LEJENS  レジェンス

 LEJENS以外のSF小説です。
 LEJENSとは全く無関係のオリジナル小説です。


 妖魔ハンター

 作者 飛葉 凌(RYO HIBA)

 高校1年生編
 Part13

 思ったより軽傷だった由美は、傷の手当を終えると、そのまま治療室にいる真美の元へ向かった。
 ここは、星沢コンチェルが経営する 星沢記念総合病院 大怪我であったが、命には別状のない真美、またも原因不明の意識の無い状態 個室で、口には、酸素吸入のマスクが掛けられ 両腕には、点滴注射。
 先に、この個室に来ていた執事の中本、私服の数人のメイド。
 「奥様 お怪我の具合は・・・」 先に気づいた中本が、心配そうに、由美を見つめる。
 「私は、軽傷です それより真美の方が・・・」
 死んだ様に、ベッドの上で眠り続ける真美を見つめる。
 「真美お嬢様も、お怪我は、2〜3日すれば退院出来るそうですが、今回も原因不明の意識の戻らない状態で・・・」
 やはり中本も心配そうに、真美を見つめる。
 由美は、真美の眠るベッドの横に膝ま着き 真美の右手を両手で、やさしく握る。
 「真美・・・」 思わず涙が零れ その言葉しか出ない。
 真美の右手を握る両手に微かな反応が・・・
 真美の顔を見つめる ぼんやりとだが、真美の瞼が、ゆっくりと瞬きを繰り返しながら開く。
 少し横を向き由美の顔を見つめる真美 ようやく意識を取り戻した。
 「マ・・・マ・・・」 小さな声で、囁く。
 微笑みを浮かべうなづく由美。
 「ドッペラーは?」 真美は、小さな声で聞く。
 「あなたのお陰よ・・・・」
 「倒したのね ママの大事な2人の子の仇を・・・」
 「そうよ」 由美は、涙を流しながらも微笑みを浮かべうなづく。

 この時 気を利かし 中本は、メイドを個室の外へ連れ出す。
 「ここは、母娘の2人だけの大事な会話・・・」 そう言い残す。

 「・・・何を言っているの? あなたも私の大事な娘よ・・・ あなたの身体に流れるラディエンスの力 それは、星沢家 直系の子に受け継がれる神秘の力よ ラディエンスの力を持つ真美ちゃんは、私の大事な娘」
 真美の語った言葉に、少なからずショックを受ける由美。
 真美は、ドッペラーとの戦闘中 ドッペラーから聞いた話を全てした。
 妖魔には、S級より更に強い SS級と、最強のSSS級がいる事 そして、星沢家と、ラディエンスの力の関係 そして、真美自身 究極のラディエンスの力を運び そして妖魔との間に、子を産み 2つの力を持ち合わせる 究極の存在を産む為だけの存在。
 全ての世界を支配する 究極の存在を産む為だけの・・・ この言葉に、かなりショックを受けていた。
 そして、ここを退院したら 今まで受けた星沢家の返し切れない恩を返す為 1人妖魔界へ行き SSS級を始め全ての妖魔を倒す・・・と言い出した。
 全ての妖魔を倒せば、この地球・・・ いやこの宇宙に、2度と妖魔は、現れないと信じて・・・
 もし自分が、死んでも 全ての世界を支配する究極の存在が、産まれない。
 全ての元凶は、自分自身・・・と、真美は言う。
 もう覚悟を決めた言い方・・・
 それに、今の真美の心情も語った。
 真美には、2人の母がいると、1人は、今は亡き産み育ててくれた母と、もう1人は、この身体 女への性転換と、年齢退行した自分を 我が子として大事に育ててくれる 今 目の前にいる母と・・・
 もう思い残す事はない。
 次に妖魔が現れば 亜空間フィールド内に発生する漆黒のトンネルへ入り 妖魔界へ行く。
 決意を固めていた。
 「それは、ならぬ!!」 真美と由美の2人しかいないはずの個室に、突然 厳しい口調の老女の声が響く。
 そう小夜子の声 その後ろには、詩織と良美の母娘も立っていた。
 「悪いが、勝手に入らせてもらい 話しを聞かせてもらったよ 真美ちゃんの秘密も全て、詩織ちゃんから聞いたよ」
 悲しそうな眼で、真美を見つめる小夜子。
 由美は、小夜子の方へ振り返る。
 「そうですか・・・」
 少し下を向き 何か言い難い
 「ごめんなさい 小夜子さん これは、私と、主人と、詩織ちゃんと、執事の中本だけの秘密でした・・・」
 涙ぐむ由美。
 「由美ちゃん さぞ辛かっただろうなあー 真美ちゃんも・・・」
 「良美ちゃん ごめんね こんな大事な事 あなたにも秘密にしていて・・・」
 「いいの 姉さん 私だって・・・」
 涙を浮かべ 小さく顔を横に振る良美。
 「実は、詩織も・・・」
 良美は、詩織の隠された秘密を語りだした。
 「姉さん 憶えている 私が、結婚前 ここ妖魔ハンターで、大怪我を負った時の事?」
 ここから長いので要約する。
 良美は、その時の大怪我が原因で、子供を産めぬ身体になった事 それは、その時の主治医以外だれも知らない秘密にした。
 その後 今の主人と知り合ったが、子供の産めない身体である事を告げ 別れ様とした だが、それでも気持ちは変わらないと告げられ結婚にいたった。
 そして、東海地区で、フリーの退魔師となり 今から約17年前 東海地区の山奥の小さな集落で、今だに、犯人の手掛かりが掴めない集落全員が虐殺され そして、生後10日の女の赤子だけが行方不明になった事件であった。
 あれは、C,D級の妖魔の仕業で、たまたまあの時 あの近辺にいた良美が、妖魔の気配を感じ その集落に向かったが、既に集落全員皆殺しに会っていた、
 ただ1人を除いて、それが詩織であった。
 まだ生後10日程の詩織だけが、生きていた。
 詩織の周囲には、複数のC,D級の妖魔の死体が散乱し その周囲には、生まれたばかりの我が子を守ろうとした両親の死体も・・・
 狙いは、詩織の命であった。
 だが、何故?
 生後10日程の赤子が、何も出来るはずないのに・・・ 良美が、近づくと、詩織の身体から ラディエンスの力を解放する時発する白い光が発した。
 信じられない思いで、この赤子を見つめる良美。
 何故 この子にラディエンスの力が、それも姉さんと同じ強いラディエンスの力を・・・ 星沢家 直系の女性しかないはずの力を・・・
 だからそれに気付いた妖魔に、命を狙われた・・・ そう思い この子を抱き上げた。
 「・・・この子 私の顔を見ると、笑ったのよ・・・ まるで私が、この子を産んだ母だと思って・・・ 愛らしい まるで天使の様な微笑みを浮かべたの・・・ この子を妖魔の魔の手から守り 育てられるのは、私しかいない・・・ そう思い この子抱き家に連れ帰り 主人と相談 私が産んだ娘としたの この子の産着には、詩織と記されており それで、この子の名前を詩織に・・・」
 「だから 私が産んだ本当の実子じゃないの詩織は・・・ でも詩織が、10歳の時 この秘密を知って・・・、でも詩織は、あの時 私に言ってくれたの 私の母は、あなただけだと・・・ そして、それ以降詩織は、私と共に、フリーの退魔師となり・・・ 中学を卒業して、全ての元凶、人に災いと、悲しみと、死をもたらす妖魔を戦うと、妖魔との戦いの主戦場首都Tに、そして、星沢家の宿命妖魔ハンターの道を・・・」
 全てを語った良美。
 「悲しいが、ラディエンスの力を継ぐ星沢家の直系は、由美、良美 お前さん達2人が最後じゃのうー」
 悲しい声で、小夜子は、つぶやいた。
 「それと、真美ちゃんじゃが・・・ この事は、今まで通り 決して、だれにも話してはならぬ 真美ちゃんは、由美ちゃんの産んだ3女じゃ いいなあ」 念を突く小夜子。

 その後 色々話し合いが続いた。
 結局 詩織、由美、良美、小夜子の4人に説得され 真美は、1人で、妖魔界へ行くと言う無謀な考えを諦めさせられた。
 「だが問題は、これからの真美ちゃんをどうするかじゃ」
 腕を組み考え込む小夜子。
 敵 妖魔の狙いは、真美。
 真美を妖魔ハンターのメンバーから外す事は出来ない。
 真美以外 S級 いや 更に上のSS級、SSS級妖魔まで存在する。 対抗出来るのは真美1人しかいない。
 妖魔ハンター全員で、真美を守りつつ 戦わなければならない。
 特に、妖魔が、亜空間フィールド内に閉じこもり 戦闘を仕掛けてきた場合など、問題になる。
 「多分 これからの1年が、正念場になるじゃろう・・・ 妖魔も必死に真美ちゃんを狙ってくる・・・ 壮絶な戦いになるかも知れぬ 戦力の補充 急がねば・・・」

 翌日 朝 周囲の制止を無視し 真美は学校に行く。
 珍しく自家用車での通学 車を降りた瞬間 周囲を埋め尽くしていた生徒は、一斉に驚きの表情を浮かべる。
 身体の数ヵ所には、痛々しい包帯が巻かれ 顔も青白い どう見てもまともには見えない。
 それに、執事の中本も 学校の特別許可を貰い、1日に同伴。
 その後 暫く同伴する事になった。
 授業中 教室の1番後で、真美の容体を心配そうに見ていた。
 朝のホームルームでも担任の桃花に、「星沢さん 理事・・・ いやお母様から 無理をしない様にと言われています・・・」 かなり心配そうに言われていた。
 真美自身 この怪我を 「単なる自宅での事故 私 どじっ娘(こ)だから・・・」と、誤魔化し笑いを浮かべていた。
 だれも その言葉を信じる者はいない 真美は、運動、反射神経共に、トップアスリートに近く抜群に良い事を だれもが知っている。
 色々な憶測が飛び交う。
 世界最大規模を誇る 星沢コンチェルングループの頂点に立つ星沢家の跡取り次期当主の1人娘 その命、身代金目当ての凶悪なテロ、強盗団などの犯罪者グループに狙われ襲われた・・・ など物騒な噂が流れた。 数日の間 学校の特別許可を得て、執事の中本が、常に近くで見守ってた事が、根拠に上がっていた。
 休憩時間も 余り席から立たず かなりつらそうな表情を浮かべ クラスメイト全員 心配そうに真美を見つめていた。
 まだ数日 入院、安静が必要な状態であったが、かなり無理をしていた。 心配して、綾、香、加奈が、真美の身の回りの世話を焼く。
 来週には、3学期の期末試験を兼ねた学年末進級テストが行われる。
 ここで落第したら2年生に進級出来ない。
 真美のこれまでの成績ならば、問題なく2年生に進級出来る。 だが真美自身 かなり不安 その為 学校を休む理由には行かなかった。
 試験前の大事な1週間。
 テスト期間中も何も問題なく真美は、無事3学期の期末試験を兼ねた2年生への学年末進級テスト終える。
 成績は、学年18位 文句なく上位グループの1人として、2年生への進級が決まり ほっと一息。

 その後 3月14日 ホワイトデー。
 波乱万丈の1日 怪我もほぼ完治するももの 原因不明の体調の悪さが続く。 通常の地下鉄通学 朝から大騒動 地下鉄電車内でも 見知らぬサラリーマン、大学生、他校の高校生などから 告白付きのホワイトデーのプレゼント攻勢 バレンタインデーに、渡した記憶などないのに・・・
 駅構内でも 竜虎高校の前生徒会会長の川崎の待ち伏せに遭い 「星沢 真美さん 僕と付き合って下さい 将来 あなたを総理夫人にしてあげます・・・」など真剣に告白され 大弱り ちなみに、川崎は、国立最高峰のT大の政治学部に、現役合格しており 4月から進学する事になっている。
 それに、将来・・・・総理府人・・・・ 私って・・・・ あのイルメダ・マルコス・・・・? とさえ思ってしまった。
 独裁者として君臨した フェルディナンド・マルコス元フィリピン大統領が、イルメタを口説き落とすときに使った有名なセリフ 「君を将来 大統領夫人(ファースト・レディにしてみせよう・・・・」 そのもののパクリ。
 私って、そんなに権力を欲しているように見えるの? かさえ思ってしまった。
 権力など、ドブよりも更に、ド汚く汚(けが)れている・・・・ あんなもの欲し、ひけびらかし、盲目的に狂信する輩(やから)の精神構造が知りたい。
 他にも アルゼンチンのエバ・ペロン(あの有名なエビータ)、ルーマニアの20世紀最悪の女独裁者 エレナ・チャウチェスク、などと同列、同次元、同レベルの権力欲に目の眩んだ最も卑しい女?

 一緒に登校仲の詩織 真美に纏わりつく害虫の排除に大忙し。
 「こら 私の大事な真美ちゃんに、手を出すな・・・」 必死の防戦 ラディエンスの力 解放 直前の状態。
 さすがに、この状況 真美も 余りの人の多さに、怯えてしまい 詩織に抱かれ 人混みを掻き分け ようやく出入口の階段を登り終えると、そこには、更に想像を絶する黒山の人、人、人・・・ もはや学校へ登校不可能な状態。
 「真美ー」 どこからともなく綾の声が響く。
 こうなるだろうと予想した綾が、一条財閥の傘下の警備会社の警備員を引き連れ 素早く真美の周囲を取り囲み そのまま綾が用意した特殊車両に乗り込み学校へ向かう。
 学校の正門前で下車 連絡を受けていたクラスの女子に囲まれ そのまま何とか校舎に入る事が出来た。
 余りの異様さに、真美自身 振え怯えていた まだ体調が完全に回復していない。 まだかなり青白い顔 どうも体調が悪そうだ。
 教室に入ると、クラス男子全員 バレンタインデーの倍返しを 恐る 恐る 真美に返す。
 今朝のあのすさまじい光景に、さすがにクラス男子全員 真美に告白など言える状態になれない。
 真美も青白い顔で、必死に営業用の笑みを浮かべ 「ありがとう」の一言を言って受け取っていた。
 最後に、10倍返しを要求した小林 少し大きめの小箱 綺麗に包装されている。
 「バレンタインデーのお返し」 にっこり微笑む小林。
 「ありがとう」 一応業務用の笑顔で受け取る真美。
 「ところで真美ちゃん 明日の事なんだけど」
 「うーん・・・」 少し言葉を濁す真美。 実は、明日 ここ輝星高校3年生の卒業式 卒業式には、クラスで出席するのは、学級委員と、副委員、書記の3名だけ 問題は、夕方から開かれる卒業パーティであった。
 学校、生徒会共催で、某有名ホテルの大フロアーを借り切り行われる 在校生で出席するのは、各クラスの学級委員と、副委員、書記の3名だけ だか、真美と、2年生の詩織、薫など数名の生徒が、3年生総意の希望と言う事で、呼ばれていた。
 もちろん正装 男は、タキシードか、羽織袴、女は、パーティドレスか、振袖着用が義務付けられている。
 ここは、やはり超お金持ちの子息の為の高校 普通の高校とは、やはり違う。
 真美は、あの戦闘による大怪我は、ほぼ完治しているものの 身体の体調不良が続いており 出欠席を今日まで保留にしていた。
 グランド、体育館での体育の授業中 何度も倒れ保健室に運ばれており 保健医の女医の診察でも原因不明 多分過労ではないか? と診察されている。
 今日も体調不良 朝 通学時の大騒動は別としても やはり顔が青白く 身体がだるそうであった。 いつもの生気を全く感じられない。
 「体調が芳しくないし・・・ 欠席しようかと・・・」 乗り気の無い返事 体調が悪いのが、最大の原因であったが、他にもパーティドレス着用に、かなり抵抗があった。 昨年の秋 聖セレナの学園祭で、クィーンと言う事で、ウェデングドレスを無理やり着用され それ以来 ドレスに関して、トラウマ(精神的外傷)状態となっていた。
 ドレス着用と聞くだけで、顔が青ざめ震え出す ノイローゼの様な状態になる。 男の俺が、ウェデングドレス・・・? 恐怖が蘇る。
 「解かったよ まだ具合悪そうだしね 後で、僕が、生徒会に伝えておくよ」 やはり小林も真美の身体の具合を心配している。
 いつものように真美を 子供、お転婆娘扱いにして、からかわない。
 それ程 真美は、他人の目から見ても、かなり悪そうであった。
 この日 珍しくクラスの男子生徒も女子生徒と共闘 真美を守る為 休み時間、昼休み 他のクラス、学年からのホワイトデーのプレゼント攻勢をシャットアウト 真美に代わって代表として、受け取っていた。
 他の男子生徒からは、不満爆発 せっかくの愛の直接告白が出来ない。
 だれも近づけさせない 真美の側にいられるのは、彩、香、加奈のみ 特例で、近づけたのは、詩織と、薫だけ この日 特に、体調が時間と共に更に悪化 1日自分の席から余り立たず、つらそうにしていた。
 帰りも詩織が、自宅にTEL 車で迎えに来てもらったのだが、運転手兼ボディーガードが、何と、妖魔ハンター隊長 三村が自ら買って出た さすがにあのすごい顔つき だれもが、恐れ近づかない 一緒に来た執事の中本と、詩織に支えられ 周囲には、佐々木、佐伯、西が、ガード あのナンパ師 佐伯でさえ 余りの真美の状態の悪さに、周囲を取り囲む女子生徒に声すら掛けず、真美ばかりを心配そうに見ていた。
 「真美ちゃん いつも俺達を守る為 無理ばかりして・・・ そのツケが、こんな形で出たのだろうなあー」 小声で、近くにいた西に語りかけていた。
 「そうですよねー 佐伯さん 真美ちゃん 少し小柄で、華奢な身体 それも女の子 無理にも限度ありますよー」 佐伯同様 真美を心配そうに見つめていた。
 車中 真美は、ぐったりとしており。 隣に座る詩織は、心配そうに、真美を抱きしめていた。
 自宅の自室に、抱えられながら入る。
 数人のメイドに、ネグリジェに着替えさせてもらい そのままベッドに倒れ込んだ。
 熱を測ると、40℃近くまで上がっている。
 執事の中本が、直ぐに星沢記念病院の真美の主治医にTEL 手が空き次第駆けつける事となった。
 星沢家には、妖魔ハンター主力部隊が集結 室長の小夜子まで、心配して駆けつけた。
 真美の自室は、男性禁制 入れるのは、パパの義人と、執事の中本だけ 例外は認められていない。
 妖魔ハンターの男性隊員は、自宅周辺を警戒 シークレットサービスは、屋敷の敷地内を自動小銃などで、武装警戒 屋敷内でもメイドが、短銃をスカートの下 太もものレッグホルスターに入れ 鋭い眼を光らせ警戒 実は、妖魔の不穏の動きがあり 体調を崩している真美を狙っていると、推測 警戒態勢を引いていた。

 実は、数日前 妖魔の中で、レジスタンス(地下抵抗組織)活動している 実に平和的な真美ファンクラブ、親衛隊が、真美からバレンタイン・デーのお返しのホワイト・デーのマシュマロを貰ったのだが、その時も真美の体調が、余りにも芳しくなく 心配して、人目の触れないよう見守っていただけだが・・・・
 SS級のドッペラーとの戦闘以後 真美に対する妖魔の動きに、妖魔ハンター側が、過敏になっていた。

 真美の状態を執事の中本より連絡を受けた両親は、慌てて全ての仕事をキャンセル 真美の元に駆けつけ その晩つききりで看護していた。
 「・・・もう僕は、我慢出来ない」 イライラと、真美の部屋を動き回るパパ 義人。
 「少しは、落ち着いてください」 ベッドで苦しむ真美の頭を やさしく撫でるママ 由美。
 「星沢家の宿命は知っている それを承知で、僕は君と結婚した あの妖魔から人類を守る為に戦う それが、代々星沢家 直系の長女が引き継ぐラディエンスと言う神秘の力 唯一妖魔に対抗しうる力を持つ星沢家の宿命 それは、良く解る。 だれかが、あの妖魔から人類を守らなければならない その為 君が僕の為に産んでくれた 大事な最初と、2番目の娘を 妖魔に殺された。 あの時 気丈に振る舞う君を見て、僕は我慢した。 僕より君の方が苦しんでいる お腹を痛め産んだ大事な子だ。 その君が耐えている 僕など比較にならない程 苦しんでいる君に そんな時 僕が取り乱してはと思った。 そして、今度は真美だ。 SS級と言う最強の妖魔と戦って、勝ったもののこの状態だ。 もう我慢は限界だ 君が僕への限りない愛情のしるしとして、産んでくれた大事な娘(こ)を もう失う理由には行かない 真美も僕の子だ いつ死ぬのか解からない 妖魔との戦いに巻き込む事が出来ない どこか? 妖魔の現れない場所に連れて行く そこで平凡で幸福の人生を送らせる」 いつになく取り乱す義人。
 星沢コンチェルンの社長兼CEOとして、常に沈着冷静な経営判断を下す姿が、そこには無い。 あるのは眼の前の愛娘に対する愛情に我を忘れ取りみだした1人の父親。
 小さく首を振る由美 両目を閉じ 涙が零れる。
 「あなた・・・ それは無理」
 「何を言っているんだ 妖魔は、この首都Tを中心に現れるだぞ そこ以外に行けば」
 「もう どこへ行っても同じなのよ」
 「何を言うんだ」
 「長女でなく 3女の真美・・・ いや真美は本当の実子ではないけど、星沢家の直系の女しか持ちえないラディエンスの力を・・・・ そう私達 星沢家の直系の長女が受け継ぐラディエンスの力の源 究極のラディエンスの力を持っているのよ この力 妖魔の持つ妖力と結び付いた時 多分 究極の存在 半妖魔とも言える もはや何者にも持ちえない最強の力を持つ者 その者を産む為の箱舟なのよ真美は、そして、私達 星沢家は、究極のラディエンスの力を持つ者を守る存在 この究極のラディエンスの力と、妖魔の持つ妖力は、互いに引き合う磁石 例え真美をどこに連れて逃げても 真美の持つ究極のラディエンスの力が、妖魔の持つ妖力を引き寄せてしまう・・・ 常に真美は、妖魔に狙われ 妖魔から自らを守る為 戦わなければならないのよ」 悲しそうに答える由美。
 「そ・そんなあー 本当なのか?」
 「本当よ」
 由美の深く沈みこんだ瞳の奥 全てを物語っている 落胆する義人。
 「唯一とも言える方法は、全妖魔を倒す・・・ これ以外方法は多分無い・・・ 真美自身その事に気付いている だからこの娘(こ) 自ら妖魔界へ行くと言い出して、そして、私達人類に、災いと、恐怖、悲しみ、死しかもたらさない妖魔を全て倒す・・・ 例え途中殺されても自分が死ねば、究極の存在 半妖魔も生まれない 全ての災いの元凶は、自分自身だと言い出したの・・・ でもあの時止めたけど、今になってこの娘(こ)の気持ち 少しは解かる 私も星沢家に生まれし女 そして、究極のラディエンスの力を持つ者を守る守護者 もし真美が妖魔界に行くのならば、私も一緒に行く そして、この娘(こ)を最後の最後まで守ってみせる」 硬い決意を述べる由美。 やさしい母親の表情で、苦しい表情を浮かべ眠る真美を見つめる。
 「認めない・・・ 絶対に認めない」 怒りに満ちた表情で、2人を睨む義人。
 「2人共 僕に取って、最もかけがえの無い大事な家族だ いかなる理由があろうと、断じて認めない 力ずくでも妖魔界などに行かせない」
 「でも これ以外に・・・」
 「ダメだ!!」 怒りに満ちた大声で叫ぶ義人。
 「そんな大声を出しては、真美が・・・」
 その時 真美が薄らっと両目を開け 上半身を起こした。 やはりまだ苦しそうな表情を浮かべ、大きく口で何度も呼吸している。
 「ふ・・・2人共 止めて・・・・」 真美は、ここまでの話を聞いていたようだ。 だが声が弱々しい 顔もかなり青白い かなり無理をしている。
 「何故 私の事でケンカするの 私の事でケンカするのは止めて、私 あなた達の実子じゃないのよ ここまで、大事に育ててくれた事には、感謝の言葉以外返しょうがないけど、もうこれ以上迷惑はかけられない それに、私は、究極の呼ばれる 最強の源流のラディエンスの力を運ぶ為の単なる箱舟 いつの日か、多分 最強の妖魔に倒され 交わり 私の持つ究極のラディエンスの力と、妖魔の持つ妖力を併せ持つ 半妖魔とも呼べる究極の最強の存在を産む為の存在 私なんか・・・」 言葉を濁す真美。
 やはり妖魔と戦い死ぬ事を望んでいる。
 だか、真美のこの言葉に、由美は、ある事に気付いた。
 妖魔と交わり 2つの力を持つ最強の存在を産む為の存在・・・ 別に、妖魔と交わらなくてもいい 2つの力を持つ最強の存在を産む必要性もない。
 そう真美は女 子も産める 今まで、少しでも女の子らしくさせようと、周囲には、真美に気付かれない様 クラスメイトの綾を始め 女性同士ばかりを配置した。
 真美を輝星高校に進学させる歳 由美の輝星高校時代 大親友で、3年間同じクラスメイトでもあった彩の母 紀子(のりこ)の存在もあった。 丁度真美と同じ年齢の娘 彩がいた。 進学も第1志望が、輝星高校 何と言っても 国内有数の一条財閥の娘 それに、各種情報収集の結果も 稀に見る 良家のお嬢様の体現者 品行公正で、品格など非の打ち所がない まさに真美の友人として、ふさわしい逸材 真美にもやはり良家のお嬢様を学ばせなければならない その為の教師役にも適任 それとなく紀子に頼み 綾を真美の友人になる様に頼んだ。 結果は上々 初めて、入学式 その後 同じクラスになり 真美と接し 彩自身 真美にぞっこん 今では大親友となっている。
 入学式での感想は、「あんなに綺麗な女の子 初めて見た この世に存在したなんてー 信じられない まるで美の美少女女神 それに話して見ると、見た眼と違って、お高い所もない・・・ それに自然に身に付いているはずの さりげない女の子らしさ 妙にぎこちなくって・・・ 無理している様な感じ・・・ でも何かー その辺 初々しくて・・・」 などと、母 紀子にはしゃいで話していた。
 香、加奈も加わっているが、真美の友人として、全く問題ない。 この2人も狙い以上の結果をもたらしている。
 香と加奈の存在が、真美自身を分け隔てなく他人と接する やさしい女の子へ成長させている。
 もちろん 教育係として、姪っ子の詩織もそうだ。
 妹の良美の娘 真美に取って従姉妹 1歳年上の詩織は、真美を自分の妹とて、肌身離さず、異常と思える程可愛がっている。
 兄弟のいない詩織は、可愛い妹が欲しかった。 その妹として、真美は、うってつけ。
 まだ今だに、男だった部分が、完全に抜けきっていないが、かなり年頃、年齢相応の女の子らしくなってきている。
 全ての面に置いて、そろそろ真美の婿を探してもいい。
 真美は、昨年の11月に、16歳になった。 法律上 結婚が許される年齢に達している。
 婿の貰い手など、単に、婿募集と宣伝するだけで、どれくらい男性が集まるか? 想像も出来ない。
 何と言っても とてもこの世の者とは思えない程の神々しいばかりの神秘的美貌を持つ絶世の美少女 他だ美しばかりではない まだどことなく あどけなさ、愛らしさ、可愛らしさを持ち合わせ 何となくほのぼのした感じを与え 近寄り難さが無く 逆に、一緒に側にいたい親しみも感じる。 真美を見た者全てを一瞬に虜にしてしまう 魔力の様な魅力の持ち主 それに、スタイルも年齢から考えれば、まだ大人の女の完成されたプロホーションではないが、良い方 少し骨盤の広がり少ない為 お尻が少し小さめ その為 逆に、足は、細く 身長から考えれば、すっらっと長い。
 それに、少し小柄で、華奢な体型 抱きしめると、折れてしまいそうな・・・ 逆に、これが、守って上げたいと言う 保護欲を掻き立てられる。
 女性同士でも 美しいもの、可愛い物を 愛でたいと言う気持ちにさせてしまう。
 真美には、美の女神も嫉妬する様な美しさと、これから更に美しくなる成長性など 数々の魅力を持っている。
 だれもが、独占したくなる。
 世の男性陣は、決して他っておかない 求婚を申し込んで来る。
 今でさえ 男女関係なく 真美に纏わりつく者が、多数いる。
 これが、本格的に婿募集となれば、世界中から申し込みが殺到するだろう 規模など多分想像出来ない程に。
 問題は、真美自身 以前自分は、男だと思っている。
 ラディエンスの力の覚醒前 くたびれた40歳代の平凡な男に過ぎなかった その為 今の姿は、仮の姿だと思っている。
 異性であるはずの男性に対して、同性だと思って、全く興味を示さない。
 あれ程 周囲に男達が群がっているのに、別の意味での性同一障害者の様だ。
 興味の対象は、女性に向いている。
 そろそろ完全に、自分が女だと認識してもらわなければならない。
 その為にも、真美にふさわしい男性が必要だ。
 真美自身 女だと認識させる為にも。
 でも 真美は、私の娘 星沢家を継ぎ 星沢コンチェルンの次期当主 やはり それ相応の相手が必要 星沢コンチェルンの総力を挙げ 真美にふさわしい相手を探し 結婚させ 子を産ませればいい そうすれば、妖魔も真美に手を出せなくなる。
 すると、私も もうおばあちゃんになるの? きっと真美の事 可愛い娘を産むはず・・・
 決断したら即実行よ そうすれば、必ず道は開けてくる・・・ 由美に、この考えが浮かんだ 愛する真美を守る為。

 「そうよね あなたの言う通り 妖魔界に行くなんてバカげた考えよ」 急に、しおらしくなる由美。
 「真美には、私から もう1度説得する」 真美の顔を見つめる由美 何故だか、先程の切羽詰った表情から一変 何か? 企んでいる表情に変わる。
 結局 由美、義人に説得され またも妖魔界へ行く事を諦めさせられる。

 真美の部屋を出る 由美と義人 ほっとした表情を浮かべる。
 「あなた 大事なお話があるの もちろん真美についてだけど、ここでは何だから部屋で」
 由美は、先程思いついた事を全て義人に話した。
 「もう 僕をおじいちゃんにする気かい? まだこれから真美の成長や、子育ての楽しみがあるのに・・・」 少し残念そうな義人。
 だが由美の考えに賛成した。
 確かに、現状 これが最もベターに思えた。

 翌日 3年生の卒業式 在校生 午前中の4時間授業 午前中 3年生の卒業式に出席するのは、学級委員と、副委員、書記の3名のみ この日 真美は、輝星高校入学以来 初めての欠席であった。 入学以来 早退、遅刻など全く無く 学校中 かなり大騒ぎになっていた。 死亡説、重体説まで飛び交う有様。
 美人薄命・・・ などと物騒な事を言い出す輩まで出る始末。
 昨日程ではないが、やはり体調が優れず 無理をさせない為でもある。
 プライベートルームのベッドで横たわる真美 何もする事もないので、ベッドの横にあるナイトテーブルの上に、サブ兼バックアップ用の超高性能ノートタイプのPCを持ち込み いつもメインで利用しているルーターから直接有線LANでで繋ぐデスクトップタイプでなく、ルーターから無線LANで繋ぐサブ兼バックアップ用、最新最高スペックの光ファイバーが、真美専用に設置されており 上下共回線スピードは、現在最高レベルで、実測国内最高速を誇る。 インターネットでの接続は、全くストレスを感じさせい。
 何も欲しがらない真美が、唯一 ママである由美に頼みPC2台購入と、光ファイバーをプライベートルームに設置してもらった。
 当初 自宅に設置されている最新最高スペックの光ファイバーからルーターで、無線LANを利用して真美の購入予定のノートタイプのPCと繋げる予定であったが、何と真美でなく由美が、真美の為に新たな光ファイバーを真美のプライベートルームに導入させ 当初1台ノートタイプのPC購入が、デスクトップタイプのPCまで2台購入となった。
 さすがにこの配慮は、真美自身驚いていた。
 世界トップクラスの巨大財閥である。 やる事が一般庶民とはかけ離れている。 特に真美は、今の身体に性転換する前 氷室 拓真だった時代 身分不安定で低賃金のバイトで、何とか食いつなぐどん底の生活をしていた。
 わざわざPCを購入するのに、新たな真美専用光ファイバーまで設置するとは、とうてい考えられない。
 デストップタイプと、ノートタイプの2台のPCは、真美自身選んだ物で、基本スペック重視の市販品としては、最高スペックを誇る その分 TVなどの余分な機能は、搭載されていない。
 寝転んで、インターネットで、好きなネット小説(主に、SF系)や、科学に関する論文を読んでいた。
 部屋の中では、5人のメイドが、真美の部屋の掃除、片付けなどをしながら 真美の容態が悪化しないか監視している。
 それにしても広大な真美の部屋 どれくらいの広さがあるのか・・・?
 真美の部屋は、2階の1番奥の角部屋の南向きで、東側も出窓がいくつもある。 南側の窓を開けると、そのままテラスに出られる。
 無意味に感じる程広い 隣の部屋は、真美専用のクローゼットになっており まだ着ていない真美の為に、世界でも超1流の有名デザイナーが、デザインした超高級1品物の豪華ドレスからファッション衣類まで整然と並べられている。
 部屋の中も 壁は、白を中心として明るくデザインされており まさに女の子の憧れ 白と淡いピンクで、デザインされたロマンチックな天蓋付きの大きな それも世界的超有名な1流職人の手作り1品物のレアなキングサイズのベッド 周囲を 淡いピンクのカーテンで囲われ まさにプリンセス仕様が東側の窓側に設置されており。 その前方 丁度 南側と東側の角には 超高級勉強机 勉強机と並ぶ、西側の角にはPC専用の机が2台と、プリンター 専用本棚 更に、北側の壁に沿って最新の70インチの超高性能大型TVに、各種超高級オーデオ製品 数棚の本棚に、アンテーク調のシステムラックには、アンティーク調の可愛い木製や、ブリキ、アイアン製品などで作られたミニュアのインテリア、デスプレイ用の小物 それを飾るように、造花・・・・ 部屋の中央部には、大きな丸い白のレースの掛かったガラステーブル その周囲には4つ大きなクッションが並べられており 更に、大きなソファーなどもある 眼を引くのは、やはり女の子らしく可愛いデザインでありながらも 超高級品の有名な職人の手作り1品物のアンテイーク調の純白の大きな三面鏡付きのドレッサー 毎朝ここで、真美は、由美に、ヘアーのブラッシングと、セットをしてもらっている。 それに、数々の名品のアンテーク調の家具など広々とした部屋に点在 実に豪華絢爛な部屋 周囲の壁 窓のカーテン、各種家具、備品は、女の子らしい可愛いデザインの物で統一されている。
 これらは、全て由美のコーデネイトであり趣味でもある。
 頻繁に由美がお気に入りのショップから次々と備品、家具、各種インテリアなど真美の為と称して購入し真美の部屋に設置 その数は増える一方。
 真美の部屋に購入した数々の品物を納入コーディネイトする時の表情は実に・・・・ 言いたくない・・・・ 真美の本音。
 はたして、この部屋にかかった総額は? 多分想像を絶する金額になるはず・・・・
 真美自身は、趣味など2台のPCと、本以外無い。 いやそれ以外許されていない。
 ここに並べられている本の大半は、氷室 拓真だった時代 6畳一間の安アパートにあった本で、全て処分の予定であったが、数少ない思い出の品と言う事で、処分を逃れ ここの本棚に移し替えた本であった。
 後 死んだ本当の生みの両親の数少ない遺品は、倉庫に丁重に大切に保管されている。 さすがに由美と言えども これらを勝手に処分は出来ない。
 少しでも年齢相応 年頃の女の子らしくする為・・・ と由美の言い分であるが、どうも真美を由美自身のオモチャとして扱いたい思惑が透けて見えているのは、決して考えすぎではない。
 本棚には、当初 数は少ないが、女の子らしく 各種ファッション紙や恋愛、ライトノベル、文学系などの小説などが並べられていたが、現在 各種ファッション紙、恋愛系は、どこかに撤去され(もちろん犯人は真美) 科学系の雑誌、科学の論文解説本、SF小説を中心に、多数整然と並べられており ここだけが、部屋の雰囲気とマッチしていない。
 それに、最新のゲーム機はあるものの ゲームソフトの数は、今時の女子高生としては、少なく ほとんど暇な時でも ゲームをしていない様子 未開封のソフトが、数少ないゲームソフトのほとんど占めている。
 よく真美の部屋に遊びに来る詩織と、ゲームを時々する程度で、自ら1人でいる時 ゲームをしている様子が無い。
 音楽CDも古い作品が多く 今 流行のアイドル系は皆無 1990年代までのロック系、洋楽系ばかり 特に、男時代からの大ファンの尾崎 豊の作品は、全て所有 よく可愛いネグリジェを着たまま ヘッドホーンを両耳に、 1人ぽつんと、何とも言えない悲しい表情を浮かべ、涙を流しながら聞き入っている。
 この時だけは、星沢 真美でなく 本来の氷室 拓真に戻れる そんな気がしていた。
 真美の個人的趣味の部分を除いても このプライベートルーム まさに、超大富豪、超セレブ、王侯貴族のケタ違いの贅沢の限りを尽くされた西洋のおとぎ話に出てくるロマンチックな深窓のプリンセス(お姫様)のプライベートルーム。
 実は、真美自身 この部屋の居心地が余り良くない まるで場と違いの他の女の子の部屋に感じている。

 午後13時30分を回った。
 今日は、朝からの晴天 心地よい春の日差しが、カーテン越しに部屋に注ぎ込み 快適 体調の悪さを除けば、良い1日であった。
 だれかがドアをノックする音が響く。
 近くにいたメイドの1人が、ドアに駆け寄る。
 なんやら短い会話。
 「真美お嬢様 ドアの向こうで、お友達のお嬢様方3名がお待ちだそうです どうされますか?」
 真美を見るメイド その3人は、彩、香、加奈だ。
 「部屋に入れて」
 「かしこまりました」 メイドは、ドアを開ける 彩、香、加奈の3人 真美の部屋に入るなり 3人共立ち止まり 唖然とした表情を浮かべ立ち止まってしまった。
 さすがに驚きの表情を隠せない。
 3人共 それ相応の良家のお嬢様 自宅のプライベートルームは、それなりに豪華であるはずだのだが、真美の部屋は、群を抜いている まるで別世界。
 「真美 今日学校休んだから 心配して、見舞いに来たのだけど・・・」 かなり驚きの表情の彩 彩自身 国内最高ランクの一条財閥の娘 かなり豪華なプライベートルームを持っている だが真美の部屋と比べれば、まるで一般庶民の娘の部屋に感じてしまう。
 実は、3人共 2階にある真美の部屋に入るのは初めて、何度か、この西洋の王侯貴族の宮殿と見間違うばかりの家に来ているが、今まで、通されたのは、1階のゲストルーム(客間)。
 3人共 落ち着かず 周囲ばかりキョロキョロ見渡し 余りの豪華さに眼を奪われている。
 同じ年齢の女子高生の部屋とは、とても信じられない。
 まさに、深窓のプリンセスのプライベートルーム。
 全て、女の子に取って憧れの それも重厚ながらもどこか落着き感がある木目を生かしたブラウンを中心とした超高級アンティークの逸品の数々 それに、相反する白と、ピンクを中心した可愛い現代風のまさに現代のプリンセス仕様のインテリアが、ものの見事に、広大な真美の部屋でマッチしている。
 「そんな所に立っていないで」 真美は、微笑みを浮かべ 上半身を起す すかさず近くにいたメイドが、真美に、シルクで出来たナイトガウンを羽織る 真美は、中央部にある 大きなガラスで出来た丸いテーブルを指差す。
 「そこに座って」
 3人は、真美の指示した丸いテーブルの可愛いゼブラ柄の大きなキューブタイプのクッションに腰掛ける。
 腰掛けると中央部が沈み込み 丁度背もたれ付きの座椅子の様なクッションになる。
 そして、彩は、持参した大きなビニールの袋をテーブルの上に置く。
 真美は、ベッドから立ち上がり室内用スリッパを履く まだ体調が完全ではない 少しふらつく。
 羽織っていたナイトガウンに袖を通し 前を結ぶ 慌ててメイドの1人が支えながら すこしふらつく足元で、ゆっくりと歩き出す。
 真美も 3人のいるテーブルのクッションの1つに腰を下ろす。
 部屋を見渡していた綾は、この部屋の何となくだが、異質な面に気付いた。
 確かに、今時の年齢相応の女子高生のプライベートルーム 他だし余りにも豪華絢爛 でも女の子らしく 数こそ少ないが可愛いヌイグルミやお人形などインテリア用ディスプレイの小物、置物などで飾られている。
 でもちょっとおかしい所がある。 真美らしいと言えば、それまでだが。
 ルックス、スタイルなどの外観から考えれば、別に違和感がないが、真美の性格から考えると、真美の性格は、時より見せる とてもあのルックス、スタイルなどの外観から想像もできないが、かなり年上 そう自分達の父親の年代の男の人のような 物事に対して、女の子らしい繊細さがなく、変に、無頓着で、ぶらつきぼうで、がさつな面を 自然に身に着け見せる時がある。 まるで、父親の世代の男の人に感じられてしまう。
 そう言う時 注意してあげると、慌てて赤面しながら直すのだが・・・・。
 とても不思議な感じでもある。
 このプライベートルームは、ルックス、スタイルなどの外観から考えれば、違和感がないが、性格から考えると妙に感じる。
 真美らしく感じられない。
 真美らしいと言えば、やはり本棚に並べられている数々の本 女の子らしい各種ファッション紙や恋愛系小説など見当たらない。
 あるのは、真美の好きな科学系ばかり。
 特に最初に眼につくのが、SF系の小説 高千穂 遥著書のクラッシャー・ジョウ シリーズのそのスピンオプであるダーティ・ペア シリーズ 20世紀最高のSF小説の1つと称される フランク・ハバード著書のデューン シリーズ、田中 芳樹著書 銀河英雄伝説、全巻 冲方 丁著書 マルドゥック・スクランブルなど それに、やはり真美らしく? 科学系の物理理論の本・・・ いや論文解説書? アルバート。アインシュタイン博士の特殊、一般相対性理論 光量子仮説、ニールス・ボーア博士を中心とした量子論の不確定性原理 コペンハーゲン解釈 リサ・ランドール ハバード大学教授著書のワープする宇宙―5次元時空の謎を解く、アレキサンダー・ビレンキン博士の無からの宇宙創生論など多数 普通 今時の女子高生など拒絶反応示し 絶対読まない・・・いや触れようともしない超難易度の高い本ばかり つい最近購入したと思われ新品の新刊本もあるが、大半は、
10年・・・・ いや20年・・・・それ以上に古い本ばかり 真美が生まれる前に、新品として購入したと思われる本が大半を占めている。 はたして古本屋で購入したのか? だが、古本屋で購入したと思われる形跡がなく 20年以上前 新品として購入し何度も繰り返し読み返されそのまま今に至っているとしか思えない。 その証拠に、ところところにしおりがはさんであり そこにはメモ書きが残されている 筆跡は、真美の字ではない 真美の字は、少し丸文字であるが、可愛い丁寧で綺麗な字を書く だがこの文字は、男の下手な書きなぐった様な文字。
 本当に真美には、謎が多い・・・・
 それに、マイルームに必ずあるはずのマイアルバムが見当たらない。
 今まで生きてきた成長記録の写真がない とても不思議な感じだ。
 棚に飾られている ガラスケース内の写真は、高校入学以降の写真が数枚。
 それに、収納可能な、大きな三面鏡付きの高級アンティーク調のドレッサー 世界1流の超高級コスメ、メイク品が整然と並べられているが、見た所 ほとんど未開封 全く使用された形跡がない。
 真美も女の子 これ程充実した世界1流の超高級コスメ、メイク品を取りそろえながら 全く使用していないなど、信じられない。
 確かに、メイクの必要性を感じない 絶世の美少女 すっぴんの方が、魅力的 でも女の子なら 少しはメイクに関心がある。
 綾自身 もう学校に行くにも、見つからない様 薄くメイクを施していく。 女の子なら当然のエチケット。
 でも真美は、全くメイクしていないし関心もない。
 いつもすっぴん。
 お肌を守るスキンケア用の乳液ですら ほとんど使われた形跡がない。
 確かに、バージンスノー、赤ちゃんの様な潤いがあり シミ、ソバカス1つない美白の柔肌 でも 今からお手入れをしなければ・・・
 こう言う方面 全く女の子らしくない・・・ 綾は真美の顔を見て思っていた。
 「ごめんなさい こんな格好で・・・」
 少しつらそうな表情を浮かべる真美 まだ体調が、完全ではない。
 「それより 真美 大丈夫?」
 彩が、心配そうに真美の顔を覗く 確かに昨日よりは、かなり顔色が良くなっている。
 「うん 昨日よりは、かなりいいみたい」
 確かに、昨日よりは、格段良くなっていた。
 「今朝 主治医に見てもらったけど 少しは回復しているって、言われたし・・・」
 「ところで原因は?」 加奈も聞く。
 「うーん 別に、これと言った原因が見つからないのよ 多分 極度の疲労が原因じゃないかと、言っていたし」
 実は、世界的に有名なスーバードクターでも原因が解からない 身体に、これといった原因がなかった。
 「これ 3人で、有名なホテル内にある ケーキ屋さんで買ってきたの お見舞い用に」
 にっこり微笑む彩。
 真美の目の色が少し変わる ケーキ 真美もこの辺は、年頃の女の子らしくなっている。
 甘いお菓子大好き。
 元々男だった時代 ケーキなど甘い物は、好きでも嫌いでもなく 出されれば食べる程度であったが、現在の姿に性転換、年齢退行した後 急に甘党になった。
 甘い物は別腹・・・
 学校帰りの部活 帰宅部恒例の憩いの時間 別名 ただの寄り道で、部室化している 大型ショッピングモールのグルメゾーンで、詩織と、ポテチやドーナツ、ケーキなどを良く食べている。
 近くにいたメイドを呼んで、ケーキを皿に盛ってもらい 紅茶も頼む。
 仲良し4人で、ワイワイ、ガヤガヤが始まる。
 女同士のおしゃべり 全く終点がない 真美は、いつもの通りほとんど聞き役であったが、やはり体調が完全ではない。
 少しつらそうな表情を浮かべながらも 笑みを浮かべていた。
 16時近くになった。
 彩が立ち上がる 今日 これから1度自宅に戻り 18時から某高級ホテルのフロアーで行われる 3年生の卒業パーティに、クラス代表の1人として、出席しなければならない。
 もちろん正式なパーティに付き 彩は、ドレスアップ。
 同時に、香も加奈も立ち上がる。
 「真美 明日 大丈夫?」 彩が聞く。
 「この調子ならば 多分 明日 学校へ行けると思う」
 「真美お姉様がいないと、学校 まるでお通夜」 にっこり微笑んで言う香。

 翌日 体調がかなり良くなり学校へ向かう。
 クラスメイトを始め 全校生徒 ほっとした表情。
 20日の終業式も出席 無事1年生を終え 4月から2年生に進級。
 短い春休みを迎える。




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