LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)

 外伝 衝撃の結末

 Last Baby


 キャラン(浩司)が、エルにより拉致された最愛の彼女 みなっちを取り戻す為 宇宙へ旅立って、約80年後 未だ地球に、みなっちを取戻し帰還していなかった。

 この時点 生体兵器ネクストノイドとの人類の未来を賭けて戦い、突如その存在を明らかにした、かって我々人類が、神々などと呼称したエルによって拉致された最愛の彼女 みなっちを 取り戻す為 宇宙へ旅立ったレジェンスの融合者であるキャラン(浩司)の存在は、もはや過去の存在であり この時点生き延びた人々にとって、遠い過去の 忘れられた存在となりつつあった。
 人間の寿命は、およそ地球標準時間で、100年程度であるが、キャラン(浩司)は、この宇宙を始め無数の宇宙を生み出し続ける驚異の無限のポテンシャル・エネルギーを持つ "無" が無を生み出し2つに分離したレジェンスの1つと融合しており 永遠に不老となっていた。 他だし不死ではない。
 この時点 キャラン(浩司)の消息、生死は、不明であった。

 実は、キャラン(浩司)は、まだこの時点生存しており 遥か遠くの そう約1000億光年を超える彼方で、エルのその頂点に君臨する もう1つのレジェンスの融合生命体 EBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)である "ヤハヒム"が、次々と送り込んでくる刺客との長く、永遠とも思える壮絶な戦いを強いられていた。 エルによって奪い去られた最愛の彼女 みなっちを 取り戻す為に・・・・


 その頃地球では、未曾有の大災害が、頻発していた。
 その模様は、まさに世紀末 この世の終わりが来たのかさえ思わせる状況であった。
 今まで、何とか安定していた氷河期と、氷河期の間の間氷期と言われる 地球の歴史上 割と温暖な気候が、急激な勢いで、激変し始めていた。
 突如 気温が、40℃を超える猛暑になったと思えば、数日後には、−40℃を下回る。
 ある地域では、通常 夏の気候のはずが、寒波が襲来 真冬になったり 両極地域が、赤道直下の真夏並の気候が、何年も続き それが原因で、永久氷河が解け出し 海水面を急上昇させ 世界各地の低地は、海面下となる・・・ など・・・・・
 元々活火山のない地盤が古く安定した地域に、突如 複数の活火山が、それもある規則性と、方法性を持って連なり大噴火 その巨大な噴煙は、成層圏に達し地球を覆い尽くす。
 ある複数の地域では、何年間も 数ヶ月毎に、M(マグニチュード)9クラスの歴史上最大規模の巨大地震が頻発 震源地を中心に、広い範囲で、震度8 実は震度8を超える超巨大地震が、続発 地盤が大きくいくつもの複数に裂け 広がり始めるなど・・・・
 上げたらキリが無い程の異常な状態が続いていた。
 いったい どうなるのか? それはだれにも解らない。
 このまま続けば、更に、温暖化が加速し、最終的には、数億年後以上先には、CO2(二酸化炭素)など温室効果ガスの暴走により高温化した金星にようになるのか?
 また急速な寒冷化により 最終的には、過去2度以上あったとされる スノーボールアース(全地球凍結、雪球地球、全球凍結)による地球全体が、赤道付近を含め完全に、氷床や海水に覆われ氷付いた状態になるのか?
 更に、全ての水が蒸発 ゴツゴツとした岩と、砂漠だけの 月面、火星、水星などの生命が、かって存在したのか? さえ思える程の生命の存在しない死の惑星となるのか・・・・
 今 まさに、地球規模の過去数例しかない短時間による 環境の激変が始まっていた。
 それがもたらすものは・・・・・

 答えは、だれにも解らない。

 数千万年先か、数億年後の結果のみ。

 だが、それらを観測、研究する為のハードウエアーとしての最新のテクノロジーの粋の結晶である高度な、宇宙空間からデータ観測する人工衛星を始め各種観測機器は、全て失われており 観測、研究は、不可能であった。

 エルのUFOの大船団の総攻撃により ほぼ壊滅状態に追い込まれた人類。
 かって、進化出来ないホモサピエンス・サピエンス(旧人類)と、蔑まされた方が、生き残り 進化したネクストノイド(新人類)と、自ら豪語して方が、エルによるある種 テレパシーにより 額のネクスタルが、自爆 絶滅の憂き目あった。
 より進化した生命の方が、勝利者として生き残る・・・・・ ではない。
 地球の生命の歴史は、勝者の歴史ではなく、敗者に甘んじてきた生命の歴史である・・・・

 かって、8大将軍の1体 龍(ロン)の秘密孤島基地で、エルのオーバーテクノロジーの産物 反物質反応炉が、暴走 メルトダウンを起こした事件。
 これが、地球の内部に想像も出来ない程の大きな影響を与えていた。

 地球内部 地表のプレートの1部が、別のプレートの下部に沈み込みスラブとなる。
 スラブは、地球の重力により ゆっくと、着実に、コールドプルームとして 上部マントル、下部マントルを抜け、アウターコア(外核)に向かって沈み込む。
 沈み込み始めたスラブは、やがて、周囲のマントルの温度より 相対的低温状態のメガリスとなって、アウターコア(外核)の表面に達すると、そこで、急激に暖められ スーパープルームとなって、その蓄えられた強大な力は、上昇を開始 地表に達する。
 これにより マントルの対流が起こり 何枚もの地表部分にあたるプレートを動かす。
 これが、有名な大陸移動の起こす原因のプルームテクトニクス(かっては、プレートテクトニクスとも呼ばれていた)理論。
 マントルの対流であるプルームテクトニクスによるプレートの移動速度は、年間数cm程度。
 だが、反物質反応炉の暴走に伴う 巨大なエネルギーを持つメルトダウンは、地球内部にある いくつかのスーパープルームに、巨大なエネルギーを与えて、かってない規模のエネルギーを持つに至り暴走。
 有り余ったエネルギーは、地表に向かって、そのエネルギーを放出 プレートの移動速度を 年間数cmから 信じられない事に、数kmに速めてしまった。
 それが原因となり 地表各地 無数の火山の大爆発 プレートの移動による 地殻のストレスが、瞬時に限界を超え 大地震の続発、更にプレートが、年間数kmも移動する事に伴う 地球の気候を一定の範囲で、調整する海流が狂い 各異常気象の続発、磁場の異常 世界の至る所で、オーロラが観測 バン・アレン帯の異常により 今までほぼ遮断されていた 宇宙からの有害で生命に死をもたらす危険な、太陽からのから降り注ぐ太陽風の地表到達 まさにこの世の終わりが来たのではないか? と思わせる程の大自然災害が続発。
 この状況 今から約2億5000万年前 全地球の生物種の90〜95%を絶滅させた あの地球の歴史上最大級と言われるペルム紀末の大量絶滅 地層年代上 P-T境界の再現を思わせる程であった。
 いや あの時よりも更に深刻であったかも知れない。

 ペルム紀末の大量絶滅の原因は、巨大なエネルギーを持つマントルプルームの上昇流であるスーパープルームの地表到達により発生した大規模な火山活動が原因だと考えられ その証拠は、ロシア、ウラル山脈東 シベリア・トラップと呼ばれる中央シベリア高原を中心として広がる洪水玄武岩。 約100万年以上もの間 大規模火山活動が続いたと推測されている。
 この大規模火山活動により環境が、激変 当時30%を超えていた大気の酸素濃度は、10%以下に減少 他にも多数の関連した原因により当時生息していた全地球の生物種の90〜95%を絶滅。

 地球は、生命に取って、決してやさしい"揺り籠"ではない。
 常に、地球上の全生命、生物種に対して、凶暴なキバを剥き出しに、襲い掛かってくる。

 この未曾有の大自然災害に、地球上の各地に点在 細々と太古の生活であった狩猟と、農耕、僅かながらの牧畜の生活を余儀なくされた残り3億人を切った人類は、全く対応が出来なかった。
 地球上の各地 細々と点在する各集落に身を寄せ合い 互いに助け合いながらも ここまで何とか生き延びてきた。
 その間 多くのかけがえのない仲間を失い 人口は、減少一途を辿っていた。
 この時点 総人口が、遂に1億人にも満たない程 激減の一途を辿り 絶滅の危機に瀕していた。
 エルのUFOの大艦隊からの総攻撃で、生き残った人類は、生存可能な領域で、点在 そこで、小さなコミニティーである小さな数十人程度の集落を形成した。 最初の頃は、各集落間を危険を伴いながらも何とか往来していたものの この頃になると、各記録を常に更新する様な天変地異の続発により往来が難しくなり細々とした互いの交流が、閉ざされ孤立化してしまった。
 まさに、軍事上の戦術の1つ 各個分断 各個撃破。
 かって、太陽系内の果てまで、人工衛星を飛ばす程の高度なテクノロジーを誇った人類であったが、エルのUFOの大艦隊からの総攻撃で、全てのテクノロジー、文明などを失ってしまった。
 知識こそ、ある程度 減る一方であったが、新しく誕生した世代に受け継がれていたが、それを実現、運用する為の機械と言うハードウエアーを作り出す事が出来ず ただ自らの無力さだけを漂わせていた。

 核兵器など大量殺戮兵器を多数保有していた、21世紀前半まで、想定していた 全面核戦争後の核の冬よりも 更に深刻な状況化であった。

 そして、この荒れ狂う環境の中 人類の生命の定義では、生命と認められていない 常に、テクノロジーの進歩と共に、駆逐の対象されていたウイルスが、自己進化、増殖の異常な速さを武器に、細々と生きながらえていた人類に 猛威を振るい始めた。
 まさに、絶滅の危機に瀕していた人類の最後の刺客であるターミネーター(終結させるもの)であった。
 そんな状況下で起きた ある女性の運命。


 1時間数百mmを遥に超える猛烈な記録的ゲリラ豪雨。
 まるで、巨大な水瀑量を誇る滝つぼの中にいるのかと、錯覚を覚えさせる程の強烈なゲリラ豪雨。
 極端に変化する天候、環境 もはやなすすべがない状況化。
 頻発する これも記録的巨大地震・・・・・
 かって我々人類が、神々などと呼称した エルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)によるUFOからの総攻撃で、人類は絶滅の危機に瀕した。
 ようやく神々などと呼称する物の真の正体を知った生き残った人類は、神々などと呼称する邪悪な俗物以下 同じ邪悪な俗物以下の宗教など呼称する物に、数千年の長きに渡り騙され続けてきた事に気づき、ようやく全てを捨て去るに至った。
 ただ 大自然に対する素朴な気持ちだけは、細々と持ち続け受け継がれていたが・・・・・

 もしこの時点 神々などと呼称する邪悪な俗物以下 同じ邪悪な俗物以下の宗教など呼称する物を熱心に信じる者がまだいたならば、この状況を オールドバイブル(旧約聖書)などと呼称する物の中に、描かれている 大量殺戮 まさに人類全てに対するジェノサイド 人類が、大いなる罪?????????・・・・・・・ を犯した? 報い? によって、神々などと呼称する物に罰せられる?(単なる大量虐殺?) ノアの大洪水などと呼称する物の再来・・・・ と叫んでいただろう。
 確かに、かって我々人類が、神々などと呼称した エルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)によるUFOからの総攻撃で、人類は絶滅の危機に瀕した。 それは、実験用生体兵器として開発途中で放棄された生物の子孫である我々人類の 言わば もはや利用価値の無くなった不要物のゴミの処理 前回約1万2000前に、地球規模の環境変化させ 当時最後の氷河期と呼ばれていたが、急激な温暖化による気象、環境の激変を利用 最終処分を試みたが、1部のエルの反乱により 完全殺傷処分による絶滅は、失敗 1部生き残ってしまった。 それが今のホモサピエンス・サピエンスと呼ぶ現生人類。
 それから約1万2000年後 人口を70億人を超える程 大繁殖し 更に、まだ原始的、初歩的であったが、宇宙進出が出来る程の科学、技術などのテクノロジーを持つにいたった かっての生体兵器用に改造された生物の子孫である人類に対して、将来の脅威を感じたのか? もう1度 自ら持つ驚異のオーバーテクノロジーを 更にケタ違いに進歩させていたエルは、その圧倒的オーバーテクノロジーにより生み出された火器兵器 つまりエネルギー砲、ビーム兵器などを総動員 もう1度 実験用に生体兵器として開発途中で放棄された生物の子孫である我々人類の 殺傷処分による絶滅を試みた。
 前回の約1万2000年前よりも更に徹底的に。
 だがそれでも 僅かながらも約3億人以下まで、僅か数分間の一瞬の出来事であったが、生き残った。
 ここまで、激減させれば、当面の危機どころか、残された道は、短時間での滅亡と思ったか? 地球から撤退した。
 決して、宗教などとほざく邪悪な俗物以下の言う 大いなる罪・・・・ ではない。
 我々人類を ただの実験用の生物としか見ていない 我々人類が、神々などと呼称した エルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)による改造主の都合 ただそれだけであった。

 神々など呼称する邪悪な俗物以下に、人類に対する いや地球上の全生命に対する生殺与奪の権利など、与えられていない。
 もし与えられている物があるとするならは、それはまさに宇宙の大自然のみ。
 だが、この時点 その様な程度の悪い戯言をほざく低能以下は、もはや存在してはいなかった。
 もしいたとしても僅か数名程度 未だ程度の悪い自己マインドコントロール(精神支配)から抜け出せない 逆に哀れ? としか思えない人間としての価値を失くした人であっただろう・・・・

 複数の地球の歴史上記録的エネルギーを持つスーパーホットプルームにより 年間数Kmにも及ぶ極端なプレートの移動 地球の気象環境を一定に保つ役割をしていた海流が、常に、極端に変化 常に荒れ狂う記録的巨大地震共に、地球環境の極端な変化が続いていた。

 いった、どこへ向かっているのか? その終着点は?


 激しい降りしきる記録的ゲリラ豪雨の中、粗末な小屋の前に、1人ドアを叩く女性 このゲリラ豪雨の中、何度も倒れそうになりながらも必死の思いで、ここまでたどり着いていた。
 「お願い・・・・ お願い・・・・」 必至に助けをこう声を上げている。
 ずぶ濡れになった粗末な衣類・・・・ そこから良く目立つ大きな腹部。 そうこの女性は、妊娠していた。 それも今にも張り裂けそうな大きな腹部 どうやら臨月を迎えている。
 だが、妊婦にしては、大きな臨月を迎えた腹部以外余り妊婦特有の身体全体が、丸みを帯びていない。
 手足など、かなり細い・・・ いや痩せ細っている。
 どう見ても 外観を気にして、無理して痩せているのではなさそうだ。
 余り栄養状態が、芳しくない様に感じる。
 僅か十数人の小さな集落。 全員似た様に、痩せ細っていた。
 それも そのはず。 食用農作物が、耕作可能な僅かな耕作地も 余りの天候、環境の激変が続き、収穫物が減少していた。
 近くの小さな森林も同様 草木が枯れ始め そこに生息する野生動物も減少を続け、1部絶滅した野生動物もいる程。
 まだ飢餓状態とまでは行っていないが、かなり食糧状態が、緊迫していた。
 それと、かっては、物々交換をおこなっていた 他の集落との交易も 天候、環境の悪化などで、途絶えていた。
 その他の複数の集落も 今 はたしてそこに、人が住んでいるのか?
 それすら知る術もなかった。

 「赤ちゃんが・・・・ 赤ちゃんが・・・・ 生まれそうなの・・・・・」
 必至の声を上げている。

 「・・・・私の事なんかより お腹の赤ちゃんを・・・・」
 必至に懇願を続けている。
 女性の名前は、ルイ この僅か数十人の小さな集落 唯一の妊婦。
 お腹の子の父親は、もはやこの世には、存在しない。
 数ヶ月前 猛威を振るう新型の最強のウイルスに感染 初めての我が子の顔を見る事なく 感染後 僅か数時間後に死亡していた。
 たった1人 この世で最も愛した男の唯一の忘れ形見となったお腹の 初めての赤ちゃん。

 今までに、頑なに拒否する様固く閉ざされたドアが、静かに、少しだけ開く。
 そこからは、このやつれた 多分年齢以上に、老け込んだ まさに老婆が、顔を覗かせる。
 だれもが、生き残るのに必死の状況下であった。
 想像を絶する苦労が、その年齢以上に老け込んだ、顔に現れている。
 そして、この粗末な小屋の持ち主は、この集落唯一の医者の家であった。
 妊娠が解ってからは、ルイは、定期的に、この医者に診てもらっていた。

 「ルイさんね・・・・・」
 何か悲しみにくれ もはや絶望のどん底に落とされた深く沈み込んだ声であった。

 「は・・早く お医者さまに・・・・」

 「ごめんなさい 息子は、先程・・・・・」
 声を詰まらせるうつむく老婆。

 そう この医者も 最新最強の自己進化を 僅か数回の細胞分裂で行う 超致死性のウイルスの1種に感染 僅か数時間で、返らぬ人なっていた。
 死亡したのは、今から数時間前。

 21世紀前半まで続いた テクノロジーのミラクル(奇跡)と思える驚異の進歩 その1つが、驚異的医学の進歩であった。
 人類を常に、絶滅の危機に追い込んでいた病原体の正体が、ウイルスだと知ると、日進月歩の勢いで進歩する各テクノロジーを総動員 対抗ワクチンを次々と開発 だが、ウイルスも負けていなかった。 多種多様性を持ち DNAか、RNAの片方しか持たず、その他の理由により生命と定義されないウイルスであったが、自己進化のスピードアップと言う方法で、人類が開発したワクチンに対抗 僅か数回で、自己のDNAもしくは、RNAを変化させ抵抗力を身につけ 新たに開発された新型ワクチンに対抗した。
 そして、新たに獲得した抵抗力は、更に、人類に取って、致死性を高める結果をもたらした。
 だが、エルのUFOの大船団の総攻撃により ほぼ壊滅状態に追い込まれた人類は、同時に、全ての文明、テクノロジーをも同時に失い。 対抗手段を失ってしまった。
 その隙を突き ウイルスは、異常と思える自己進化のスピードを武器に、何ら対抗手段を失った人類に対して、まさに総攻撃ほ開始した。
 ウイルスと言え その生存及び、自己進化のホスト(宿主)となる人類が、絶滅すれば、自らも絶滅をもたらすのはずなのだが・・・・

 「そ・・・・そんなあー お医者様が・・・・ 死んだ・・・・・」
 顔が青ざめ、何もかも理解出来ない表情を浮かべるルイ。
 もう何をどうして良いのか・・・・ もう陣痛が、徐々に強くなり その間隔も短くなってきている。 もうすぐ生まれる。 母親となる女性の本能が伝えている。
 だれの手も借りず、出産など・・・・
 それに、もうすぐ破水が始まる兆候を見せていた。
 一刻の猶予を許さぬ状況。

 途方にくれるルイ。 そんなルイを見て、さすがに哀れに思ったのか? 子を産んだ経験のある老婆である。
 唯一の息子であった医者を 数時間前に失くしたばかり、でも目の前にいる女性は、今 新しい生命を誕生させようとしている。
 同じ女性として、母親として・・・・
 意を決した表情をルイに向け浮かべる。
 「私が、赤ちゃんを・・・・・」 強く微笑みを途方にくれるルイに向け浮かべる。

 数時間後・・・・・・
 難産であった 全身汗が噴き出る。
 「さあー 力んで・・・・」
 老婆の掛け声。
 「赤ちゃんも 必至に生まれようとしているんだ、母親ががんばらなくてどうする・・・・」
 叱咤激励を何度も繰り返す。
 お産の手伝いは、医者であった息子の助手として、何度かした しかし自らの手で生まれてくる赤ちゃんを取り上げるのは、初めての老婆。
 自らのお産の経験を思い出しながら必死に声をかける。

 「もうちょい・・・・」

 暫くの静寂。
 ちょっと弱々しい だが・・・・ 間違いない 聞こえる 確かに聞こえる これは産声。
 ルイの耳に、少し 直ぐ近くなのに、少し遠くに離れている様に感じる
 「ようがんばった・・・・・」
 老婆の安堵に満ちた声が響く。
 まだへその緒がついた小さな 本当に小さな生命 直ぐにでも消えてなくなりそうな程の小さな生命 初めて見る我が子。
 「ほれー 可愛い女の子じゃ」
 安堵と、喜びに満ちた笑顔をルイに向け 生んだばかりの赤ちゃんを母親になったルイに見せる老婆。
 老婆の声に、何故だか涙が、自然に溢れ出し止まらない。
 自ら生み出した新たな生命 永遠に続くとさえ思える生命の継承・・・・ ある人の話を思い出した お産は、女性にしか味合う事の出来ない人生で最良の経験だと・・・・

 ちょっと弱々しい産声を上げ、無事赤ちゃんが生まれた。

 女の赤ちゃんであった。
 出産直後 全身 大量の汗をかき体力を大きく消耗したルイ。
 でも産湯につかり 清潔に布にまかれた初子を抱きしめた時 初めて母親になった実感がわき起こった。 安堵の表情が自然と浮ぶ。
 両手で抱きしめた小さい・・・・ とても小さい生命 でも私の生んだ赤ちゃん・・・・・
 想像よりも 少し小さい・・・・ いや未熟児とは言わないが、少し小さく感じた。
 でも私の産んだ赤ちゃん 自然と笑みが浮かぶ。
 初めての母親らしい 笑みを誕生したばかりの我が子に向け浮かべる。
 最も母親らしい、我が子を愛おしむ笑みであった。
 まだ泣き続ける我が子を見つめ 「新米ママよ よろしくね あなたをちゃんと育ててあげるからね・・・・」
 生まれたばかりの我が子に、やさしい母親らしい笑みを浮かべ語る。
 この子は、どんなことがあっても 私が育ててみせる・・・・・
 まだ泣き止まぬ我が子に対して、強く決意する。
 この子の未来の為に・・・・

 だが、ルイも老婆も いやだれもが決して知ることがなかった。 絶滅の危機に瀕した人類の この赤ちゃんが、最後の希望であった事を そうそれは、この赤ちゃんが、絶滅しかけていた人類に取って、最後に生まれた赤ちゃん Last Babyであった事を。


 そして数ヶ月が過ぎたある日・・・・・
 粗末な小さな木で出来た箱を 両手で包み込み またも記録的ゲリラ豪雨の叩きつける中を 必至にある場所に向かい、足元を弱々しくふらつかせ歩く1人の女性。
 今にも倒れそうになるが、必死に耐える。
 少し長く伸ばした髪は、ゲリラ豪雨で、濡れ乱れ 着ている粗末な衣類もずぶ濡れであった。
 その表情は、もはや生きる望みを失った様に、深く沈んでいた。

 そう この粗末な小さな木で出来た箱 その中身は、変わり果てた我が子の亡骸が、丁重に収められていた。
 食糧事情は、更に悪化 ほとんど何も食べる物もなく、ルイは、やつれていた。
 日々狂ったように極端に変化する自然環境 僅かに残る耕作地には、全く食糧となる農作物は、ほとんど生育せず、雑草すら生えない。
 ただ荒れ果て砂漠化の一途を辿っていた。 その為 家畜の放牧も不可能となっていた。
 周囲を取り囲む僅かな森林も 日々減少を早め消失 狩りの獲物となる野生動物も 減少、絶滅。
 その為 食糧事情は、日々悪化の一途を辿っていた。
 ほとんど何も食べる物がなくなり ルイは、日ごとにやつれていった。
 その為 赤ちゃんの唯一の生命維持、成長に必要な母乳がほとんどでなくなり 痩せ衰える我が子 最後に、抵抗力を全く失くした我が子に、最新最強の超致死性のウイルスの1種に感染 その幼き生命を奪い去った。
 僅か数ヶ月の生命。

 ある場所にようやく到着 周囲より少し小高くなっていた丘の頂上 棺代わりの粗末な木箱を傍らに置き、一緒に持っていた木の棒で、土を必死に掘り返し始める。
 少し掘り起こすと、そこに大量の雨水が貯まる。
 今度は、それを両手で必死に貯まった雨水を 周囲に汲み出す。
 そして、また掘り始める。 その作業を何度も繰り返す。

 ようやく棺代わりの粗末な木箱が、土の中に埋められる程の穴が完成する。
 丁度 先程まで降り続いていた記録的ゲリラ豪雨も 今は、小康状態。
 出来たばかりの穴に棺代わりの粗末な木箱を収める。
 最後のお別れ 蓋を開け そこに眠る変わり果てた 痩せ細った2度と目覚めぬ我が子を抱き上げ 必死に抱きしめる。
 「ごめんなさい・・・・ ごめんなさい・・・・・ ごめんなさい・・・・」 なんども繰り返す。 言葉では言い尽くせない余りの悲痛に、今にも発狂してしまいそうであった。
 このまま発狂してしまった方が、どれくらい楽であろうかと、思える程に。
 朽ち果てる事のない 大粒の涙が、流れ落ちる
 「・・・・あなたを ちゃんと育てると約束したのに・・・・ 私は、悪いママ・・・・」
 「・・・・こんな悪いママ 許してくれる・・・・・」
 声が詰まる 涙声。 心痛。

 「・・・・あの世で、いい子にして、大人しく待っててね 私も直ぐに、あなたの元へゆくからね・・・・」
 少しだけ母親らしい笑みが浮かべる。

 「私も あの世に行ったら ちゃんとあなたを育ててあげるから・・・・・」
 そう言い残し 変わり果て、2度と目覚めぬ我が子を棺代わりの粗末な木箱の中に、丁重に寝かせ 蓋をする。
 「・・・・・」
 我が子の名前を呟きながら 我が子に向け微笑む。


 それからまた数ヶ月後。
 またも降りしきる記録的ゲリラ豪雨。
 上空から降り注ぐ水滴は、まさに、生きる生命全てを その終焉を迎えさせる為に、降りそそぐ死の銃弾如く叩きつける。
 その生命を奪い 水滴となって流し落とすかの様に。

 そんな叩きつけるゲリラ豪雨の中 ずぶ濡れなり おぼつかない足元 木の棒を杖代わり 何度も倒れ 杖を使い何度も立ち上がる。
 着ている粗末な衣類は、ドロで汚れながらも 目の前に近づく少し小高い丘に向かい ヨレヨレになりながらも1歩 また1歩・・・と歩を進める。
 倒れ・・・・ 起き上がり・・・・
 もはや生きているのか? とさえ思わせる程 ひどく痩せ細り やつれていた。
 骨の上に、僅かに皮膚だけが、変色した状態で、覆いかぶさっている・・・・ としか表現出来ないほど・・・・

 そうこの女性は、あのルイ。
 向かっている先にある少し小高い丘には、2度目覚める事の無い 愛おしの我が子が眠る場所。

 最後の力を振り絞り ようやく墓石代わりに置かれた小さな石の前にたどり着く。
 もはや 最後の力を使い切ってしまったのだろう・・・・
 力なく前のめりに倒れる。
 もう2度 立ち上がる力はない。
 そのまま墓石代わりの小さな石に向け、微笑みを浮かべる。
 「・・・・・ ・・・・・ ・・・・・」 何度も 何度も我が子の名前を 弱々しい今に消え入りそうな声で呼ぶ。

 「ちゃんと いい子にしていた・・・・」
 少し微笑む。
 何も返事などない 聞こえるのは、爆音と思えるような激しいゲリラ豪雨の雨音。

 「これから ママもあなたのいる所へ行くわ」
 やさしい、我が子に語る母親の声。

 「ちゃんと 育ててあげるからねー」
 我が子に対する母親の 最後の愛おしむやさしい限りない愛情に満ちた微笑みを浮かべる。

 愛情に満ち溢れたやさしい笑顔であった。
 そして、ルイも2度と目覚める事は、永遠になかった・・・・
 ただ激しい記録的ゲリラ豪雨だけが、2度と目覚めぬルイの冷たくなった身体を いつまでも、まだその生命を奪おうと、激しく叩きつけているだけ。

 だれ1人 ルイを埋葬しょうとする者はいなかった。 ルイが、その集落で、最後の1人であった。
 そして、十数年後 地球から人類と称した 生物種は、永遠に絶滅した。
 まさに、エルの望んだ最終処理が、完結した。
 それは、エルによる・・・・ ではない。
 確かに、70億人を超える人口数を3億人以下に減らしたのは、エルのUFOの大船団による全地球に対する総攻撃であったが、それは、人類滅亡へのトリガー(引き金)に過ぎなかった。

 最終的には、やはり地球の歴史上 過去最低6回 現在7回目と言われる 短時間で、極端な環境変化による 対応出来なかった生物種が絶滅する 生物種の大量絶滅であった。

 後に、この期間に起きた大量絶滅を "完新世末の大量絶滅" と呼ばれる事になったのを 人類のだれ1人として知る者はいなかった。


 自ら多種多様化 多様性を捨て、1種1亜種しかいなくなった人類 驚異のテクノロジーを入手と引き換えに、周囲の環境を自ら生存に適した閉ざされた一定範囲で、コントロールされた人工空間へと逃げ込んでしまった。
 つまり環境の急激な変化に対応する能力を失っていた。
 その為 驚異のテクノロジーの全て失い、人口も激減 環境が激変する中 全く対応出来ず、絶滅の一途をたどる以外 何も出来なかった。
 この未曾有の危機を 乗り越え事が出来なかった。

 この危機的状況は、数千万年も続き 地球の時間、歴史から考えれば、ほんの一瞬でこそあったが、7回目の生物種の大量絶滅と呼ばれる事となった。
 完新世末の大量絶滅。


 この危機を乗り越える方策はなくもなかった。
 やはりあのレジェンスの融合者であった キャラン・サンダンス 地球名 和田 浩司であった。
 戦略家としての資質を育む浩司は、ある予言めいた事を かなり前から考えていた。
 ただ遠い未来の事・・・・ と思い 全く実行する気もなかった。
 何よりもリーダー性に欠け、1匹狼の資質を育んでいた浩司には、実行は、不可能であったかも知れない。

 その方策とは・・・・

 浩司が、考えていた通り 複数種の人類を生み出し、多種多様化、多様性を持つ複数種の異なる人類の共存を図るぺきであったかも知れない。
 何よりも激変する環境にも耐える事の出来る人類を・・・
 もしくは、浩司の基本戦略構想の1つであった 人類の1部を宇宙へ進出させ、中長期無重力状態に、対応、適応出来る スペースノイド、もしくは、アストロノイドと言うべきか? 新たな種としての人類を人工的に生み出しておくべきであったかも知れない・・・
 浩司が、残していったPCには、複数の基本戦略構想が、書き残されていた。 その中の1つに、"プロジェクト・エクソダス" と言う基本戦略構想があり 宇宙進出における種としての進化について、事細かく記されていた。
 他だし 浩司は、生物種の大量絶滅は、早くとも数千万年以後だと考えていた。 その間に、人類は宇宙進出を果たし スペースノイド、もしくはアストロノイドと言うべきか? 中長期無重力状態にも適応出来る種として、人工進化を達成し 更に異なる環境に適応出来る様々な生物へと進化し、この銀河系もしくは、複数の銀河系へ進出 至る場所で、生存、繁栄している事と思っていた。
 まさか? この時期に起きるとは、予想すらしていなかった。
 レジェンスと融合している浩司と言えども万能ではない。
 みなっちを追って、宇宙へと旅立った浩司は、この未曽有の危機を 全く知らなかった。 知る術も無かった。
 異常気象の多い時代に、生まれ育った浩司は、当時問題となっていた CO2(二酸化炭素)の大量放出による環境悪化が、原因と考えていた。 続発する火山の爆発、巨大地震の多発も 活動期を向かえたに過ぎず、 しばらくすれば収まると思っていた。
 頻繁に起きる天地災害や異常気象など、気にはしていたが、対ネクストノイドに、全力を傾け 最後に、最愛の恋人みなっちをエルによって、奪い去られ 浩司は、そこまで、思考を回す余裕、状況ではなかった。
 もし気づいていたならば、何らかの対策を 基本戦略構想にまとめ、実現の為に努力したであろう・・・
 しかし この状況下では、実現不可能であったが・・・ もはや手遅れ状況まで、追い詰められていた。
 全てのテクノロジーや、多くの人口を失った人類は、この未曽有の危機を乗り越える力を完全に失ってしまっていた。
 かってのように、人類を宇宙へ送り出す、高度なテクノロジーなど、この時点 すでに永遠に失われていた。
 まさか、龍(ロン)の日本最大拠点であった 孤島基地の反物質反応炉の暴走による大爆発が、トリガー(引き金)となり 複数のスーパープルームが、地球内部に発生 その巨大なエネルギーは、出口を求め地表へと向い、約2億5000万年前の、ペルム紀末の大量絶滅の再現になるとは、夢にも思っていなかった。
 原因は、人類自らの愚かさが生んだものであったが・・・
 もはや人類は、滅亡への運命を 転げ落ちていたのかも知れない・・・ 種としての寿命の限界に達していたのかも知れない・・・
 種として、次の時代に、生存する 極端な環境の変化に、適応出来る能力を自らの手で失ってしまっていた。
 周囲の環境を 自らの生存に適するように、改造を加え 自ら作り上げた人工環境にしか適応出来ない、極めて適応範囲の狭い 脆弱な生物種になってしまっていた。
 それでも、地球の全生物種が、失われた理由ではない。 約30%もの生命の種が、この未曽有の破滅に耐え 生き延びた。
 やはり 生命が生き残る為の基本戦略 種としての多種多様化、多様性が、功を奏した。
 やがて、新たな環境に適応出来た 生命の種は、空席になったニッチ(生態的地位)を埋めるべく、生き延びた生物による急激な適応放散による種のビックバン(大爆発)を起し 多種多様化 分化、進化し かって以上の繁栄を取り戻すだろう・・・
 そこから 新たな種としての知的生命体も誕生するかも知れない・・・ その新たな種としての知的生命体が、人類の様な愚かな事を起さない事を祈るばかりである・・・
 そして、数千万年・・・ いや数億年後・・・? その新たな種としての知的生命体が、かっての地球に起きた歴史を調べ 地球には、生命誕生後 最低7回以上は、種の大量絶滅を繰り替えしている事を知るだろう。
 そして、最新の種の大量絶滅は、完新世末の大量絶滅と呼ばれ、原因不明のスーパープルームによる 約70%の生命の種が失われた出来事として、記されるであろう。
 その時代に生存し 絶滅した 人類と称した生物種が、自らの愚かさゆえに、犯した愚かさまで知る事も無く・・・


                                                    THE END



 PS
 後書き

 作者です。
 まあー お得意と言うか? ディストピアの世界観の短編小説です。
 本編でもくどくど書いていた生物種の大量絶滅 レジェンス エピソード1の 基本構想の1つでしたので、その後人類の運命を 1人の女性をヒロインに描いてみました。
 当初2本で描く予定でしたが、重複する部分が多く、1本にまとめ短編化。
 これが、レジェンス エピソード1の もう1つの結末 まさに、衝撃の結末・・・・ ちょっと大袈裟ですが。
 自ら生み出した驚異のテクノロジーによる 自らの生存に適した一定範囲内の人工環境しか適応出来なくなり、1種1亜種しかいなくなり 多種多様化、多様性を失った人類の未来 はたしてどうなるか?
 作者として、非常に危惧しています。

 人類自ら称する "英知" 今からでも遅くありません 総動員すべきでしょう。
 いつの日か訪れる 極端な原因多数有の環境の激変による大量絶滅を生き残る為に。


                                                            THE END


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