LEJENS  レジェンス

 LEJENS以外のSF小説です。
 LEJENSとは全く無関係のオリジナル小説です。



 妖魔ハンター

 作者 飛葉 凌(RYO HIBA)

 第1次妖魔対戦 Part11

 その頃 苦戦強いられていた真美 SS級巨漢で、パワー系 全身をまるで、硬質の鋼の様ないくつもの甲羅で被われた全長2.5mを超えるザンピースを相手 元々やや小柄身長1.58m それもやややせ気味 女性に取って理想的なファッション体重・・・・ 戦闘には、余りにも不向き。 ラディエンスの力により かなりパワーアップこそしているが、どう見てもパワーに対して、格下のS級より劣る。 ただ圧倒的スピード、俊敏性を活かした身体能力で、パワー不足を補っていた。 ただ圧倒的パワー系に対して、苦手にしていたのは、事実。 特に近接戦闘に置ける白兵戦 つまり本来持つパワーによる肉弾戦では、敵 妖魔のパワー系に簡単に弾き飛ばされていた。 今 戦っている敵 SS級妖魔ザンピースは、妖魔界でも随一と言われる圧倒的パワー系 妖力よりパワーを生かす戦いを得意としていた。 真美の全幅より遥かに太い まるで巨大な大木の丸太の様に両腕を振り回し 真美に向かって何度も振り下ろす。スピード。俊敏性を活かし その都度 うまく避ける。 だが、その跡地には、まるで、宇宙から時折降る隕石が、地上に衝突時に起きる きのこ雲が湧き上がり 砂漠の砂地には、クレーターの爪痕が残る。 ややスピード、俊敏性に欠けるザンピース 真美を捕らえようにも うまく捕らえられない。 「ちょこまか動きやがって・・・・!!」 その都度悪態ばかりついていた。

 「しゃべり過ぎ・・・・」 真美は思った。 戦場での 特に1対1の近接戦闘に置ける白兵戦に置いて、ある程度心理戦による 特にトラップ(罠) つまり敵の行動、発する言語などにより疑心暗鬼にさせる事は、重要である。 何度も悪態を付く。 それもだれにも聞こえる大声で。 鉄壁と思えるデフェンス(防御)能力と引き換えに、スピード、俊敏性などを犠牲にしている。 全てを完璧に・・・・は、やはり妖魔と言え 相当のハイレベルなのだろう。 1つの能力を引き伸ばし特化すれば、その分 何かが犠牲になる。 ただスピード、俊敏性に、と言っても妖魔としては、S級以上妖力を持つハイレベルでの話だが、劣っている。 だが、少し間合いを開け、ムーンライト、ニードルを放った だが結果は同じ、ニードルなど全弾命中しても あの硬質の鋼の様ないくつもの甲羅 掠り傷1つ付けられない。 試しにニードルの1点ピンポイント集中を浴びせても同じであった。 何食わぬ顔。 「何かしたのか?」 全くの余裕であった。

 自らのウィークポイントを 公言している。 その点に付いては、少しイラだっている。 余裕なのか? それとも単純に、頭 つまり知能レベルの問題なのか? 多分後者だろう。 それ程の頭の巡りは、よさそうではない。 だが決めてに欠いていた。 表面を外敵から守る為 硬質に甲羅に覆われている 例を上げれば昆虫等などは、内部は、以外と脆く脆弱になっている。 多分その例に漏れないタイプ。 真美はそう睨んでいた。 だがライトソードの表面にムーンライトのエネルギーを張り 1点集中で、何度も攻撃を加えた。 あのSS級妖魔ザンピース 確かに全身から発する妖力は、紛れもないSS級の全てを圧倒するすさまじい妖力 だが動きが鈍い為だ。 だか極小のひび割れ1つ付かない。 驚異と思える硬質 以外と小さな掠り傷1つ付けられれば、以外とその傷からガラスの様に脆く砕けそうな脆さを持ち合わせていそうだが? 長所と弱点は、諸刃の剣 表裏一体の場合が良くある。 どこかあの硬質の甲羅 必ずウィークポイントがあるはず。

 焦り始める真美 少し間合いを置き じっくりと隙なく観察する。 ラディエンスの力が、またぐずり始めた つまりコントロールが思うように出来ない。 速めの決着を付けたかった。 それに、近くで、もう1対のSS級 タコ、イカの様な軟体性動物の様なテクタングズと、1対2で戦う 詩織と、風吹君 流石に格違い 詩織と、風吹 初めてのコンビネーション。 かなり上出来ではあるが、奮戦しているものの かなり押されている。 それに、全身が痺れる程の もう何と言ってよいか? すさまじい闘気を 周囲の地面どころか?時空間まで、揺さぶる様な激しいまるでソニックブーム(衝撃波)を何度も発生 互いの特殊能力 霊力、妖力を使わず、自ら持つ闘気 それも武器も使用せず、自らの肉弾と、鍛え抜かれた技だけで、戦う三村と、ルーシュトラーゼ そろそろ決着がつきそうであった。 このままでは・・・・ 速くこいつザンピースとケリ(決着)を付け 三村と交代しなければ・・・・ そんな思いが、真美の気持ちを焦らせていた。

 「そう言えば・・・・」 ある事に気づいた。 それは、SS級妖魔ザンピースのあの硬質の鋼の様ないくつもの甲羅 確かに互いに重なり合い隙間なく感じる。 だが各所の肩から上腕の関節部分 腕の肘 足の膝の関節部分など そうその部分 肩口から出ている上腕の部分 確かに硬質の鋼の様ないくつもの重なり合う甲羅で覆われているが、肩口から上腕が出ている。 当たり前だが、中世のヨーロッパの鎧などもそうだが、動かし曲げたりする為 そこには、隙間が存在する。 一体型では、動かし曲げたりする事が出来ない。 柔軟性のない硬質 例えば、肩口の周囲を覆う硬質のいくつもの甲羅が、楕円形の様な型となって、そこから少し小さい上腕が出ている。肩口と上腕の間には、僅かな隙間と言うか、非常に柔らかな部分がある。 そうしなければ、各所関節部分 動かし曲げるなど出来ない。 外からのどんな攻撃も耐え抜いた難攻不落の強固で頑丈な要塞も 外からの攻撃には、無敵のまま内部の崩壊により滅んだ例など、いくつもある。

 更に、奥の手としては、音 つまり超音波の類だが、共鳴による共振(resonance)を利用し 理論上 物質には、全て「固有振動数」というものを持っている。 この「固有振動数」と同じ振動を与え続けると、振動がどんどん大きくなり、ついにはその物質の振幅が無限大になり、破壊に至り、これを「共振」現象。 この「共振」という現象は、理論上は、どんな物質でも破壊することが出来るとされている。 何度かTVなどで、その実験を見た事があった。 人の口から発せられる声=音で、ワイングラス等を破壊するのを見たことがあった。 他だしあの硬質の甲羅の物質の組成などが解らなければ、物質の持つ「固有振動数」が解らない。 それが解析できても ある一定以上の音 つまり振動数を浴びせ続けなければならず、とても現実的ではない。 オールドバイブル(旧約聖書)の1節に出てくる 難攻不落の城壁 絶対崩れないと言うエリコの壁(ウォールズ・オブ・ジェリコ (Walls of Jericho)) そのエリコの城壁が崩したのは、音による共振だと言う いくつかの仮説こそあるが・・・・

 そう思いつつ真美は、ある手を思いついた。 「うまく行くか・・・・?} 内心呟く。 せめてもの救いは、敵SS級妖魔 まさに見上げる程の巨漢  2.5mもあるザンピースの動きが、その巨漢さゆえなのか? かなり緩慢で、鈍い。 懐に入り近接戦闘のどさくさ紛れて・・・・ 狙いを定める。 まさに、戦闘機同士の戦い ドックファイト 敵機をレーダーシステムなどの目標追尾機構が目標をセット完全に捕らえLock on,(ロックオ)!! それに似ていた。 もはや逃げる術はない。 そう願いたい心境であった。

 その頃 妖魔の神々にも匹敵すると言う究極の最上位SSS級妖魔 ルーシュトラーゼと、互いの持つ特殊能力 霊能力と、妖力を使用せず、まさに自身の鍛え上げた、力と技の死力を尽くし戦闘を続ける三村。 だがやはり人類と妖魔 元々持つ肉体のポテンシャルが、やはり違っていた。 現役最強の男と称される三村であったが、やはりレベル そう格違いの実力に、苦戦を強いられていた。 心眼で、ルーシュトラーゼの放つ拳、蹴り 寸前で何とか避け続けるも もはやスタミナの限界に近づきつつあった。 両者ヒット・アンド・アウェイ(一撃離脱)の攻撃 少し間を置く、その都度 三村は、身体全体で、顔全体から大粒の汗が流れ落ち大きく喘ぐ、だが、不思議と呼吸のリズムが崩れていない。 何か? 霊力以外の異なる力を溜めている。 そう感じられていた。 そう今覚醒の兆し見え始めた もう1つの特殊能力と言える「気}。

 それを感じ取っていたルーシュトラーゼ。 今まで人類が、我ら妖魔と戦う時 必ず使用してきた霊能力とは、全く異質の大きな力 そうあのラディエンスの力とも全く異質 秘めたるポテンシャル かなり興味津々であった。 今まで知り得なかった摩訶不思議な力。 その力を覚醒させ 更に自らの陣営に加えられれば・・・・・ そしてラディエンスの力の箱舟である真美を手に入れ 戦乱が続く妖魔界の統一 そして・・・・・ 絶対に必要な駒であった。 群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)に終わりを告げ覇者となる。 今のままでは・・・・やがて・・・・ そうそうなのだ、誰かが古(いにしえ)の時代より続く、この戦乱の群雄割拠に終わりを告げ、強力な他を圧倒する力を持つ妖魔により統一せねばならぬ。 そして、それがこの余でなければならぬ。 妖魔の存続する為に。

 「何を考えていやがる・・・・」 少し距離を置きながら 決して眼で見ているのではない。 全ての感覚を最大限に研ぎ澄まし それを1つの眼として見るではな、く感じる そう心眼を通して微妙な変化を感じる三村。
 呼吸を整え「気」を高める。 まだ訳の分からない新たな特殊能力 ぶっつけ本番 高まる「気」 拳に集中させ1点集中で叩き込む 今 それしかない。 「気」も一種のエネルギー どんなエネルギー弾も弾き返す SSS級妖魔ルーシュトラーゼの身体全体を隙なく被うあのミラーコーティング 果たして掠り傷1つ いや 真美ちゃんが、良く難しいちんぷんかんぷんな宇宙物理学の摩訶不思議な量子状態に置ける どんな壁もすり抜ける いやテレポーテーションによって、通り抜けると言う 量子テレポーテーションで、あのミラーコーティングと言う壁を通り抜けある程度のダメージを与えられれば・・・・ 無い物ねだりの心境であった。 何もかも そう自身が思うように、都合良くは行かない。 望みでこそあったが。 「今は負けている。 だが最後の一撃で勝てばいい・・・・」 自ら鼓舞する様そう言い聞かす。

 もはや三村自身気づいている。 体力 そうスタミナの限界に近づいている。 身体全体が、もはやボロボロの状態 気力のみが支え。 やはり相手が強すぎる いや俺自身が、弱いだけなのかも知れない。 そんな弱気な事を考えてはいられない。 例え刺し違えても、あの野郎 最強の妖魔の神々にも匹敵すると言う妖力を秘めるSSS級妖魔 その妖力を使わずとも 全く歯が立たないが、せめて最後の一撃で、掠り傷1つ付けなければ気が済まない。 まあー良く言う下らない捨て台詞(セリフ)だが、俺も結構寂しがり屋だ。 冥途の土産に・・・・ そう思いつつ高まる「気」 右手の拳に集中させる。 やつの必殺の間合い 懐に飛び込み どてっ腹に、全てを叩き込んでやる。 全ての感覚を最大限に研ぎ澄まし両目を固く閉じる。 敵ルーシュトラーゼに集中。 妖力を消し 気配も消し だが研ぎ澄まされた全ての感覚が、ルーシュトラーゼを捕らえている。 ルーシュトラーゼの微妙な動きにも敏感に身体が反応する。 それは決して考え対応しているのではない。 ただ鍛え上げ、何度も潜ってきた戦闘本能が、考える先に、反応している。 それは、ただ潜ってき戦闘本能により避けるだけではない 相手の僅かな死角へと入り同時に攻撃を仕掛ける。 ただ相手が、更にその上を行っていた。 SSS級妖魔でなければ、格下のSS級以下であれば、ある程度の打撃を与えたであろう。 だが戦場では、たら れば・・・・は禁句。

 ルーシュトラーゼの巧みな連続技 ギリギリ間一髪で、急所は、外しているものの まさにボディーボローの様に、じわりじわりと、ダメージが蓄積される。 もはや限界 そう悟る。

 「俺の跡を継ぐ者 そう若き血潮に溢れ 限りない彼方へと向かっている 若き まさに獅子 風吹 そして、詩織ちゃん 真美ちゃん これが俺の最後の戦いだ」 いったい何度目だろう? 地面に叩き付けられ 弾きとばされ その都度足元をふらつかせながら立上がり続けた三村。 最後の一撃に掛ける。 「ここまでヨレヨレ 最後の一撃 止めの大技を繰り出すはず」 そう読む三村。 「大技は、必ず動きが大きくなる 動きが大きくなる分 必ず隙が生まれる。 その瞬間・・・・」 たった一瞬に全てを掛ける。

 ルーシュトラーゼが動いた 全ての感覚がそう告げる。 それもまさに王者の如く、何も小細工なしに、真正面から向かってくる。 ここまでの戦いで、足技を仕掛けてくる。 一撃で沈める為 右足 考えるよりも先に、本能的に動く。 僅かな死角へと回り込む 同時に、全ての「気」集中させた 右拳を ルーシュトラーゼのボディに向かい残る全てを注ぎ込み叩き込む。

 その瞬間 周囲の時空間 まるで、氷付く様に止まった。 2体のSS級妖魔と、激しい戦闘を繰り広げていた 真美、詩織、風吹も 執念にも似た強い闘気を感じ 三村の方を見つめ一瞬動きが、止まる。 それは、2体のSS級 その周囲を囲み 戦いを見ていたS級以下の多数の妖魔も同じであった。 まさに、一瞬の全てを氷付かせる様な静寂が、全てを支配する。 この戦いを見ていた ここにいる妖魔の全てが、まるで身動き1つしない彫刻の様に、唖然とした表情を浮かべただ立ち尽くす。

 今まで、1度も その身体に触れさせなかったルーシュトラーゼのボディに、過去の幾たびの戦闘でも決して、その身体に触れる事すら許さなかったボディに、三村の放った 右拳が、めり込む 同時に、「気」の全てを放つ。 「うまく行ってくれ!!」 そう心で叫ぶ。 真美ちゃんが良くご教授する 訳の分からないチンプンカンプンな物理学 それも古典力学的に乗り越えるはずなのないポテンシャル障壁を粒子があたかも障壁にあいたトンネルを抜けたかのように通過する量子力学的現象 トンネル効果(Tunneling Effect)とも また量子トンネル(Quantum tunnelling) 絶対通り抜ける事の出来ない壁を通り抜けてしまう現象だとか? それも量子状態に置ける 粒子と、波動の2面性で、不確定性原理が・・・・ 様は、あのルーシュトラーゼのクソ野郎の絶対防御と言える ミラーコーティングと言う 絶対障壁を通り抜け 身体に内部に、この「気}を叩き込み ダメージを与えられれば。 そう三村は願った。

 確かに、強烈にルーシュトラーゼのボディを的確に捕らえた。 それもウィークポイントの1つ思われる左脇腹にめり込む程の強烈なヒット 手応えは、十分過ぎる程感じた。 同時に、「気」の全てを放った。 ルーシュトラーゼのミラーコーティングは、エネルギーの全てを 更に妖力を加え 放った相手に、バックファイヤーと返す。 だが三村に対し、バックファイヤーは、帰ってこない。 放った「気」は、うまく通り抜けたのか?

 三村を見下す様 不敵な笑みが、ルーシュトラーゼから漏れる。

 「この余に対しに、ここまで戦たのは、三村隊長 そなたが初めてだ」 少し感心した様な口ぶりであった。 だがまだその程度では、と言う意味が多分に含まれていた。

 強烈な返し技が、三村を襲う もはや避ける事も出来ない。 そのまま三村は、大きく弾き飛ばされる。

 もはや身動き1つしない三村 即死・・・・・ だれもがそう思った。 あの強烈な蹴りをまともに喰らった。 生きているはずなどない。

 ルーシュトラーゼは、まさに王者の風格を漂わせながら ゆっくりと三村に近づく。 まだ勝ち誇った表情を浮かべていない。 三村の前に立ち砂漠に沈む三村を見下ろす。

 その瞬間 僅かだが、三村の口から 聞き取れない程の小さな呻き声 そして、微かだが身体が動いた。

 「な・・・ぜ・・・・だ? このままなぶり殺しにでもする気か?」 ほとんど言葉にすらならぬ喘ぎ声・

 「一撃の急所は、外した。 最終通告だ もう1度問う 余の元に来ぬか?」

 「下らねえー事言ってるな!! さっさと止めを刺せ」 最後の気力を振り絞りルーシャトラーゼを鋭い まだ戦いを諦めていない闘気に満ちた眼光で睨む。

 「情けなんて無用だ!!」 少し憐みの表情を浮かべるルーシュトラーゼに向かって言い放つ。

 「そろそろ年貢の納め時」 もう長くは持たない。 「待たせたなあー」 自身に言い聞かす。 脳裏には、まるで走馬灯の様に、ワイルドギース(傭兵)時代 そして、妖魔ハンターの隊長として、一緒に戦い先に、人生を別航路に変えていった仲間の それも何気ない時の浮かべていた笑顔が、次々と流れる。 「みんなあー・・・・・」 思わず呟く。 多分だれも聞こえない自身の心の声で。

 ルーシュトラーゼは、右腕をまるで手刀の様に構える。 「最強の戦士に対する せめてもの礼節を重んじ様」 そう言いつつ手刀をそのまま三村の心臓を貫く。 一撃 せめてこれ以上苦しまぬように。 手刀を引き抜く、そして死んだ三村を見つめる。 安らかな顔に見えた。 全力で戦い満足した そう思えた。 そっと開いた両目を丁重に閉じさせる。

 死体となった三村に、まさに哀悼の意を表す様 両目を閉じ黙とうを捧げる。 「惜しい人類 最強の戦士を安らかに眠りたまえ」 内心呟く。

 どこからか忽然と現れた数体の妖魔が、どこから運んできたのだろう高貴な大きな布で、三村を丁重に包み込む 別の妖魔が、死体安置用の棺桶に入れそのまま本陣へ向かって歩き出す。

 「この者を返して欲しくば、余の元に来い」 この様子をただ茫然と、まるで魂を奪われた様に見つめる事とか出来なかった 真美、詩織、風吹に向かい言う。

 「三村隊長ーーー!!」 ようやく風吹が、あらん限り大声で叫ぶ。 常に目標としてきた最強の武道家。 いつの日か、追い付き、追い越せ だがその人物が、今 最強のSSS級妖魔 ルーシュトラーゼに倒された。 それも互いの特殊能力 霊能力、妖力を使わず、互いの武道の力と技量による壮絶な戦いに敗れた。 力なく砂漠に両膝を付ける風吹。 だが決して涙を見せない。 この戦いが終わってからでいい。 その時 思い切り泣けばいい そう自身に言い聞かす。 「今 やるべき事をやる」 そう言い聞かせ 目の前のSS級妖魔 まるで、タコ、イカの様なテクタングスーを睨む。 「まずこいつを片づけ それからだ」 熱き血潮を更に、燃え上がらせる。

 隣にいた詩織 余りの出来事に、思わず思考が停止した表情を浮かべていた。 「三村隊長・・・・ 信じられない」 とても受け入れられない。 死を受け入れ泣くことも出来ない。 だが、隣から燃え盛る熱い闘気が、全身を覚醒させる様詩織に伝わる。 これ程熱い 全てをその炎を焼き尽くす程の熱い闘気 今やらねばならぬこと、そうにわか仕込みだが、互いに連携し戦っている あのSS級妖魔 こいつ先に始末する。 「うおりゃーーーーー!!」 詩織自身の持つラディエンスの力を 雄叫びと共に、限界まで高める。 いやそれ以上に、詩織自身 ここまで、ラディエンスの力が、身体内部から まさに無限に高まる感覚を感じた事がなかった。 どこまでも湧き上がる そんな感じであった。 詩織自身気づいていないが、真美の第2戦闘形態程ではなかったが、僅かであったが、全身から淡い白い光が溢れ出し炎の様に揺らぎ始めた。

 その異変に気付くSS級妖魔テクタングスー タコ、イカの様に、2本の両足以外丁度頭の部分の下部から8本の自由自在 更に収縮自在の触腕がある。 その8本の触腕を利用 攻防自在に操り 複数の敵と同時に戦闘を可能にしていた。 ちなみに眼も頭部に、前後左右に、2つづつあり 物体を立方的に捕らえる事が出来た。

 突然詩織の高まり始めたラディエンスの力 どんどんと膨れ上がり始める。 余りテクタングスーに取って、芳しい状況ではない。 それに、もう1つ気付いた。 究極の源流と言えるラディエンスの力の箱舟である真美との違い、同じラディエンスの力を持ちながら詩織は、その力の1部しか持ち合わせていない それでもかなり驚異的の力だが、代々いつの日現れる究極の源流の力を持つ者を守護する者の力 当然 力は、劣る それを限界値以上に高めつつあった。 その為には、かなりのタイムロスを必要としていた。 ある一定以上の時間がかかる。 力が大きければ大きい程 更にタイムロスが大きくなる欠点があった。 その点を狙われた。 高める為に無防備になった。 だれかが援護しなければならないが、そんな余剰戦力など、最初から存在しない。

 それに詩織自身初めての経験 どこまで高まるのか? 全く見当も付かず、それに高まると同時に、襲い掛かる 随分前 珍しく真美が、ぽつりと、まさに口を滑らした様に言ったあの事 「第3戦闘形態に入りラディエンスの力を 更に解放と同時に、身体がまるで、量子論上 物質の最小単位と言われる量子レベルから粉々に砕け散りそうな程の苦痛を伴うと・・・・・」 詩織自身 今 感じているのがそれ程ではないのだろうが、かなりの苦痛 まさに身体全体が、粉々に、バラけてしまいそうな程であった。 「これ以上の激しい苦痛と戦いながら 戦い続けていたなんて・・・・・」 思わず言葉が口から小さく洩れる。

 その瞬間だった まるで無防備の隙だらけ テクタングスーの収縮自在の8本の触腕の2本が、まるで超硬質の鋼の様な強度で、突き槍の様な形状で襲い掛かった。 そのまま串刺し だれもが、敵の戦闘で、カバーできない。  またも瞬時に凍りついたように全てが止まる・・・・・ いや凍結するかの様に感じた。 身動き1つ出来ない詩織 ただ茫然と、その瞬間を顔を 死の恐怖に強張らせ受け入れる それしかない そう思った。 「短い人生だったけど、それなりに・・・・」 頭に過る。 その瞬間 詩織の前に、何者かが、立ちはだかった。 母と同じくらい年齢のそれもとても妖艶で、生まれながらの高貴さを醸し出す女性 だが母ではない。 母は今 大怪我を被い、後方の病院で治療中 絶対安静の状態 そう詩織の母の姉であり 真美の母である由美であった。 詩織の絶対絶命の危機に、自らの身体を挺してカバーに回った。

 由美に取って、詩織は、妹 良美のたった1人の娘 姪っ子 実は、真美と由美と関係と同じ 詩織と良美も実の血を分けた親子ではない。 だが星沢家が代々長女が受け継ぐラディエンスの力 一子相伝と言える神秘の力 それを持って生まれた詩織 この力を持つ者は、決して血が繋がっていなくても本当の親子以上に強い繋がりを持つ。 由美に取って、真美同様 詩織もまた その生命をかけても守らねばならない。

 まさに疾風の様に、詩織の前に立ちはだかり 襲い掛かる2本の突き槍の様な形状の触腕を両手に握るライトソードで弾く。 「詩織さん怪我は?」 後ろを少し振り向きざま言う。

 だが隙と言えるか? 解らない ただその瞬時を狙われた。 今度のターゲットは、由美 一瞬後ろを振り向きざまを狙われた。 「おば様 左!!」 それに気付いた詩織が叫ぶ。 別の2本の触腕が、由美の右脇腹を狙い まるでムチの様にしならせ 大気をまるで鋭利な刃物で切り裂く様襲い掛かる。 一瞬顔を恐怖に強張らせる。 もはや手遅れ そのまま強打 大きく宙を舞い砂漠に叩き付けられる。

 「おば様ーーー」 詩織のあらんばかりの悲痛の叫び声を上げる。 詩織を守る為 自らを犠牲にした。 「死んではいない」 だれにも聞こえない小さな言葉が漏れる。 微かに感じる由美のかなり弱々しい、だが由美の発するラディエンスの力を ラディエンスの力を持つ者同士 この力を感じる。 この力を感じなった時 それは「死」を意味する。 僅かでも感じる それはまだ生きている証拠でもある。

 だが身動き1つしない。 まるで死んでしまったかの様に、その場で、うつ伏せに倒れている。 傍目でも解る かなりの大怪我である事も もう一撃喰らえば、それが止めになる。

 だがSS級妖魔テクタングスー、詩織の動きを牽制する。 1歩も近づけない。 収縮自在の8本の触腕 それに頭部は、まるで阿修羅の様に、4つの顔を持ち それぞれに2つずつの眼があるかのように、同時に、前後左右の相手の動きに対応している。 例え死角となる後ろを取っても 同時に左右の2方向からの攻撃も対応されてしまう。 現状 一緒に戦っている風吹との戦闘に対応しながら 詩織にも対応しているのだ。 「何か妙案・・・・」 思わずグチが零れる。 「早くおば様を救出し 後方の安全な場所に・・・・」 ただ気持ちだけが焦る。

 「うん? この気配?」 ある気配に感づく。 「これは・・・・」 決して敵 妖魔の妖力ではない。 強い 底知れぬ強い霊力を感じ取る。 「そうこれは、聖龍神」 思わず先程までの焦りの表情が幾分か緩む。

 身体を少しくならせながら空中を進む聖龍神 目標は、だれの眼にも明らか 由美の救出。 聖龍神の頭部に生える2本の角の間に、祝詞を称える妖魔ハンター室長の小夜子が乗っている。

 聖龍神に対して、邪魔を試みようとする複数の妖魔 だが、もはや飛行可能な妖魔いない。 ほとんど真美が処理していた。 だがジャンプ力に優れた妖魔が、次々と、まさに玉砕覚悟で襲い掛かる。 だが最強の龍神である聖龍神 全くと言っていい程相手にならない。 大きな口を開け 鋭く生える牙で、襲い掛かる妖魔を 噛み砕いていく。 地上に蔓延る妖魔に対して、真っ赤に燃える まるで地獄の業火を思わせる眼で、睨みつける。 余りの迫力に押され立ち尽くす妖魔軍勢 更に地面を揺らす程の重低音を効かせた唸り声を上げる。 由美に襲い掛かろうとした複数の妖魔の足が止まる。 虚を突かれ まるで金縛りにあった様に、身動きが出来なくなった。

 「今じゃ 聖龍神 由美の元へ」 小夜子の掛け声に聖龍神は、更に重低音を効かせた唸り声を上げ速攻する。 聖龍神と共に、由美の元へ着地 すぐさま小夜子は、周囲に結界を張る。 いつまで持つか? ただの気休め程度。 まだ何体か残っているS級妖魔の妖力を持ってすれば、突破される。 それでも一時的でも持ちこたえ時間稼ぎが出来れば。

 「由美ちゃん 由美ちゃん・・・・・」 気を失い身動き1つ出来ない由美に声を掛ける。 両目を閉じ霊眼で怪我を確認する、確かに酷い だが今直ぐ生死に関わる程ではない。 ただ強烈な一撃によるショックで、意識が戻らない。 速くここから離脱させ 後方へ運はなければ、今は、それ程でなくても時間と共に重症化する。 手遅れにならないうちに、「聖龍神や」 小夜子の声に大きく頷く聖龍神 「わしがここで足止めをする 由美ちゃんを後方へ」 金色に輝く胴体から小さく伸びる短い2本の両手で、やさしく由美を包み込む。 同時に雄叫びを上げゆっくりと上昇を開始。

 結界を解く 同時に周囲を取り囲んでいた妖魔軍に対して、強い霊力を発する。 最強の霊能力者であり 各種強力な技 秘奥義を持つ小夜子。 「ちょっと骨が折れるかのー」 周囲を見渡しながら小さく呟く。 「どうやらここが、正念場 わしの最終地かのうー」 最強の霊能者である小夜子にしても この数は、対応できる数を超えている。

 「さあー死にたいやつは、だれじゃ」 取り囲む妖魔に対して叫ぶ。 「おぬしらの誕生日は知らぬが、命日は、今日だ」 気合を入れて叫ぶ。 何とかここを死守する。 この先で戦っている若い 真美、詩織、風吹に、これ以上負担を掛けない。 「聖龍神が戻ってるまでの辛抱じゃ」 内心呟く。 周囲を隙なく鋭く見渡す。 霊能力を最大限に高める。 決して眼には見えないが、強い霊力が、真美の様に身体から まさに炎の様に湧き上がり ほとばしる。 少しでも触れようものなら 瞬時に焼き尽くす そんなすさまじい威力を漂わせていた。

 同時に、小夜子の前に、強い霊力が集まる その霊気が、小夜子の念じる形へ実体化する。 そう巫女の武器の基本と言うべき強い霊力の光を発する破魔弓。 それを左手で握り張りつめられ霊力で出来た糸を引く 同時に、霊力から破魔矢が現れ 正面に展開する妖魔軍に対して放つ。 1本の破魔矢は、放たれた同時に、複数に別れ 次々と、的確に、まるで軍用ライフルに装備されるレーザー照準器で、狙いすましたように、正確に妖魔を射抜く。

 それを何度も繰り返す。 小夜子の持ついくつもの秘奥義の1つ。 だが長くは続かない 霊力で出来た破魔矢を放つ事に、呼吸が乱れ 喘ぎ始める。 「流石に年じゃのうー」 若かりし頃と違い、年齢から来る衰え スタミナの消耗を感じられずにはいられなかった。 短時間なら何とかなる。 特に一撃なら だが強い霊力の連続、ある程度の時間の連続使用は、やはり猛烈に霊力、スタミナを消耗させる。 特に大きな霊力を使用する秘奥義は、特にその傾向が現れる。 だがここで諦める理由にはいかない。 だがまるで無限の回復力を持ち 倒しても直ぐに、死者として蘇りと思える ブードゥー教のゾンビの様に、倒した妖魔がゾンビとして復活 また立ち上がり押し寄せてくる妖魔の大軍に思えた。 死んだ仲間の妖魔の屍を乗り越え次々と襲い掛かってくる。 それ程の極端な数を相手に、たった1人で防波堤となり防ぐには、やはり限界がある。

 どこからか急に、小夜子の元へ 神楽家代々の婿が、その証として使用する妖刀 魔斬が、自らの意思を持つかのように、小夜子の前に現れる。 遥か古(いにしえ)の時代 神楽家の祖先が死闘の末倒したA級妖魔の骨 そこから湧き出す当時としては、強力な妖力を封印処理し強い・・・と言っても現代では、A級妖魔程度ではそれ程とは言えないが、A級妖魔の妖力を持つ刀を作り 代々神楽家婿の使用する武器として寄与してきた。 その魔斬が、本来の持ち主と言える神楽家当主の元に、共に戦う為に帰還した。 それも自らの意思で。 魔斬を握る握る小夜子 そこからある思いが伝わってきた 代々使用してきた神楽家の婿達の 愛した神楽の女達への愛しい思いが伝わってくる。 その中には、小夜子が唯一愛した愛しの夫 そして、神楽家最後の希望であった孫娘 零夜の許嫁であった佐々木。 どれ程愛していたか。 その思いが小夜子の全身を暖かく包み込む。 そして小夜子に限りない力を与えてくれる。 そんな気持ちにさせてくれた。 「小夜子 小夜子 わしは、いつまてでも君を愛し続けている・・・・」 いまは亡き夫の声が聞こえた。 多分空耳だろう。 だがその声から伝わる暖かい思いが、小夜子に更なる力を与えてくれる。 「この波動・・・・」 強い力が急速に近づいて来るのを感じる。 頼もしい これ以上ないかけがえのない力 そう聖龍神が発する力の波動。 「帰ってきてきたかー」 小さな声で呟きながら 少し微笑む。 長き日々共に戦い 生死を共にして来たこれ以上ない相棒 小夜子が、いや神楽家当主が代々使役する史上最強の龍神 黄金に輝く聖龍神 重症を負った由美を後方いる仮設前線基地に運び そのまま急速に小夜子の元に戻ってきた。 低い 大地を震わすような重低音の効いた雄叫びを小夜子の前に、重厚な陣形で対峙する妖魔軍に対して浴びせる。 かなり怒り心頭のようだ。 小夜子の前に到着する前 妖魔軍の先頭集団に、対して、強力な火炎放射を口から発射 10体を超えるA級以下の妖魔 まさに、墨で出来た彫刻の様に、瞬時に炭化 そのまま聖龍神がその少し上空を飛び去る時 その身体から発するソニックブーム(衝撃波)で、粉々の塵と化し上空へと舞い上がり飛び散る。

 帰ってきた聖龍神が、小夜子の横にゆっくりと着地 まさに猛毒を持つ毒蛇が、狙った獲物を上から見下し 下を出し震わせる代わりに、高温の火炎を まさに車のアイドリング それもカーレースの数秒前 エンジンを全開させ 今にも猛ダッシュしそうに勢いをただよわせ 正面に展開する妖魔の軍勢を見下す。 まさに隙を見せれば、猛毒を持つ毒蛇が、獲物に襲い掛かるように、僅かな隙を見せれば、聖龍神の最大の武器の1つ火炎放射を 浴びせようと構える。

 これで全てが揃った。 小夜子 今 これ以上求める事最大の戦闘状態であった。 聖龍神と、妖刀 魔斬 そして小夜子自身 霊力は、最大限の状態。 数千を超える妖魔軍と対峙していても 決して1歩も引かぬ 防波堤となり この場死守する。 決して、1人で戦うのではない。 今は亡き夫 そして、歴代の神楽の当主の婿達が、力が、小夜子に限りない力を与えてくれる。 そう全員が一丸となって戦う。

 「面白い・・・・」 突然現れた旋風から 美しい まるでオペラのボーイズソプラノの声が響く。 そうこの声の持ち主 先程 戦死した三村と戦った最強のSSS級妖魔ルーシュトラーゼの声。

 旋風が消え その身体を現すと同時に、「余とお手合わせ願えるかな?」 丁重に言う。
 その黄金に輝く、人類同様の2つの瞳 まるで無邪気な子供のように、楽しそうな輝きを放っている。 今度は、持ち得る妖魔の神々にも匹敵すると言われる 最強の妖力 試す相手を見つけた。 そんな風に見受けられた。

 右手をさりげなく上げる。 同時に、対峙していた妖魔の軍勢が、大きく後退を始める。 どうやら本気の勝負を望んでいるようだ。

 「人類最強の退魔師であり 最強の霊能力を持つ そなた・・・・ いや失礼 マダム小夜子・神楽 是非戦ってみたくなりましてねー」 余裕の表情を浮かべる。 「それに・・・・・」 後退させた配下の妖魔の軍勢を振り返り 「この様な格下を相手にさせては、最強の退魔師であり 最強の霊能力を持つマダム小夜子・神楽に対して、礼節に欠ける」

 ルーシュトラーゼの言葉に、小夜子は、「こやつやはり修羅の世界に住む・・・・・鬼 いや修羅そのものの・・・・」 内心呟く。

 「邪魔者は、この通り下がらせた。 パートナーである聖龍神を含む1対2の勝負 お請け願いますか?」 余裕の表情を浮かべる。 美しい まるでオペラのボーイズソプラノの声でありながら 他を圧倒させる ただならぬ迫力 まさに真の王者であり覇王と呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出していた。

 「よかろう そなたに取って、物の数にすらならぬ相手だろうが、わしに取っては、不足なしじゃ」 隙の無い表情で睨む小夜子。

 ルーシュトラーゼの両手には、いつの間にか、先程 三村の戦闘で、前半戦に使用していたグレートソードと呼ぶにふさわしい大剣が現れ握りしめる。 同時に、ルーシュトラーゼから発せられる 決して、肉眼では見る事の出来ない溢れ出す妖力。 もはや天上知らずの無限と思わせる圧倒的妖力 まさに神の領域と呼ばせる妖力が、ルーシュトラーゼを中心に、藤田スケールと呼ばれるトルネードの階級区分で、最上位のF6(未曾有(みぞう)の超壊滅的な被害が予想される。 この階級以上の竜巻の発生率は全体から見ても極々稀(まれ)な割合である)をも超える 何もかも破壊尽くす妖力のトルネードが周囲に展開しているように、感じた。 例え最強の 今 隣にいる聖龍神を持っても あの妖力のトルネードに入れば、瞬時に粉々に砕け散る そんな破壊力を秘めている。 そんな風に感じられた。 それを本能で感じ取っているのだろう。 聖龍神は、低く小さな雄叫びこそ漏らしているが、流石に襲い掛かるのを躊躇している。 過去 そんな事決してなかった。 最強の龍神をも躊躇させる圧倒的妖力。

 じり じりと間合いを詰めるルーシュトラーゼ。 だがそれに合わせる様 まるで全てを瞬時に呑み込み破壊する激流を あえて憚り正面から力による対峙するのではない。 先程戦いルーシュトラーゼに敗れ戦死した三村隊長の様に、心眼こそ用いていない。 それでも動きを見切っていた。 いや見切ると言うより自然に受け流していた。 決して正面から力で対抗するのではない。 「柔よく剛を制す・・・・」 その言葉が最もふさわしく感じられる俊敏で尚且つ全く無駄の無い 空を舞う蝶の様に、掴みどころのない まるで実体を伴わない幻影であるかのように華麗な動き。 これは、長きに渡り強力な妖力を持つ妖魔との対決で、自然と身について来たものであった。

 「東洋の神秘の1つ 先程同様 柔よく剛を制す・・・か・・・・」 その動きに感心しつつ微笑むルーシュトラーゼ だが不敵な笑み浮かべる 「また その逆も真理なり 剛よく柔を断つ」 そう小声で言う。 自ら発する強力な妖力を受け流す小夜子に対して、瞬時に間合いを詰め 剣術勝負を仕掛ける。 小夜子の手に握る剣 それは古い時代の倒したA級妖魔の骨で作られた剣 その秘めた妖力は、A級レベル だがルーシュトラーゼ自身の持つ 最強の妖刀 自らのSSS級妖力を秘めた大剣 グレートソード 余りにも違いあり過ぎる 一撃で木端微塵 そう思いがあった。 だが小夜子の持つ妖刀 魔斬 そこから発する力 A級妖魔とは、全く違う異質の力 人類の1部が持つ 今 ここで戦う小夜子もその1人だが、特殊能力である霊力 それも果てしないポテンシャル まだ解き放たれていない力を感じていた。 「今度も 少しは頼ませてくれそうだ・・・・」 内心 少し微笑む。

 グレートソードを上段に構え 素早く踏み込む 小柄で身長の低い小夜子を 上から一気に叩き潰す。

 対する小夜子 ギリギリまで、両手に持つ妖刀 魔斬を下向きに、それも何も構えない ただの無防備な自然体に見えた。 だがそれは、少しは心得のある者なら解る。 全く付け入る隙の無い自然体の構えだと。

 ギリギリの瞬間 まさに疾風の如く妖刀 魔斬が動く、上段から襲い掛かる大剣 グレートソードを受ける。 SSS級の妖力を秘めるグレートソードと、A級の妖力しかない魔斬 どう見ても軍配は、言わずと知れたことであるはずだった。 妖刀 魔斬は、粉々に砕け散り そのまま小夜子は、何ら無抵抗のまま頭のてっぺんから真っ二つに斬り割かれる・・・・ だれもがそう思ったはず。

 だが結果は、違っていた。 グレートソードを受けた魔斬 粉々に砕け散らない それどころか魔斬自身が、光輝きだした。 その光は、決して妖力ではない。 全く別の力 そう人類の1部が持つ特殊能力 霊力 それも小夜子自身の持つたった1人の霊力ではない。 歴代の神楽家の所持した婿達の霊力が、1つとなりその力を発動させたのだ。 歴代の神楽家の婿達の霊力 1人1人の霊力など、SSS級の妖力を持つルーシュトラーゼに言わせれば、物の数ではない。 だがそれが1つ集まり相互効果を生んだ。 そして本来持ち得る力以上の力を生んだ。

 小夜子には見えていた歴代の神楽家の妖刀 魔斬を所持した婿達が霊体となり魔斬に集まり1つとなり それぞれが持つ、最大限の霊力を魔斬を加えている事を。

 だが対するルーシュトラーゼ 何ら驚きの表情すら浮かべない。  不敵な薄笑いさえ浮かべている。 それも計算ずくと言わんばかりに。

 「どうやら お主にも見えているのじゃろう」 小夜子は、呟く。 あえて力を推し量るための攻撃に思えた。 A級妖魔の骨で作られた妖刀 魔斬で立ち向かおうとした。 何ら策無にでない。 何かを施している。 その力を試そうとした。 相手の力量を計り 自身が相手にするのに、ふさわしい能力の持ち主であるかを。

 「だが相手は、わし1人ではないぞ」 小夜子の声に呼応するように、至近距離 左から聖龍神が、襲い掛かった。 大きな口を開け その鋭利な牙で、一気に食いちぎろうとした。

 「ふん」 ちょっと口元を歪めるルーシュトラーゼ。 左手を放し 襲い掛かる聖龍神に対し突き出す。

 聖龍神の動きが、瞬時に止まる そのまままさに金縛りにもあったように、身動き1つできない。 まるで聖龍神だけが、時間が止まった様に、空中停止する。

 「そなた達が言う サイコキネシス=PK(psychokinesis 念動力=観念動力)と言われる超能力と言える技・・・・」 不敵に言い放つ。 「余の意思 つまり妖力だけで対象物体を 思い通りに動かせる」 そう言いつつ左腕を地面に叩き付ける仕草をする。 同時に金縛り状態で身動き1つ出来なかった聖龍神は、まるで地上に落ちてくる隕石の様に、強烈な力で、その巨体を砂漠の地面に叩き付けられる。

 「聖・・・・聖龍神ー!!」 小夜子の悲鳴が上がる。 信じられない物を見た。 小夜子が驚愕の顔を見せる。 こうもいとも簡単に、あの最強の龍神 聖龍神が、あっさりと倒された。 信じられない。

 徐に、鎌首を持ち上げる聖龍神 この程度の一撃では、打撃こそ受けたが致命傷には程遠い。 怒り心頭の表情を浮かべ、ルーシュトラーゼを燃え盛る真っ赤な炎の瞳で睨む。 そのまま大きく口を開け火球を発生させようとした。 しかし小夜子に止められる。 「よせ聖龍神 その技通じぬ やつの思うツボじゃ」 そうルーシュトラーゼの身体は、自身の持つ妖力によって、どんなエネルギー系の攻撃を そのままルーシュトラーゼ自身の妖力を加え 放った者に対してバックファイヤーさせるミラーコーティングと言う技が、表面を被っている。 例え聖龍神の技 火炎弾、火炎放射でも そのまま反射 それもルーシュトラーゼの妖力をも加えられ放った聖龍神自身に弾き返される。

 同時に、1人と1体を相手に、優勢するルーシュトラーゼ 付け入る隙を与えない。

 「さあー どうした2対1だぞ そなた達の力 その程度ではあるまい」 煽るルーシュトラーゼ。 小夜子が、まだ秘めたる霊力を発揮していないのに気づいていた。 何らかの策 多分1回きりしか使えない奇策を用いてくるはず。

 「ここに宿し者達よ」 小夜子は、妖刀 魔斬に、霊言で語りかける。 「わしに、力を」 その言葉に、魔斬が反応 自ら輝き始めると同時に、魔斬から多数の まさに亡霊が現れルーシュトラーゼを襲う。 そう1体1体は、歴代所持した今は亡き神楽家の婿達の霊体。

 今は亡き神楽家の婿達の霊体達は、ルーシュトラーゼの周囲を取り囲むと同時に、それぞれが持っていた霊力の技を ルーシュトラーゼに対して、浴びせる。

 余りにもすさまじい一斉攻撃 爆炎で何も見えない。 「どうじゃ」 流石に小夜子もこれ程の大技 スタミナの消耗が激しく、大きく何度も呼吸を乱し喘ぐ。

 だが手応えはない。 もはや妖魔の神の領域と呼ばれる圧倒的な妖力を感じる。

 周囲を取り囲んでいた爆炎と、亡き神楽家の婿達の霊体達を内部から圧倒的妖力で弾き飛ばす。 ルーシュトラーゼが、ゆっくりと現れる。 「中々面白い技でしたねー」 余裕の表情を浮かべる。 「この程度では・・・・」 物足りなさそうに言い放つ。

 弾き飛ばされた亡き神楽家の婿達の霊体達の霊力を感じない。 あの一撃でやられたらしい。 小夜子に取って、渾身の大技であった。

 「その様子では もはや万策尽きた 決してそうではありませんよねー そなたの持つ霊力と呼ばれる力 そんな程度ではないはず」 更に煽り立てる。

 「まだまだじゃわい」 ハッタリを利かす。 だがルーシュトラーゼに見抜かれていた。 もはや万策を尽きた。 もう残された大技はない。 何よりも高齢からくるスタミナの衰え もう1手の大技は、小夜子自身の生命と引き換えになる。 「もはや思い残す事などない。 ただ死地への旅立ち わしは寂しがり屋じゃ せめて、冥途への手土産に、あのルーシュトラーゼに、掠り傷の1つでも付けなければ、悔いを残す」 内心覚悟を決める。

 「今度は、こちらから」  そう言いつつ まるでボクサーの様に構える。 ある程度距離を置きつつ シャドウーの様に、小夜子にいる向け、数回ストレートを繰り出す。 もちろん小夜子の間合いになど入っていない。 一定の距離が離れている。

 だが小夜子の眼には、数発のよまさに妖力のエネルギーが実体化したパンチが伸びてくる。 霊力を失いA級妖魔の妖力さえ感じられない ただの飾りとなった魔斬に小夜子自身の霊力を与え防ごうとする。 だが余りの速さ 全く追いつかない。

 「遊びよって・・・・」 小夜子の呟き声が上がる。

 狙いは、小夜子ではなかった。 小夜子の持つ魔斬 正確にヒットさせていた。 粉々に砕け散る魔斬 もはや残された武器は、小夜子自身が持つ最強と言われ霊力を実体化した武器しかない。 遂に追い詰められた。

 小夜子の危機的状況に、聖龍神は、何度もルーシュトラーゼに向かい襲い掛かろうとした。 その都度 先程同様何度もサイコキネシス=PK(psychokinesis 念動力=観念動力)で砂漠に、叩き付けられていた。

 「少しは、そこで大人しくしていなさい」 余りの聖龍神のしつこさに業を煮やしたか? 砂漠に叩き付けた聖龍神に対して、間を与えず、強力な妖力を秘めた光球を発射 光球は。また鎌首を上げ起き上がろうとした聖龍神の上で、半ドーム状に変化 そのまま網をかぶせる様に、聖龍神を上から抑え込む。 まるで妖力のエネルギーで出来た半ドーム状の檻 その中では、電撃の様なスパークが、各所で発生 聖龍神を襲う 流石の聖龍神も この攻撃に耐え切れず、呻きの様な悲鳴を上げ 力なく砂漠にひれ伏す。

 だが、これが小夜子に僅かな時間を与えた。 残る全ての霊力を実体化 ある武器を実体化する。 そう小夜子の最大の霊力を用いた技 破魔弓 残る全ての霊力を1本の破魔矢に集中させる。 そして何故か? ルーシュトラーゼに向けず、ルーシュトラーゼの上空に向け もはや全力の最後の1本と言える破魔矢を放つ。

 放たれた1本の破魔矢 複数に分離 そのまま上空で曼荼羅 もしくは、西洋の魔術に使われる魔法陣の様な模様陣を描く。

 「うむ?」 その上空に浮かび上がった模様を見つつ その意図を解りかねるルーシュトラーゼ 確かに強力な霊力がその模様から感じられる。 だが、どんな技による攻撃なのか?

 同時に、巫女の特別な祝詞を 両目を閉じ称える小夜子。 その祝詞に反応する上空の模様陣 右回りに回転 同時に、無数の破魔矢が、ルーシュトラーゼに対して上空から降り注ぐ。

 「下らない これしき」 そう言いつつ余裕の表情を浮かべるルーシュトラーゼ。

 だが上空から降り注ぐ破魔矢 ルーシュトラーゼに命中せず、次々とその周囲に砂漠に突き刺さる。

 「いったい何を?」 意図が読めない。

 砂漠に突き刺さった破魔矢 ルーシュトラーゼを中心に、上空と同じ模様陣を描く。

 その瞬間 大きく眼を見開く小夜子 「止めじゃ!!」 大声を発する。 「妖魔を滅せ!!」 更に大声を発する。

 上下の模様陣のが、そまの言葉に反応 更に回転数を上げる。

 何故だか? その中心にいるルーシュトラーゼは、微笑む 何か? 楽しいマジックショーで見ている様な表情であった。 これから何が起こるのか?


 その頃 真美は、ザンピースの懐に飛び込むチャンスを伺っていた。 あの強度な硬質のまるで、全身を鋼の鎧に覆われた身体 それに極端な身長差 動きが緩慢ながら 身長差によって、懐に入り込めないでいた。
 狙いは、関節の部分 そこに僅かな隙間がある。 その部分に、密着0(ゼロ)距離から 必殺の大技バーストではなく、ニードルを内部に打ち込む。 何度か? ザンピースに向けニードルを打ち込んだ。 結果は、予想通り 全てのあの硬質の鎧に弾かれた。 掠り傷1つ付けられない。 何食わぬ顔までされた。 「何かしたのか?」 とまで言われた。

 まるで、身体全体を 固い鋼で出来た甲で被われた甲虫類を思わせる身体全体 以外と、こう言う外観を持つタイプは、その内部は、軟弱で柔かいタイプが多い。 ニードルを内部に打ち込み 内部をズタズタに出来れば。 それを狙っていた。 表情を変えない。 微妙な表情の違いで、思惑を読ませない為のポーカーフェイス。 まさに全く表情の変化の無い彫刻の様に。




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