LEJENS  レジェンス

 LEJENS以外のSF小説です。
 LEJENSとは全く無関係のオリジナル小説です。


 妖魔ハンター

 作者 飛葉 凌(RYO HIBA)

 高校2年生編
 Part7

 まさに地面ギリギリとまでではないが、着陸時は、除けば、ほぼ限界ギリギリの低空飛行で、それもこれ以上減速すれば、間違いなく失速 墜落と言うスピードで、轟音を周囲にまき散らし侵入。
 丁度 意識を失っている真美をお姫様抱っこし 周囲をダイヤモンド陣形で、4体のA級妖魔に守らせているドライスラーの真上を通過。
 見上げるドライスラーと、4体のA級妖魔 感じている2つのラディエンスの力と、複数の強力な霊能力 その輸送機から発せられている。
 だが、ここには、大型輸送機どころか、小型のセスナ機ですら着陸出来る滑走路は、近くにもない。
 まして、VTOL機(Vertical Take-Off and Landing=垂直離着陸機)の機能など持ち合わせていない。
 「パラシュートでも使って・・・・」 呟くドライスラー それ以外考えられない。
 通過する直前 下部のハッチが、ゆっくりと大きく開いたのを見ていた。 それが根拠であった。
 「パラシュートを開いた瞬間 下から狙い撃ち いいカモだぜ」 不敵に呟くドライスラー。 自身もそうだが、他にもここにいる4体のA級妖魔のうち2体は、長距離砲の技を持っている。
 パラシュートを開いた瞬間 落下スピードは、大幅減速 それに空中を鳥の様に自由に移動出来ない。 下から恰好のターゲット(標的)。 狙い撃ち。
 「バカなやつらだ」 薄く笑みがこぼれる。
 口でそう呟くものの 何も策無で、まとも来るなど考えられない。
 「何か仕掛けてくる・・・・」 自ら言い聞かすように呟く。

 上空を爆音を上げ通過する大型輸送機の下部ハッチの開いた部分から 数個の光球が、突如出現 まさにピンポイント その名ふさわしい 狙いすました様正確に、5体の妖魔の動きを封じる様に、地面に着弾 出鼻を挫かれ動きが封じられる。 妖魔ハンター隊員の1人 西の主要技 ライトニング・スター。  同時に、2匹の 1匹は、まさに黄金色に輝く大型の竜 もう1匹は、純白に輝く竜が現れる。 そう神楽家の使役する2匹の竜の神と呼べる竜神。
 我々の住む世界、妖魔の住む妖魔界とは、また異なるパラレルワールド(異界、異世界、平行世界)の最強の霊獣。
 太古の昔 こちらの世界に現れる妖魔と戦う為 神楽家が、代々秘蔵の一子相伝に伝えられる左腕に嵌めているブレスレットの中央部に嵌めこまれている霊玉石により パラレルワールド(異界、異世界、平行世界)から こちらの世界に召喚され封印された最強の霊獣。
 室長の小夜子の使役する 最強の竜神 黄金色に輝く聖竜神 そして、唯一残された孫娘 次期神楽家当主 零夜の使役する 純白の白竜神。
 現れた2匹の竜神 最強の霊獣 空中を大きく身体をくねらせ 大きく低い豪快な吠え声を 妖魔に向かい威嚇する様に上げる。
 真っ先にも聖竜神が、動きが止まった5体の妖魔に向け 突撃する。
 両手には、3人づつの人影が、そう室長の小夜子 隊長の三村 真美の母 由美が、右手に、左手には、詩織、佐々木、佐伯の3人の姿。

 地上ギリギリに降り立つ聖竜神 左右両手に乗っていた6人が、地上へと飛び降り 周囲に展開。
 「さすがに、現役組 手馴れたもの・・・・」 その様子を少し楽しげに見ながらドライスラーは、小声で言う。
 常に、妖魔との戦闘で、数々の修羅場を潜りぬけていた。 やはり手馴れている。 全くそつがない。
 それに、やはり隊長の三村の存在が大きい。
 妖魔ハンターに転属する前 1人のワイルドギース(傭兵)として、数々の歴史に残る激戦を潜りぬけてきたリアル(本物)プロ。 時には、1兵士として、時には、部隊を率いる指揮官として、踏んできた場数 次々と、状況の変わる戦場で、部隊を率いる指揮官として、培われてきた戦術眼 三村レベルの戦術家は、そうはいない。

 「私の 大事な娘 今直ぐ放しなさい」 きりっとした口調で言い放つ由美。 鋭い、そして隙のない視線で、5体の妖魔を睨みつける。
 全く、有無も反論も許さない強い決意が、その表情に現れている。

 その由美を 押しのける様に、少し前に出る詩織 「こらSS級妖魔 私の大事な真美ちゃん その弩汚い手から離せ!!」 大声で言い放つ かなり怒り心頭 両手に握るライトソードの輝きが、更に増す。
 事もあろうに、意識を失っていると言え 真美をお姫様抱っこしている。 詩織に取って、絶対許されない行為。

 その頃 もう1匹の そう零夜の使役する白竜神 両手に、零夜、沙耶、西の3人を乗せ 少し離れた場所に降り立つ。
 そこは、真美の友達で、この模様を ただ恐怖に怯え、身動き1つ出来なくなり ただ茫然と見ているしか出来ない 綾、香、加奈がいる。
 「さあー あんた達」 ただ茫然と立ち尽くす3人に向かって言い放つ零夜。
 見られてしまったものは、どうする事が出来ない。 後で、いつもの手筈で、今まで見た事を一切他言しないよう 誓約書を書かせる以外ない。
 「そこで、グスグスしないで」 少し困った表情を浮かべる。 これから 最強のSS級妖魔との対決が控えている。 部外者にここにいてもらっては困る。
 それに、戦闘は、今までにない激しいものになる。 最悪のケースも考えられる。 邪魔者は、早く安全な後方へ はっきりとそう言いたい表情であった。
 「西君 早くこの子達を連れて」 近くで、周囲を警戒している西に声を掛ける零夜。
 いつもの手筈で、後方には、防衛軍が出撃 立ち入り禁止の非常線を張っている。 特にここは、山間深く、通じている幹線道路を1本 そこを抑えれば、ここにはだれも入れない。
 まず、悪いが、真美ちゃんの3人の友達は、そこに移動指令所に行ってもらう。
 そこで、保護と言えば、聞こえが良いが、監禁。 通常 今まで見た事を一切他言しない誓約書をその場で提出程度だが、見られた機密によれば、最悪記憶操作・・・・ ここまではないだろうが・・・・ そう思いつつ綾、香、加奈の3人を見つめる。
 「君達 早く こっちへ」 大きなゼスチャーを交え 3人を後方へ連れ出そうとする西 周囲に防御用の光球 ライトニング・スターをくまなく展開 後方からの攻撃に対するバリヤー。
 「でも あそこに真美が・・・」 渋る綾 見つめる先には、意識を失い あのSS級妖魔にお姫様抱っこで、抱えられる真美がいる。 真美を見捨てて、自分達だけが逃げるなと゜出来ない。 そう言う表情を心配顔で浮かべていた。
 「君達が、ここへ残って、何が出来ると?」 真顔で問い詰める西。
 「それは・・・・」 さすがに、言葉詰まる綾。 そう何も出来ない。 それぐらいは、解っている。
 「我々は、専門対策チームです。 後は、我々に任せて、早くここから避難を」 だが1歩・・・ が踏み出せない3人。 後ろ髪を引かれている・・・・ そんな気がしてならない。
 「大丈夫 我々が責任を持って、救出します。 それに今 捕らえられているのは、後で説明があると思われますが、我々の大事な仲間です。 あの程度問題にはなりません」 はっきりとした口調 自信を持って、言い切る西。 実は内心裏腹 この場合一刻も早く 部外者であり 1番守らなければならない民間人を 後方の安全な場所へ誘導するのが最重要 まずその責任を果たす事。 今はそれが先決。
 その言葉を聞いて、ようやく ゆっくりとだが動き出す綾 それにつられる様に、後に続く香、加奈。 まだこの場から離れたくない表情が浮かんでいる。
 「何故? 私の初めての大事なお見合いの席だったのに、こんなことに・・・・」 責任を感じているのか? 今にも泣き出しそうになる加奈。
 「・・・・自信がなかったから みんなを誘って・・・・ 誘わなければ、真美ちゃんがあんな目に・・・・」 思わず立ち止まり 両手で、顔を覆い泣き出してしまう加奈。
 余程責任を感じてしまっていた。
 加奈の脳裏には、1年生時の1学期の中間テストの後のあの思い出が蘇っていた。 数学が苦手。 芳しくないテストの数字の点数 追試となった。 その時 声を掛けてくれたのが、真美であった。
 当時 ハンサム、イケメンが多い男子生徒 だが、興味を示す男子生徒は皆無 東北地方の小さな地方都市であったが、古くから続く名家の娘である加奈 だが、田舎の垢抜けないルックス スタイルも良くない加奈にだれも興味も示さず、それに、クラスの女子生徒も一応事務的で、だれも友達が出来なかった。 そんな時 体育の時間 アップなどの柔軟体操で、ペアを組んでいた真美(真美の方が1cm身長が高い)が、1人ぽっんとしていた加奈にやさしく声を掛けてくれた。 その時 どれ程うれしかったか、言葉で言い尽くせない 決して忘れない恩。 加奈に取って、真美は、最も大事な友達の1人であり 恩人でもある。 真美を通して、友達の綾、香も出来た。 2人共 今や大事な友達 それと、先輩の詩織、薫 みんな真美を通して出来たかけがえのない物。
 そんな大事な真美が、今 あの妖魔と呼ばれるバケモノに捕らえられ、意識を失っている。 出来れば、自分の力で助け出したい。 でもそんな力はない。 自分を責める それ以外何も出来なかった。

 「泣かないで、加奈 あの人達が、必ず真美を助けてくれるから」 加奈を何とか励ます綾。
 「そうよ 加奈ちゃん・・・・」 香も必至に涙目を抑え 必至に励まそうしていた。
 加奈の着る 代々工藤家の娘が、お見合いなどの時に着る 家宝と言える豪華な晴れ着。 雪とドロ塗れになり もはや次に着られる状態でない程汚れていた。
 そんな事 全く気にした様子もない 大事なのは、真美 今の加奈には、それしかなかった。

 「何を立ち止まるな。 早くこっちへ」 大きくゼスチャーを交え呼ぶ西。

 「早く行こう・・・・」 両手で加奈を支え歩き出す綾。
 「真美のやつ・・・・ どれだけ秘密を隠している・・・・・」 思わず内心呟く綾。
 あれ程 全ての人々が羨む 超絶、絶世の美貌 そとて、愛らしさを兼ね備えながら妙に、自然に身についているはずの 何気ない女の子らしさ そう微笑み返しなどの仕草、大の苦手 無理している。
 どちらかと言うと、中年の男の人の様な 機嫌の悪そうな仏頂面 がさつな仕草 何気なく それも自然に見せる時がある。
 余り年頃の女の子らしさよりも 中年の男の様な面を見せる。 それも何か、人には絶対言えない秘密を胸に抱いて、それに、時々変な大怪我を負っていた。
 真美は、嘘を付くのが、特に下手。 直ぐに顔に出てしまう。
 それが、これであったのか? 今 先頭に立ち私達を安全な場所へ誘導してくれている。 専門対策チームの一員 西とか、呼ばれる男性。 間違いない 少し噂程度で、何度か小耳に挟んだ事がある 妖魔と言う この宇宙とは、別の宇宙からやってくる 人類に取って、敵対する異生命から人類を守る 防衛軍 対妖魔特殊部隊 別名 妖魔ハンター。 その隊員である西とか呼ばれる男性 真美を我々の大事な仲間だと、確かに言った。 間違いない。 聞き間違えではない。 真美の時々変な怪我 これが原因ならば話が合う。
 ・・・・でも後方の安全な場所へ避難しても多分防衛軍に、監禁され 何も重要な事は、はぐらされるか? 国家最高機密などの1点ばりで、何も話してくれない。 それどころか、この事は、絶対他言しないよう誓約書を書かされ 解放されても 暫く秘密裡に、監視が付くはず。 ここまで数々の隠蔽工作があったはず そうでなければ・・・ この程度の事は、御見通し。
 内心呟く綾。
 ・・・・それより真美 真美は、あの世界最大級の巨大財閥グループの1つ 星沢コンチェルンの次期跡取り 何故真美が、こんな危険な仕事を? それに、真美を捕らえていたあの妖魔周囲を取り囲んだ人達の中には、真美のお母さんが・・・・いた様な 間違いない あの女性 真美のお母さん それに、黒のロングヘアーの少し長身の女性 これは、見間違いない あれは、詩織お姉様。 詩織お姉様は、真美のお母さんの妹の1人娘 真美とは、従姉妹同士 つまり星沢家の一員 いったい何が、国家最高機密の裏に隠されているの? それと星沢家との関係。
 普通 こんな危険な仕事に、大事な1人娘やる親など、絶対存在しない。
 その辺は、無事家に帰れたら 我が一条家のスパイ網を駆使 徹底的に調べ上げ、証拠を掴んで、真美を こんな危険な仕事から救い出してやる。
 でも 真美の変な中年の男らしい一面 これが原因? 生命のやり取りをする まさに修羅場の戦い がさつになってしまうのかな?
 それよりも 絶対何も隠匿されているに決まっているから 我が一条家のスパイ網でも・・・ それよりも真美のやつを問い詰めて、聞き出す方がより手っ取り早く よりベター。
 真美を 私の夜専用のベッドの抱き枕にして、あの素敵な身体を 弄んでやる。 あんなに美しく整った容姿、素敵な身体 真美1人が独占しているなんて、絶対に許されない暴挙の極み。 私の為にだけある物。
 まるで、アルビノ(albino=先天性色素欠乏症、白子症)じゃないかと、思える程 きめ細かく 抜けるような美白の肌・・・・・ でもあれは、遺伝子の病気で、紫外線などを防ぐメラニンの生合成に関わる遺伝子情報の欠損により 先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患だもの その為 屋外で、長時間日に当たる事が出来ない でも真美は、普通に屋外の体育の授業も受けるし 確かに、余り日焼けしないし 直ぐ日焼けが抜けて元の美白の色白・・・・ うらやましい限り・・・・・
 「これ 私の身体なんだけど・・・・」 そんな言訳 絶対許さない。
 毎日、毎日 夜専用の抱き枕のオモチャにして、弄んで、全てを吐かせてやる。 お・・・・お願い 許して・・・・ そ・そんなに激しくされちゃうと・・・・ あ・・・綾の赤ちゃんが出来ちゃう・・・・ なんて言って、喘ぎながら泣いて、許しを乞うても 絶対に許して上げない。
 大事な友達同士 隠し事してたなんて、決して許されない暴挙よ。 それじゃー信頼関係築けない。
 真美の小さな胸に抱えるには、余りにも大き過ぎるものー。 (確かに、Dカップの綾に比べれば、Cカップの真美は、相対的に胸が小さい だがそう言う意味では決して無い)
 これ程 大事な秘密を隠し 尚且つ加奈を あんなにまで泣かせたバツよ!! その身体で、しっかりと支払ってもらう・・・・・
 何だか、お門違いに話が、綾にしては、珍しく支離滅裂の脱線し始める。 相当感情が高ぶっていた。
 そうでもしないと、気が収まらない。 余りの恐怖の代償 真美の隠していた秘密・・・ その全ての矛先は、真美に向けられていた。
 泣きぐずる加奈を見ながら 綾は、そう思った。

 「・・・・返して欲しくければ・・・・ そう言いたいのだが、返す事は出来なくてねー」 そう言いつつも周囲を固める妖魔ハンターの位置を正確に把握するドライスラー。 態度、表情、口調にもかなりの余裕を滲ませている。
 それは、決して、ハッタリでもない 自信の裏付けでもあった。
 手応えもない 先程までの相手とは、違う。 だが、勝てない相手ではない。 本気になれば、勝てる。
 唯一互角とも言えるのは、今 その手でお姫様抱っこしている そう自らの妖力によって、眠らせている真美だけ。 それもまだ真美自身すら多分気づいていないだろう 本来の究極のラディエンスの力 まだ覚醒すらしていない。 そして、その力を運ぶ箱舟である真美自身。 妖魔の持つ妖力と、ラディエンスの力の隠された秘密。
 人類が持つ 本来の霊能力とは、異質のラディエンスの力が、何故 我々妖魔に取って、異宇宙の生命体 人類のそれも女性 星沢家の女性だけ代々受け継がれているのか?
 それも このラディエンスの力が、我々妖魔の持つ妖力に、唯一拮抗出来る力なのか?
 ふーん 教えてやる必要などない。 不敵な笑いを 押し殺す様噛みしめるドライスラー。 一応悟られぬ様ポーカーフェイスを装う。 油断は禁物 格下の相手であろうと、一瞬の隙に、足元をすくわれる。
 今 目の前に、展開している妖魔ハンター 確かに、霊能力は、格下 勝てる相手 だが、一瞬の隙を突くことに関しては、かなり手立てている。 簡単に勝たしてくれる相手ではない。 最大級の敬意を持って戦う 言わば最強の宿命のライバル(強敵)。 侮ってはいけない。

 「やはり真美ちゃん あやつの妖力によって、強制的に眠らされておるのうー」 ここまでのすさまじい轟音、爆音 普通意識を失っても、これ程の轟音、爆音 驚いて意識を取り戻す。
 そう呟きながらも 全く表情1つ変えない小夜子。 手を打っていた。
 無言のサインを三村に送る。
 そうまだ姿を見せていない もう1人の主力メンバー。

 大木の後ろに隠れ 自らの霊能力を消し 尚且つ気配まで、見事に消していた。 だれも気づかない。

 零夜と、沙耶も参戦 上空には、2匹の竜神 聖竜神と、白竜神が、とぐろを巻き すさまじい殺気を放つ眼で、妖魔の隙を伺っている。
 一瞬の隙に、いつでも飛びかかる態勢。
 それに、周囲には、まさに鬼 そう沙耶の複数の邪鬼が、展開 間合いを詰める。
 包囲網を築く。

 「さすがに、手馴れている・・・・」 周囲を 見渡す 完全に包囲されている それにも関わらず、全くの余裕の態度、表情で、楽しげな笑みを浮かべるドライスラー。
 先程の相手 真宮寺の手下 多分 持ち得る霊能力に、それ程の大差はない。 だが、各々の連携、そうコンビネーション 各自の霊能力特徴を最大限に生かしつつ うまく補完する。 戦いに慣れている。 ここまでの包囲網を築くのに全くそつがない。
 踏んできた場数 まるで違う。 それに 各自を統率、指揮する隊長の三村の存在が、大きい。

 じりっ じりっ 包囲網を狭め 間合いを詰める妖魔ハンター達。
 張りつめた重い空気が、周囲を支配する。
 ここにいる全員 極度に高まる緊張感。
 そこへ 殺気、闘気などの全ての気配を消し 物音1つ立てず、まさにステルス 周囲の自然に、まさに溶け込み妖魔達の間合いに、全く気付かれず入り込む者1人。 そう妖魔ハンターの次期最強のエース候補 風吹。
 中国拳法などの各種武道、格闘技の もはや達人レベルに達する まだ若干17歳 あの53歳にして、未だ現役最強の男と称される三村と、ほぼ互角に戦える実力者。
 人類の本来持つ特殊能力 霊能力も A級妖魔と、互角な戦える能力も持つ実力者 近い将来 史上最強の男の名を冠すると、だれもが疑っていない。
 妖魔ハンターに入って、まだ1年にもならず、今まで、重要な任務、ホジションを与えられていなかった。 それが、今回 1番重要なポジションに、抜擢された。 そう真美を救出する。
 ここへ来る途中の大型輸送機の中 「いいか風吹 今回は、お前がキーを握る・・・・」 風吹に、今回のミッション(作戦)を指示する三村。
 「・・・・動きの速い 由美さん、詩織ちゃんのラディエンスの力を持つ2人には、最前線に立ってもらう そうしないと、やつらに怪しまれる そこで、風吹 お前だ 俺達 霊能力者の中で、最も動きが速く、俊敏なお前が、殺気、闘気などの全ての気配を消し やつらの懐に入り・・・・」 細かく指示する三村。
 大きく うれしそうに頷く風吹。 初めての大役に、思わず、笑みが毀れる。
 今まで格下のA〜D級妖魔ばかりしか戦わせてもらえなかった。 まだ時期尚早・・・・ その一言で、いつも片づけられていた。 結構 不満が鬱積していた 強い相手 そう最強と言われるS級以上の妖魔と戦いたい・・・・ 今度は、正面からそれも最強と言われていたS級以上の実力を持つ 更に強いSS級妖魔 うれしさ、強い闘争心が、嫌が上でも湧き出してくる。 相手が強ければ、強い程 高まる強い闘争心。 多分間違いなく自らの未熟さで、叩きのめされるのが、解っている。 だが、それ程強い相手でなければ、自らの未熟さを知る事が出来ない。 自身の身体で。 その未熟さを知り それを克服し 更なる高見を目指す。 目指すは、心技体 全てにおいて、最強。 本物の強さ。
 最強を目指す為の超えなければならない行く手を阻む無数に立ちはだかる壁の1つ。
 それに、助ける相手は、今 想いの全て・・・・ 思わず顔が赤面。 「どうした風吹 顔が赤いぞ・・・・」 隣に座る佐伯に、言われる。 「は・はーあん・・・・」 思わず納得顔を浮かばれる。 内心を図星で読まれている。
 誤魔化し笑い・・・・

 5体の妖魔の必殺の間合いに入る。 5体共 正面に展開 半包囲網を引く仲間の妖魔ハンターに気を捕らえ 全く後ろに入った風吹に気づいていない。 まさか? 気配を消し ここの自然の中に溶け込み一体化した風吹に、だれも気づいていない。 その周囲にある 地面を降り積もり被う雪、ただその辺に転がっていの石、周囲に生える大木などと同じ様にしか感じていない。 絶好のチャンス。
 古くから古武道などの各種流派の武道、拳法などの格闘技を教える家元の道場で生まれ 男子ばかりの4人兄弟の末っ子 だが、本来持つ素質は、4人兄弟の中でスバ抜けている。
 そして、もう1つ裏の顔 つまりアサシンとも呼ばれる暗殺者 決して、だれも気づかれず、ターゲットに近づき暗殺する。 裏の顔を持っていた。 師範である父親と、4人兄弟だけの隠れた秘密。
 それを薄々裏のルートで知った三村は、今回の最も重要な任務を風吹に任せた。
 だれにも気づかれず、感づかれず、殺気、闘気、気配などの全てを消しターゲットに近づく・・・・ 三村にも出来ない 風吹の持つ特殊な大技。

 突如 目の前に敵 そうつい最近と言っても半年以上前の春頃だが、若い妖魔ハンターの1人が現れた。 かなりの実力を持つ各種拳法の達人。 特に、香港映画の大アクションスター あのブルース・リーが編み出した 各種拳法、古武道、格闘技の長所を取り入れた合わせ拳法 枠、型にはまらない自由型 詠春拳(えいしゅんけん) 節拳(弾腿門)などのカンフーに、ボクシング、レスリング、合気道、柔道などの技術・エッセンスが取り入れられている武道 そうあのジークンドー(截拳道)と呼ばれる拳法の達人でもあった。 非常に、厄介で強敵の1人。
 それが、全く気付かず、悟られず、突如 真美をお姫様抱っこし、周囲を取り囲む妖魔ハンターと対峙していたSS級妖魔ドライスラーの まさに虚を突くタイミングで、まさに 直ぐに手の届く目前に現れた。
 「そんな バカな、SS級妖魔たる この私に、気配すら気づかせないとは・・・・」
 思わず、驚愕の声を 唖然とした、納得出来ない表情を浮かべながら漏らす。

 ドライスラーの目前に、出ると同時に、風吹は、自身の持つ霊能力を最大限に高める。 もはや全ての気配を消す必要はない。
 同時に、後ろの腰のベルトに、挟んでいた 2本のヌンチャクを素早く抜く。
 風吹の持つ霊能力 フュージョン 風吹の身体から まるで、夜空に輝く美しい星々の様な碧き炎が舞い上がる。 自らの霊能力を高め 自身の戦闘能力をケタ違いに高める。 それにより 自身の拳法を使用し敵を倒す。
 左右両手持つ それぞれの2本のヌンチャクが、風吹の身体同様 碧き炎を光を自ら発する様輝く。 そのまま2本のヌンチャクを 真美をお姫様抱っこで抱え 無防備と呼べる状態のドライスラーの丁度両肩、両腕の付け根辺りを目指し振り下ろす。 眼にも止まらぬ速さ 余りの速さと正確さ。 見事に狙い通りにヒット。
 ドライスラーが、お姫様抱っこしていた真美 思わず両手から滑り落としてしまう。
 その瞬間を狙いすました様に、何かの まさに疾風が、強い霊能力を発する何かが、ドライスラーの足元を駆け抜ける。 地面に落としたはずの真美・・・・・ 足元に落としたはずの真美の姿は、そこにはない。
 この瞬間を狙っていた三村の霊能力ファントム 自らの霊力を実体化した 一種のアバター 化身、分身とも言える。 三村自身 この霊能力を 「自らの幽体・・・・ 幽霊・・・・ お化け・・・・」 などと、ジョーダンぽく語っている。
 真美が、地面に落ちる激突寸前 三村のファントムが、拾い上げ そのまま疾風のスピードで、少し後方で、指揮を執る三村と、小夜子の元へ 無事奪還。

 「さすがに手馴れた戦い・・・・」 思わず、敵である妖魔ハンターの そつのない戦い方に、感心する声を漏らすドライスラー。
 だが、感心ばかりしていられない そんな余裕も与えない。
 今度は、上空で威圧していた2匹の竜神 ドライスラーに向け 大きな口を開く。
 同時に、超高温の火球が数発 ドライスラーに向け 襲い掛かる。

 上空からの2匹の竜神の援護 口からの発する超高温の火球を 数発 ドライスラーに向け発射 その隙に、退却・・・・ のはずであった。
 三村が、風吹に託した当初の作戦。
 だが・・・・? 微動だにせず、その場を動かない風吹。 恐怖に足がすくみ動けなくなったのではない。 逆に、不敵な笑みすら楽しげに浮かべている。

 「あいつめ・・・」 苦虫を潰し思わず口走る三村。 風吹が、何を考えているのか? 容易に想像出来た。
 「早く撤退しろ!!」 大声で叫ぶ三村。 だが、風吹の耳には、届いていない。

 構えに入る風吹 その眼には、目の前に映るドライスラー以外 何も映っていない。 まるで草花の畑の上を舞う蝶々の様に華麗なステップ。 そう風吹が最も得意とするあのブルース・リーが編み出したジークンドー(截拳道) 同時に、風吹自身の持つ霊能力フュージョンを最大限に高める。
 真っ向勝負。

 「先程は、まさかの虚を突かれ不意打ちを喰らったが、今度はそう言う訳には行かないぞー」 2匹の竜神の火球弾の攻撃もものともせず、簡単に弾き返したドライスラー。 こちらも不敵な笑みを浮かべ、楽しげに言い放つ。
 「その程度の A級妖魔と同程度の霊能力で、この俺様に真っ向勝負を挑んでくるとは、いい度胸だ。 その点だけは、褒めてやる」
 こちらも構えに入るドライスラー。

 「本来持つ能力の強弱だけでは、決して強さ、勝負は決まりませんよ」 自信満ちた声で答える風吹。

 「その大口を叩けるのは、今だけだ」 言い返すドライスラー。
 確かに、風吹の言い分に一理ある事は、ドライスラー自身良くわきまえている。 油断 それこそ大敵。 格下相手、下手な油断で、自らの墓穴を掘る 最も気を付けなければならない。 人間の諺にある。 「百獣の王ライオンは、うさぎ1匹狩るのに、全力を尽くすと言う・・・・・」。
 どんな相手でも全力を持って戦う 戒め。 何よりも 「窮鼠猫を噛む」 その事を決して忘れてはならない。 自らに言い聞かせるドライスラー。 風吹の持つ霊能力以上の何か? を感じていた。
 その1つが、先程の 自ら発する気配を消し周囲と一体化、同化してしまう能力。 侮ってはならない相手。
 「我々妖魔は、様々な形態から 妖力と言う特殊な能力を持つが、人類は、ほぼ同一と言える形態でありながら、それぞれ異なる特殊能力を持つ者がいる 大半の人類は、そんな特殊な能力を持たないが、極少数であるが、存在する。 それが、今 目の前に立ちはだかる永年のライバル? 妖魔ハンター」
 そう小声で言いつつ 気を引き締め風吹と対峙。 本来持つ妖力を高め戦闘態勢。 同時に、まるで大木から無数に伸びる枝の様な そう半透明の少しブルーの色彩を帯びた氷柱 いやクリスタル? と思えるある種の触手が、背中から生える。
 どれもが、先端は、鋭利に尖っており どんな強度を持つ金属ですら簡単に突き破ってしまいそえな程の強度を その鈍く輝く全体から発している様に感じさせていた。

 それを見ながら風吹は、両手に持つそれぞれのヌンチャクを両脇に抱える。
 眼だけではない。 全身の全てを使いドライスラーの発する妖力、闘気、殺気などの全てを感じ、微妙な変化を逃さない。 僅かな変化 必ずその部分からの攻撃 一瞬の油断も許されない。

 数本の鋭い先端の尖った触手が、各々が規則性のない まるで生き物が、全く予想出来ないランダムで、不規則な動きを見せながら襲い掛かる。 それも全くと言っていい程 素早い ほとんど肉眼では、追えない程のスピード。
 狙いは、各々予想出来ない方向から 同時に、風吹の身体を貫く。
 だが、全く動じた表情も、それ以前に怯えた表情すら浮かべない風吹。 軽快な まるで空中を舞う美しい蝶々の様な華麗なステップを踏み 両目を閉じ全ての感覚を最大限に研ぎ澄ます。
 かってアメリカ合衆国の史上最強のボクサーの1人と言われた 元ヘビー級チャンピオン モハメド・アリ(Muhammad Ali)の様に 蝶のように舞い、蜂のように刺す(Float like a butterfly, sting like a bee)・・・・ を狙っているかのようでもあった。

 そう風吹の狙いは、それであった。
 ドライスラーからの攻撃を 蝶の様に舞い うまく避けながら 僅か一瞬の隙を狙い 蜂のように刺す。
 正面からまとも戦っても勝機などない。

 まるで、怪鳥の様な雄叫びを上げる。 同時に両脇に抱えていた2本のヌンチャクが、空気を鋭利な刃物で切り裂く鋭い唸り音を上げ そうまるで野生の肉食獣の吠える様な音を上げ 次々と襲い掛かる鋭利な触手を 寸前で払いのけ叩き落とす。
 まるで何事も無かったように、鋭い視線 ドライスラーを睨む。

 「少しは、出来ますねー」 ただの嘲笑の様な口ぶり。 「これぐらいやってもらはないと・・・・」 余裕の表情浮かべるドライスラー。 ただのハッタリではない自信の裏付け。 「だがまだまだですよ」

 「ダメよ 今 行っては・・・・・」 助太刀にでも入ろうとした詩織を 左腕を伸ばし制止する由美。
 当初 風吹の後退に合わせ 由美と、詩織が、SS級妖魔であるドライスラーと戦う予定であった。
 ラディエンスの力を持つ2人 まとも戦えるのは、現状この2人だけ。
 2人がかりなら何とか戦えるはず。 それも単に時間稼ぎであったが。
 全盛期 S級妖魔と互角以上に戦えた由美 だが年齢の問題もあり 全盛時の力はない。
 姪っ子の詩織に至っては、S級妖魔とでは、かなり苦戦を強いられる。
 更に格上のSS級妖魔では、単独では勝負にならない。
 2人がかりで時間を稼ぐ。
 頼みの綱は、真美。
 真美が目覚め 戦線に復帰するまでの時間稼ぎ。
 真美が戦線に復帰すれば、2人は、そのアシストに回るのが、当初立てた三村の作戦。
 残り4体のA級妖魔は、後退した風吹を含め5人で対峙する ある意味分断 各個撃破戦術。

 「・・・・・う〜んー・・・・・」 しかめ面を浮かべる小夜子。 強力な霊力で、真美を目覚めさせようと何度も試みているが、全く目覚める兆候もない。 かなり強力 それもSS級の妖力で、強引に眠らされている・・・・ いやまさに、フリーズ(凍結) 目覚めぬ様フリーズ(凍結)させらている。
 あのドライスラーは、冷気がを主要妖力。
 「ちょっと危険だが、あの手しかあるまい」 独り言を発しながら 自ら納得顔を浮かべる。
 「悪いがのうー 真美ちゃんを雪の上に寝かせてくれぬかのうー」 雪の上に座らせ倒れない様支えていた三村に、頼む。
 そっと雪の上に仰向け寝かせる三村。 少し離れる。 今の目の前にいる妖魔ハンター室長 神楽 小夜子 代々最強の霊能力を受け継ぐ家系 神楽家の現当主 数々の禁断の秘儀を持っている。 今 その1つを執り行おうとしている。
 上空を心配顔を浮かべ旋回していた聖龍神を呼び寄せる。
 地上に舞い降りる聖竜神。
 「聖龍神よ お前さんの力を貸しとくれぬかのうー」 小夜子の言葉に、大きく頷く聖竜神。
 今までにない異様と思える程霊力を高める小夜子 印を結び祝詞を唱える。 同時に、左腕のブレスレットに嵌めこまれている黄金に輝く霊玉石が、黄金色に強い光を発する。 同時に、聖龍神も全身が黄金色に輝き始める。
 「うまく行ってれー」 内心呟く小夜子。 真美は、史上最強と呼ばれラディエンスの源流の力のその箱舟 だが各種検査の結果 全く霊能力は持ち合わせていなかった。 これは、ラディエンスの力を唯一受け継ぐ星沢家の特徴でもある。 2つの特殊能力を同時に持ち合わせる事が出来ない。
 だが、ある戦闘で、真美は、仲の良かった同じ年の霊能力者 妖魔ハンターの見習いで、訓練生の杉村 敦子を目の前で殺された。 その後戦闘時に、真美が絶対絶命のピンチに、霊体となた杉村 敦子が、真美の前に現れ 自らの霊能力 羽衣を真美に譲った。 2つの特殊能力を同時に持ち合わせる事が出来ないはずが、それに霊能力も持ち合わせていない真美が、何故か? 第2戦闘形態以上に、ラディエンスの力を高めると、杉村 敦子の霊能力 羽衣が出現 使用出来る様になる。
 真美には、霊能力をも取り込む力を持ち合わせているのかも知れない。 そう考えた。 霊能力を共鳴高めれば、目覚めるはず、SS級の超強力の呪縛を破り。

 聖龍神が発する黄金色の光が、まるで生まれたばかりの我が子を包み込む母親の手の様に、やさしく包み込む。 真美の身体が反応 少し宙に浮く。
 聖龍神が発する黄金色の光が、真美を卵の殻の中身の様に閉じ込める。

 その様子を驚愕の表情を浮かべ見つめる三村。
 ただ唖然と見つめる以外 何も出来ない。 噂でしか聞いていない 神楽家代々伝わる禁断の秘儀、秘術の1つ それを今 その眼で見ている。
 まるで神秘的と思える程 圧倒的。
 古(いにしえ)の時代より神楽家に生まれし女子のみが、受け継ぐ驚異の霊能力。 その一端を今 その眼で垣間見ているのだ。
 何度か? その眼で見た事は、確かにある。
 いつもただ驚かされる。 それ以外無い。
 まさに、もう1つの神秘の力 それ以外の言葉では、決して表現出来ない。

 真美を包み込んでいた黄金色の まさに卵の殻が、そう弾け飛んだ。 真美の身体が現れる だが、それでも地上僅かだが、宙に浮いた状態。
 真美の身体で何かが、共鳴しているのかと思わせる様な 身体全体から僅かな光が発している。 真美自身ラディエンスの力を解放すると、自身淡い白い光を発するが、今は、少しばかり黄金色が混じった とても神秘的な光が、そう 漏れ出している そう表現がふさわしい状態であった。
 何か? 心臓の鼓動が波を打つようゆっくりと、発する光が、微妙な強弱を繰り返す。
 何か達したのか? 突如 真美を包み込んでいたまさに黄金色の殻が、粉々に周囲に、爆発したかのように飛び散った。
 そこから真美が現れる。 ゆっくりと降り積もった雪の上に、まさに着地する。
 そり様子を見ながら少し安堵の表情を浮かべ小夜子が呟いた。 「どうやらうまくいったみたいじゃのうー」
 真美に近づく小夜子 真美の傍らに、表膝を雪の上に着け 顔を覗き込む。
 「まさに、女の子供が喜ぶデズニーの作品の1つ 眠れる森の美女(Sleeping Beauty)じゃのうー」 思わず感想が漏れる。
 白馬に跨り現れた素敵なプリンス(王子様)のキス以外 目覚める事が無いような深い眠りに落ちている。 そんな風に感じられた。 ドライスラーの持つ妖力 それもSS級の強力な妖力により 決して目覚めない深い眠りに落とされていた。 だが、神楽家の代々伝わる禁断の秘儀、秘術の1つにより その強力な妖力を消し去る事に成功した。 確かな手ごたえを感じていた。 しかし妖力を消してもいつ目覚めるか? それだけは、不確定性要素。
 真美の顔の頬が微妙に動いた 目覚めの兆候?

 背中から大木に激突した。 意識が薄れる その瞬間 何か? とてつもない巨大な力が、全身・・・いや意識を強引に抑え込まれた。 決して贖う事も出来ない程 強引に力づくに。 その先は、ただ漆黒の闇の世界であったのか? 全く記憶も ましてレム睡眠状態による夢も見ていない。 それは熟睡とは全く違う。 そんな中 何か温かくやさしい そう身体全てを包み込むような力を感じた。 その瞬間 今まで強引に抑え込んでいた力が、徐々に薄れていく。
 今まで、決して開くことがないと思われていた重い瞼が、ゆっくりとだが開き始めた。
 「う〜ん〜・・・・・」 いつもの目覚めの時 機嫌の悪い小声が、漏れる。
 ここで真美の男時代からの特徴でもある 目覚めの悪さ、低血圧 意識が朦朧 まだはっきりとしない。

 「ようやく お目覚めかい・・・・」 安堵の言葉が思わず漏れる。 自身のまだ幼い孫娘を見つめる様な愛情に満ちた笑顔を向ける小夜子。 その傍らで、同じく心配した表情を浮かべていた聖龍神も 安堵の表情に変わる。
 果たして、うまく行くか? かなり不安であった。
 霊能力を持たない真美 果たして、この禁断の秘儀、秘術がうまく作用するのか?

 何か精根尽き果て疲れた表情を浮かべ、少し息が上がった様な呼吸を繰り返しながらも両目を開く。
 「おばあちゃま・・・・・」 最初に眼に入った人物の名前を口にする。

 「どうじゃ 気分は?」 微笑みを浮かべ安堵する小夜子。

 「う・・・ん・・・・」 余りすぐれない生返事 かなり体調がだるそうであった。 いつもの真美の目覚めの特徴でもある。

 「立てるかの?」 心配顔で見つめる小夜子。 真美の戦線復帰 本当は、無理をさせたくない。 だが、SS級妖魔相手 真美を除く全員が束になってかかっても勝ち目などない。
 互角に戦えるのは、真美1人。 真美の戦線復帰なくして、あるのは、遠からず全滅。

 何とか立ち上がる真美。

 「すまんがのう・・・?」 申し訳なさそうな表情を浮かべる小夜子。

 「解っている おばあちゃま それより戦況は?」 頭を軽く振り 精神集中を図る 同時に、第1戦闘形態に入る。
 同時に、どこかに落とし行方が分からなくなっていた 真美の武器 まさに ワン・オブ・パーツ? ウエポン? 自らのラディエンスの力を実体化したライトソードが、真美の第1戦闘形態に反応 どこからともなく現れ 猛烈なスピードで飛行 真美の右手にすっぽり収まる。 真美だけが、そう究極のラディエンスの力 その源流の力を運ぶ箱舟である真美だけが持つ 一種のサイコキネシス(念動力)と思える特殊能力。

 簡単に説明する小夜子。 大きく頷く真美。

 真美 SS級妖魔 ドライスラーのいる場所へ。

 「真美ちゃん もう大丈夫?」
 突如現れた真美に気づき声を掛ける詩織。
 全身から大量の汗が流れ落ち 大きく息をしている。 かなり苦戦している様子。 近くで、連携して戦っていた真美のママ 由美も同様であった。
 風吹の援護に回っていたが、やはり格違い かなり善戦していたが、力の差は、歴然としていた。
 ここで、風吹を失う事が出来ない。
 強引に、三村に、後方へ後退させられ その隙に、由美と、詩織が前に出て戦闘を継続していた。

 「後ろへ下がって、私が戦う」 同時に、第1戦闘形態から 第2戦闘形態へ移行 能力を急速に高める。 全身から淡い白い光が漏れ 真美をいっそう輝かせる。
 真美は、この輝き好きになれなかった。 自身が光輝く神秘的光景であるはずが、実際戦闘において、自らの位置を示してしまう。 能力を高める為の代償と言えば、それまでだが、不利な状況に自ら追い込むリスクでもあった。
 背中の少し後方には、いつもの羽衣が現れ 優雅に空中を舞う。

 少し後ろに下がる由美と、詩織 真美の戦線復帰に伴い 正面からの対決から 真美のバックアップに回る。

 「星沢家3人がかりで、勝負」 全く分の悪い戦いとは、とても思えない口調 丁度良いハンディ? そんな口ぶりのドライスラー。

 由美と、詩織が、少し後方に下がったのを確認する。 真美の不敵な笑みが少し漏れる。 これまでの借り たっぷり利子を付け返す。
 更に、ラディエンスの能力を高める 全身から発するラディエンスの淡く白い光が、急速に炎の様に揺らめき始める。 真美第3戦闘形態へ移行 一気にカタを付けるつもりでいるらしい。 最終必殺の大技 バーストを使える戦闘形態 だが、エネルギーを高める反動もまた大きい。 身体全体が、強力なエネルギーにより まさに素粒子レベルからバラバラに崩壊しそうな苦痛を伴う。 短時間しか維持出来ない。 更にもう1つ上の最終戦闘形態 これは、最終必殺の大技 バーストのエネルギーを最大限に高め放つ時だけ ある意味一撃必殺の時のみ 総勢100体を超える妖魔を 瞬時に消滅させる威力を誇る。
 ただ一気に、全エネルギーを限界以上に使い切る為 数日間は、全く無防備の昏睡状態になる 諸刃の剣でもあった。

 「第3戦闘形態・・・・・ 本気で勝負を挑む・・・・」 この血みどろの戦闘とは、全く異質のまさに、場違いの美の芸術的美しさを放つ 真美の第3戦闘形態を見て呟くドライスラー。
 妖魔界では、この第3戦闘形態が、最も真美を美しく輝かせる と評判にもなっていた。
 「聞きしに勝る美しさ」 思わず本音だろう 溜息まじりに言葉が漏れる。 
 「他だし この第3戦闘形態は、短時間しか維持出来ない・・・・」 もはや弱点を知っている。

 この様子を 決して人類では、見ることの出来ない遠く離れた場所から観察する 2つの黒い影 1組の男女? ヒューマノイドタイプ(人間型)でこそあるが、人間ではない。 妖魔? だがあの圧倒的力を発する妖力を 全く周囲に放っていない 別物? いや違う 妖力そのものを だれにも感ずかれない様 気配と共に消している。 これ程の力を持つ妖魔は、間違いない 妖魔の神々にも匹敵する妖力を持つと言われる 謎のベェールに包まれたSSS級。
 そして、その傍らに立つ もう1人の女性? いや その正体は、まさに闇に隠れ判別しないが、人間の それもまだ10歳代 中盤程度の かなり美しい美少女?
 精神 そのものを乗っ取られ まさに、マインドコントロール(精神支配)下に置かれている?
 闇に隠れ 決してその表情を読み取る事が出来ないが、この宴を 口元に不敵な薄笑みを浮かべ楽しんでいる・・・・・ そう言った表情を浮かべているのが、容易に想像出来るだろう。
 傍観者として、ただ眺めている。 勝敗の行く末を心配している様子など、微塵も感じさせていない。
 「勝ったなあ―」 一言戦闘を見ながら呟く、真美と、ドライスラーの激しい攻防が続いている だが、もはやその眼には、どちらが勝つのか? 見えている。 薄らと浮かべる不敵な笑みが、語っていた。

 地面を被う雪が、突然先の鋭利な氷柱となり 真美の周囲に、何本も生え 天高く伸びる様に生える。 同時に複雑な動きで、鋭利な先を真美に向け襲う。

 表情1つ変えない真美 まるで生物の予想出来ない動きの様に感じられるが、確かに動きを予測している。 串刺し直前? 素早く最小限度の動きで、巧みに回避を繰り返す。 普通の人間では、とても見切れないスピードにも関わらず、真美には、まるでスローの動きにしか見えていなのか?
 「串刺にして、生命まで奪う気はない 動きを止め 氷のカプセルにでも閉じ込める気だろう・・・・冷凍保存してお持ち帰り 帰ってから溶かして・・・・」 ドライスラーの心理まで、どうやら読んでいる。
 「その手加減が命とりになるわよ」 内心呟く真美。 1度SS級の妖魔 ドッペラーとの戦闘を経験している。 かって最強と思われていたS級妖魔など比較すらならない程強かった。 スピード、パワー・・・ケタ違い。 何とか辛くも勝利した。 その時の経験があった。 今の第3戦闘形態 短時間しか維持出来ないが、戦闘形態として、最強 パワーなどは、確かにSS級の妖魔に劣る だが、スピード、俊敏性などの高機動力 大幅に勝っていた。 それを最大限に活かす。 それが真美の狙いであった。 ある程度ダメージを与え 最後に、至近距離からの最終大技 バーストで、一気にケリ(決着)を付ける。
 ドライスラーは、技を放つ時 余り動かない 決して、ノロマではないはず、SS級だ。 だが技のコントロール、エネルギー維持に集中している為だろう。 そうしないと、あれ程の大技 うまくコントロール出来ないかも知れない。 数少ないチャンス。 懐に入り込む隙がある。
 親友の1人である加奈の 大事な初めてのお見合いを台無しにしたツケ 超高額 今 この場で支払ってもらう。 後払いのツケは利かない。

 今まで、回避ばかりしていた真美 ハタ眼から見れば、押されているように見える。 だが、まだかなり余裕があった。 まるで、一瞬の隙を伺う獲物(ターゲット)を土壇場まで、追い詰めた野生の肉食獣の様な まるで隙の無い眼が、ドライスラーを一瞬も逃さず捕らえている。

 一瞬真美の口元が、少し動く 「お遊びは、ここまで」 そう言い切ると同時に、反攻に転じた。
 眼にも映らない高速で、突撃 同時に、両手に持つライトソードの刀の部分 そうラディエンスのエネルギーを物体化したエネルギー剣の部分が、急速にエネルギーの高まりと共に、大きく膨れ上がる ママである由美直伝の必殺技 ムーンライト そのままドライスラーに向け水平に振る。 三日月型のエネルギーで出来たエネルギー体が、白い光を発しドライスラーに向け襲い掛かる。
 数本の氷柱が、ドライスラーの正面に、地面から湧き上がる まさに氷の壁が、行く手を立ち塞ぐ。
 真美の放ったムーンライトが、行く手を立ち塞ぐ氷柱と激突?
 いや・・・・ 何も起こらない?
 ムーンライトは、行く手を立ち塞ぐ氷柱を そこに何もなかった様に、まさにワープもしくは、テレポーテーションした様に、通過。 宇宙物理学など科学全般にマニアックな知識と、独自研究などを誇る真美 ママである由美直伝の必殺技 ムーンライトに、その知識等を利用 独自に改良していた。 今後 避けて通れないSS級、最強のSSS級妖魔との対決の為の新たな必殺技 ムーンライト・エボリューションと自ら名付けた新必殺技。
 ムーンライトは、ラディエンスのエネルギー体 そこにヒントがあった。 エネルギー体 それもこの宇宙を構成する4つのエネルギー 基本相互作用の1つ 光子=フォトン=電磁気力 あの尊敬するアルバート。アインシュタイン博士のノーベル賞を受賞した光量子仮説 光は、粒子と波の2つの性質を持ち合わせ どらか片方の性質を見ると、もう片方の性質が解らなくなる・・・・ ここにヒントを見つけた あの有名な古典的思考実験の1つ 2重スリット実験と同様 ムーンライトを量子化 それにより 古典的の乗り越える事の出来ない壁を まさにワープもしくは、テレポーテーションした様に、通過させてしまう。
 究極のラディエンスの源流の力を箱舟である真美だからこそ出来る大技であった。
 つまりSS級、最強のSSS級妖魔など、バリヤー? シールド?と言った自らを防衛する為の大技を持つているはず。 最終の大技 バーストを用いて、バリヤー? シールド?事吹き飛ばし消滅させる方法もなくはない。 だが、あのバーストを1回しか利用出来ない 使用すると、全ラディエンスの力を使い切り そのまま意識を失う。 複数と対峙する場合 1回使用で、全て退治出来なければ、それで終わり。
 その為に編み出した新必殺技であった。
 今の姿に、そうラディエンスの力に覚醒する前 くたびれた40歳代の独身男 スネップ(SNEP=solitary nin-employed persons)の惨めな1人だった氷室 拓真だった頃 大好きな宇宙物理学などの科学に没頭していた。 その知識があればこそ出来た。 だれも気づかない 量子論の量子における量子化の摩訶不思議な世界。

 突然 身体を守る為 急速構築した絶対零度に近い氷柱 だが、真美の放ったムーンライトは、その氷柱に激突により 真美の放ったムーンライトと、氷柱は、互いに粉々砕け散るはずであった。
 だが、真美の放ったムーンライトは、事もあろうか? 氷柱を まさに通り抜け そのままドライスラーの目の前に、突如その姿を現した。 何が起きたのか? 茫然とした表情を浮かべる。
 このままでは・・・・ 流石にSS級妖魔であるドライスラー 瞬時に、左腕を絶対零度に近い氷で被い ムーンライトを弾き飛ばそうとする。
 激痛が、左腕から伝わる。 左腕1本の犠牲。 SS級・・・ いやそれより1つ格下のS級妖魔には、自己再生能力を持つ 他だしかなりの時間を必要としたが。 小さな傷であれば、直ぐに再生できるが、流石に左腕1本となると、かなりの時間を要する。 身体の半分近く吹き飛ばされた当時1つ格下のS級妖魔であったドッペラーは、完全再生するのに、1年近くの時間を必要した。
 格上のSS級妖魔であるドライスラー 左腕1本 それでも1ヶ月程は必要であった。
 直ぐに気を取り直し 正面から突撃する真美を・・・・ 正面に張った一種のバリヤー? シールド?の氷柱に、行く手を阻まれた?
 いや 正面の氷柱の前には、真美の姿も 強力に、身体から発するラディエンスの力も感じない。 感じるのは上。 慌ててラディエンスの力を感じる上を見上げる。
 そこには、3m以上の高さの氷柱を 更に高く上回る空中から 落下? いやジャンプして飛び越え そのまま襲い掛かろうとする真美の姿。

 「もらった!!」 そう叫び真美は、自ら持つ飛行能力を使い 目の前に立ちはだかった氷柱を ジャンプ飛び越え 立ちはだかった氷柱の遥か上空で、1回転 そのままドライスラーに向け 襲い掛かる。
 左腕をドライスラーに向け突出し 手首を立てる 手の平の先に、ラディエンスのエネルギーを集中 小さな光を帯びたエネルギー体が発生 気合れ入れ発射 真美の大技の1つ 無数のラディエンスのエネルギー出来た極細の少し長めの針 そうニードル 次々と、発射。

 まさに、ゲリラ豪雨 無数のラディエンスのエネルギー出来た極細の少し長めの針が、ドライスラーに向かって、降り注ぐ。 僅か一瞬の隙を突かれた。
 全て回避出来ない。 身体の数ヶ所が突き抜かれる。

 ドライスラーの目の前に着地 ドライスラーから発する妖力 かなり低下している。 絶好のチャンス。 右手に持つ愛用のライトソードを高く放り投げバーストの態勢に入る。 同時に、ドライスラーの懐に飛び込む。
 「大事な友達の初めてのお見合いを台無ししたツケ 支払って貰う」 そう言い放つ・ 突き出した両手が、ドライスラーの腹部へ 急速に高まるエネルギーを集中 光を帯びたエネルギー体が、急速に膨れ上がりドライラーを呑み込む。 「止め!!」 真美は雄叫び上げる。 同時に、至近距離・・・・ いや0(セ゜ロ)距離からバーストを放つ。 放つと同時に急速後退 身体全体を羽衣が、包み込む。
 巨大な爆発と共に、まるで核爆弾の爆発程ではないが、大きめのきのこ雲 爆心地を中心に上がる。
 ドライスラーの妖力が、完全に消滅。 気配すらない。 ドライスラーそのものが完全に消滅。
 ぽっと一息を付く、同時に、巨大な力が身体全体から真美の意識を強引引き込む。 いつものバースト使用後の起きる現象。 意識が強大な自身から湧き出る力に引き込まれる。

 フラフラと、よろめく真美を見る。
 その瞬間 残っていた残りの妖魔の殲滅した三村隊長を中心とした全妖魔ハンターの面々 この戦いを見ていた。
 素早く三村は、自らの霊能力を実体化した まさにアバターであるファトムを使い雪の積もった地面に崩れ落ちる真美を寸前の所で、キャッチ。

 その様子を見ていた 遥か後方の2つの黒い影。
 SSS級妖魔思われる1体が口を開く。
 「ようやく本来持つ力 目覚め始めてたか?」 不敵な笑みを浮かべる。
 「元々ラディエンスの力は、SSS級妖魔の1体 史上唯一の女性妖魔の持つ力 約1000年程前 妖魔界から この宇宙の地球に逃亡 自らの力を封印 その歳 1部の力をある地球人類の女性に分け与えた 代々女性2人だけを生み 最初に生まれた子だけに、正統な力受け継ぎ いつの日か、生まれる自らの力を持つ者を守る守護者として・・・・」 そう独り言を呟く。
 どうやら作者以外 全ての秘密を知っている・・・・ そう言った口調であった。

 「そして、その女性妖魔の名前は、・・・・ ラディエンス・・・・」 小さく呟く。
 「我々妖魔としては、異質の光の力を持ち エネルギーを実体化する・・・・」
 「そして、古(いにしえ)より言い伝えられている 異質の光の力を持つ女性のSSS級妖魔と交わり 我が子を産ませたS級以上の妖魔は、その子と共に、この世界の覇者、覇王となる・・・・」




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