LEJENS  レジェンス

 LEJENS以外のSF小説です。
 LEJENSとは全く無関係のオリジナル小説です。



 妖魔ハンター

 作者 飛葉 凌(RYO HIBA)

 第1次妖魔対戦 Part5

 2匹の伝説の龍神が、上空を大きく旋回しながら地上の妖魔軍に、鋭い眼光で睨みを利かす中 その中心点 最初は、小さなドーナツの輪であったが、ゆっくと拡張するよう広がる。 数の上では圧倒的劣勢の妖魔ハンター。 その中心にいる 真美 その両側やや前を 真美を守るよう立ちはだかる詩織、風吹。 その3人が対峙するSSS級ルーシュトラーゼ親衛隊 3神将 エンペラーガード3体。
 こちらも無言 だが、眼にこそ見えないが、すさまじい闘気が、激しく火花を上げ中心点でぶつかり会う。

 極度の緊張感が、周囲の空気を まるで張りつめた糸の様に、それも決して、1本ではない 無数に、複雑に張り巡らされている。
 無言のプレッシャー。

 僅かな隙を見せれば、それがトリガー(引き金)となり 血みどろのキリングフィールド(殺戮の地)と変わるのは、だれもが想像出来る異様な極度に張りつめた無言の時間。

 永遠に続くと思われた時間であったが、それは、僅かな時間であった。 もはやだれがそのトリガー(引き金)を引いてしまったのか? 人類側? 妖魔側? 余りの極度の息を飲む程のプレッシャー、恐怖に呑み込まれ 負け 暴走 飛び出した。
 そこからは、史上稀にみる修羅の掟の支配する世界へと、瞬時に変貌した。

 ただ血を血で争う地獄図。 地獄絵巻。

 元々人類と妖魔の間では、戦争に関するあらゆる取り決め、協定、ルールなど締結されていない。 例え降伏の印である白旗などのルールなどもない。 ある意味ルール無用。 捕虜に対する取り決めも無い。
 1899年 オランダ ハーグで結ばれたハーグ陸戦条約(ハーグ陸戦法規とも呼ばれる)や、ジュネーブ条約など ある程度 戦争に関するあらゆる取り決め、協定、ルールこそ存在するらしいが、実際は、人類同士の戦争でも形骸化、有名無実化している有様だ。
 人類と、妖魔の間に、暗黙の取り決めと言えるのは、DEAD OR ALIVE(死ぬか生きるかの 生死にかかわらず、生死を問わず) ある意味非常に単純な物しか存在しない。
 負けは、即 死を意味し 勝てば、次の戦いの結果までは、生き残れる。 それだけでしかない。

 「ここは、いいからみんな早く、後方の安全な所まで、下がって!!」 思わず、悲痛な叫び声を上げる真美。 気持ちは どんなにうれしいか。 だが、これは別問題。
 真美自身 これがどんな戦略目的の為の戦いか? よく知っている。 それは、人類の存続 その為の捨て駒である事も。 だが、真美自身 それよりも自身の私的意味に置ける戦いが、中心になっていた。
 死ぬのは、自分1人で十分。 早くも多くの他国の霊能者達を失っている。 もうこれ以上無駄な出血 そう無駄な死を増やしたくない。

 だがその言葉とは裏腹に、仲間の妖魔ハンターの面々 みな笑っている いや微笑んでいる。 何者にも変えられない。 薄らとしたさりげない笑い顔を浮かべている。 それは、死地への旅立ち最後の悪あがきの様に真美には、感じた。 仲間を守るため 自分だけが、犠牲になればいい。 そう言う表情に見えた。

 最初の犠牲者 それは、妖魔ハンターの中でだが、出た。 この時点 妖魔ハンター以外の他国の退魔師は、ほぼ全滅していた。
 性格にやや問題を抱えていた西 勇作であった。
 妖魔ハンター内では、余り目立った存在でなく、どちらかと言うと、地味で、大きな実績にも乏しかった。 他だし ここぞという時の戦局を左右する重要な要になる場合もあり。 そう言う点でもなくてはならない存在でもあった。
 自身の持つ 霊能力 ライトニングスター 周囲に、複数の霊能力で生み出した光点を発生させ 自身の周囲に展開 自由に打ち込める。 場合によっては、敵の前で シットガンの様に、複数に分裂させ打ち込める。
 ただ性格が大人しく弱気で、やさしい 代々退魔師の家系一族の本家の唯一の正統男児後継者に生まれながら 本家により この妖魔ハンターに修行の為 入っていた。 強い男 強い退魔師にさせる為。
 霊能力は確かに、幼いころから代々退魔師の家系一族の本家の中では、抜き出ていた。 ただ生まれながらの性格が大人しく弱気で、やさしいさが、災いしていた。
 後一撃で止めを刺せる。 そんな弱りはてた妖魔に、止めを刺すのをためらい取り逃がす。 幼いころからの西の致命的と思える弱点の1つであった。
 「逃げた妖魔の傷が癒えれば、またこの世界に現れ多くの民に、多くの災いと死をもたらす・・・・」 幼い頃からいつも両親、祖父母に、言い聞かされてきた。 だが弱り果てた妖魔を見ると、憐みの気持ちが浮かび、止めの一撃を放てない。 「あの子 小さい時から性格が、優し過ぎる・・・・・」 両親、祖父母は、いつもその点を危惧していた。 1人の人間としては、大した問題ではない。 だが代々退魔師の家系一族の本家の唯一の正統男児後継者に生まれた。 そのやさしさが、弱点、欠点にもなる。 多くの民を妖魔の魔の手から守る。 その宿命を背負い生まれた。 強い男 強い退魔師にさせる。
 あの古(いにしえ)の時代より妖魔との戦闘の中心に立ち、最強の霊能力を受け継ぐ、神楽家 その当主である小夜子が、室長を務める 国家の対妖魔特殊専門部隊 別名妖魔ハンター そこに入れ 退魔師として、修業させる。 そうして西は、妖魔ハンターの一員となった。 強い男 強い退魔師になる為。

 真美と、SS級妖魔との激しい戦闘 真美は、対決しているSS級妖魔以外 他の妖魔の姿は、眼に入っていなかった。 その僅かな隙を突かれた。
 数体のS級妖魔 1体のSS級妖魔と、激しく激突と、後退 ヒットアンドウエー 周囲に小さなソニックブーム(衝撃波)を発生 まるで別次元の戦いを繰り広げていた。 やや押され気味。 今が絶好のチャンスに思えたのであろう。 周囲に対して、無関心の無防備、それ程集中していなければ、まともに戦えない。 当然その代償として、周囲に対して、警戒を怠っていた。 僅かな隙が命とり。 それ程の強敵 真美に非を求めるのは、余りにも酷な状況下であった。

 西が担当していた複数の妖魔 その内数体のS級妖魔が、突然戦線を離脱した。 それも あ うんの呼吸 このチャンスを狙っていた。 まさに火事場の泥棒 手柄を横取り 千載一遇のチャンスに見えたのだろう。 SS級との衝突時 小さく発生するソニックブーム(衝撃波) S級と言えどもまともに喰らえば弾き飛ばされる だが、その後 距離を取る為 後退する 次の激突に備えて。 ここにチャンスがある ある意味無防備の状態 その一瞬のチャンスに、全てを掛ける。

 その動きに直ぐに、西は気づいた。 同時に動く。
 目的は、真美を後方からの不意打ち 絶対させない!! 強い気持ち この様なケースでの精神状態は、だれもが、余り変わらないはず。 1点に気持ちが集中してしまい 余り周りの状態が、見えなくなる。

 またヒットアンドウエー、真美と、SS級妖魔が激突 まさに火花が散る様な激しい激突と、それに伴うソニックブーム(衝撃波)が、周囲の大気を揺らす。 同時に、少し距離を取るため後退。 真美もSS級に全神経が集中しており周囲の状況が、全く見えていない。 一瞬の間 僅かな静止 最も無防備 その瞬間 まさに音もなく近づいて来た数体のS級妖魔が、真美に同時に襲い掛かろうとした。

 その行く手を そう真美との間に、何かが遮る 無数の光点が、突如発生 まさに光の壁 バリヤー。 その光の壁 バリヤーの直ぐ後方には、1人の男が、全力疾走したのだろう 大きく汗だくになり 荒い呼吸を繰り返す。 だがその妖魔を睨む眼差しは、強い何かを必死に守ろうとする強い意志を発している。 絶対に負けない不屈の魂が感じ取られる。 西である。
 ただ、いつも真美に助けられていた。 何度も絶体絶命の危機 その時 真美がどこからともなく現れ 絶体絶命のピンチを救ってくれていた。
 必ずいつの日か、その借りを返す。 そう今が、その時。

 真美を不意打ちに急襲しようとした数体のS級妖魔 そのバリヤーに遮られ立ち止まる。
 S級以上の妖魔なら その光のエネルギー球体の本質を見抜ける。 通常打ち込む技 だが静止していても同じ破壊力を持っている。 触れれば、爆発しそれなりのダメージを受ける。 B級以下なら即死 A級でもかなりの深手を被う威力を秘めている。 絶妙のタイミングで、現れた 急ブレーキ 立ち止まる 一瞬の間 このまま正面からまともに喰らう事は出来ない。 S級と言え立ち止まれ動きが、緩慢 瞬時の躊躇い。

 僅か一瞬の隙 その隙を西は見逃さない。 自らの霊能力を実体化 光球にし自在に操れる西の霊能力 ライトニングスター 自身の周囲に展開 一定の距離内いる敵に対して、何も呪文等を唱えずとも自由自在に打ち込める 1つ1つの光球には、大きな威力を秘めていない 真美のバーストの様に、一撃で、100体以上のS級妖魔を瞬時に、消滅させる様な威力はない。 せめて1つの光球で、B級以下なら倒せるが、A級以上となると、ある程度のダメージが限度 だがそんな事 十分に今まで戦ってきた妖魔との戦いで身に染みている。 目の前の数体のS級妖魔 西の持つ霊能力では倒せない。 だがある程度のダメージ与えられれば。 西自身霊能力を最大限に高め それを自身の周囲に展開する複数の光球に注ぐ 同時に、全光球を数体S級に向け発射 全光球を 命中直前にショットガンの弾の様に複数に分裂させ打ち込む 威力を最大限に高める為。 だがこれが西の命とりになった。 自身守る霊能力で生み出した光球 これは、敵からの攻撃を守るバリヤーの役割をある。 つまり自身の周囲に1球たりとも光球が、展開していない。 つまり丸腰。 無防備の状態 圧倒的 比較すらならない程の圧倒的多数敵妖魔に周囲を固められている。 丸腰、無防備になった西 これ以上ない簡単に仕留められるターゲット(餌) 西の放ったライトニングスターの直撃を喰らった数体のS級妖魔 ある程度ダメージをそれなり受けている だがそんな存在など無視 近くにいたA級以下の妖魔が。一斉に西に向かい我先に突入 妖魔自身の各種妖力の技を西に向け放つ。 全弾ライトニングスターを放った西 再度霊能力を高め自身の周囲に、ライトニングスターを展開するのには、ある一定以上の時間 つまりタイムロスが生じる。 一斉に多数の妖魔の放った技 それを防ぐのに必要なライトニングスターを展開するのには、余りにも時間が足りない。 瞬時に、死の恐怖 顔から血が引き真っ青になる。 多分 ほとんど何も痛みも感じない 無痛だったのかも知れない。 そうであってくれた方がと思える程の悲惨な状況であった。 多数の妖魔放った技は、最初に命中した複数の長槍の様な技で、全身の至所を色々な方向から まさに串刺し 突き抜かれ その瞬間片腕、片足が引きちぎられ まるでボロ雑巾の様に地面崩れ落ちた。 最後の叫び声すら上げる余裕もなかった。

 各持場で、奮戦していた妖魔ハンターの面々 その瞬間 顔から血が引き ただ唖然のその光景を見守る事しか出来なかった。 ただ言葉を失う。 最初に動いたのは、やはり隊長の三村 自らの霊能力 ファントムを使い 周囲にいた妖魔達を蹴散らす 同時に、まるで、ボロ雑巾の様に地面崩れ落ちた西に駆け寄り 優しく右腕で、頭を持ち上げる。
 死んではいない。 微かに生命力を感じる。

 「おい しっかりしろ西!!」 心から張り裂けんばかり悲痛な大声を上げる。

 直ぐに SS級を相手していた真美も 西の傍に駆け寄る。 「西さん・・・・」 言葉が続かない。 西のこの命がけ自らを犠牲にした行動がなければ、真美も更に、数体S級までも同時に相手にしなければならず、更に苦戦を強いられた。

 薄ら弱々しく両目を開ける西。

 「傷は浅いぞ」 何とか励ましの言葉を掛ける三村 だがだれの眼にも最後の時が、もう直前の状態のなのは明らか。

 「真美ちゃんは、無事?」

 「あー 今 直ぐ傍にいる」

 その言葉を聞き少し安心した表情を浮かべる。

 「僕 少しは強い男 霊能者になれましたか?」

 「何を言うんだ 西 お前は、この妖魔ハンターに入った時から 強い男 強い霊能者だ」 安心させるよう少し微笑みで言う三村。

 西は、少し安心したような その言葉を待ち続けていた 一族から 「強い男になれ 強い霊能者なれ」 そればかり言われ続けてきた。 だが現在最強の男と称される三村からお墨を貰えた。 もう一族から強い男になれ 強い霊能者なれと言われない。 そして安らかに眠る様 両目を閉じる。

 「死ぬんじゃない西!! これは命令だ!! もう1度 両目を開けろ!! 西!! 西!! 西!!」 三村の悲痛な叫び声が、荒涼した 敵味方問わず その乾いた砂に、大量にまさに底なし沼の様に、流された大量の血を吸収する砂漠に響く。  最初の妖魔ハンターの犠牲者。

 そーっと砂漠の砂の上に寝かせる三村。 「暫くそこで休んでいろ」 やさしく微笑み語りかける。 怒りの炎が、周囲の全てを瞬時に焼き尽くす様に燃え上がる。

 同時に、直ぐ傍から とてつもない強い力 それも怒りに、まさに身をまかせコントロール不能状態へと、そして無限にその力が膨れ上がる それは、決して上限値、ゴールのない まさに無限の力が、湧き上がり始める。
 そうそれは、真美自身が発する 霊能力とは、異質の力 妖魔 それもS級以上と互角以上に戦える驚異と、神秘の力。
 この力 1度感じた事があった。 そうあれは、真美が妖魔ハンターの1員となってまもない頃 真美同じ年齢の敦子と呼ばれる霊能者が、真美を庇い目の前で、惨殺された時 怒りに我を忘れ 真美が暴走 周囲の100体以上の妖魔を たった一撃で消滅させ時 あの時同じ いやそれ以上。

 真美を見つめる三村 普通の女の子ならば、間違いなく涙にくれ泣く、だが真美は、三村同様 さすがに、仲間が惨殺されたショックを受けている。 だがそれが涙に変わらない あるのは、怒り。 底なしの。 このまま真美が、見境もなく暴走 それだけは阻止しなければならない。 そうなれば、この戦闘の地 ハルマゲンドの丘 いや それ以上 間違いなく中東全域が、瞬時に消滅させかねない? 確かに、妖魔は全て殲滅出来る。 だがそれでは意味がない。 なんともしてでも真美の暴走を止めなければ。 そう思う三村 とにかく何とか真美の暴走を止める 直ぐに行動を起こそうとした。 だが真美の様子が、変だ。

 確かに真美は、怒りに我を忘れかけていた。 暴走しそうな程 ラディエンスの力が、無限に上昇していた。
 だが、心の1部が、異様な程 沈着冷静・・・・ いや冷酷な程冷めていた まるで絶対零度。 まだその時ではない・・・・ 真美の心に響き渡っている。
 真美が動いた A級以下の妖魔では、そのスピードが負えない。 まるで消えたようにすら見える。
 西を惨殺した複数の妖魔 何か涼しい いや全てを氷付かせる冷気を感じた。 ここは、灼熱の砂漠であるにも関わらず。 そしてその冷気を感じた瞬間 身体が、粉々に切り裂かれ地面に巻き散っていく。 そう真美が、西を惨殺した妖魔を1体残らず、粉々にライトソードで、切り刻んで行った。 余りの高速 光速と思えるスピードで。

 「瞬時 第3戦闘形態とは・・・・」 その様子 少し哀れで見ていたSSS級 史上最強の妖魔ルーシュトラーゼ。 「力の使い方 全く・・・・・」 話にならないと言った表情を浮かべる。
 「まあー それはそれだ それよりあの目障りなのは、あの2匹・・・・」 そう言いつつ上空から的確に、妖魔軍の連携を遮断する2匹の伝説の龍神を見つめる。

 そう上空を旋回しながら 妖魔軍の組織的攻撃を見事に封じている2匹の龍神。 陣形に問題ない。 だが数ヶ所のウィークポイントがある。 そこに2匹の龍神が、緻密に連携 攻撃を加え 組織的動きが出来ず、更にうまく分断させ 各個撃破の対象にさせていた。 まるで分厚い肉を 薄く1枚1枚切裂いていくように。 確実に戦力の消耗狙い。 無駄、無意味な出血を強いる消耗戦狙い?

 これは、やはり各歴戦、激戦を 時には1兵士、小規模、中規模隊長として戦い、生き残ってきた三村 まさに本能と呼ぶにふさわしい戦術眼。 戦術家としての稀代稀に見る用兵家として能力であった。 少数を持って圧倒的敵を叩く 軍事ロマンでこそあるが、邪道 策士策に溺れる・・・・ ではないが、持ちうる僅かな兵力 最大限に活かす僅かな方法であった。
 真美クラスの圧倒的能力を持つ者が、100人いれば、逆に、妖魔軍を完全包囲化におき 圧倒的戦力で、軍事学上の王道 力を持って、一気に叩き潰す。 だが たら・・・ れば・・・ などは、戦場における禁句 だれよりもその言葉の持つ本質を理解している。 真美の良く使う言葉、「その為の必要な戦力、情報などを整え・・・・」 それが戦略。

 たった1人の戦死が、まさに少数精鋭で戦う妖魔ハンターに取って、致命傷と言える大きな傷となり始めた。 あの巨大なダムもその小さな水漏れからやがて崩壊する まさにその言葉通り。 西の抜けた穴 予備戦力もない妖魔ハンターに取って、ギリギリ保っていた戦線の崩壊の序章となった。

 次に、倉持 沙耶が、その尊い生命を奪われた。

 有名な寺院出身 裏では、民に、多くの死と言う汚れをまき散らす妖魔を退治する裏稼業を生業としていた。 その稀に見る霊能力を買われ妖魔ハンターの一員となっていた。
 霊能力は、梵字を書いた護符の使い手。 特に邪鬼と呼ばれる 梵字を書いた護符を小さな鬼に変化させ戦う。 いつも尼僧 それも裏僧兵の正式武装で戦ってきた。 凪刀などの武具も使いこなす。
 だが、西が防いでいた妖魔軍の1部 それが全てと言っていい、沙耶に押し寄せてきた。 余りの数の多さ 沙耶の能力を遥かに超えてしまった。
 息つく暇のない連続、無限の波状攻撃 周囲に邪鬼を展開させ 沙耶自身手持ちの凪刀で次々と襲い掛かる妖魔を蹴散らすも スタミナの限界を遥かに超えてしまった。 次々襲い掛かる妖魔の集団 見る見る動きが悪くなる。

 遂に、足元がふらつく 凪刀を砂漠に刺し何とか身体を支える 「ここで倒れる事など出来ぬ」 歯を食いしばる。 こんな所で倒れては、一族の恥、偉大な先祖達に顔向け出来ない。 強い気持ちが、沙耶を支えていた。
 だが、その僅かな隙を見逃してくれない。 周囲に展開していた妖魔軍の軍勢が一斉に沙耶に襲い掛かった。 その巨大なリングが、その中心に開いていた穴を瞬時閉じる様に。 それに気づいた上空を旋回する白龍神 だが少し遅かった。

 白龍神が、沙耶を助けようと、地上ギリギリまで降下 沙耶に襲い掛かった多数の妖魔を 鋭い牙の生える口を大きく開き突進 その牙で、次々と切り裂いていく。 辺り一面 白龍神の牙で、切り裂かれ無残な肉片と化したB級以下の妖魔の多数の死体が、飛び散った砂色の砂漠を その血の色で染めていく。 B級以下の妖魔に比べ 動きが速くなるA級妖魔は、うまく逃げおおせていた。 だが、沙耶のいた場所は、もはや多数妖魔達により小さな山になっていた。 白龍神が、そこへ突撃 妖魔達を蹴散らす。 だが、そこには、沙耶の姿はなかった。 その後には、砂漠が、真っ赤に染め上がり 小さな肉片が、無数に散乱 凄惨な現場。
 多数の妖魔達に、粉々に切裂かれ 死体すらほとんど残らない状況であった。

 沙耶の死と共に、多数の邪鬼も 元の梵字を書いた護符の紙切れとなり 粉々に千切れ風に飛ばされた。 その魂を天空へと誘う様 空高く舞い上がる。

 「てめえーら 俺様の熟れた大人の美女アイドルに、何をしやがったー!!」 最初に気づいた佐伯が叫ぶ。

 その声に、残りの妖魔ハンター全員が、その声の方向を見つめる。

 死体すら残っていないその場所で、後少しの所で、間に合わず沙耶を助けられなかった白龍神が、悲痛な面持ちで、その場所を見つめている。 真っ赤な血に染まった砂の上。

 「沙耶までが・・・・」 三村の小声が、乾いた大地に響く。

 B級以下の妖魔の出来る限りを一手に引き受け戦っていた。 手に持つは、名刀 破皇。 妖魔のみを斬る魔剣。 代々ある退魔師の家系が、所持していたが、妖魔との戦闘で絶え 小夜子が、預かっていたのを 佐伯に寄与した。 剣道、剣術の腕は、超1流の佐伯 昌信。 高卒後 防衛軍に入隊 その後各種検査で、稀に見る霊能者と解かり 特訓を受け妖魔ハンターの一員となった。 非常に軽薄な男で、ナンパ師 人類、妖魔関係なく、美しい女性、女妖魔には見境なく声を掛ける。 現状も B級以下の妖魔の出来る限りを一手に引き受け1人奮戦 だが周囲に乱雑に、名刀 破皇により切り裂かれた妖魔の死体は、全て男妖魔 女妖魔には、「俺こそが、この世で1番強い男・・・・」 そう言いつつ手加減し口説いていた。 それもかなりの上物の美しい女妖魔ばかり 上物の美しい女妖魔の口説きつつ男妖魔は、簡単にあしらい簡単に切り裂く まさに、信じられない曲芸の様な剣裁きを見せていた。 上物の美しい女妖魔を口説きながら 次々襲い掛かるB級以下であるが、男妖魔は、あっと言う間に斬り割いていく。 「俺様の恋路を邪魔するなあー!!」 性格が知れる。

 そこへ、どこからともなく3体の女妖魔 それもS級 良く似た顔立ち どうやら3姉妹? 「あらー素敵な殿方ですわねー」 甘ーい これ以上ない大人の女の芳醇な色気を漂わせ1体のS級妖魔を筆頭に、後妹と思われる妖魔2体が、佐伯を包囲する。 それも佐伯に言わせれば、最高級のいい女 妖魔であるが。 どこか毒々しいばかりの危険な色気を漂わせている。

 「そうさ この世で1番強い男は、この俺様だ」 自信に満ちた、表情、態度。 「俺様の熟れた大人の美女アイドルを良くも殺ってくれたなあー この代償 かなり高いぜ!!」 殺気に満ちた 全く隙の無い眼つき。 相手は、S級3体 歯が立たないのは解り切っている。 佐伯の霊能力は、B級妖魔が限度。 だが佐伯には、一撃必殺の大技がある。 まだこの戦闘で、1度も使用していない。 使うのは、真美が絶体絶命の危機に陥った時 そう決めていた。 その時 自身の霊能力を最大限に高め真美を守る。 1度使用すると、霊能力の再フルチャージに多大な時間を必要とする。 霊能力を失えば、どうなるか? その事ぐらい佐伯は知っている。 それは、自身の終わりを意味する。 周囲の妖魔に、ズタズタに切り殺される。

 「あらー 怖い顔して、坊や そんな私達3姉妹怖い? 私達地獄のS級妖魔3姉妹 その名前ぐらい知っているでしょう?」 かなりおちょくった高慢、傲慢な物の言いよう。

 クールな顔つき それも少し長し目を使う佐伯 「知らないなあー」 少し演技も入っているのか? とぼけた表情で、はっきりと言う。 「他だし 俺様が今まで出会った女妖魔の中で、最大級、最高級のいい女妖魔だぜ」 片目を閉じウインクする。 こう言うキザの所は、佐伯らしい。 いい女なら人類だろうが、妖魔だろうが変わりない。

 「選択は、二者択一 このまま俺達の大事な仲間の敵討ちとなり この地に果てるか? それとも今までの是非の数々を心から詫びて、この俺様のハーレムの一員となり 素晴らしい夢の様な世界を見るかだ!!」
 更に続ける。 「俺としては、後者を望むがねー」 更に、ウインクしながらはっきりと言い切る。 ちなみに、佐伯にハーレムなどない。 軍用の独身者の宿舎住まい。 一般兵より上の士官クラス用 ちょっとした大きさの単身者用のワンルーム。 ちなみに過去口説き落とした女性皆無 本人と、作者しか知らない 超ーーー トップシークレット。 常に、浮ついているのが原因。 一向に美しい花、華を娶る事が出来ない、縁がない。

 「さあー どうする」 凄んで見せる佐伯。 いつも戦闘は、気合だ!! と、訓練生にハッパを掛けている。 現在置かれている状況 全く理解していない・・・・ と思われても仕方ない状況下 周囲は、全て敵 妖魔 完全包囲化 だがそんな事微塵にも思わせない。 堂々とした態度。 まるで立場が、逆転している。 そう思わせる態度であった。 ただのハッタリである事 佐伯本人が、最も解っている。
 敵 多数の妖魔を見下し 精神面だけでも優位に立とうしていた。

 S級妖魔3姉妹 余りにもおかしかったのだろう。 突然口元、腹などを抑え大声で笑いだす。 「坊や 少しは、素敵な殿下だと思っていたのに、周囲の状況すら解らないなんて・・・・」

 だが、表情、態度 全く変わらない佐伯 「俺様の神髄は、周囲は全て敵 フレンドリーファイヤー(同士討ち)の心配の無い状況下でこそ その真価を発揮する」 自信を持って言い切る。

 「だからこそ 俺様は、この世界最強の男」 揺らぎぬ自信に満ちていた。

 「能書きは、この辺までだ。 死にたい野郎からかかってきな!!」 名刀 破皇を構える。 刀全体から鈍い光が発する。 まさに妖魔のみを斬る魔剣の輝き。 佐伯の高まる霊能力に、破皇が、呼応している。
 遠い昔 ある退魔師が、名刀鍛冶師に、特注で作らせて、1品物の最高傑作。 刀を持つ者の霊能力に呼応する。 ある意味での魔刀。

 さりげなく鞘を捨てる。 あの有名な巌流島の戦いで、剣豪 宮本 武蔵が、対戦相手である 燕返しの 佐々木 小次郎との対決 その時 佐々木 小次郎が、鞘を捨てた事に対して、有名な 「小次郎 負れたり・・・・」 「勝つつもりがあるならなぜ鞘を捨てた。 その鞘にふたたび刀が戻ることはあるまい」 でないが、もはや2度と、破皇を鞘に納める事がない。 ここが、俺の死に場所 そう言う覚悟の現れ。

 佐伯の身体全体からほとばしる 強い、本来限界の霊能力を大きく上回るポテンシャルの強い力。 覚悟は、決まっている。 そう言う強いみなぎる闘気。

 さすがのS級妖魔地獄の3姉妹と異名を取る3姉妹も 先程のバカ笑いを辞め 急に鋭い眼光と、隙の無い構えに入る。 決して侮れぬ相手。 本来持つポテンシャル以上の力を秘めている。
 妖魔界の修羅の掟の世界で、ここまで3姉妹で、数々の修羅場を潜りぬけ生き残ってきた経験、野生の本能、生存本能などが、そう伝えている。

 手負いの獅子・・・・ 窮鼠猫を噛む・・・・ などではないかも知れない。 だが、油断が足元をすくわれかねないとは、決して言い切れない。 ここは生死を争う戦場 どんなどんでん返しだってあり得る。 実力だけではない どんなに強い能力を持っていても 弱い相手と、見くびり、油断 結果 負け=死を意味する。 生き残った者こそ、勝ちであり 最も強い。 ある意味単純明快な世界。

 互いに間合いを測る。 静寂な一瞬の間 だが、佐伯と、S級妖魔地獄の3姉妹の間には、肉眼では決して見ることの出来ない無数の電撃が発せられ お互いの中間点で、激突 激しい火花を散らしている。
 不意に、その中間点に入り込んだD級妖魔数体が、瞬時に燃え上がり灰となり 風に飛ばされた。

 今までにない霊能力の高まりを感じる佐伯。 それに呼応する名刀 破皇 更に、刀全体から発する鈍く輝く、まるで、妖魔の流す血を欲するように。
 それは、ロウソクの最後の灯 燃え尽きる瞬間 勢いよく燃え上がるのに、どこか似ていた。

 佐伯、S級妖魔地獄の3姉妹の口元が、まさに あ・うん・の呼吸 同時に、薄く笑った。 それがGOサイン。
 1番手近で、3姉妹の中で、最も小柄 末っ子と思われる3女目掛けて、突撃。 相手の攻撃を受け身で待つ。 そんな余裕など佐伯にはない。 3姉妹共に、身体の1部でいい 少しでも深め傷を被わせる。 佐伯の一撃の必殺の大技 風林火山 その熱量では、相手は、S級 その身体から発する妖気が、ある種のバリヤーの役割を果たす。 燃やし尽くすことが出来ない。 だが少し深めの傷を被わせれば、そこから風林火山の高温の炎を 体内に送り込めるはず、内部から焼く。 それに賭けた。

 ものすごい他を圧倒する気合の大声を上げる。 余りの気合と、迫力 S級妖魔地獄の3姉妹の3女も その気合と、迫力に呑み込まれ 僅かに出足が遅れる。 だがそこが地獄の3姉妹と言われる所以 直ぐに、姉の2体が、ガードする。 2体とも 腰まで届き その髪の毛先が、ギリシャ神話に出てくるモンスター(怪物) メドゥーサ(もしくは、メデューサとも呼ばれる)の様に、長い髪先を無数のヘビに変化 それも大きく口を開けそのしたたる牙からは、噛まれた相手を瞬時に毒殺させる程の強力な毒液を垂らし飛び掛かる佐伯を迎え撃つ。 さすがに佐伯も突進を急停止 ランダムな動き、数も無数 髪先が、変化した無数のヘビに、破皇を振り回し 身体を噛まれぬようにするのが、精一杯。 ここで下のクラスの周囲を囲む多数の妖魔に襲われては、万事休すであったが、この戦いを模様眺めに徹しているのか? 全く動かない。

 「どうやら あのヘビ 妖魔と言えどもA級以下なら一噛みで、瞬時に毒に殺られる・・・・ そしてあのヘビに呑み込まれ餌となる・・・・」 小声で呟く。 「あの美女妖魔の美貌の養分か・・・・」 自ら言い聞かせる。 佐伯の読み。 「その為 襲ってこない・・・・」 そう佐伯の読み 見事的中していた。

 だが、1歩も引けない いや引く為の退路もない。 あるのは、前進 そして、活路を開く。 佐伯に残された唯一の選択。

 地獄の3姉妹が、佐伯に対して、攻撃を仕掛けてきた。 最も得意とする戦法 1番大柄の長女が正面から佐伯に襲いかがる。 そう佐伯には見えた。
 だか、それは1つのトリック 突如左右3体に分身した様に見えた。 そう長女の後ろに、少し長女より小柄な2女が隠れていた。 更に2女より もう少し小柄な3女が隠れており それが、佐伯の目の前で、瞬時に左右に分かれた。 佐伯の眼には、突如3体に分身した様に見える。 そして、3体同時に、佐伯に襲い掛かる。 まさに三位一体の攻撃。 3方向から複数の 大きな鎌口を開け 鋭く牙の間から毒々しいまさに猛毒のよだれを垂らしたヘビが佐伯を襲う。 万事休す だが、そこには佐伯の姿が忽然と消えた。 佐伯に襲い掛かった複数のヘビは、まさに、蜃気楼となった佐伯の身体をただ貫く。 全く手ごたえもない。

 この攻撃を本能で感じ取った佐伯 間一髪 まさに真美並のスピードで、高速後退 「ちょっとやばかったぜー あんなのに噛まれたら一溜りも無い」 思わず本音を漏らす。


 「いつも思うが、真美ちゃん たった1人で、こんなバケモノクラスを相手に、それも数体 良く戦ってきているなあー」 少し感心する。 S級クラスの計り知れない妖力 今更と言う思いが過る。
 本来持つ 特殊能力の違いもあるが、真美は、まだ17歳の 見た目か弱い少女? そんな真美に、いつも助けられていた。 だが佐伯は男 男である いつも守られ 助けられてばかりはいられない。 真美の為にも 敵妖魔の主戦力を少しでも削いでおく。
 持場を死守する。 もはやそんな考えはない。 1体でも多く 1体でも上のランクの妖魔を道連れにする。 今はそれだけであった。 「冥途の土産は、多い方がいい・・・・」 不遜な考えでもあった。 どうせなぶり殺しにされる。 佐伯もバカでない。 現状の状況判断は出来る。 勝ち目のない負け戦 握っては、絶対手放さない権力絶対至上主義の御上に取って、都合の良い人間ではない。 自らの手を汚さず、妖魔にその汚れ仕事をやらせる・・・・・ 実に懸命な判断・・・・ 単なる嫌味。 どうせ裏チャンネル、裏交渉等で、自らの唯一絶対の絶対手放さない権力絶対至上主義の御上 何らかの方法で、自ら保全を図る。 政治、権力とはそういう世界。

 とにかく、相手は、妖魔と言っても 飛びっきりの美女3姉妹 傷つけるには、ちょっと・・・・どころか惜しい。 しかしやるしかない。 佐伯の持つ最終大技 まさに灼熱の炎のトルネード(竜巻) 風林火山。 だがこの程度の火力では、あの地獄の3姉妹を 焼き尽くす事が出来ない。 身体の1部に大きな傷を付け、そこから風林火山の灼熱の炎を身体内部に入れ 内部から焼き尽くす。 今 それ以外方法は無い。

 ついでに、周囲を円形に固めているA級以下の妖魔も道連れ。 旅は、多い方がいい? ただむっさ苦しい男が大半が、気にいらないが、出来れば、基準以上の美女妖魔ばかりならいい。 人生 戦闘(ケンカ)と、ナンパ。 これこそ至高の楽しみ。 その為に、佐伯本人言わせれば、宮仕えの身分の卑しい公務員 特殊になるが、防衛軍に入隊した。 そして、入隊時に行われる各種検査の結果 国家最高機密である 唯一あの妖魔と対決出来る特殊能力 1部人類しか持ち合わせない霊能力の持ち主と判明 自ら望んで、妖魔ハンターの一員となった。

 ここまで生き延びて来られたのは、佐伯自身の持つ強運と、度胸 それだけだと思っていた。 あんなバケモノの妖魔と対決 決して、人生の定められているのか? 寿命まで生きれない。 長生きは無理 だからやりたいことを徹底的やる。 そう決めていた。 だがどうやら命運は尽きようとしていた。 ここまで。 そんな事ばかりが、脳裏を過る。

 名刀 破皇 妖魔だけを斬る魔剣 今までB級以下だが、斬り割けない妖魔はいなかった。 だが2ランク上 ただの2ランクではない とてつもない程の差がある そんなS級妖魔 それも女妖魔の長い髪が、まるでギリシャ神話に出てくるモンスター(怪物) メドゥーサ(もしくは、メデューサとも呼ばれる)の様に、長い髪先を無数のヘビに変化 そんな髪? ヘビ? を斬り割く事が出来ない。 これを何とか出来れば、相手 そう今戦っているS級妖魔3姉妹の懐に飛び込める。 懐にさえ飛び込めれば、S級妖魔3姉妹それぞれに、ある程度の刀による傷を付けられる。 その時こそ唯一最初で、最後の最大のチャンス。 あのS級妖魔3姉妹 同一の妖力であり 3姉妹によるフォーメーション(連携)に特化している。 それもあの髪をヘビに変化させ 中距離からの攻撃のみ ガキの頃からケンカに明け暮れていた佐伯だからこそ見抜けた まさに、ウィークポイント(弱点)。

 だがウィークポイント(弱点)を見つけ出しても どのような戦術を用いてそこを攻撃するのか? 秘策など考えている余裕などない。 常に変化する状況下 今 最もベター思える戦術でも 刻々と変化し僅か数秒先では、状況の変化により必ずしも有効的な戦術とはなり得ない。 それがまさに戦場 戦場は生き物。

 その時だった。 こんなラッキー(幸運)多分生涯、最初で最後 2度とない・・・・ いやこんなラッキー(幸運)生涯1度たりとも経験する事などないかも知れない。 まさに天文学的確率の低さ。

 真美が相手をしていたSS級妖魔 ルーシュトラーゼ親衛隊 3神将 エンペラーガードの三位一体のトリニティ・アタックを受け 大きく弾き飛ばされてきた。

 真美の後方 まさに破れかぶれポロ雑巾になりながらも 健気に真美を包み込みガード 地面への激突を和らげる羽衣 直ぐに立ち上がる真美。 そこに眼にしたのは、佐伯の状況 瞬時に状況を的確に判断 「このままでは・・・・」 内心呟きながら 佐伯に僅かな余裕を与える為 ある行動に出た。 佐伯が手こずっている原因である 自ら地獄の3姉妹と呼び その主要武器? 技? の1つメドゥーサ(もしくは、メデューサとも呼ばれる)の様に、長い髪先を無数のヘビに変化 ランダムに攻撃仕掛ける ヘビ? 髪?に向け左腕を伸ばし左手を立てる そう真美の必殺の技の1つニードル。 真美から放たれた極細のエネルギーで出来た針でありながら強力な貫通力を秘めるニードルの無数の極細のエネルギーで出来た針が、次々と髪が変化しヘビになった部分を瞬時に斬り割いていく。

 まさにこの千載一遇のチャンス それを待っていた佐伯 こんなチャンス2度目は絶対にない。

 一瞬 我を失った様な茫然と立ち尽くす3姉妹 人類も妖魔 女に取って髪は、その生命と同じくらい重要。 坊主の様なスキンヘッドにこそならなかったが、まさにデタラメに髪を斬られた様になった。

 その時 猛烈な気合と共に、佐伯が懐に入り込み斬りこんできた。 鞘こそないが、鞘に納めた刀を 瞬時に抜き相手を水平に切り裂く居合抜き。 次々と3姉妹に浴びせる。 手応えはある。 他だし致命傷にならないが、ある程度の深手を負わせるには、十分。 にやっ 少し不敵な笑みが漏れる。

 「真美ちゃん 感謝するぜ」 思わず声が、それもだれにも聞こえない小声を 自ら言い聞かせる様に呟く。 そうまさに真美のナイスタイミングのアシスト。 いつもそうだ。 ここぞと言う場面に、必ず真美が、これ以上ない絶妙なタイミングで、アシストをしてくれる。 それにいつも助けられていた。 確かに、真美の基本的資質は、数少ない戦略家としての資質を 今時の女子高生とは、とても信じられない事に育んでいる。 それと同時に、戦場での独特の嗅覚 まるで、隊長の三村の様な戦術家の側面も持ち合わせている。

 だがここまで見せていた不敵、不遜な笑みも消える。 苦痛に歪む、顔全体から、まるで血の様な油汗が滲み落ちる。 そう確かに、あのS級妖魔3姉妹の懐に飛び込み 居合抜きでそれぞれに、一定以上の傷を負わせた だが佐伯自身も眼にも止まらぬ速さのカウンターを それぞれに喰らっていた。 それはまさに致命傷 決して、外観から解らない身体内部に対する攻撃。

 「どうやら内臓をやられたらしい・・・・」 冷静に自己判断する佐伯。 それが自身に対する致命傷である事も。

 「ふん・・・ 俺様もここまでのようだぜ」 まるで他人事の様な思いが過る。

 同時に、脈絡もない事が佐伯の脳裏を何故か過った? 何故か? 佐伯本人すら理解出来ない。

 「・・・・そう言えばいつも真美ちゃん 妖魔との戦いに関して、まず戦略面から意見を言ったなあー 何を持って勝利とし その後戦線などの行方・・・・ 何よりも歴史の流れなどを特に重視していたなあー まず戦略的勝利を考えその為の技術的補完方法としての複数の戦術があり 少々の戦術的敗北など戦略的勝利を収めれば取るに足りないと・・・・ それに対して、三村隊長は、まさに真逆と言っていいかも まず複数の戦術を考え その複数の戦術をどのように運用するかを考えるのは、戦略だと・・・・ 実際 真美ちゃんの考えは、机上の空論になりがちだったなあー こちらから妖魔のいる別宇宙に行くことが出来ない。 ・・・・いつどこで現れるか解らない妖魔に対し こちらには、戦略的余地がない。 ただ防衛に徹するのみ 三村隊長の考えどおり 複数の撃破する為戦術を考え どのように運用するのか? それによって妖魔を撃破する・・・・・」

 何故今この様な何ら脈絡もない事が、脳裏を過ったのか? 佐伯自身理解出来なかった。 気を取り直す。

 「さあー 最後の大仕事にかかるかー」 自身に言い聞かせる。

 大きく息を吐く、同時に、佐伯自身の持つ霊能力を最大限に高める。 「うおー!!!」 大きな まるで怪鳥の様な叫び声を上げる。 同時に、両手に持つ名刀 破皇 妖魔だけを斬る妖刀 一瞬刃を見る 今までどんな妖魔との戦いに置いても傷どころか、刃こぼれ1つなかった名刀 破皇の刃 だが今の見た破皇の刃は、まるで錆びた鉄がボロボロに崩れたようになっていた。 ふん 少し薄笑い浮かべ、ここまで一緒に戦ってきた まさに愛すべき生死を共にしてきた戦友 いやそれ以上 愛すべき最高の女性の様にやさしく刃の部分にキスをする。 にや・・・ 不敵な笑みが毀れる。 佐伯に取って、最高の感謝の気持ちの表れ。 そして、名刀 破皇を天空高くに突き刺すように突き上げる。

 「燃え上がれ俺の霊力!! 必殺 風林火山!!」 全身全霊を込め叫ぶ佐伯。 それに呼応し鈍い光を放つ名刀 破皇。 まさに我が主(あるじ)は、佐伯のみ。 そう自ら語っているように、鈍い輝きが更に増す。

 同時に、半径十数mの何もないはずの砂砂漠が、突然つむじ風が円形に、ゆっくりと起きる。 そして少しずつその勢力を増し始める。 ただのつむじ風ではない。 勢力を増すと同時に、その風そのものが熱を発し始め やがて、つむじ風は、急速に、神の領域と言われるカテゴリー5のトルネードへと変貌 猛烈に吹き荒れる。 その半径内にいた妖魔 猛烈に吹き荒れる風が、シールドとなり その外に出ることが出来ず、次々とその風のシールドに呑み込まれ断末魔の絶叫を上げながら身体がバラバラに砕け散り、更に風そのものが、とてつもない高温となっておりバラバラに砕けた死体は、瞬時燃え尽きる。 佐伯の持つ一発必殺の大技 風林火山。 だが過去今までの使用した風林火山とは、根本的に威力が違い過ぎる。 ここまでの威力のある風林火山 過去にない。 まさに佐伯自身のその生命と引き換えの様に感じる威力であった。

 風林火山内にいた あのS級妖魔 地獄の3姉妹 力を込めて地面に踏ん張っている。 S級妖魔とは言え、このすさまじい吹き荒れる嵐と、灼熱に燃える上がる高温 持ちこたえるのが精一杯。 他にいた妖魔は、全て焼き尽くされていた。 

 「姉上・・・・」 三女の弱々しい声が漏れる。 さすがに耐え切れなくなっている。

 「何 弱音を吐いているの たかが人間如きの技に、私達は、S級妖魔 地獄の3姉妹 それぐらい耐えられなくてどうするの」 長女の叱咤が飛ぶ。

 「ちえっ!!」 その様子を見ながら佐伯の舌打ちが漏れる。
 「まだこの程度ではダメか・・・・・」 佐伯の全身全霊をこめた大技 だがS級妖魔には、まだ威力が足りない。
 にゃっ 不敵な そう何もかも達観した様な笑み浮かべる。 「やるしかあるまい」 これ以上高まらないはずの佐伯の霊力の限界を 更に超える もう1つの佐伯の持つ力 そうそれは、「さあー 止めだ 喰らえ俺の愛の炎!!!」 そう佐伯の持つ最終の力 今まで愛してきた女達への熱き愛の炎・・・・ とは言っても佐伯の一方的片思いであったが。
 今まで、ナンパで声を掛けてきた美女、美少女(当然 真美、詩織含む 当人達に取って、はた迷惑)の顔が次々と思い浮かぶ。 「みんないい女ばかりだぜ・・・」 思わずちょっとにやけた薄笑いを浮かべる。
 だが、それこそが、用える限界を超える佐伯の究極の力。 まさに燃え盛る美女、美少女への熱き想い無限の究極の愛の力。

 更に、それに呼応し名刀 破皇 まるで自ら意思を持つように、まばゆいばかりの黄金の光を放つ。 同時にトルネードの高温の嵐のシールドが、紅蓮の炎から黄金の光輝く炎に変わり 内部に黄金の怪光が不気味に無数に発生 まるで、弱ったターゲット(獲物)を虎視眈々と狙いを定め 襲い掛かるそのチャンスを息を殺し気配すら消し 一瞬の隙を伺うかの如く。 直ぐにその瞬間が訪れた。 必死に高温、猛烈に回転する風林火山 そうトルネードの荒れ狂う内部 吹き上げられない様 必死に地面に踏ん張る3姉妹。 3姉妹共 僅かに、身体が揺れた。 その隙を待っていた佐伯 佐伯の眼から不気味な眼光が光る。 同時に、風林火山の猛烈に吹き荒れる回転かる嵐の内部の黄金に輝く壁 無数の怪光が怪しい光を猛烈に発する。 同時に、まさに光速 光のスピード さすがのS級妖魔 地獄の3姉妹と言え 光速を避けるなと不可能 それぞれに、一カ所づつにつけた傷を目掛け直撃 まさに太陽の炎に匹敵 そう思われる高温と電気と両方持ち合わせる発生した無数の黄金の落雷は、傷口に直撃 そのまま何もかも瞬時燃やし尽くすような高エネルギーを3姉妹の身体内部に、まさに強引に何ら断りもなく内部に侵入。 断末魔の絶叫すら上げる余裕もない。 同時に3姉妹の身体内部から黄金の光が放たれ 遺灰すら残らない 瞬時に燃え尽きる。

 「どうだい この俺様の真っ赤に燃える愛の炎の力を」 口元を少し不敵に動かす。

 「面白い余興を見せてもらえたな」 この戦いを楽しそうに見守っていた SSS級妖魔 ルーシュトラーゼ。 「だがここまで」 少し残念そうに声が漏れる。 この後に起きる結末を もはや知っている。 そんな口調。

 あれ程 怒り狂う様荒れた高温のトルネード 佐伯の一撃必殺の大技の風林火山 自身の限界を遥かに超える莫大なエネルギーを一気に放った。 その反動? 何もかも達観した表情 全てが終わった。
 両腕で天空高く突き上げていた名刀 破皇を ゆっくりと下す。 途中名刀 破皇に、キスする佐伯。 にやりと笑みを浮かべる。 「流石 俺の最高の相棒」 名刀 破皇 ここまで、生死を共に戦い続けた物への感謝の念。
 力なく名刀 破皇の剣先を砂漠に付き刺し 全身でもたれかかる。 もはや立つ体力さえ尽き果てている。 名刀 破皇も先程までの鈍い光が消え失せ もはやただの朽ち果てかけているブリキの様に見える。 もはや妖魔どころか、紙布すら斬れない様に感じられた。

 周囲を何故か楽しそうに見つめる。 にやり 佐伯らしい不敵な笑みが漏れる。

 少し間を置く、「いい眺めだぜー」 もはや周囲の半径数mの範囲内には何も残っていない風景を少し不敵な笑みを浮かべながら呟く佐伯。。  ただ佐伯の放った一撃必殺の風林火山に、運悪く? 呑み込まれ身体が瞬時に、小さくバラバラに引き裂かれ 細かな肉片と化し瞬時に燃え尽きた灰が、ゆっくりと風に舞いながら砂漠に降り注ぐ。 そんな殺風景な風景。 運良く風林火山に取り込まれなかった妖魔達 ただ茫然と、一言も言葉すら発しない。 ただ真美の持つ必殺最終の大技 バーストにも匹敵する? そう思える様な大技をその眼に見せられ ただその大技を放った佐伯を まるで魂が抜けた様な表情で見つめる事しか出来ない。 「真っ白に燃え尽きたぜー」 ある有名なボックシングの古いマンガの主人公の捨てゼリフを小さく吐く。 「真美ちゃん それに俺の愛した可愛い美女、美少女・・・・ 先に行っているが、直ぐに俺の後を追うなよ、いい程皺われたおばあちゃんになってから・・・・・」 そう言い残すと、佐伯自身の身体が、急激に燃え尽きた真っ白の灰と化する。

 同時に、砂漠を吹く微風に乗り灰となった佐伯の身体は、宙に舞う。 同時に、名刀 破皇も朽ち果て、ただの錆びて粉々になった赤錆となり地面に舞い散る。

 佐伯戦死。

 「佐伯ー・・・・・!!」 「佐伯さーん・・・・!!」 ここまで無事生き残っていた同僚の妖魔ハンターの悲しい痛む叫び声が、殺風景でありなから 数々の血を飲み続けている砂漠に、空しく木霊する。




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