヤーは、自らの意思か、強力な物理的、エネルギー弾などの攻撃以外は、働かない。
すぐさまフィンガービームで、スパイダーネットを焼き斬ると 高速移動で、近くにいたカータルの背後に回り 右回し蹴りをカータルの首筋目掛けて蹴り込んだ 狙いは正確である。 予想しない攻撃に、装甲の分厚いカータルは、避けきれないと読んだのだ。 しかしカータルは、俊敏な動きを見せた。 素早く右腕をLの字型に立て 首筋を防御 そのままキャラン(浩司)の蹴りを受け止めた。
ピックともしない。 パワーでは、グロテノスの中でもトップクラスであるカータルに取って 手加減した蹴りなど 全く無意味であった。
その隙に、テーメムが、襲い掛かってきた テーメムは、4つ足状態から後ろ2本で立ち上がり 両前足を高く持ち上げた 鋭利な前爪で、キャラン(浩司)の両肩目掛け振り下ろしてきた。 素早く身を交わし キャラン(浩司)は、一瞬 無防備になったテーメムの左脇腹に右回し蹴りを叩き込んだ。 まともに蹴りを食らったテーメムは、大きく蹴り飛ばされた その方向にいたリアンズと激突 2体は、そのまま建物の壁へと更に激突 大きな穴が開いた。
すぐ振り返り 両手で得意のパワー勝負に出ようとしたカータルに対して、身体を屈め 左足で、カータルの両足を払った。
仰向けに、背中の甲羅から地面に倒れるカータル 思った通りであった。 首、両腕、両足が、極端に短いカータルは、身体を起し立て直す事が出来ない。
この隙にと、キャラン(浩司)は、みなっちと川村の後を追い ヘリポートへ向かって走り出した。

1部始終をマルチスクリーンで見ていた龍(ロン)は、「やはり並のグロテノスでは、歯が立たぬかー 仕方ない・・・」 後ろに控えていた リンを始めとする5人を近くに呼び寄せた。
「あの3人 ヘリで逃げる気だ 何としてでもこの島から出すな 殺しても構わぬ さあー行け!!」
「はっ!」 5人は、一礼すると 屋上直行の緊急用高速エレベーターに乗り込んだ。
屋上に到着すると 5人は、変身を開始 リンは、蝶に似たビューカー 大男4人は、くわがた虫に似た アギラに変身した。 全て龍(ロン)が、独自に開発した最新飛行タイプのハイパーグロテノスである。
高速飛行能力からホバーリング(空中停止)も可能であり リンは、その戦闘能力の一部を 闘技場で見せているが、全てを見せたわけではない。 アギラについては未知数であった。
変身終了後 5体は、空へと舞い上がった。

先にヘリポートへと到着した みなっちと川村であったが、ここで足止めを食らった。 5体ものグロテノスに待ち伏せされていた。 3体は、亀に似たカータル 2体は、とかげに似たバルドスである。
後一歩の所で、待ち伏せしていた5体のグロテノスが現れ じりっじりっと後退を余儀なくされていた。
川村は、上半身の戦闘服を脱いだ。 左肩からは、ショルダーホルスターがぶら下がっており 銃が仕込まれていた。 緊急、護身用である。 右手でショルダーホルスターから銃を抜いた。 コルト45ガバメント 米国軍及びFBIなどが正式採用している拳銃の1種類である。 セフティを解除し構えた。 この程度の武器では、全く通用しない事は、解りきっている。 気休めにもならない。
1体のグロテノスの額にあるネクスタルに狙いを付けた 命中すれば、一瞬ひるむ ただ同時に5体は、不可能である。
その時だった 後ろから何かが大きく上空をジャンプ 空中で1回転したかと思うと 1体のカータルの腹の甲羅の部分に、キックを食らわした 昔ヒーロー者の必殺技のライダーキック(仮面ライダーの必殺技 石森 章太郎先生ありがとう)そのものである。
キックを食らったカータルは、倒れ そのまま背の甲羅事 大きく地面をスライディングする。
キックを食らわした人物は、その反動を利用し 空中後ろ1回転をし みなっちと川村の前に着地した。 キャラン(浩司)である。 あっと言う間に追いついたのだ。 
「お待たせ」 キャラン(浩司)は、後ろの2人に言った。
「こーちゃん 無事だったのね・・・」 みなっちは、思わずうれしそうに声を出した。
「こいつら(グロテノス)は、俺が何とか食い止める、その間にヘリで脱出を・・・」 キャラン(浩司)は、後ろの2人に言った。 先程からレジェンスのエネルギーの変調・・・いや不安定さが、元々エネルギーの安定性の全く無いレジェンスであったが、一段と酷くなり始め 焦りを感じていたのだ。 暴走気味か、全くエネルギーが出ないか? どちらにも揺らいでいる。 このままでは、2人を守り切れない そう思い 一刻も早く2人を脱出させたかった。
「なめやがって・・・」 1体のカータルが、そう言うと 両肩の甲羅が上下に開き 2門の銃身が伸びてきた 素早く3人に狙いを定め 2門の銃身が火を噴いた。 ボンバーキャノンと呼ばれる 高エネルギーの弾丸である。
キャラン(浩司)は、両腕を前へ突き出し 両手を立てた マグナムアタックの構えに似ているが、違っていた。 前面に大きな目に見えないエネルギーの壁 バリヤーを盾のように張ったのだ。 2門のエネルギー弾は、バリヤーに弾かれ 5体のグロテノスの近くに着弾 爆発した。 エネルギー量を制限していたらしく 小さな土煙が上がった程度であった。 しかしキャラン(浩司)には、願っても無いチャンスであった。 バリヤーを解除し 素早く後ろの2人を両腕で抱えると 大きくジャンプ ヘリの近くに着陸 2人をヘリに乗せた。 前後2人ずつ乗れる 小型のヘリである。
「ところで、ヘリ操縦出来るのか?」 キャラン(浩司)は、パイロットシート(操縦席)に座った川村に聞いた。
「何でも 操縦出来まっせ・・・ 旦那!!」 川村は、場違いの陽気な声を上げ 耳にレシバーを装着し エンジンをスタートさせた。
「早く 後ろの彼女の横に座って!!」 川村は、大声で叫んだ。
「先に、行ってくれ ここは、俺が食い止める。」
そう言うと キャラン(浩司)は、またも目にも止まらぬ速さで、5体のグロテノスの前へ立ちはだかった。
「本当に いいですかい?」 川村は、後ろに座る みなっちに聞いた。
「いいから 早く・・・」 みなっちは、不安な表情を浮かべながらも答えた。
「それなら 行きまっせ・・・」 川村は、操縦桿を引いた ヘリは、上昇を始める。
川村は、5体のグロテノスと対峙する キャラン(浩司)の様子を見ながら 後ろに座る みなっちに再度確認をした。 「本当に、大丈夫なんですかい?」
「大丈夫よ・・・だって・・・空も自由に飛べるもの・・・」 言葉とは、裏腹にかなり心配顔で、小さくなって行く 浩司を見ていた。
「あの旦那 空も飛べるんですかい・・・?」 川村は、更に驚きを増した。

「お前らの相手は、この俺だ!」 5体のグロテノスの前へ立ちはだかったキャラン(浩司) 瞬時に5体の動きを観察する。
1体のカータルが、飛び出してきた 接近戦による得意のパワー勝負を挑もうとしているのか・・・? いや違っていた ダッシュしたかと思うと頭、両腕、両足を甲羅に格納 そのまま高速スピンを掛け 体当たりを試みた スピンアタックと呼ばれる技である。
先程 蹴り飛ばされ 仲間に起き上がらせてもらったカータルであった。 名誉挽回のチャンスと思い 得意のパワー技で、勝負を仕掛けてきたのだ。
すさまじい唸りを上げ キャラン(浩司)に襲い掛かる 寸前で避ける。 避けられたスピンアタックのカータルは、後ろの着陸中の大型ヘリに激突 大型ヘリを粉々に突き破り そのまま大きな弧を描き反転 再度遅い掛かって来た。
その間に、キャラン(浩司)、同時に4体のグロテノスとの戦いを強いられていた。 スピード面では、他のグロテノスよりも劣るものの 強力なパワーを誇る カータルとバルドスである。
接近戦によるパワー勝負を避け 圧倒的有利なスピードで、足元をフィンガービームで、薙ぎ払い 動きを止め 2人が乗ったヘリが、安全と思われる距離まで離れるまで時間を稼ぎを・・・と考えていた。
しかしスピンアッタクのカータルに、襲われ 思うように動けない。
1度 スピンアタックのカータルに対して、フィンガービームを発射したが、ビームは、簡単に弾かれ四散してしまった。
かなりの強度を誇るカータルの甲羅 高速スピンが掛かり より強度を増していた。
防戦一方である。
新たな気配を感じた。 空だ、上空に今戦っているグロテノスなど比較にならない強力な気配を感じた。 間違いなくハイパーグロテノスである。
上空を見ると そこには、5体のハイパーグロテノスが、高速飛行していた。 先頭の1体は、間違いない あのリンだ。 赤を基調したカラフルな美しい翅を生やし 美しいフォルムで、高速飛行している。 その後ろには 初めて見るタイプ くわがた虫に似た 4体のアギラであった。
"まずい・・・!!" キャラン(浩司)は思った。 5体のハイパーグロテノスは、ヘリを追っていた。 追いつかれるのも時間の問題である。
"こんな所で遊んでいる暇が無い。" 後ろからスピンアタックのカータルが、襲ってきた。 素早く大きくジャンプで避け そのまま飛行に移った。
逃してなるものかと言わんばかりに、4体のグロテノスは、キャラン(浩司)に向かい それぞれのボンバーキャノン、ヘルファイヤーを発射した。
すぐ振り返り ホバーリング(空中停止)状態で、バリヤーで何とか防ぐが、またもここで、レジェンスのエネルギー量が不安定になり バリヤーが破られそうになった。
"何とか 持ちこたえてくれ・・・" 両腕を前へ突き出し キャラン(浩司)は祈った。
この時 相手の攻撃が一時中断した。 スピンアタックのカータルが技を解くと 地面に着地 頭、両腕、両足を甲羅から出すと 両肩から2門の銃身を出した。 5体での一斉射撃を狙ったのだ。 4体での一斉射撃をバリヤーで防がれているのに気づき 5体による更にパワーアップでバリヤー破り そのまま木っ端微塵に吹き飛ばそうと考えたのだ。
"しめた チャンス・・・" キャラン(浩司は、バリヤーを解除 右腕を集結しつつある5体のグロテノスに向かって突き出した。 マグナムアタックの構えである。
狙いは、5体の集結する場所の足元付近 直接弾を撃てば、相手を殺してしまう しかし足元付近に着弾させ その爆風で吹き飛ばせば・・・と思った。
しかし 今度は、エネルギー量が上がり過ぎる。 しかし悠長に、エネルギー量を思った規模まで、コントロールなど出来ない。
集結すると、5体のグロテノスは、キャラン(浩司)に向かって 一斉射撃を開始した。
5体から発射されたエネルギー弾は、螺旋状渦巻き 1つの強力なエネルギー弾となって、キャラン(浩司)に襲ってきた。
"仕方ない" キャラン(浩司)、1つの塊となって向かってきた強力なエネルギー弾に向かって、マグナムアタックを発射した。
2つの強力なエネルギー弾は、中間点で衝突 大爆発を起した。
大爆発に伴う 強力なソニックブーム(衝撃波)は、地上の5体のグロテノスを吹き飛ばす。
キャラン(浩司)も すぐ球体のバリヤーを張り防ぐが、ソニックブーム(衝撃波)の威力は凄まじく、そのまま吹き飛ばされそうになったが、何とか持ち応えた。
ソニックブーム(衝撃波)が収まると、体勢を立て直し 2人の乗るヘリを追いかけた。

リンを始めとする5体のハイパーグロテノスは、みなっちと川村が乗るヘリに追いつき 行く手を阻んだ。 島から少し離れた場所であった。 全くスピードが違い過ぎる。
その時だった 突然 島から強力なソニックブーム(衝撃波)が襲う。 ヘリの機体は、大きく揺れ 後ろに乗るみなっちは、悲鳴を上げた。
川村は、必死に操縦桿を握り 機体の安定を保つ。
ソニックブーム(衝撃波)が、収まった。 ソニックブーム(衝撃波)に耐えた5体のハイハーグロテノスとヘリの間に、いつの間にかホバーリング(空中停止)状態のキャラン(浩司)の姿があった。
キャラン(浩司)は、先頭のリンと対峙している。
"私の可愛いダーリンちゃん よくぞ無事でここまで、来れたわね・・・でも今度は簡単に行かないわよ この私が相手よ 先にこちら(戦闘)の方をたっぷり楽しんで、味合わせてあげる・・・ その後は、ゆっくりあちらの方も・・・ お楽しみね・・・" 舌をなめずり 色っぽい欲望が、リンの脳裏を過ぎる。
いつも相手に合わせ 受身に回る事の多いキャラン(浩司)であったが、今度は、先に仕掛けた。
初のドックファイト(空中戦)である。 かなりの不安感があった。
それに、これ程 長時間戦闘モード状態を継続した事がなかった。
長時間及びエネルギー量を上げると 不安定性が増してくると感じていた。
早めの決着(ケリ)を付けたかった。
瞬時にリンの目の前からキャラン(浩司)の姿が消えた。
ハイパーグロテノスで、変身後のリンでさえ見切れぬ速さである。
見切ったのは、モニター画面を注視していた 更に段違いの戦闘力を持つデストロである 龍(ロン)ただ1人であった。 
キャラン(浩司)は、リンの後ろにいた4体のアギラと対峙した。

「こやつ・・・ まだ能力を隠していたのか?」 龍(ロン)は、歯軋りをした。 まさかここまでとは思っていなかった。 そのスピードは、ハイパーグロテノスを超え デストロに近いスピードであった。
「いかん このままでは・・・」 5体のハイパーグロテノスでさえ勝負にならないのが明らかである。 龍(ロン)にとって5体のハイパーグロテノスは、虎の子の存在。 今 この時点で失う理由には行かない。

あっと言う間に、2体のアギラが、翅を切り取られた。 キャラン(浩司)がフィンガービームで、瞬時に焼き切った。
2体のアギラは、何が起こったのかさえ解らずそのまま海面へと墜落する。
ケタ違いの能力を見せ付けた。
キャラン(浩司)は、5体のハイパーグロテノスの翅の動きが妙に不自然だと感じていた。 全くと言っていい程 羽ばたいていない 翅から反重力を発生させて 飛行を可能にしているのではないかと思った。
翅を切り取れば、飛行出来なくなるはずと思い 翅だけを焼き切った。
結果は、キャラン(浩司)の予想通りであった。

「いかん このままでは・・・」 龍(ロン)は、両手をテーブルに叩き立ち上がった。
「至急 全カータルをA-13ポイントに集結させろ 地上から長距離砲ボンバーキャノンで援護射撃だ! それと まだ残っている飛行タイプのグロテノスも全て出撃させろ!」 龍(ロン)の命令が矢継ぎ早に飛ぶ。
「龍(ロン)様・・・」 1人のオペレーターが龍(ロン)の方を振り向いた。
「何だ!!」
「現在 この基地及び日本国内には、飛行可能のグロテノスはいません」
「何ー!! 飛行可能なグロテノスはいないだと・・・ どう言う事だ」 龍(ロン)は怒りを露にした。
「はっ 龍(ロン)様のご命令で、飛行可能なグロテノスは、全て中国の本部研究所で再調整中です」
「そうじゃったわい・・・」 龍(ロン)は、5体の飛行可能なハイパーグロテノスの完成で、この間に、日本国内にいる ノーマルタイプの飛行可能なグロテノスの更なる飛行能力を向上させる為 再調整を命じていた。
龍(ロン)は、腰をソファに下ろすと両腕を組んだ。
「仕方あるまい 長距離砲を持つグロテノスを全てA-13ポイントに集結させろ 集結次第 一斉射撃だ」
龍(ロン)は憮然とした表情で、モニター画面を注視した。

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