LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 プロローグ (宇宙誕生)
 無数に存在する全ての多重宇宙が誕生する遥か以前・・・ ここは無 何も存在しない無の世界・・・

 ここは、時間も空間も物質もエネルギーも存在しない 無の世界 何も存在せず、永遠に何も生まれないように思われる世界であったが、量子論では、非常に短い時間の中では時間や空間やエネルギーが1つの値をとりえず、たえずゆらいでいることを明らかにしている。 このゆらいだ "無" から、真空エネルギーが高い状態にある超ミクロ宇宙が「トンネル効果」によって突然誕生する事を示している。 トンネル効果によって生まれた宇宙の直径が10-34{10の-(マイナス)34乗}cmしかない、素粒子よりも小さな超ミクロ宇宙だった。
"トンネル効果とは、ミクロの世界の粒子は、非常に短い時間の間にエネルギーの壁を通り抜けることが出来る。 これを「トンネル効果」と言う。 コンピューターのIC(集積回路)を流れる電子も、このトンネル効果により制御されている。"
突然トンネル効果により 素粒子よりも遥かに小さく高い真空エネルギーを持つ超ミクロ宇宙が誕生し 高い真空エネルギーは、アルバート・アインシュタイン博士の宇宙項と同様 斥力(せきりょく)となって 空間を急膨張させる。
これが宇宙のインフレーションであり 1秒にも満たない 10-36{10の-(マイナス)36乗}/sec(秒)のわずかな時間で1000億光年以上に急膨張させる。 誕生した宇宙は消滅して、無に戻るよりインフレーションを起こして膨張したほうが宇宙のポテンシャル・エネルギーが低くなるからである。 自然は常にエネルギーの低い状態へと移行する。 宇宙はいったん誕生すると、インフレーションを起こしてマクロ宇宙へと進化するよう運命づけられている。
インフレーションの最中 宇宙では、高いエネルギーの古い真空(もしくは、インフラトンとも呼ばれる触媒物質=まだ仮説の域を出ず、実在したかについては諸説あり)が、低いエネルギーの新しい宇宙へと相転移が起こる。 エネルギーは常に高い状態よりも低い状態へと移行する。
エネルギーは、相対的により低い状態の方が、より安定する為である。
宇宙が誕生するやいやな、真空エネルギーによってインフレーションを起こす。 この時 急膨張するのは、高いエネルギーを持った古い真空である。 つまりインフレーションを起こしている宇宙の中には、古い真空の高いエネルギーが多量に蓄えられている。
真空が相転移する際、このエネルギーは、光と熱エネルギーとなって一挙に解放される。 こうして相転移後の宇宙は光と熱エネルギーに満ちた火の玉になる。 これが、従来考えられていた "ビックバン(大爆発)" まさに宇宙誕生の瞬間である。
宇宙誕生の瞬間 初期条件は、確率論で決まる微妙な差によって、多種多様な物理法則の確定した異なった無数の別々の宇宙を誕生させる。
(量子論、量子重力論、アルバート・アインシュタイン博士の一般相対性理論 特殊相対性理論、アレキサンダー・ビレンキン博士の 無からの宇宙創生論、インフレーション宇宙論、ビックバン宇宙論、ニールス・ボーア博士を中心としたコペンハーゲン解釈、科学雑誌 ニュートンなど その他 多数参考)

 (注)
 古い真空エネルギー)が、新しい真空エネルギーに相転移する際 古い真空エネルギーの中に新しい低い真空エネルギーが至るところで、泡のように発生し急膨張し古い真空エネルギーを圧縮 圧縮された古い真空エネルギーは、自己の質量に耐え切れずブラックホールになり 至る場所で多数誕生する。 ブラックホールは、周囲にある物質を吸い込み 事象の水平面から特異点へ 特異点からワームホールと送り込む ワームホール内から、トンネル効果により新たな宇宙が誕生させる。 多重発生宇宙論である。 これについては詳しい説明を省略させていただきます。
 もう1つ、高いエネルギーを持った古い真空が、低いエネルギーを持った新しい真空へ相転移する歳 余った余剰ポテンシャル・エネルギーが、光と熱エネルギーとなって一挙に解放 これが最初のビックバンであり その光と熱エネルギーから最初の物質 粒子である素粒子が、誕生 対称性により その正反対の性質を持つ反粒子 つまり反物質が、同時に遂になり誕生 ところが、現在この宇宙では、反粒子 つまり反物質は存在せず、もし反粒子 つまり反物質が存在すれば、正反対の性質を持つ粒子との衝突により アルバート・アインシュタイン博士の超有名な方程式 E=mc2により対消滅 光と熱エネルギーに変換され 宇宙は永遠に誕生出来ないはずが、素粒子が、6種類以上誕生すれば、もちろん対生成により同数の反粒子 つまり反物質も誕生しますが、ここで僅かな微妙な差 100億個にプラス1個に対して、100億個程度の微妙な差により 対称性の破れが生じ 現在 宇宙を構成する粒子 つまり素粒子のみが存在する宇宙が誕生。 これが有名なCP対称性の破れ 小林、益川理論。
 この時 対消滅により解放された光と熱エネルギーが、2度目のビックバン・・・・・
 これについても詳しい説明を省略させていただきます。

 プロローグU
 遥か太古 まだ我々の住む宇宙が誕生する遥か以前・・・
 無の世界で、またトンネル効果により新たな超ミクロ宇宙が誕生した。 すぐにインフレーションを起したが、何故か? 直径5mmまで膨張した瞬間 膨張が急停止 そのまま2つの完全球体に分離した。 1つは、純白な色をした球体 もう1つは、真黒な色をした球体であった。 後にレジェンスと呼ばれる球体である。 純白の球体を ホワイトレジェン 真黒の球体をブラックレジェンと呼ばれるようになった。 無数の宇宙を作り出す事の出来る想像を遥かに超えたポテンシャル・エネルギーを持つ2つの驚異の球体であった。
2つの球体(レジェンス)は、無の世界にただよい また2つの球体(レジェンス)が1つに結合し 再度インフレーションを起こす事なく ただ無の世界をただよい続けていた しかし今から約137億年前 トンネル効果により突然誕生した 新たな超ミクロ宇宙がインフレーションを起こし急膨張した際 その宇宙に取り込まれてしまった。 その宇宙こそが我々の住む宇宙であった。

 (注U)
 時間とは、超ミクロ宇宙誕生と同時に発生するものであり 無の世界には、時間も空間も何も存在出来ない状態です。 我々の住む宇宙が誕生する遥か以前・・・につきましては、概念的に理解いただければと思います。
我々の住む宇宙も 無の世界に存在すると言う パラドックス(矛盾)があります。
いや 無の世界と同時に共存している状態と考えたほうが、より適切だと思われます。
このパラドックスに関して、量子論を使って説明を、試みてみましょう。
原作者の独自理論及び独自解釈です。 つまり独断と偏見の自己流解釈。
 こちらについては、詳しく読みたい方は、

 レジェンスとは、1つの値の状態で確定されていない 無数の状態が、同時に共存している 無の状態です。
レジェンスは、無の状態が無の状態を誕生させ、2つの球体に分離した 非常に特殊な宇宙と言うべきか? 状態(存在)です。

 プロローグが長くなり過ぎましたが、ここから壮大なストーリー? が始まります。
最後までお読みいただければ、光栄です。

 融合 Part1

 時は21世紀の初頭・・・ ここは日本のG県 人里離れた山間部の奥地 険しい峰々が連なる山間部 その山間の鬱蒼と木々が生い茂る山の中 場違いのように完全舗装された2車線の1本道を 真黒なスポーツGTタイプの2ドアクーペが走っていた。 周囲には他の車どころか人影、人家も無い寂しい道である。
この日は小春日和の暖かな晴天であった。
「ねえー どこへ行くの?」 小柄で痩せ気味だが、かわいい感じの女性が、助手席から右隣のドライバーシートで、運転する恋人に、ややキツイ目つきで睨むように聞いた。 いつもの事である。 ドライバーシートで運転する彼女の恋人は横目で答えた。 「ちょっと面白い所・・・?」 急勾配、急コーナーが続く山道を的確で、左足クラッチを巧みに使い 左手で素早いシフトチェンジを繰り返し 今時珍しく6MT(6速マニアルミッション) 現在主流のAT、セミAT DCTではない古典的であり もはや絶滅直前の いやかって地球上で大繁栄しながらも謎の絶滅をした恐竜の様な もはや生きた化石的な 操作の難しい 1部マニアックのドライバーのみ許される時代遅れ、時代錯誤の6MT車を華麗なハンドルさばきを見せ 完璧にクリアしながら車を山頂へと登らせている かなりのドラテクの持ち主。 もはやセミプロ級。
かって、首都高エリアなど ノーマル車でありながらも走り屋の真似事らしき事をしていた名残?でもあった。
「ちゃんと 教えてくれるて 言ったじゃーん?」 「ねえ こんな山奥で・・・変な気・・・起さないでよね こんな所 嫌よ・・・」 かなり膨れ面で、彼女は睨みつけた。
「大丈夫 そんな気ないよ・・・」 恋人の男は軽く受け流す。
ここは、G県の人里をかなり離れた山奥にある その昔 古代ピラミッドだったと言う山の山頂近くまで行く道であった。
「この前のデートの時・・・」 彼女はまたしゃべり始めた。 まだ気にしているのか・・・ 恋人の男は、そう思った。
前回のデートの時だった。 2人の住む街の隣県にあるA県N市 人口200万人を超える大都市の中心繁華街 仲良く腕を組み歩いている所を 突然前方から現れた男に呼び止められた。 
「あなたは神を 信じますか?」 C宗教のお決まりの勧誘である。 
待っていましたとばかりに、恋人の男の目は輝いた。 恋人の男は、量子論、アインシュタインの相対性理論などの宇宙物理学を中心に、天文、天体、惑星学、地質学、プレートテクトニクス理論、スーパープルーム理論・・・etc 他にも複数の考古学などにも精通し 膨大な知識量と独自理論、独自解釈を誇る アマチュアの研究家である。 無神論者で、神々=EBE's(Extra- terrestrial Bological Entities イーバーズ=地球圏外知的生命体)説を取る恋人の男に取って、格好の餌食であった。 
旧約聖書の中にある エゼキエル書第1章 バビロン捕囚時代 エゼキエルと言う神官(祭司)が会った(見た?)と言う神の姿を言わせ 面白がった。 "わたしは、見た・・・" で始まる。 身体の色は青銅色で、四面体でそれぞれに顔があり 足が4本で、足の1本1本にそれぞれプロペラが付き回転しており 足の底部には、キャタピラ・・・ いや車輪らしき物が付いており 尻と言うべきか? 4本の足の生えている またの部分から炎を吹き出し 轟音を上げ 空を飛びまわっている姿についてである。 「まるで、アポロ宇宙船の月面着陸船 イーグルに似ているのじゃないの・・・? ・・・怪獣ゴット(神)だー!! わあー怖いよー 豆腐の角で、頭をぶつければ死ぬのかな? ・・・etc」
オーバージェスチャーで演技(本気?)で、怖がって見せた。 バカにするのも少々度が過ぎる。
声を掛けてきた男は、「お前は、悪魔か!!」と捨てゼリフを吐き 憮然とした表情で足早に去っていったが、もう1人納得しない人物がいた。 彼女である。 彼女は素朴なC宗教の信者であった。 「また それを言う!!」 「いい加減に、それ止めてくれない!!」 素朴な信者の彼女に取っても許しがたい事であった。 自分の信じる神、宗教を徹底的にバカにされたのだ。  「いつになったら その性格 直るの!!」 肩より少し伸び 柔らかなブローのかかった髪を振った。 本気で怒っているが解る。
「こーちゃん あんたって人は・・・」 恋人の男の名前は、和田 浩司(ワダ コウジ) 彼女や周囲の人から "こーちゃん"の愛称で呼ばれている。 身長173cm 中肉体系で、胸板が厚く一見スポーツマン風に見えるが、運動能力、反射神経共に並の上程度。 ルックスも同様 並の上程度 今 流行のイケメンには程遠い。
後に、キャラン・サンダンスと名乗り または、ラグナロック(神々を滅ぼす者 もしくは凌駕する者と言う意味)とも呼ばれた人物であったが、元々平凡で、どこにでも転がっている男性であった。
「ごめん みなっち もう絶対言わないから・・・」 と言いながら "みなっち" と呼ばれる彼女の顔を そーっと覗き込んだ。 マジヤバ・・・である。  両目は吊り上り完全に怒っている。 非常に危険な状態だ。
みなっちと呼ばれる彼女 名前は幸田 美那美(コウダ ミナミ) 恋人の浩司を始め周囲の友人、知人からは、みなっちの愛称で呼ばれる。 肩より伸びた髪にやわらかなブローがかかり 色は茶髪に染めていた。 身長は、151cmと小柄で、かなり華奢であるが、プロポーションは良く 胸は丁度良い大きさに膨らんでいる。 美人と言えなくはないが、どちらかと言うと かわいく愛らしいルックスと、プロポーションの良さが、魅力であり 印象的であった。
いつも2人の間に起きる痴話喧嘩である。 大体いや100% 浩司がその原因を作っていた。 圧倒的豊富な科学の知識を持て余し気味の所へ大量のストレスを溜め込み 何らかのきっかけで、圧倒的豊富な科学の知識を利用し C宗教を勧誘する相手に対して、皮肉ったり バカにしたりして、ストレスを発散させていた。
その性格を知っているみなっちであったが、いつも直して欲しいと願い 事あるごとに、注意しているが、まるで直る気配がない。 逆に、悪化の一途を辿っている・・・そんな風に感じられていた。
"相手にしなければいいのに・・・" これが、みなっちが浩司に対する本音である。
こんな状態ならば、普通 ビンタの一発を食らい浩司が捨てられる運命であったが、決してそうにはならなかった。 複雑な家庭環境で育ったみなっちに取って、浩司の存在はなくてはならないものだった。 唯一甘えられる存在であり わがままを言えるのが、浩司だけである。 浩司といる時が、一番気楽にいられた。 普通の恋人達と同様 親切さ、やさしさ、あたたかさも同様であった。
何よりも浩司の温もりに包まれている時が、1番幸せを感じられていたのだ。
複雑な家庭環境で育ったみなっちを そのまま受け入れ包み込んでくれたのは、浩司だけである。
浩司も同様 みなっちといる時が、一番幸福な時間だった。 みなっちの無邪気で子供ぽい笑顔が好きであった。 みなっちが浩司に対して色々気を使ってくれるやさしさなどもある。 素直で飾らない、変に自分を着飾る事もしない、逆に卑屈にもにらない 自然体で接してくれるのだ。 何よりも 他の女性に全く相手されない浩司が、唯一まともに相手にしてくれるのは、みなっち他だ1人である。 互いになくてはならない存在であったが、春は長く続いていた。
もちろん浩司の方は、みなっちとの結婚を考えプロポーズもしていたが、これは、みなっちの方に問題があった。 複雑な家庭環境で育ったのが起因し踏み切れないでいた。
それは、浩司もよく知っていた。 そんなみなっちの気持ちを汲んで、結局 付かず離れずの状態が長く続いていた。
無期限お預けの状態である。
今回は、今まで我慢していたのが、ついに爆発した。 「ねえー!! 私の話 ちゃんと聞いているの!!」 もうこうなるとお手上げである。 荒れ狂う台風(カテゴリー5 史上最大級の超大型ハリケーン)を過ぎ去るのを待つしかない。
この2人の間は、みなっちが、主導権を握っていた。 当初はそうではなかったのだが、いつの間にやら立場が逆転し 浩司がみなっちの尻に引かれ 頭が上がらない状態だった。
この後については、読者の想像に任せよう。
その後 浩司は、何度もみなっちに携帯電話に電話しても留守電 ようやく繋がっても当初は、すぐにぶち切りだったのは、言わずと知れた事である。
ようやく台風が過ぎ去り 久し振りのデートであった。 久し振りに会った時 浩司はみなっちに何度も謝罪 「まあー 仕方ないかー・・・ 許してあげよう・・・」 みなっちは、勝ち誇ったように浩司を見下した。 それで、何とか丸く収まる それが2人の関係であった。
「もう少しで着くよ。」 この前の一件 またぶり返されては、たまったものではない。 浩司は、話を別にそらした。
「うーん・・・」 膨れ顔で答えるみなっち まだ納得していない様子である。 浩司の愛車 ブラックパールメタリックに輝く 名車 R-34 スカイラインGT-R・VspecUニュルをかなり広がった そう車数台分は駐車できるだろう大きく広がった路肩に止めた。 丁度折り返し地点で、ここから先は、下りとなっている。
(発売当初 史上最強のモンスター(怪物)マシーンと謳われたR-34 スカイラインGT-R その最終モデルにして最強と謳われたVspecUニュル 浩司は、発売の年度の2001年に新車で購入 暫く慣らした後 近所の幼少の頃から知る 近所のおじちゃんと呼んで慕っていた 個人チューナーに依頼し改造を施した、この個人チューナー 裏の世界では、伝説のチューナーとして知られ、"悪魔の天才チューナー"と呼ばれる男で、顧客を選ぶ事で知られていた。
浩司の場合  浩司が幼少の頃から知っていた為 快く引き受けてくれた。
普通ならエンジンを中心に、フルチューンを施すはずか、何故か? 浩司はライトチューンにこだわった。
主な改造点は、エンジン本体には全く手を入れず、コンピューターロムの変更 リミッターカット、マフラー変更など 足回りは、245/40ZR18のまま変更程度のビギナークラス 。
スペックは、RB26DETT L6DOHC TWIN TURBO 総排気量2568cc 高度な電子制御によって4輪に自在に駆動力を配分できる4輪駆動システムアテーサE-TSと呼ばれる4WD。
それでも実測値最低でも馬力450PS以上 トルクも55kg-m以上も発揮 高速道、首都高向けになっている。
浩司の車を改造後 悪魔の天才チューナーと呼ばれた男は、持病を悪化させ そのまま帰らぬ人となり 浩司の車が最後の遺作となった。
それを知るマニア、コレクター等からとんでもない金額が提示され続けているが、浩司は、全く手放す気はない。
浩司にとって近所のおじちゃんが手を入れくれた車であり、マンガ 湾岸ミッドナイトの主人公 アキオの愛車 悪魔のZと呼ばれる初期型S30Z同様 最後の最後まで付き合うと硬く決めていた。
だが、恋人のみなっちは、この車の無骨なハコ型スタイル 異常なパワーなど その他で大嫌いであった。
こんな車のどこがイイのか、みなっちには、理解出来ない。
(本当は、早く手放し オシャレで高級な車に変えて欲しいと常々願っている.)
「何だか 薄気味悪い場所ね・・・?」 車を降り鬱蒼と生い茂る木々を見渡しながら みなっちは言った。 「ここ何なの?」不安そうに言う。
「何・・・この山 知る人ぞ知る 古代ピラミッドだったと言う山さ」 路肩から山頂を指差しながら 何事でもないように答える浩司であった。 古代ピラミッドだったと言う山の山頂まで、後少しの所に、山の一部を切り取り路肩が作られ そこに車を止めていた。
「ねえ? どうするのこんな所で・・・」 みなっちは、こんな所へ連れてこられた事に納得していない。 てっきり素敵な場所に連れて行ってもらえると思っていたのだ。
「この山 正三角錐になっているだろう 山頂付近まで登って反対側へ行く そこで、何かピラミッドだったと言う証拠を探す。」 浩司は答えながら山に登ろうとしていた。
「私 嫌 ここで待っている」 みなっちは憮然と答えた。 全く興味の無い話である それだけならまだしも 後少しと言え 山を登り 反対側を下りながらピラミッドだったと言う証拠を探すだなんて真っ平ごめんの話しである。 こんな事 浩司一人にやらせて 自分は、車の中で、空でも眺めていた方が、遥かにマシである。
浩司に取って、みなっちをここに連れて来たのには理由があった。 この山は古代のピラミッドで、宇宙人との関係が指摘されていた。 何らかの証拠を見つけ 神々=EBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)説を みなっちに信じて欲しかった。 この前のケンカの一件 結構気にしていた。 そうすれば、ケンカだけは防げると思っていた。 性格が知れている 全く反省の色がない 相手にしなければ済むだけの事である 下らない事にこだわる。
「仕方ないなあー 車から離れるなよ」 そう言い残し 一人山頂に登り 反対側へと下っていた。
とは言うものの・・・過去 何ら証拠らしき物さえ発見されていない場所であった。
単なる噂の域を出ていない場所で、そんなに簡単に見つかるはずなどなかった。 余り手入れの行き届いていない山の中 下って行くだけでも大変な場所である。
"やはり帰ろう・・・" ある程度下った所で、そう思い またもと来た道を登り始めた瞬間 下の方から何か? 人の声がした。 近くにあった太い木の幹に捕まり 何気なく声のした方を見ると そこには、テラス状に大きくひろがった場所があった。 そこには、木々生えていない 生えているのは背の低い芝のような雑草だけである。 かってUFOの発着場所だったと言われる場所であった。 かなり下の方であったが、見られない黒を基調とした戦闘服であろうか? 両肩から胸にかけてプロテクターらしき物を身に付け 頭はヘルメットを被り目の部分には黒のゴーグルらしき物で覆い 足には、ひざ下まである長いシルバー色のブーツを履いた 2人の男らしき人物が、何かを追いかけているようである。 それも考えられない程の尋常でないスピードだ。 追いかける先を見ると 1人の男が、傷を負いながら必死に逃げている。 追いつかれるのも時間の問題であった。 あっと言う間に追いつかれてしまった。 何かをしやべっているが、この距離からは聞こえない。
見られない戦闘服らしき物を身に着けている男達は、傷ついた男の両腕を掴むと軽々と持ち上げた。 浩司は慌てて太い木の幹に隠れ 顔だけをそっと出して様子を覗った。 2人の男は、持ち上げていた男を軽々と投げ飛ばし いきなり変身を始めた。 1人は、とかげと人間を合わせた奇怪な生物である もちろんしっぽも生えている。 もうぬ1人は、両腕の下から2本ずつ腕が生えてきた 計6本の腕である 全身は真黒な剛毛に覆われ 蜘蛛と人間を合わせた こちらも奇怪な生物であった。
浩司は思わず息を呑んだ。 "子供向けのヒーロー者、怪獣ものの撮影ではないのに・・・" もしそうならば、大掛かりな撮影隊がいるはずである。 どこにも撮影隊など見当たらないのだ。 まだこの時点 浩司は何も知らなかった。 変身した男達は、ネクストノイドと呼ばれる。 人類(ホモサピエンス サピエンス)に、他の生命体のDNA(遺伝子)の1部を組み込み 戦闘用兵器として強化改造を施した生体兵器とでも言えるニュータイプの人類であった。 その中のグロテノスと呼ばれるカテゴリーに属し とかげに似ているのは"バルドス"、蜘蛛に似ているのは"リアンズ"と呼ばれていた。 しかし浩司には、そんな事 知る筈もない。
怪物に変身した2人は、傷ついた男をまるで、人形かおもちゃにでも弄(もてあそ)ぶように、傷ついた男をズタズタに切り裂いてしまった。 最後にバラバラになった死体を一箇所に集め バルドスと呼ばれる怪物が、口から炎を吐き 死体は瞬時に灰になり消えた。
その一部始終を見ていた浩司の顔は引きずり声もでない。 金縛りにでもあったような状態であた。 そして或る事を思い出した。 古代ピラミッドと噂される山の反対側 ちょうど浩司のいる側で、何件かの行方不明事件があった事を・・・ 警察はろくな捜査もせず 行方不明者は、家出同然の扱いである。 一部UFOマニアの間では、UFOによるアブダクション(誘拐)だと主張する者もいたが、ここでは、一瞬の未確認怪光以外 具体的なUFOの目撃例がなく 何故だか? UFOを特集する一部マスコミもここで起きた事件については、無視を決め込み インターネット上 ウエブサイトの裏話として、一部マニアの間で噂される程度であった。
"超やばい!! とんでもない物を見てしまった・・・!! だれかに話しても絶対信じてもらえない・・・ それよりもここから早く逃げないと・・・" そう思い振り返り山頂を目指し登りはじめようとした時 浩司の目の前に1人の大男が腕を組み立ちはだかっていた。 優に身長190cmを超え 体重は100kg以上だろう 一見してその道のプロと分かる大男である。 服装は、怪物に変身した2人と全く同じであった。
大男は、浩司を見下しながら言った。 「ここで何をしている?」 
恐怖で声が出ない。 ようやく搾り出すように、「あ・・・あの・・・ちょっと山菜取りに・・・?」 すっとぼけた答えを返したが、そんな戯言通用するはずがない。
「山菜取りだと・・・山菜取りがここえ来るはずがない」 大男の口元が、にやりと笑った。  その時 大男の表情が変わった 何かの声いや命令を聞いている表情である。 テレパシーによる会話であった。 浩司に聞けるはずもない。
「一緒に来てもらおう。」 大男はそう言いながら 浩司の腕を掴もうとした。 浩司は反射的に後ろへ下がろうとしたが、足が滑ってしまった。 そのまま尻餅・・・ その瞬間 浩司の身体は何か? 得体の知れない何かエネルギーフィールドみたいなものに、包み込まれる感覚した。 同時に時空? 次元? の壁と言うべきか? 強引に何かの壁に吸い込まれ 通り抜けさせられる感覚に襲われた。
大男は我が目を疑った。 今 目の前にいた不審者の腕を捕まえようとした瞬間 何かに吸い込まれるように瞬時に消えてしまったのだ。 慌てて周囲を見渡しても 不審者の姿はどこにも無い。

 一瞬 記憶を失ったが、浩司はすぐに回復した。 周囲は、真っ暗で何も見えない 目がやられて視力を失ったのではない。 硬い地面に立っているのは、足から伝わる感覚で解る。
それに、大男に捕まりそうになった瞬間から 得体の知れない何か? 一種のバリヤー見たいなエネルギーフィールドに、大きく包み込まれている感覚がしている。
"ここは・・・?" 理解に苦しんだ。 人間が突然 怪物に変身するなんて、子供向けのヒーロー者か、ホラー映画に出てくる モンスター、バンパイヤの類の作り話で、実際は不可能なはずである。 そして、その仲間らしき男に捕まりそうになった時 いきなり何かに引きずり込まれ落ち込むような感覚がしたらと思ったら いきなり闇の世界である。 一瞬死んでしまったかと思ったが、どうやら違うらしい。
色々考え始めた。 時間にして僅か数分程度だろう 目の前にいきなり純白の球体が忽然と現れた。 純白の球体は、自ら発光していないのに、はっきりと見とれる不思議な球体である。  大きさは直径5mm程度であろうか? 純白の球体は、浩司をつぶさに調べるように、浩司の周囲をゆっくりと回り始めた。 何気なくその球体を捕ろうと手を出したが、空振り その瞬間 球体は消えた。 消えたと思った瞬間 何かが首からぶら下がった。 手で触ってみると細いチェーンのような金属らしき物が、いつの間にか首から下がっている。 ペダント見たいな感じである。 そのチェーンらしき物を探ってみると、ちょうど胸の上部あたりに何か? 小さな丸い物があった そっとチェーンを持ち上げてみると 先程 現れた純白の球体が、チェーンの先に付いた透明のカプセルの中に収納されている。 
「何だ これは・・・?」 純白の球体を見つめていると 何か得体の知れない不思議なエネルギーが、球体から全身をくまなく包み込むよう駆け巡り始めた。
とてつもなく 表現不能 無限のエネルギーと呼ぶべきか? 身体全体を駆け巡る 何かのエネルギーに包み込まれる感覚である。
不思議と恐怖を感じない。 自然に受け入れられる。
同時に、頭の中に、イメージが入り込んで来た。 浩司には理解出来た。 科学が大好きで、元々科学者志望であり、学生時代 学校の勉強などろくにせず、量子論、アインシュタインの相対性理論などの宇宙物理学を中心に、天文、天体、惑星学、地質学、プレートテクトニク理論、スーパープルーム理論・・・etc 他にも考古学などを独学、精通し 膨大な知識量と独自理論、独自解釈を誇る アマチュアの研究家である浩司だからこそ理解出来た。 そのイメージとは、量子論、相対性理論を中心とした 無からの宇宙創生論 インフレーション宇宙論 まだ研究段階であるが、宇宙を構成する全ての力(4つの力、グルーオン(強い核力=強い力)、ウィークポソン(弱い核力=弱い力)、光子(電磁気力)、重力子(重力)の統一である超大統一理論、多重発生宇宙論などである。 1つの値を取りえず、たえずゆらいでいる状態の無の世界から突然トンネル効果により超ミクロ宇宙が誕生し すぐインフレーションを起こし 光の速さなど問題にならない超絶な速度で、無限と言うべき大きさに膨張するイメージである。
イメージであるのに、まるで、その場にいて肉眼で見ている程の臨調間があった。
いくつもの超ミクロ宇宙が誕生しインフレーションを起こす 初期条件の微妙な差は、確率論によって決まり、微妙な差によって、各々異なる物理法則などの支配する多種多様なタイプの宇宙が生まれる (この場合 量子論の波動関数的考え方の確率論で、無数に、異なる条件の宇宙の誕生する確率をグラフ上に表した場合 頂点を線で結ぶと 折れ線グラフとなり波の形で表す事が出来る 波の高い場所程、確率論的に高く、低い場所程、確率論的に低くなる。 波を構成する1つ1つの点が、全て条件が異なっている) 自らの重力が大きく過ぎて、膨張せず、自らの重力で1点の中心部へ向かって押しつぶされる宇宙や、ある程度の大きさまで、膨張したが、重力の大きさが勝り、収縮に向かうビッククランチを起す宇宙、古い真空エネルギーが、重力に勝り 膨張速度を上げ やがて全質量消滅と共に無の世界に戻る宇宙。
現在の最新仮説では、我々の住むこの宇宙は、やがて宇宙の膨張速度が、ド・ジッター宇宙的加速膨張速度以上のペースで加速され、この強力な加速膨張により、生命、惑星、恒星などを含む全ての物質の物理的構造を形成している原子核 原子核を構成しているクォーク(素粒子)同士を結び付けているグルーオン(強い核力=強い力)をも引き裂き 、全ての物質は、クォーク(素粒子)までバラバラになってしまうと言う。
加速膨張のブレーキの役割を果たしていた重力 強力な重力によって形成されている銀河系、更に巨大なバブル構造上に存在する超銀河団も それらを形成している恒星、惑星、衛星なども クォーク(素粒子)までバラバラとなり 重力まで失う。 重力まで失った宇宙は、永遠に加速しながらお互いから遠ざかるクォーク(素粒子)だけの宇宙になってしまうと言う それが起こるのが今から約500億年後で、その後50億年後には、我々の住む銀河系まで影響が及び、クォーク(素粒子)までバラバラになると言う ビッグリップ仮説など、多種多様に富んでいる。 初期条件の微妙な差は、誕生した宇宙のその後の運命を決める。
多種多様なタイプの宇宙の誕生や終焉が、イメージとして、浩司の頭の中に伝わってきた。 その中で、1つだけ違う超ミクロ宇宙があった。 少し膨張したかと思うと 膨張を止め そのまま2つの球体に分離した。 1つは純白の球体 もう1つは真黒な球体である。 そう純白の球体こそ 浩司の首からペンダント見たいにして下がっている球体であった。 「マクロ宇宙のなりそこね・・・?」 かなり概念的表現であったが・・・。
「何で? こんなものが・・・」 得体の知れない不思議なエネルギー、あらゆるイメージ・・・その全てが純白の球体から浩司の中に、融合してゆくような感覚である。 決して球体の中に取り込まれるのでなく、球体を浩司の身体が取り込んでゆくのでもない。 全て 融合し一体化して感覚である。 "何かが変わっていく・・・" 何故だか? そんな気がした。
全ての融合が終えたと感じた時 急に周囲が見えるようになった。
同時に、先程までの 何かバリャーの一種か? エネルギーフィールドみたいな物が、包み込んでいる感覚も無くなった。 こちらは、融合が完了した思われた瞬間 消滅したような感覚である。
暗闇から急に明るい場所へ出て その眩しさに普通目を閉じ しばらく慣れるのを待つのだが、これは違っていた。 今まで見えていたのに、認識出来ず、暗闇の中にいると思いん込んでいたのが、ようやく見えていた物 全てが認識できるようになったと言う感覚である。
「本当に ここはどこなんだ?」 今 立っている場所は、かなり広い空間いや部屋と呼ぶべきか? 周囲には見た事もない機械と言うべき物? もし異なった超高度科学技術を見たならば、こんな感想をいだくだろう・・・。 見た事もない物が機能的に配置されている。 それに光源が、全く不明であった。 やわらかな光に部屋全体が包まれている。 白い壁が発光パネルのような役割を果たしているのだろうか?
不思議な事に、全て浩司のようなヒューマノイドタイプの生命体に合わせてあるように、設計されているみたいであった。 何かヒントになる物がないかと、近くの椅子らしき物に座った。 大きさはちょっと大きめであるが、座りごこちは抜群に良く 硬さもピッタリである。 まるで合わせて設計されているみたいであった。 椅子らしき物の前にあった シルバー色のテーブルらしき物の上に手を置くと、テーブルらしき物の1部がスライドした。
浩司は慌てて手を引っ込めた。 中からパソコンのキーボードのような テンキーがたくさん付いた物が競り上がってきた 同時にSFでお馴染みの三次元立体映像の画面や 平面映像モニター画面が、いくつも現れた。 スイッチの一部が入り 活動を開始した・・・ そんな感じである。 いくつかのキーを押してみた。
すると、誰が呼ぶ声がする。 聞いた事のない言語だ。 「誰だ・・・?」 浩司は声に意識を集中させ目を閉じた。 何かが頭の中を探るような嫌な感んじがしたが、すぐに収まった。
またも声がした。 今度は、はっきりと分かる日本語で、女性的声であるが、どこか機械的であった。
「キャラン・サンダンス キャラン・サンダンス・・・」
「キャラン・サンダンスって・・・何だ?」 浩司は答えた。
「それは、あなた様です。 マスターキャラン」 浩司は目を開け周囲わ見渡したが、誰もいない。 アンプ、スピーカー類すら見当たらない。
声は続けた。 「先程 あなた様の記憶を探らせていただきました。 大変不快な思いをさせ失礼しました。 これであなた様の言語、文法、その他 必要と思われる全てを把握する事が出来き、直接コミュニケーションを取る事が可能となりました。 何卒ご理解を・・・ おーっと 申し遅れました 私は、ここの中枢を担うシステムの一部です。」
浩司にとって勝手に頭の中の記憶を覗き込まれるなど気分の良いものではなかった。 それにしても意味不明、理解不能な事ばかり続く それよりも頭の中の記憶を読み取る事が出来るのか? 例え出来たとしても、言語、文法 その他 必要と思われる全てを理解する事の出来るシステムの話など聞いた事すらない。 手足を組んで色々聞こうと思った。
「色々 聞きたいんだが・・・まず俺の名 キャラン・サンダンスとか言う名前じゃないぜ。 それに、ここは いったいどこなんだ?」
「急で申し訳ございません。 一つ 一つ お答えします。 まずあなた様は、ここでは、キャラン・サンダンスと呼ばれます。 あの日以来 最初にここに現れた知的生命体で、ここのシステムを再起動させた事により ここの全てがあなた様の所有となり ここの全てを支配する者 つまりマスターとなられましたので、マスターキャランとも呼ばれます」
「それで・・・?」 浩司は困惑顔で答えた。 全く理解に苦しむばかりだ。
「失礼ながら 先程のあなた様との記憶の中から あなた様の住む惑星、生命体の科学、技術、歴史、文化、その他 全て把握させていただきました もう二度とこのような行いはしません。 これからお話しする内容を理解してもらう為です。 ご理解を」
浩司は腕を組み直し だまって話しを聞き続けた。 システムの一部だと言う 声は続けた。
「では、お話しを続けましょう。 ここは、あなた様の住む宇宙とは、別の宇宙です。 あなた様の考え方では、多重発生宇宙論の子宇宙、孫宇宙や、無の世界の中で別々に発生した宇宙と言った 無数に存在する宇宙の1つと言った方が適切だと思われます」
「多重発生宇宙論・・・」 浩司は思わず 大きなため息をついた。 "多重発生宇宙論 量子論の考え1つで、同時に無の状態の中に無数の宇宙が誕生、共存している可能性を趣旨している。 1つの親宇宙から無数の子宇宙、孫宇宙を発生させそれぞれの宇宙がワームホール(虫くい穴)によって繋がっているケースから、無の状態の中で、無数の宇宙が誕生発生するケースまで、多様なケースが考えられる。 先程イメージで見たのは、この多重発生宇宙論である。 もう1つの可能性として、パラレルワールド(平行世界もしくは、多世界解釈)と言う可能性も存在する。 こちらも量子論の考えの1つで、パラレルワールド(平行世界もしくは、多世界解釈)とは、1つの時空間の中に、あらゆる可能性のある宇宙もしくは、世界が同時に共存し同時に平行進行している考えの理論である。 謎のバミューダ トライアングルで起きた、船舶、飛行機などが、突然 跡形も無く消え消息不明になる事件の1部は、何らかのきっかけで、このパラレルワールドの世界への時空の裂け目とでも呼ぶべきか? 4次元ワームホールが発生し そこへ入り込み 異空間(世界)もしくは、異なる時空間(タイムスリップ)へ紛れ込んでしまったのではないか? 4次元ワームホールを発生させるには、空間に何らかの? 膨大なエネルギーを極小の1点に集中させ 超高重力の小さな1点 超ミニブラックホール(宇宙誕生時 古い真空エネルギー(高い状態の真空エネルギー)が相転移する際 光と熱エネルギーを放出する(これが従来考えられていたビックバンだが)、よりエネルギーの低い状態へと転移する為である エネルギーの低い新しい真空が、まだ相転移していない古い真空を圧縮 圧縮された古い真空は、自らの質量に耐え切れず 中心部の1点に向かって圧縮、自己の質量に耐え切れず崩壊する 超ミニブラックホールの誕生である インフレーション時に大量の超ミニブラックホールが発生している)が発生 重力の及ぼす範囲にあるある全てを飲み込み 事象の水平面から特異点(全ての物理現象が存在、成立しなくなる)そこからワームホールを抜け 別の異空間へと送り込んでいる" と言う説を唱える 科学者やアマチュアの研究家が存在している。 他だしこの場合 超ミニブラックホールの寿命は、極端に短く 超ミニブラックホールが寿命を終え蒸発、消滅する際 膨大なエネルギーを放出する つまり大爆発を起す この大爆発は今の所 目撃、観測例がなく(超ミニブラックホールは、インフレーション初期時に大量発生したが、すぐに寿命を終え 全て消滅したが、現在の定説となっている) このような大爆発を起せば 地球上になんらかの異変があるはずである。 (これにつていは、1908年6月30日 午前7:02(現地時間)頃 現ロシア共和国シベリア、ヴァナヴァラ村(エヴェンキ)から65km離れた場所に落下したツングース(または、ツングースカとも呼ばれる)の隕石衝突が、現在に至るまで、爆心地と思われる場所から隕石の破片どころか 衝突時に出来るはずのクレーターですら発見されず、空中爆発説まで囁かれている。 爆心地と思われる中心地から木々が押し倒されて 翅を広げた蝶のような形をしているところから ツングース(ツングースカ)・バタフライと呼ばれているのが、主な根拠となっている。 [入射角 斜めに高速移動したソニックブーム(衝撃波)と爆発によるソニックブーム(衝撃波)の合成が原因と考えられる) あれは隕石ではなく超ミニブラックホールの蒸発に伴う大爆発だと主張する 1部科学者やアマチュアの研究家も存在する。 他にもUFOの事故による空中大爆発から、何故か?反物質説 その他多種多様な説がある。]
謎のバミューダ トライアングルの原因が、超ミニブラックホール説について、浩司はこの考えには、かなり懐疑的であった。 超ミニブラックホール以外ではないか? と思っている。 時空に裂け目が出来 4次元ワームホール(虫食い穴)が発生している点についは、否定していないが・・・ ツングース(ツングースカ)については、データ不足だ。 だが今 この話の場合 前者の多重発生宇宙論である、しかしいきなりこんな話しをされても信じられるものではない。
「そう ここは、別の宇宙です。 そして、今居られる場所は、元々あなた様が住む宇宙の小惑星の1つを改造 内部をくり貫き研究施設などを建設 その後 この別の宇宙に転送された 秘密研究施設の内部です」
"にはかに信じがたい 余りにも話しが突発過ぎる。" 浩司は呆れた表情を見せる。 「ところで、ここを建設した生命体は?」 まず ここから聞かなければと思った。
「レグと呼ばれる 生命体でした。 あなた様の生まれ育った地球と言う惑星に生命体が誕生する遥か遠い昔に絶滅し 現在 ここ以外 何も痕跡がありません」
「レグって・・・?」 思わず身を乗り出した。 少し興味が沸いてきたのだ。
「かって超高度科学技術を築け上げ 複数の超銀河団を往来した生命体です。 詳しくは今はお答え出来ません」
「俺は ここのマスターじゃなかったのかい?」 少しむっとした表情を見せた。
「時期が来れば、少しずつお教えします」
仕方ないか・・・と思い 浩司は、胸のペンダントの白い球体を取り出した。 「ところで、この球体は?」
「それは、レジェンスと呼ばれる 一種のエネルギー体です。 あなた様が融合なされた時 その秘密の一部をご覧になられたはずです」
「レジェンスって・・・?」 先程のあの出来事かと思い聞いた。
「その事について、お話ししましょう。 レジェンスとは、無の世界より 突然トンネル効果により誕生した超ミクロ宇宙が、インフレーションを起こし超巨大なマクロ宇宙に進化する途中 原因不明の膨張の急停止 その大きさのまま2つの球体に分離 1つは純白の あなた様が持つ ホワイトレジェン もう1つは真黒なブラックレジェンと呼ばれる 無限のエネルギーを持つ球体です。 超ミクロ宇宙いや無そのものと言っても過言はないでしょう。 レジェンスは、エネルギー体につき 意思はありません。 しかし何故だか? 生命体と融合します。 融合した生命体は、その無限のエネルギーを各種能力として利用出来 あらゆる事が可能となります。 そして、レジェンスの持つ無限のエネルギーを利用する事で、宇宙最強の無敵の生命体となります。 他だし ご注意下さい。 レジェンスは、あらゆる生命体と融合出来る訳ではありません」
「どう言う事だ?」 浩司は聞いた。
「明確な基準がないように思われます。 単なる気まぐれとしか言いようがありません」
かなりいい加減な話し思える。 浩司には、そう感じた。 超ミクロ宇宙 いや無そのものと言っていい驚異のエネルギーを持つ球体 その球体が生命体と融合し 無限のエネルギーを利用出来る。 それはいいとして、融合する生命体を選ぶ基準が、単なる気まぐれ・・・? 子供向けのスーパーヒーロー者でも、明確な基準が存在する。 浩司は小首を傾けた とてもじゃないと言う表情である。
声は続けた。
「レジェンスは、融合者以外は拒絶します。 無理に奪い取ろうとして触れると その強大なエネルギーで相手を消滅させます。 それともう1つ 融合者は、自らの手によって、分離する事も出来ません。」
「つまり俺は、レジェンスと言う球体の気まぐれで融合したと言う訳か? それと自らの意思で解除出来ない・・・?」 浩司は頭を抱えた。
「はい その通りだと思われます」
「話しを聞いていると レジェンスは、レグが作り出した物でなく 見つけたか? 何かをしたか・・・?」 浩司は聞いた。
「その通りです。 発見しました。 あなた様は、ここに現れ・・・ 多分 レジェンスの気まぐれか何かにより ここに導かれ レジェンスと融合を果たしました。 そして、ここのシステムを再起動させた事により 失われていた 超科学技術文明を誇ったレグの 残された科学、技術などを継ぐ継承者 つまりマスターとなられました」
「うーん・・・」 浩司は唸った。 
声は続けた。
「ここを発見し このシステムを最初に再起動させた生命体に、残されたレグの全てを継ぐ継承者=マスターに全支配権を与えるようプログラムされています」
"少しは理解出来るが、余りにも話しが・・・。" ただ呆れるばかりである。
「ところで・・・」 浩司は立ち上がり もう一つ聞きたい事を尋ねた。 ここへ現れる前に見た怪物である。
「それについては、レグとは関係ありません。 あなた様の記憶から推測しますと、別の惑星の文明の高度科学技術だと思われます。 それに、あなた様がここに現れ ここのシステムを再起動させるまで、ここの全システムは、完全停止していました。 あなた様の住む地球と言う惑星で何が起きてたのか? こちらからは知りえません。」
その時 浩司は、ある重要な事を思い出した。 恋人のみなっちである。 みなっちを愛車に残していたのだ。 あの怪物に襲われたら・・・。
「それより 俺 どうやってここに着たんだ!! それに、ここに来てどれくらいの時間が経っている。」 今まで聞きそびれていた事を聞いた。
「それは、多分 レジェンスの気まぐれにより ここへテレポーテーションされて来たと思われます。 時間についてですが、あなた様の時間の観念から考えますと、約1時間30分程度経過していると思われます」
また 気まぐれか・・・? と思った。 しかし時間については、余り経過していないみたいだ。 浦島効果(ウラシマエフェクト)で、何年いや何十年、何百年・・・後? なんてたまったものではない。
「と言う事は、レジェンスと融合した俺は、テレポーテーションも出来るんだな?」
「その通りだと考えられます」
「方法は?」
「レジェンスのエネルギーの利用方法については、余りにも不明な事が多過ぎます。 まだほんの一部も解明されていません。 多分 強く念じるか、エネルギーを集中すれば可能と思われます」
「また 後ですこしずつか?」  重要と思われる事について、全てこうなのかと浩司は思った。
「いいえ 本当に何も解明されていません。 他だし利用について、一つだけ忠告しておきます。 レジェンスのエネルギーは、気まぐれで、非常に不安定です。 融合者の意思とは無関係にエネルギーを放出します」
「つまり コントロール不能・・・?」 浩司は聞いた。
「その通りです。 暴走すると止められません。 最悪 瞬時に宇宙そのものを消滅させる可能性もあります。 また逆に、全くと言っていい程 エネルギーを放出しない場合があります。 ご注意下さい。 非常に不安定です。」
まさに、驚異の超オーバーエネルギー・・・と浩司は思った。 このとてつもない話しが事実ならば・・・である。 しかし浩司には時間が無かった。
「まだ聞きたい事が沢山あるが、後だ うまくテレポーテーション出来たら また後で聞きに来る。 今 大事な仕事を一つ元いた場所に戻り片付けなければ・・・」
「レジェンスのエネルギーは、非常に不安定です。 エネルギーの利用はくれぐれも細心の注意を払ってください」
声は再度警告した。
「終わったら必ずここへ戻ってくる。 まだまだ聞きたい事がいっぱいあるから・・・」 そう言い残すと 半信半疑であったが、言われた通りみなっちを残した愛車のある場所を強く念じてみた。
首から下がるペンダントの先にあるレジェンスから巨大なエネルギーが、浩司の身体を駆け巡る。 そして、何か? バリヤーの一種のエネルギーに包み込まれる感覚がした。 同時に、今度は次元の壁に吸い込まれ 通り抜けさせられる感覚ではなく、自ら次元の壁を通り抜ける感覚である。 浩司の姿はその場から瞬時に消えた。

 みなっちは、助手席のシートをリクライニングに倒し 正面のウインドウから空を眺めていた。 色々な思いが頭をよぎっていた。
もちろん浩司との関係であった。 知り合った頃は、よくジョークを飛ばして笑わせてくれていたのに、この頃は変に皮肉しか言わない。  直ぐに謝るけれど反省の色無し。 逆に悪化の一途を辿っている。 "あの性格どうにかならないかな・・・? 人生最大の汚点だ! 失敗だ! 思い切って別れて人生やり直そうか・・・? ・・・etc 今度こそ はっきり言おう!!" そう思っても別れられない 元の鞘に戻ってしまう そんな関係であった。 "腐れ縁ねー・・・" 2人の関係にぴったりの言葉であった。
そんな時だった。 左側のウインドウをノックする音がした。 浩司が帰ってきたと思い顔を左に向けた。 そこにいたのは、浩司ではなく 先程怪物に変身した男達と同じ戦闘服を着た2人の男が立っていた。
見られてはならない物を見られ 捕まえようとした浩司が、突然消えた 周囲を探したが、どこにも見つからない。 仲間を増やし捜査範囲を広げていたのだ。
ドアを無理やり開けられ 車から強引に降ろされた。 無防備にもドアをロックしていなかったのだ。 浩司が帰ってきた時すぐに乗れるよう配慮していたのが裏目にでたのだ。 例えドアにロックを掛けていても無駄であったが・・・。
片腕を締め上げられると 「おい 女 ここでだれかを見かけなかったか!!」 有無を言わさない聞きかであった。 もう1人の男は、「嘘をつくと為にならないぜ・・・」 ニヤニヤと笑う。
「痛い!! 離して・・・ だ・・・だれも見ていない・・・!!」 必死に抵抗するみなっちであったが、片腕を締め上げている男はびっくともしない。
「何故? ここにいるんだ!!」 片腕を締め上げている男は聞いた。 その手に力が入る。
「か・・・彼氏が、そこ・・・そこの山に何か・・・探しに行くって・・・」 少し力が緩んだ 苦痛が和らぐ。
「彼氏だと・・・?」 「そうか、その男に間違いない」 2人の男は互いの顔を見合わせた。
「一緒に来てもらおう」 片腕を締め上げる男は、みなっちを引っ張り始めた。普通の男の力でない。 激しく抵抗するみなっちなど意に返さない。
"こーちゃん・・・ どこで何をしているのよ こんな大事な時に、いつも守ると言っていたくせに、こんな時な限っていない。 今度こそ絶対に別かれてやる!!" 抵抗を諦め大人しく従った その時だった 何の前触れも無く いきなり浩司が前方に現れた。
全く場違いの表情である。 きょとんとした顔で周囲を見渡し始めた。
「ここは・・・? えっ? みなっち!!」 いきなり景色が変わった。 見覚えのある景色である。 周囲を見渡すと "確か・・・ここ・・・?" 愛車を止めた場所であった。 どうやらテレポーテーションがうまくいったらしい。 だがどうしても納得できなかった。 半信半疑である。 悪い夢でも見ていたような気分だった。 いきなり前方に先程 怪物に変身した男達と同じ戦闘服を着た男が2人いた。 ゴーグル付きのヘルメットを被っている為 顔は、はっきりと判別出来ないが、変身した2人の男達とは違うようだった。
1人の男が、みなっちの腕を捕まえ引っ張っていた。
みなっちは浩司の姿を見て 「助けて・・・!!」 あらんばかりの大声を上げた。
浩司はすぐさま状況を判断すると身構えた。
すると全身に不思議な感覚を感じた、目の前にいる2人の男から強い殺気と強力な戦闘力を感じた。 そして、普通の人間ではないと言う事も・・・
同時に 浩司の身体に先程のテレポーテーション時と同じく レジェンスから身体全体に不思議なエネルギーが駆け巡った。
「ようやく 彼氏さんのお出ましかい?」 みなっちを捕まえていない もう1人の男がニヤニヤ 口元に笑みを浮かべながら近づいてくる。 「一緒に来てもらおうか? 女がかわいければな?」 浩司を捕まえようと手を伸ばし始めた。
浩司を捕まえようとした瞬間 空振り 寸前で逃げられてしまった。 何度も捕まえようとするが、全て逃げられてしまう。 まるで空気を掴むように寸前で逃げられ、遊ばれているように見えた。
「お遊びはここまでだ!!」 男は本気になった。 普通の人では考えられない 遥かに超えるスピードで浩司に体当たりをこころみたが、結果は同じだった。
浩司とは言えば、自分がどれだけの速さで動いているか、全く理解していない。 相手の動きに意識を集中しているだけで、突然相手の動きが超スローに見え 捕まえられる瞬間に逃げているだけであったが、相手に言わせれば目にも止まらぬ高速で動いているように見える。
相手の男は、今度は 冷静に浩司を観察した。 まるで隙だらけに見える 間合いを計りいきなり飛び掛った。 今度は右肩からタックルを食らわせる・・・そんなはずであったが、浩司は超スローの相手が間合いまで来ると、無意識に右回し蹴りを繰り出した。 目にも止まらぬ速さで、相手の頭の左にヒット 相手の男はそのまま蹴り飛ばされると 大きく地面を引きずり 山の斜面に激突 ヘルメットは木っ端微塵に吹き飛んでいた。 一瞬ぐったりとしたが、立ち上がると 頭を大きく左右に振り 鋭い眼光で浩司を睨みつけた。 男はネクストノイドと呼ばれる 強化改造された人間であった。 人間の姿のままでも数倍のスピード、パワー、耐久性を誇る。 普通の人間の中に自分より強い人間なと存在するはずがなかった。 自分より強いのは仲間内しかいない。
「なめやがって・・・」 人間の姿では勝負にならないと思ったか? 捨てゼリフを吐くと 頭の額に埋め込まれている小さな直径1cm程度だろうか? 小さな半円球状の赤い物体が小さな光を発した。
ネクスタルと呼ばれる物体である。 変身したり解除したり 普通の人を遥かに超える パワー、スピードなどを出す 一種のエネルギー供給装置みたいな物であった。
男の身体は見る見るうちにに変化・・・いや変身を始めた。 グロテノスと呼ばれるカテゴリーに属する。 先程 浩司が目撃した とかげに似たバルドスと呼ばれるタイプである。 変身すると更にケタ違いに能力が上がり 2〜3の特殊な武器を持つ生体兵器である。
浩司は顔色1つ変えなかった。 先程 遠くからであるが、1度目撃しており 今は、相手に集中する事により 妙に沈着冷静にいられるのである。 それを見続けていたみなっちは、放心状態の手前であった。 人が見る見る怪物に変身するなんて・・・信じられない出来事であった。 それに浩司である。 浩司は確かに運動神経、反射神経など、並みの上程度であるが、ケンカなんてさっぱり弱い事を知っている。 言葉が出ない。
バルドスに変身した男は、顔色一つ変えない浩司を見て、「大した度胸だな! この姿を見て顔色1つ変えないとは、だがお遊びはここまてだ、今度は違うぞ 覚悟しろ!!」 しっぽを使い 浩司に襲いかかった。 しかししっぽは空を切るだけである。 浩司は素早く普通の人には考えられないジャンプ力も見せた。 
全て浩司に、動きを見切られているように見える。 また浩司の脇腹を目掛けしっぽはうなりを上げ襲い掛かってきた。 浩司は普通には考えられない高いジャンプを見せた そのジャンプを待っていましたとばかりに、バルドスの目は鋭く光った。 高くジャンプした浩司に目掛け口からヘルファイヤーと呼ばれる 超高温の火炎放射を浴びせた。 八つ裂きにした死体を一瞬で灰にした炎である。 ジャンプ中にはよけられないと思ったのであろう。 しかし軽くよけられると 後ろに着地され しっぽを捕まえられると 軽く空高く投げ飛ばされてしまった。 信じられない表情を見せるバルドス。
浩司は無意識に投げ飛ばしたバルドスに向け 右腕を突き出した そして手首を立てると 手の平の前にエネルギーの1部を集中させた。 一瞬とてつもないエネルギーが小さな光の塊になり 瞬時に発射した。 手の平の前が光ったかと思うと 投げ飛ばされたバルドスは、瞬時に粉々になり消滅した。 後にマグナムアタックと呼ばれる レジェンスのエネルギーを利用した技の1つである。 
それをみていたもう1人の男は、捕まえていたみなっちを突き飛ばし その男もまた変身した。 この男も同じくバルドスであった。 突き飛ばされたみなっちは地面に倒れた。
仲間の復讐とばかりに後ろを向いていた浩司に対して猛然と襲い掛かった。 その気配を感じ すぐ振り返った浩司は、寸前でバルドスをよけ後ろ向きになったバルドスを空高く蹴り飛ばした。 そして先程と同じく 右腕を突き出し 手首を立てた 手の平の前が光ったかと思うと 蹴り飛ばされたバルドスは瞬時粉々に吹き飛び消滅した。
「何て・・・すごいんだ レジェンスの力・・・いやエネルギーって・・・」 浩司は小声でつぶやいた。 自分自身がまるで信じられないと言う表情で両手の手の平を見つめていた。 同時に何か釈然としない 言いようの無い気分に襲われた。 或る事を思い出した 「みなっち・・・」 少し先にみなっちが倒れ込んでいた。 意識は失っていない 浩司はみなっちを抱きかかえると みなっちは浩司の胸の中で溜まっていた物 全てを出すよう泣き出した。 「怪我は無い?」 やさしく声を掛けた。 みなっちは数回小さくうなづいた。 ショックが大き過ぎて声がでないらしい。 無理も無い いきなりこんな戦闘シーンを見せられて、まともな神経でいられる訳が無い。
「ごめん 遅くなって・・・」 浩司は、みなっちをそっと立たせると、「ここは危険だ 車で逃げよう・・・」 そう言いながら車に連れて行き助手席に座らせシートベルトを締めた。 ドライバーシートに座った浩司は、シートベルトも締めるのももどかしく エンジンをスタートさせ 周囲に注意を払いながら車を走らせた。

「うーん・・・」 唸り声が響いた。
ここは、どこかの秘密基地 前面には大型のマルチスクリーンがあり 中心の大画面には、今の浩司と2体のバルドスとの戦闘シーンが繰り返し流されていた。 見ている者 全てが声を失い 信じられないと言う表情である。 他の画面は、刻一刻と周囲の状況なとをチェックしている。 マルチスクリーンの前には、何列もの長い机が並べられ その上には、何台ものディスプレイが並べられ 各種データが映し出されている。 ディスプレイの1台、1台の前には、先程のバルドスに変身した男達と同じ戦闘服を着た男達が、呆然と言葉を失いマルチスクリーンを見つめていた。 ここは何かの作戦司令室のようである。
その後方の1階高くなった場所に、大きなコの字型のテーブルがあり その中心に一人掛けの上等な椅子があった。 その椅子に白い長い髪に細かなウェーブがかかり 白いヒゲを生やした 一見してコーカソイドと分かる 古代ギリシャの賢人と言った顔立ちの老人が座っていた。 全身 白いマントで覆われている。 先程 唸った男である。
「どうしますか?」 後ろに立つ一人の男が聞いた。
「後をつけろ! 他だし 決して手を出すな しばらく泳がせておけ いいな! 逐一報告をわすれさせるな!」 老人は命令を下した。 「それと・・・」 手招きをしてもう1人の男を呼びつけた。 「あの者 確か・・・レジェンスと言う 言葉つぶやいたな?」 
「確かにつぶやきました。」 呼びつけられた男は答えた。
「ちょっと 気になる事がある 後を任せる。」 そう言い残すと 椅子から立ち上がり 後ろにあるドアへ向かった。自動ドアが開くと そこはエレベーターとなっていた。 老人は乗り込むと 1つボタンを押した。 ドアは自動に閉まった。
"敵(やつら)に、あんなにすごい者がいたのか・・・? いやそんな情報は聞いていない。 有り得ない話だ。 敵(やつら)だと違うとすれば、いったい誰だ・・・? しかし何てやつだ、我が2体のバルドスを瞬時に倒すとは、信じられん・・・ どう見てもたかが旧人類(ホモサピエンス サピエンス)ではないか? それも変身もしないで、何らかのエネルギーを1点集中し発射している。 信じられない出来事である。 どんなに強い旧人類(ホモサピエンス サピエンス)でも、変身前のグロテノスの敵ですらない。 ましてや旧人類(ホモサピエンス サピエンス)に、我ら新人類(ネクストノイド)と似た能力 生体兵器に似たエネルギーを武器として利用出来るなど 聞いた事もない話である。 ただ・・・レジェンスと言う言葉が妙に引っかかる まさか? あの謎のレジェンスなのか・・・? 分からぬ・・・" 老人を乗せたエレベーターはどんどん下っていった。

もう1組 別の数人の集団が、別の山から今の様子を覗っていた。 超高感度双眼鏡で、この戦いの一部始終を見ていたのだ。 傷つき逃げていたが、バルドスとリアンズに八つ裂きにされ殺された男の仲間である。
「あの男 すごい・・・」 1人の男が超高感度双眼鏡でこの戦いを見て 思わずつぶやいた。
「やつらの 裏切り者ですか・・・?} 別の男が尋ねた。
「違うだろう・・・ 余りにも違い過ぎる・・・」 しばらく考えた後 「あの男 徹底的に調べろ やつらに見つからぬようにな! 我々の味方に付ける 切り札の1つになるかも知れん。」
後ろにいた数名の男が 一斉に立ち上がると 鬱蒼を生い茂る木々の中に消えていった。


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