LEJENS  レジェンス

 LEJENS以外のSF小説です。
 LEJENSとは全く無関係のオリジナル小説です。


 妖魔ハンター

 作者 飛葉 凌(RYO HIBA)

 高校2年生編
 Part5

 文化祭当日 ここは、真美のいる2-Aの教室 前日まで 何と慌ただしい日々、放課後のダンスレッスン 今日着るステージ衣装の最終チェックから 何故か? ここまでのドキメントの撮影やら 後日クラス全員で鑑賞する予定。
 真美 朝から顔には、血の気がなくまるで、死人・・・ いやゾンビ? その点に付いて、綾、香、加奈にからかわれ 「・・・・何 その血色 まるでゾンビ・・・・」
 「噛みつけば、ゾンビ化するよ・・・・」 と言い返すのが精一杯。 そこまでガチガチの緊張状態。 一応前日まで、厳しいダンスのレッスンを受け 何とか? と言う程度までは上達していたのだが・・・・
 相変わらず、ぎこちない。 ダブルを組む綾とのタイミング、呼吸も 綾が合わせてくれるおかげで、何とかこなせる程度。
 振付師の1番の悩み、ウィークポイントでもあった。
 「ルックス、スタイルなど 今時のアイドルなど比較すらならないのに・・・・ それに人にない瑞々しい透明感と、あの光輝くオーラ・・・・ 運動神経、反射神経、身体の柔軟性も抜群に良く 全てが申し分なく揃っているのに、それなのに、ダンスになると・・・・」 余り思うように上達しない真美に頭を抱えていた。

 更衣室代わりの教室 数日前衣装合わせで、最終チェック済みのコスチュームが並べられている。 だれが着るのか? 一目で解る様ネームが書かれている。
 どちらかと言うと、今時のアイドルグループが着用する制服タイプの超ミニスカートのコスチューム。 オシャレで可愛い 基本的には、全員同じデザインだが、1人1人やはり個性の演出なのか、微妙に、1部デザインが異なっている。
 自分のコススチュームの前に立つ真美 コスチュームを見ながら 今日いったい何度目なのか? 大きくため息を付く。
 ここにいるクラス女子全員緊張感の為か? 口数が異常に少ない 1人緊張感とは別のオーラを解き放つ人物が、およそ約1人 。
 だれが見てもイヤイヤモード。
 今日 校庭の特設ステージの最初の公演に、両親を始め 家で働く使用人、メイドなどの大部隊が、観戦に来る。
 今年も文化祭は、昨年同様入場規制がかかっているのだが、一応名目上治安維持となっているが、実は、真美狙いの不届き者を排除し 余りの大多数が押し掛ける事による混乱回避が、メインの目的であった。
 学校発給の入場券を持たない者は、入れない。
 だが、この学校の経営者である真美の両親は、今やプレミアム? プラチナカード化?した学校発給の入場券など、欲しいだけ簡単に入手可能 何と言っても発給する側。
 日頃のねぎらい? そう言って家で働く使用人、メイドなどに、学校発給の入場券を配っていた。
 後 重要な取引先の大物にも・・・・
 そう言った人達に、自慢の娘? を見せ重要取引などに、有利に動かそうとする魂胆が見え見え。
 去年の文化祭で演じたロミオとジュリエットのジュリエット役で、大評判となり各方面から学校発給の入場券の依頼が、学校ではなく、星沢コンツエルンに殺到していた。
 特に、最重要の取引先に無償で配られている。
 そう言った人達に、ママである由美が、鼻高々と自慢する姿が、目に浮かぶ。
 これも重要な取引先との商談の為と思い こんな自分を我が娘として、育ててくれるあの2人へのせめてもの恩返し・・・・ そう思い諦めるしかない。
 余り割り切れない気持であったが・・・・
 頭でこそ理解しているが、気持ちの面とでは、かなりずれが生じていた。
 今風の可愛いアイドルみたいな制服? コスチューム?を着て、営業用のスマイルを浮かべ、愛想よく歌って踊る・・・・・
 ちょっと前 約1年半前まで、れっきとした40歳代の男が・・・・
 精神面で、かなりのギャップと格闘。 「あー妖魔との戦闘の方が・・・・・」 あの生命を掛けたやり取りの瞬間だけが、今の自分の姿を忘れられた。

 そんな事を考えている時であった。
 「真美 何 ぼーっとしているの? 早く着替えないと・・・・ 余り時間がないわよ」 そう言っていた隣で早くも着替えを終えていた綾が、せかす様心配して声を掛けた。
 もう周囲の女子のほとんどが、ほぼ着替えを終えていた。 まだ 何もせず、ただ眼の前の制服? コスチューム? 見つめていたの真美1人であった。
 「私が手伝ってあげるから」 そう言って、真美の着ていた学校の制服を 脱ぎ取る様に、強引脱がし始める。

 着替えが終了した者から 数人の専門のメークアーチストが、メークを施す。
 髪には、それぞれの個性を演出 髪飾りの造花、パレッタ、リボン、シュシュ、カチューシャなどが飾られる。
 だれもが、まるで今時のアイドル風に まさに変身?
 最後に、真美と綾が、特に念入りに施される。
 正面のメイク用の大きな鏡 そこに映る真美自身 まるで別人? 昨年のそうであったが、プロのメイクアーチストによる本格的メイク その時演じる役によって、どんな風にもまさに、変身?
 少しは、女性がメイクにこだわる理由の1部が理解出来る様な気がする。
 だが、どうしても違和感が抜けない。 約1年半程前まで、そうラディエンスと呼ばれる神秘の力に覚醒する前 れっきとした40歳代の男であった。 決してハンサムと言える顔立ちではない。 平凡な年齢相応の まさに"おっさん" それでも決して自分自身好きになる顔でもなかったが、嫌いでもなかった。 それが、今 鏡に映る自分自身の顔、スタイル 周りは、皆 絶世の美少女と言う。 確かに、これが自分でなければ、そう思えるだろう・・・・ 嫌でも毎日見ている顔 時々鏡を見ていると、この身体に、性転換、年齢退行前の自分自身とダブって見えてしまう。 まるで他人 そうにしか思えない。 まだ男だった時代の方が、生来なのかも知れないが、愛着みたいな物があった。 どうしても今の姿 愛着らしき物を感じない。
 だが、こうなってしまった以上 今の年齢、性別などの相応を演じるしかない。 周りの そう今いる級友などは、その事を知らない。 もし知ったとしてもだれも信じてくれないだろう。 多分 似合わない出来の悪いジョークとして、笑い飛ばしてしまうか? 高熱などに侵され気が変になり支離滅裂な事を言っているのか? と思われ逆に心配を掛けてしまうだろう。

 少しぼんやりとなり色々考え込んでしまった。 その隙を彩に狙われた。
 「こら 真美 余りにも美しく変身してしまった自分に 見とれた?」 ちょっと小悪魔笑顔を浮かべ、思わず後ろから軽く抱きしめる綾。
 そう言う綾も本来の美少女を活かし更に磨きの掛かった 少し大人びたまさに美女に変身している。

 いよいよ開演の時間 担任の桃花と、振付師から色々注意を受けた。
 「さあー みんな気合を入れて!!」 桃花が元気な声を張り上げ気合を入れる。
 正面の垂れ幕が、徐々に引き上げられる 同時に、眩しく思わず眼を閉じてしまいそうな程の強力なスポットライトを浴びる。
 広大なグランド一杯の大観衆のどよめきと、大歓声が周囲に爆発。
 「超絶かわいい 真美姫!!」 真っ先に真美への大歓声が沸き起こる。 まるで巨大地震が発生したかと思える程の大歓声が、地面をも揺らす。
 次々と、ここに立つ生徒の名前の超絶コールが沸き起こる。
 これは、このコンサートの裏方に回っているクラスの男子のサプライズ。
 一応 ここに立つ女子全員の名前を順番に、次々と呼ぶ。 1人だけに集中しないように演出。
 オープニング曲のイントロが流れ出す。 今風アイドルが歌うポップなリズム。
 左横に並びダブルでセンターを務める綾の輝く笑顔が目に入る。 アイコンタクト それが合図となる。
 リズムに合わせダンスを始める。
 「やはり真美ねー あの娘(こ)本番に強いだからー」 内心真美のダンスを見て微笑む綾 あれ程イヤイヤで、全くやる気のなかった練習中とは、全く別人と思える華麗で、軽やかなステップを踏みダンスする真美。 「手のかかる娘(こ)程 可愛いのかな?」 何だかうれしい思いが湧いてくる。
 営業用とは言え、一応スマイルを浮かべ、少しぎこちないが、大観衆の大声援に、手を振ったりしながら それなりに応えている。
 どちらかと言うと、何事に対しても消極的で、引っ込み事案 余り前面に自分を押し出さない真美にしては、かなりの進歩? そう思う綾。

 兎に角周りのクラスメイトの女子が、全員真剣にやっている。 1人だけ・・・・ そう言う気持ちが、真美に働いた。 せっかくの・・・・ 1人で潰す理由には行かない。 内心色々な気持ちと格闘しながらも 一応声援に、営業用だが、スマイルを浮かべ、手を振り答えた。
 「早く終わって欲しい・・・」 切なる気持ちで、歌い踊った。

 だがここに集まった大観衆を違う。 そう全員真美だけを見に来たと言っても過言はなかった。
 ほぼここに集まった大観衆の視線の全てが、真美に集まり 真美の持つ美しさに魅了され虜にされる。
 一際は、そう周囲で踊り、歌うクラスメイトの女子とは、全く違う そう醸し出すオーラそのもの輝きが、もはや別世界の別次元。 瑞々しいばかりの そうどこかにあるかも知れない神秘の泉から枯れることなく湧き出す清らかな水の様な透明感 一際光輝き 地上に舞い降りた美少女天使が、まるで舞台の上で、楽しげに、可憐に舞っている そんな風にすら思える程であった。
 思わず、ここに集まった大観衆から大きな溜息が漏れる。

 何とか、全3曲歌い終える。
 「アンコール!!」 「アンコール!!」 「アンコール!!」のコールが鳴りやまない。
 ほっとした溜息が真美の口から洩れる。

 司会の綾を中心としたトークショーが始まる。 そして持ち込んだ私物のチャリティーオークション これらの売上金の全ては、慈善団体に寄付される。
 プライベートルームの寝室に飾られている いくつかの縫い包みなどの私物を数点このチャリティーオークションに提出した真美の私物が、ケタ違いの金額で、次々落札 この場に来ていた慈善団体の代表に、全ての売上金がその場で寄付される。
 予想を大きく上回る金額。

 今日の最初の公演が終了。
 更衣室になっているクラスに入る。
 全員満足感、充実感に満たされているのか? かなり興奮冷めやまぬ表情を浮かべ、いつにないハイテンションで、ワイワイ、ガヤガヤの大声を上げている。
 それもそのはず。 練習中、1度もこんなにうまく出来なかった。
 全員 それなり注目を浴びた。 押しコールで名前も呼んでもらえた。 今 ときめく まさにアイドル気分に酔いしれる。
 「そあー その調子で午後の公演もがんばって・・・・」 振付師と、担任の桃花も興奮余りの出来の良さに、かなり興奮気味であった。
 「私も一緒に・・・・」 なんて桃花まで言い出す有様。

 「桃花先生では・・・・」 1部女子生徒から溜息混じりの声が上がる。 年齢差を・・・・ と言いたい口調。
 「ジョーダンよ」 そう笑って言い返していたが、眼つきは完全に違っていた。 だれもが、恐怖し震え上がる鋭い眼付であった。

 文化祭の初日が終わり帰宅した真美。
 家中のメイド、使用人が大騒ぎ 真美に対して黄色い歓声を上げる。
 一応 営業用のスマイル? 苦手な微笑み返し 女の子が自然に身に着けているさり気ない動作が苦手 ぎこちない。
 それでも仏頂面は、さすがに出来ない。
 プライベートルームに入る。
 数人の専属メイドが、着替えを手伝おうとするので、いつもの通り丁重に断る。
 どうしても下着姿見られたくない。 今は同性である女性でもあっても なるべく部屋の中に、その存在をアピールしている大きなアンティーク調の姿見に映し出される自身をなるべく見ないようにして用意されている私服に着替える。 いつもの事だが、私服ですら何を着るかは、真美には選択権がない。 ほぼママの用意した物 時々詩織姉ー ほとんどオシャレで可愛い ミニスカートもしくは、ショートパンツ系ばかり。
 スカートの下の下着を見られない様 自然に内股に歩く様になる・・・・ と言う理由であるらしい。 そうしないと、本来のがさつな男のガニ股になる・・・・・
 ベッドに倒れ込む。 そのままうつぶせ さすがに今日は、神経をすり減らした。 2度のコンサート 大声援・・・・・ こんなのもののどこが良いのか? 女のその辺の心理が理解出来ない。 「・・・・みんなに注目され快感よ・・・・ 女の子は、見られてこそその価値が上がるのよ・・・・」 いつもの詩織姉ーのセリフだが。
 見る側は、いいのだが、見られる側・・・・ そんな事を考えていると、スマホの着メロが鳴る。 重要な友人である事が解る。 着メロの音が、癒しのクラッシックの名曲 J.,S,バッハのAir On The G String(G線上のアリア) アイドル系の着メロが多い今時の女子高生として、かなり異質。
 メールを読み始める。 内容は、やはり今日のコンサートの事 別に注意点などは書かれていない。 興奮した様子の文面であったが、他愛もない内容であった。 明日の午前中のコンサートも成功させて、文化祭終了後の女子だけで、某カラオケボックス貸切で行われる打ち上げ会 楽しみにしていると言った内容であった。
 いつもの様に、障りのない返信をしようとあれこれ考え始めた。
 「どうしたのだろう?」 急に生あくびが出る。 まだ眠くなる時間ではない。
 急に緊張感が抜けリラックス状態になり眠気が襲ってきたのとは違う。 急にものすごい力で、睡魔の闇へと引き込まれる・・・・ そんな感じであった。 普通の睡魔ではない。 何か強烈な力で、無理やり眠らせようと、そうまるで漆黒の闇の底に吸い込まれる・・・・ 睡魔と言う底なしの沼にはまり込み漆黒の闇の底に引き込まれる・・・・ いやその程度の力ではない。 更に強力な そう超巨大な質量を持つ大質量ブラックホール その周辺部に影響力を及ぼし光速でさえ脱出不可能と言われるエルゴ領域内取り込まれ エルゴ領域内の時空間そのものを その中心部に向かって無限大に引き伸ばす巨大な重力源 全ての物理法則が破綻すると言う事象の水平線の中心部の特異点に向かって、決して抗し切れない力で吸い込まれていく。 ある意味で、量子論の次元解釈に元ずく、2次元平面を構成する、1つの方向性しか持たない最も単純でシンプルな1次元の世界。
 「おかしい・・・?」 何とか抵抗しようと真美は呟く。
 そうそのはず、ここ星沢家の周囲は、あの最強の霊能者家系で、妖魔ハンターの一員でもある神楽家によって、強力な結界が張られており たやすく妖魔は近づく事さえ出来ない。
 妖魔の中には、確かに夢魔 C宗教と呼称する物の中では、悪魔などと呼称する物の1つで、淫魔とも呼ばれ 人間の夢の中に現れ性交を行うとされている。
 男性型は、インキュバスと呼ばれ 睡眠中の女性を襲い自らの精液を注ぎ込み、悪魔の子を妊娠させる。 また女性型は、サッキュバスと呼ばれ 睡眠中の男性を襲い、誘惑し精子を奪うとされている。
 確かに、この様な力持つ妖魔は、数種存在する。
 しかしどれもが、B級以下の妖力しか持っていない。
 S級妖魔でさえ、簡単に破る事の出来ない神楽家の結界を破るなど不可能。
 それに真美は、霊能力とは異質であるが、あのラディエンスの力 それも史上最強の源流の力を運ぶ箱舟。 唯一S級妖魔どころか、更に上のSS級妖魔とさえ戦い勝利している。
 もし夢魔もしくは、淫魔と同じ力を持つB級妖魔が、結界を破って、星沢家に侵入 真美を襲っても 真美には、妖魔の発する僅かな妖力を直ぐに感じる事も出来る。 直ぐに撃退される。

 そのまままさに無抵抗のまま意識を失う様深い もう2度目覚める事のない深い眠りへと まさに引きづり込まれる。
 もし 今ここに、真美に思いを寄せる者達がいたならば、その寝顔は、真美のそんな抵抗とは別に、まさに眠れる森の美女・・・・ そんな風に見えただろう。
 素敵な王子様のキスでしか、決して目覚めない。
 だが、真美は、何者かの手によって、強引に睡魔の世界へと、引き込まれたのだ。 そんな事を全く感じさせないギャップの うつ伏せ状態であったが、頭の左側を下にし 長い髪を少し乱しベッドの上でバラけた状態になっていたが、健やかな寝顔であった。
 だれか、メイドが、真美の様子を見に部屋に入り、寝顔を覗きこんだら 疲れて寝てしまったのだろうと思ってしまったかも知れない。
 もしその寝顔を細かく観察する事の出来る者がいたならば、微妙な違いに気づいたかもしれない。
 幸福に、白馬に跨り現れた素敵な王子様の寝覚めのキスを待ち続けている様な寝顔は、何者かも手によって作られた寝顔である事を それは、真美自身の願望でない事を・・・・

 底なしの深い眠りの世界へと、まさに落ち込む と言う表現が正しいと思われる程の どんどとん深い眠りの世界へと落ちていく。
 はたして、終着点があるのかと? と思える程の。

 そこは、まさに漆黒の闇の世界 全く色と言う物が存在せず 光さえない。 闇と言う世界が誕生、存在すれば、物理学上 同時に、その正反対のつまり対称性の性質を持つ光が、対生成されなければならない・・・・・
 常に、1つの物、方向などが誕生すれば、その正反対の性質を持つ物が、同時に誕生する。 対称性理論・・・・
 何故か? そんな物理学の事を考え出す真美。
 早く、この睡魔から寝覚めようと、あえて頭を使い、眠気を覚まそうと試みていた。
 色々考え出すと、眠れなくなる だれもが、何度も経験する事であったが、それはただの虚しい抵抗に過ぎなかった。
 少しおかしな事に気付く、当たり前と言えば、そうになる。 今感じている落下感 確かに、深い眠りの底、それも限りなく、終着点と言う物が存在するのか? とさえ思える程の 肉体的な感覚の無いのはそのはずであるのだが、もし宗教などと呼称する物の言う 魂、霊魂などと言う物が実在するのであれば、今感じている感覚 確かに、それであるのかも知れない。
 今感じている感覚 肉体から意識と言うべきか? 宗教などと呼称する物の言う 魂、霊魂などと言う物が、肉体から分離し どこか別次元へと飛ばされている・・・・ そう言う感覚であった。
 肉体は、間違いなく プライベートルームのベッドの上にある。 だが、意識と言うべきか? 宗教などと呼称する物の言う 魂、霊魂などと言う物が、肉体から分離し どこか別次元に飛ばされ 何か強烈な 決して抗しきれない巨大な 時空そのものを無限大な引き伸ばす、決して光でさえ脱出不可能なその重力源へと引き寄せられている。 そんな風に感じていた。
 急に、落下感が、何の前触れもなく停止した。 もし質量があるならば、慣性の法則で、押しつぶされてしまうであろう 瞬時の急停止。
 「ここは・・・・?」 周囲を注意深く、探りを入れる様見渡す。 ここは何も存在しない漆黒の闇の世界であるはずが、急に視界が、そう今まで濃密で、何も見る事の出来ない霧の中に彷徨いこんでいたのが、急に濃密な霧が晴れ周囲が見えるようになったのと同じ。 視界が急に開けた。
 そこには確かに光があり色と言う物が存在した。 だが明るく、色鮮やかな色彩を持つ光輝く世界ではない。 全体的にどこか薄暗く、立ち込める濃いグレーの鉛の世界に覆い尽くされた 見える物全てがどんよりとしたモノトーンの世界。
 感じる体感温度はない だがもし体感温度を感じる事が出来ならば、かなり肌寒い真冬の凍てつく寒さを感じたであろう。
 「ここはどこ・・・・?」 見渡す世界は、まるで廃墟の都市の跡を思わせる。 そこは、かって多くの人々が生活していた痕跡など感じさせない 全てが朽ち果て人の気配どころか、そこには、もう生きる生命全てが、完全に消失した死の世界・・・・ そんな風に感じさせる異様な世界。 かって多くの人々が、そこで働いていたのだろう 今は、もはや崩れ落ち崩壊直前の高層ビル群が、整然と並んでこそいたが、道路には、無数の焼け焦がれ ただの屑鉄化した自動車の数々などなど・・・・ よくTVなどで放送される警告の意味合いが強い人類最終核戦争後の世界観に似ていた。
 ただ廃墟化した都市に、虚しい殺伐とした旋風が、土煙を上げながら通り過ぎていく。
 「夢にしては、余りにもリアル・・・・・」 そう思わず呟く真美。
 「クレヤボヤンス=千里眼、透視・・・ いやESP=超感覚的知覚・・・・・」 余り超能力と呼ばれる通常人類には持ちえないとされる異なるまさに異能力、特殊能力を信じていない真美であったが、自身 その一種と呼べるラディエンスの力を それも究極にして、源流の力を持ち合わせている。 そして、その力を運ぶ箱舟。
 「それよりも これって? まさかプレコグニション =予知能力・・・・ そう遠くない未来を見ているの?」 今眼の前広がる世界を見たならば、そう思えてくるだろう。
 そんな事を考えていると、急に眼の前の世界が、激変する。 今度は、また別の場所へ まさにテレポーテーション。
 今度は、荒涼とした そう草木1本も生えていない ただ砂と、荒涼とした岩だけが存在する。 見覚えのない まるで生者を拒む様な砂漠。
 そして、そこには、おびただしい血を流す無数の死体に埋め尽くされていた。
 その無数の死体の中には、真美に見覚えのある面々の生気を失い もう2度生きる力を失った者達の顔。
 「ママ・・・・ 詩織姉ー、良美叔母様、三村隊長、零夜さん、おばあちゃま・・・・」 次々と同じ妖魔ハンターの仲間の名前を呼ぶ真美。 顔から血の気が引き蒼白となり ただ見たくもない これは多分・・・ いや間違いなく現実ではない だが余りにもリアルさに震え ただ立ち尽くす事しか出来ない。 到底受け入れる事の出来ない 例えそれが夢の世界であっても。
 そしてそこから少し離れた場所に、1つの人影が、弱々しい フラフラとよろめきながら必死に前を向き 両足を引きずりながらも前に、果敢に進もうとしている。
 ボロボロになった身体 それでも決して、気持ちだけは、何かに対して諦めていない強い意志を感じさせている。
 男ではない、抱きしめると直ぐに折れてしまいそうな華奢で身体 確かにスレンダーであったが、かなり良いプロポーション 長い少しライトブラウンの髪の色 まだ大人になりきれないまだどこかあどけなさを残す10歳代後半に差し掛かった可憐な まさに神々しいばかりの少し小柄な少女。 余り見たくない受け入れたくないが、真美自身その人物を良く知っている。 いやでも毎日見ている。 そうそれは真美自身。
 眼の前に歯を食いしばり強面で睨みつける相手、まるで霞でもかかっているのか? シルエットでしか解らない だが間違いなくヒューマノイドタイプ(人間型)でこそあったが、妖魔 それもS級程度ではない まるで発する妖力が違い過ぎる。 数値化する事自体全く無意味。 そうそれは妖魔の神々にも匹敵すると言う究極の存在 SSS級の妖魔。
 何度も立ち向かっていく、だが触れる事さえ出来ず、その都度簡単にあしらわれ弾き飛ばされ 砂に覆い尽くされた砂漠に叩きつけられる。 まるで歯が立たない。
 まるでバリヤーの一種 エネルギー障壁に阻まれ 弾かれている。
 妖力そのものが、バリヤー・・・・ この場合結界?となり 全てを拒絶し阻んでいる。
 「星沢 真美さん あなたには勝ち目などありませんよ」 どこか冷酷、冷淡な口調 ただ真実だけを淡々と語る 温かさを 全く感じさせない妖魔の声。 まるで頭の中に入り込み 頭を引っ掻き回すように、不快で不気味な声が脳裏に響く。
 それは、あの霞がかかりシルエットでしか解らないSSS級の妖魔から発せられたのとは違う。 まさにどこか解らない だが脳裏に入り込み響いてくる。
 「テレパシー・・・・?」 そう呟く真美。
 「これは、夢ではありませんよ これから近い そう遠くない未来に起こる未来図」 またも心の中に入り込んだ声が響く。 もはや未来が確定していると言わんばかりに。
 「未来図・・・・?」 こう言った論争に対して、直ぐに反撃する。
 「未来は、確定した過去形じゃないわよ、無数の無限の可能性を秘めており 全て不確実な不確定性の上にしか存在しない どのポイントに基準点を置き それに対して、相対的確率論が高いか、低いか? それだけのものよ」 思わず大声を上げ反論する。 決して認めたくない未来図。
 宗教などと呼称する物の中にある聖書、経典などと呼称する物の中に書かれているとされる預言書などと呼称する物に、未来の出来事が書かれ 神々などと呼称する輩を信じなければ救済されないなどと、恐怖に陥れ まともな判断能力を奪い 勧誘、マインドコントロール(洗脳支配)に良く用いる 数千年の長きに渡り 何ら進歩も変化もない 飽きもせず使い続けるオンリーワンパーンの下らない低俗で、愚劣極まりない常套手段。
 ある有名なTV時代劇の「・・・・この印籠が・・・・」の方が、相対的にはるかにマシ・・・・ とさえ真美は思っている。
 もし未来が確定しているならば、それをそのまま忠実に行うだけで、そこには何もない。 宗教などと呼称する物の聖書、経典などと呼称する物の中に書かれているとされる預言書などと呼称する物が、そのまま起こるならば、それはもう過去の確定した出来事 過去は通り過ぎている為 決して変える事が出来ない。 だが未来は何も確定していない。
 宗教などと呼称する物の奉仕者達は、自らを神々など呼称する物に選ばれた選民と呼称し、自ら信じる神々などと呼称する宗教などと呼称する物を信じない者達を 愚劣な愚民と蔑ますが、自らを定められた事をただ盲目、忠実に行うだけで、何も考えていない。
 もし この時間外出すれば、事故に会うと宗教などと呼称する物の中にある聖書、経典などと呼称する物の中に書かれているとされる預言書などと呼称する物に書かれていて外出する者がいるのか?
 もし 預言書などと呼称する物が、唯一絶対の未来を描かれ、確定しており 決して破る事が出来ない物ならば、その事が解っていながら預言書などと呼称する物に書かれている通り外出し事故に会わなければならない。 だが事故に会うと解っていれば、外出時間の変更、外出先の変更、外出しないなど、色々対応方法がある。
 そうすれば、事故にあわない つまり預言書などと呼称する物が、唯一絶対の未来を描かれ、確定していない事になる。
 だが宗教などと呼称する物の神々などと呼称する物を唯一絶対視する者達は、自ら考える事を放棄し 聖書、経典などと呼称する物の中に書かれているとされる預言書などと呼称する物に書かれている事を忠実に行おうとする もはや確定した過去として。 決して未来を変えられない過去として。
 未来は、確定した過去形ではない 無数の無限の可能性を秘めており 全て不確実な不確定性の上にしか存在しない どのポイントに基準点を置き それに対して、相対的確率論が高いか、低いか? それだけのものでしかない。
 真美が無神論者で、大の宗教嫌い原因の一旦でもあるのだが・・・・

 このまま行けば、尊敬する科学者の1人 アルバート・アインシュタイン博士の特殊と、一般の2つの相対性理論と、アルバート・アインシュタイン博士も創始者の1人で、量子論は公定しているが、実は、超有名な特殊と、一般の2つの相対性理論で、ノーベル賞を受賞したのではなく、光量子仮説で、ノーベル賞受賞 まだ未完成の量子論の最大功労者の1人でもある。 未完成の量子論その解釈の1つ ニールス・ボーア博士を中心としたコペンハーゲン解釈を否定の論争に行き着いてしまうだろう。
 相容れない2つ 未来は、確定した過去なのか、全て不確実な不確定性の上に、単なる確率論的にしか存在しないのか?
 アルバート・アインシュタイン博士派は、方程式による導き出される答えは確定しており つまり未来は、確定した事実となる。 しかしニール・ボーア博士を中心とした量子論のコペンハーゲン解釈派は、方程式による導き出される答えは、無数に存在し どの答えを基準に、相対的意味に置いて、確率論的に高いか? 低いか? つまり未来は、全て不確実な不確定性の上にしか存在しない。 つまり未来は、全て何も確定していない。
 つまり観測者が、観測するまで何も確定しておらず、観測した瞬間確定する。
 真美は、どちらかと言うと、作者同様 アルバート・アインシュタイン博士派であり 宇宙物理学の基本思考は、特殊と、一般の2つの相対性理論を中心に、思考するパターンが多い。 もちろん量子論も独学しており公定している。 ただしコペンハーゲン解釈や、それをベースにした数々の解釈は、ある程度理解こそしているが、余り納得出来ない面が多い。 未解決の問題 例えば、思考実験で有名なシュレーディンガーの猫などの未解決の問題に、明快な答えが未だ導き出されていない。
 「月は、人つまり観測者がいる時だけ存在するのか・・・・」 などのアルバート・アインシュタイン博士の有名な問いに、未完成の量子論を基本した 量子力学などでは答えを導き出していない。
 どちらかと言うと、アルバート・アインシュタイン博士派である真美は、未来は確定した過去・・・・ となってしまうが、結構自己矛盾。 真美本人に言わせれば、「そのうちに、相対性理論と、量子論は、統一される・・・」 「臨機応変?」 ご都合主義。

 話が、少しそれてしまったが・・・・・

 「能書きばかりほざいていないで、姿を見せなさい」 少しイラついた大声を上げる。 だが 急に不気味なほどの そうあれ程脳裏に無理やり入り込み 頭をかき回す様な不快な声が、入り込んでこない沈黙が続く。
 「姿を見せる事が出来ないの?」 少し挑発してみる。 やはり結果は同じ、どうやら単純な挑発には乗ってこない。
 妖力を感じない 気配も感じない。 だが近くにいるはず。 こちらが隙を見せたその瞬間に、一気に精神を奪い取る。 その為の心理攻撃。
 精神面で、追い詰めようとした・・・・ そう思う真美。
 だがこちらの頭の中の思考を読み取っていない。 多分 テレパシーか何かの一種であろうが、こちらの心理を読み解く事は出来ず 画像を見せるだけの能力 ただ都合の良い画像を 未来の出来事として、見せていた?
 正面からの力技では勝てないと思ったのであろうか?
 だが、相手の多分 まだ知らないSSS級の妖魔 自らに取って、都合の良い幻覚を見せてただけにしか過ぎない。
 妖力を使った精神攻撃でい詰める。 自身にそう言い聞かす。 確かに見た画像は、とてもリアル 逆に、変な違和感を感じる。
 わざわざ正面の圧倒的巨大な敵と、真正面から戦う必要性などない。 補給線、退路など断って、孤立化させ自滅誘う・・・・など色々戦術は存在する。
 心理攻撃もしかり。
 戦うづして勝 かなりの手だて・・・・・? 戦に慣れている?

 沈着冷静に、相手の攻撃を読みとる。 もし真美が、年齢相応の人生を歩んでいたならば、決して出来ない芸当であっただろう。
 女として生まれ、まだ16年の年齢相応の人生しか歩んでいなければ、だが真美は、それ以前 男として40年以上の人生のキャリアを積んできた。 それもかなりの修羅場をいくつもくぐり抜け、それに生まれ持った資質なのかも知れないが、生まれながらの冷徹、冷酷な数が極めて稀で少ない戦略家としての資質を持ち合わせていた。 物事に対して、もちろん自分自身に対しても、冷酷なまでに客観的に見る目を持っている。。
 ある面 非情にクールだ。
 何事にも、ある程度距離を取る。
 そう言う面が、今ここでプラスに作用していた。
 沈着冷静に、相手を真意を読みとろうとしていた。
 まともに、正面から戦っても勝てない・・・ そう思って手の込んだ心理攻撃を仕掛けてきた。
 そう結論に達する。

 この時点 後に戦うことになる史上最強のSSS級妖魔とのこの心理攻撃における戦術を ある程度読んだのは、まだ相手が解らない未知の敵に対して、真美自身の持つ数が極めて稀で少ない戦略家としての資質における戦略眼のなせる技であっただろう。 だが全てを読み切っていたのではない。 全てを読み切るには、あらゆる情報が不足していた。 僅かな情報だけで、ここまで読んだのは、真美の持つ本来の資質の高さであったが。
 後の戦いに、この事を知っていれば、少しは、戦い、戦局が、違った局面を向かえたかも知れない。
 「敵を知り己を知れば百戦して殆うからず・・・」 古代中国春秋時代の軍事思想家 孫文の作と言われる「兵法書」の有名な一節 この言葉の持つ意味を良く理解し情報の重要さを熟知していた。
 この時の心理攻撃が、後の妖魔の神々にも匹敵すると言う史上最強のSSS級妖魔との戦いの重要なキーの1つであった。
 その為のエサと言うべきか? 下準備であった事 真美を予想出来る範囲内での戦い、戦闘に強いる為の つまり思うつぼに陥れる為の。
 そんな事まで予想出来る者など皆無であった。

 突如 急に引き戻される感覚に襲われる。 ここへ来た時は、全く正反対の感覚。 同時に、肉体の感覚が蘇る。

 いつもの眼ざめの悪い重い瞼を ゆっくり何度か瞬きしながらも 無理やりこじ開けるように開く。 まだ少し意識が寝ぼけている為か? はっきりとしない。 いつもの朦朧とした意識。 急に数人の女性の聞き覚えのある声が、まるで押し寄せる大洪水の様に耳から頭へと大音量となって響く。
 かなり心配し目覚めた事により安堵が含まれた涙声も混じっている。
 「ねえー どうしたの?」 目覚めの声にしては、かなり場違い様な真美の第一声。
 「心配したんだから・・・・・ もう2度と目覚めないかと・・・・」 少し涙が混じった声を上げ、少し笑みを浮かべ真美を見つめる。 その表情は、やはりかなり心配した表情であった。 もう2度と目覚めない そんな思いが交錯していたのが読みとれる。 いきなり真美の顔を自身の胸に抱くママである由美。
 それに近くには、白を中心とした巫女姿の妖魔ハンター室長の小夜子 その孫娘の零夜の安堵の色を浮かべた顔もあった。
 血の気が引き真っ青な表情の詩織の顔も。
 何かの儀式を執り行った? はっきりとししないまだ目覚めのぼっとした状態ながら真美はそう思った。

 真美の意識がはっきりとするのを待ち ここまでのいきさつを話し始める。
 後ろに控える数人の真美専用のメイド達 中には、両目に大粒の涙を流し大泣きしている者もいる。 本当に心配していのが解る。
 夕食の時間となった 自室のプライベートルームから出て食堂来ない真美。 由美が真美を呼んで来るように1人のメイドに頼んだ。
 そのメイドがプライベートルームの外から何度もノックし 呼んでも返事がない。 鍵は、中から施錠され入れない。
 そう由美報告 合鍵を貰い真美のプライベートルームに、今度は数人メイド達と入る。 多分疲れ爆睡している・・・・ その程度の事だろうと思っていた。
 ベッドに私服のままうつ伏せ寝している真美を見る。 やはり・・・・ ここへ来たメイド達は思った。
 声を掛けても起きない 身体を何度も揺らしてもだ。 まるで白馬に跨り現れる王子様を待っているかのような深い眠り。
 確かに寝顔は、健やかな寝顔 だが何かがおかしい。 肉体は間違いなく今このベッドの上 しかし肉体に宿る精神? 魂? はここにない・・・・ まるで抜け殻だけが今ここにある。 そうにしか思えない。
 1人のメイドが慌てて由美に報告に走る。

 あらゆる手立てを使っても目覚めない真美。 何かの妖力によって強引に眠らされている。 だが、妖魔の発する妖力は感じない。 何かおかしい。 ここ星沢邸は、あの世界トップクラスの霊能者一族である神楽家代々伝わる最強の結界により守られており 例えS級妖魔でもたやす侵入出来ない。 由美は、直ぐに室長の小夜子にTELをする。

 小夜子は、孫娘の零夜を伴い星沢邸に現れる。
 世界でもトップクラスの霊能者であり神楽家当主でもある小夜子 その後を継ぐ孫娘の零夜 この2人でもやはり妖魔の発する妖力も まして、神楽家代々伝わる最強の結界も破られ侵入された痕跡も見つからない。
 だが真美の状態は、妖魔の妖力により強引に眠らされ その精神? 魂?だけが、どこか別次元?に転送されている? そうにしか思えない状態であった。
 真美の状態を見てある事が気になる小夜子。 真美の身体を自ら中心となり隅々まで調べ始める。 そして真美の長い髪から 見逃してしまいそうなある小さな異物を見つけ出す。
 そうそれは、小夜子の探していた物。 自らの霊能力を最大限に高め 髪の毛1本に纏わりつくよう付着していたその異物を取る。 「これじゃようー」 顔面に緊張の為 大量の汗を浮かべながらも 親指と、人差し指の間に入る豆粒よりも更に小さな異物を見せる。
 「それは?」 ここまで心配顔を浮かべる以外何も出来なかった由美が聞く。
 「これは、クマガタ そう妖魔が自らの妖力を中継させる為に使う物じゃよ」 ほっとした表情を浮かべながら答える小夜子。
 「これ自身物である為 自ら妖力を発しないじゃ だからだれも気づかぬはずじゃよ そしてこの結界にも入り込め発した妖魔の妖力だけを中継し対象に行使出来る・・・・・」 細かく説明する小夜子。 「・・・・・暫くすれば、真美ちゃんも目覚めるはずじゃ・・・・・」 そう言いつつ右手の親指と、人差し指の間に挟んでいたクマガタを握りつぶそうとする小夜子。
 だが微妙に異なる違いに気づく。
 それは、クマガタに、まるで昆虫のハエの様な羽が生えている点。
 通常 クマガタは、対象物に対して、直接取り付ける。 だがこのクマガタは、どうやら自力での飛行能力を有し 遠隔操作で対象物に取り付ける事が出来る新型 過去に存在していないタイプの様であった。

 「それよりもだれが、真美ちゃんの髪に、これを付けたかじゃ?」 そう言いつつ周囲のここにいる者全員を見渡す小夜子 だが、そんな事をする者などここにはいない。
 実は、真美に近づける者 まして触れる事の出来る者など、非常に限られた少人数しかいない。
 特に、真美の従姉である詩織の完璧と思える異常なガードもあるのだが。
 簡単に、だれもが近づく事さえ許されない。
 ここにいない者の中でも 後近づき触れられる者は、真美の友達の綾、香、加奈 そして、詩織のライバル? 悪友?の薫ぐらいしかいない。
 今述べた者は、全員妖魔との関係はない。 それに妖魔によって操られている可能性も全くない。
 実は、真美の秘密を知った小夜子は、自身の神楽家を使い極秘裏に、真美に近づく者全てを不定期的ではあるが監視していた。
 この新型のクマガタ 大きさなどから考え飛行能力は、僅か数mが限度 その距離内に近づかなければならない。
 その距離近づける者 ここにいる者を除いて、残りは、教師を含む学校関係者か、特にクラスメイトのみ。
 朝夕の通学時は、真美に気づかれぬよう 星沢家のシークレットサービス、妖魔ハンター内の まだ真美の知らないある一定の霊能力者が、監視していた。 こちらは、いわゆる小夜子の黒子 つまりスパイ 妖魔との何らかの関係を持つ者を洗い出し 人類に取って、有害となりそうな人物を闇から闇へと処分する ある意味闇の執行人 もちろん情報収集が目的する者達が大半であるが、1部裏を担当する汚れ仕事が専門。
 真美の所属する正面から戦う部隊だけでは、人類は、決して勝ち得ない 妖魔に駆逐されていた。
 何とか、ここまで持ちこたえているのは、実は決して、表に出ない裏部隊と、情報力など 他にも色々な総合力が、妖魔を人類側が上回っているのが要因であった。
 ある意味 狡猾さと言う武器を最大限利用していた。

 真美が目覚めたのは、明け方 少しぼんやりとした意識 余りやらない朝シャン 本人は、固く拒絶したが、ママ由美の絶対命令で、数人のメイド達共に浴びる。
 まだ今日も学校の文化祭 公演に出演しなければならない。

 学校へも今日は、いつもの地下鉄による通学ではなく 護衛付の車 数人の各種武道などの有段者のメイド付 もちろん学校側発給の文化祭の入場券を渡されている。
 目立たぬよう? と言っても全員かなりの美女 自然と目立ってしまうのも問題であったが、真美に迷惑が掛からないよう それとなく周囲をガード。 学校周辺は、妖魔ハンターによる覆面車両数台によるパトロールが厳重に行われた。

 格段問題なく文化祭は、終了。 その後 クラス女子生徒全員と、担任の桃花だけのカラオケボックスでの打ち上げ会。
 周囲に悟られぬよう真美自身 出来る限り営業用のスマイルを浮かべ、周囲に合わせていた。

 やはり予想通り 文化祭での公演は、大反響 昨年同様 龍虎高校、聖セレナ女学院高校などからの出演依頼が、学校に殺到したが、学校と、何と言っても国家権力介入により 強引に握りつぶされた。

 それ以降 妖魔からの目立った攻撃もほぼなく平穏な月日が流れた。

 12月下旬 冬休みに突入。
 年末年始は、星沢家の次期当主としての多忙な公務があるのだが、予定を大幅変更 加奈の実家のある東北地方のある地方都市へ 綾、香と共に行く。
 「どうしても・・・・」 と言うたっての加奈の願い 無視する事が出来ない。
 全面真っ白な雪に覆われた白銀の世界。
 ある地方都市の郊外 加奈の実家工藤家の本宅 広大な敷地面積 純和風の日本庭園 その中に、1階平屋建てだが、総檜造の日本家屋。

 「この部屋を使って・・・・・」 そう言われ綾、香と共に大きな客間に案内される。 加奈の部屋の隣。
 いったい畳何畳あるのだろうか? かなりの大きな部屋 外観と同じ、部屋も純和風。 部屋の中は、目立たないように、暖房が利いている。
 真美、綾、香 3人ともかしこまって、用意されている大きな一枚板で出来たローテーブルの前に用意されていた座椅子に座る。
 3人共 少し緊張した面持ち。
 「どうしても3人に、話を聞いてもらい助けて欲しい・・・・・」 加奈の切羽詰まった願いであった。
 だが、その内容は、「実家に着いたら話す・・・・」 打ち明けてもらえない。
 暫く3人で雑談していた。
 そこへ加奈が入ってくる。 ポットに、湯呑み 和菓子などをお盆に乗せて、「お待たせ・・・・・」。
 1つ空いている そう真美の右隣の座椅子腰かける。
 「どうしても話を聞いて、助けてもらいたい話って・・・・」 真っ先に綾が聞く。 わざわざ実家にまで呼んでの話である。 何か重要な話であるのは、だれもが想像が付く。
 「実は・・・・」 突然 下を向き話ずらそうにする加奈 だが意を決した様に、口を開く。
 「文化祭が終わった後 数日後の話なんだけど、突然実家の母から電話があって・・・・ 急にお見合いしろって・・・・」
 その話に、ここにいた真美、綾、香 大口を開け驚きの表情を浮かべ、大声を上げる。
 そうそのはず、人生の最大の大試練?
 「ねえー どうして? 相手は?」 矢継ぎ早に聞く香 その瞳は、興味津々の色を浮かべている。 そのはず女に取って、色恋のネタは、最大の好物?
 「それが、相手の男性 文化祭の時 学校に極秘に来て、あの公演を見て一目ぼれしたとか・・・・・ でも 私 1番左の最後方 最も目立たない場所だったし・・・・」 下を俯き恥ずかしそうに顔を真っ赤に赤面 顔から蒸気が部屋中を真っ白にするぐらい大量に噴出。
 こう言う話は、大好きな綾もノリノリで質問攻め。
 こう言う話は、苦手? 全く興味を示さない真美 いつもの如くただ聞き役に徹する。 女のこう言う心理全く理解不能 超難解の宇宙物理学の方が、理解しやすい。
 「ところで相手の男性は?」 当然の質問の綾。 まだ相手の男性の氏名、生年月日 その他 重要項目 全く話されていない。
 「ここに お見合い写真と相手のプロフィールが入っているの」 そう言いながら持参した大きな封筒から取り出す。
 相手の写真 経歴などそこに書かれていた。
 相手の顔写真 まだ高校2年生の加奈とは、ちょっと年齢不釣り合いと思える程 30歳代中盤から後半? 少し老けて見える。 
 ルックスは、余りあか抜けていない。 よく言う田舎の青年? 良い言い方をすれば、純朴?
 生年月日を見ると、やはりー・・・・ と納得が行く、加奈よりも15歳も年上の32歳。 写真は、 多少若々しく見せる為 多少修正が施されているのかも知れない。
 最終学歴は、東北地方最大都市にある国立の1流大学を卒業となっている。 その後 地元に戻り実家の仕事となっていた。
 住まいはは、ここよりもまだ山深く入った小さな集落 秘境と呼ぶにふさわしい? そこではと言うより 東北地方では、かなり名の知れた古い神社ではないが、私有地内のそこに祭られているある大事な物 祠? 古(いにしえ)の時代より祭られているある曰くつき物であるらしいが、それを代々受け継ぎ守っている古から由緒ある家系で、その名を知られた名家の次期当主。
 「・・・・私だって、最初この話聞いた時 何かの間違え、人違いだと思ったものー だって私 真美ちゃんや綾ちゃんと違って、ルックスも・・・・ それに、私 都会的洗練された・・・・・」 思わず口走る。
 そう加奈は、未だ田舎のあかが抜けていない。 入学時からのまま スタイルも決して良くない。 いつもその点に、コンプレックスを感じている。
 だがいつも一緒にいてくれる友達は、そんな事 全く関係ない 大事なのは友達としてである。 そう言う点でしか見ない真美、綾、香 ここにいないが、後 先輩である詩織、薫 そして後輩の友美。
 綾、香も ここぞ最大のチャンス? 根掘り葉掘り色々聞き出そうとする。
 確かに輝星の女子生徒の少数であるが、在学中に、将来の相手が決まる子もいる。 聖セレナ女学院程ではない。 あそこは、上流階級の為の花嫁修業校。
 ほとんどの生徒は、在学中に、親の決めた政略相手と、お見合い もしくは、カモフラージュ用の社交パーティなどで、既に決定されている。
 後は、エレベーターで進学する上の短大卒業を待って、中には、短大在学中に、祝言 つまり結婚式を挙げる者いる。

 輝星では、余りお見合いなどの ある意味露骨な事は、行われない もちろん親の決めた相手と出会わせる政略結婚であるが、女の方に感づかれない様に、テニス、スキー、社交パーティなどのカモフラージュされ そこで知り合った様に、巧みに演出されている。 自由を重んじる校風もあるが、一応恋愛結婚 そう思わせる為。

 「・・・・それで、どうしたいの? 加奈」 当然の疑問点 綾は、両瞳を夜空に輝く星の様に輝かせ聞く。
 「うーん・・・・」 下を向いたまま余り言いたくない様子 どうもその点が、加奈の最も相談したいポイント 核心。
 「私・・・・ 実は・・・・」 加奈は、今の率直な気持ちを話始める。 それは、何故あえて地元の名士の子息が進学する有名な女子高へ進学せず、あえて、首都Tの それも上流階級の子息の為の それも男女共学の輝星へ進学したのか?
 加奈は、将来 親の決めた相手と政略結婚する運命であった。 それも東北地方の名士 家柄重視の一族が、嫁ぎ先。
 だが加奈は、そんな決められた人生が嫌であった。 地味でのどかだが、何もない静かな田舎暮らしが嫌いであった。
 日本・・・・いや世界でも最大都市の1つ華やかな首都Tでの華やかで、煌びやかな暮らしに、強い憧れを持っていた。 大都市での上質に洗練された夢のような暮らし・・・・ 加奈の夢。
 その夢を実現させる為 あえて輝星へ進学した。 輝星へ進学すれば、首都Tに暮らすハンサム、イケメンなどの男子と運命の出会いがあり 結ばれ 華やかで、煌びやかな暮らし 加奈の夢が実現出来ると信じて。
 でもここへ来て いきなりお見合いの話 それも実家よりも更に山奥 相手もかなり年上など、加奈の夢が永遠に遠のく話。
 もはや近い将来の結婚相手に、既に内定・・・・いや決定事項 後はその為のカモフラージュが、今回のお見合い。
 早ければ、高校卒業後直ぐに、祝言を挙げる。 
 何とか、この話 破談にさせたい でも両親 それに家の意向も全く無視する事も出来ない。
 それが、加奈の相談内容であった。
 真美も綾も香 無駄口を一言も発せず 真剣に聞きいていた。
 両親、家の意向・・・ 真美も綾も香も 決して他人事の話ではない。 それなりに抱えている問題。 結構色々な面で、束縛されていた。
 「ただ相手が、田舎に住む人 お互いの両親の決めた相手・・・・ ただそれだけで決めて、この話 破談にするのも失礼かも知れないよ」 そう綾が切り出す。 まだ会ってもいない 話もしていない相手 それだけで相手を決めつける事は出来ない。
 「そうよ もしかして、理想の運命の相手かも・・・・」 香も同意し綾の援護に回る。
 退路が狭められる加奈。 自ら活路を開く?
 「そうよ 会って、話して、それからゆっくりと考えれば・・・・・」 ここまで、何も話さず、ただ聞き役徹していた真美も ようやく重い口を開いた。
 「そう真美の言うとおり 今 決めなくても 私達 まだ17歳の高校2年生 時間は、十分にあるもの」 ニコニコとスマイル浮かべ 元気づけるように加奈を見つめる綾 でも興味は、もはやその先?
 小さく頷く加奈 どうやら決心がついたようだ。
 会って、話して、嫌ならお断りすればいい それもはっきりと・・・・ 両家の意向 今や死語の世界 最悪 家出・・・・ ちょっとやり過ぎ。

 明日 真美、綾、香は、お見合いが行われる場所 近くのホテルなどではなく、相手先の家 それもかなり古くから名家で執り行われる為 一緒に行くが、もちろん縁談の席には、同席せず、控えの部屋待機。

 いよいよ当日。




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