LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 放浪 Part9

 互いに、言葉による心理戦を続けながらも静止の状態 全く動かない いや動けない。 僅か一瞬の隙を狙っている。
ノルンからテレパシーによるデータが届く。 武器の名称は不明だが 6連射型のエネルギー光粒子弾発射タイプ 毎分6000発・・・
「まともに喰らえば 一瞬で跡形も無く・・・・」 そう思いながらも全く表情を変えない ポーカーフェイスのキャラン(浩司)。
狙いは1点 やつ キースの何ヶ所の急所の1つに、44HPマグナム弾を撃ち込む。
またも沈黙 今度は、無風・・・・
少し風が舞う。 ここは、ゴミ捨て場 周囲に散乱していたゴミの中の空き缶が1つ 風で金属音を立てながら動く それが合図となった。
キャラン(浩司)、キース共に、動く レジェンスの融合者と、サイボーグ スピードがまるで違う。
互いに有利なポジションを確保する為に、だが遮断物の後ろに隠れても無駄である事は解かっている。
遮断物など 何ら意味を持たない強力な武器を持っている。
キースは、素早く動きながらもキャラン(浩司)に向け 左腕を突き出す 6銃身が、鈍い金属の光を発する。 同時に無数の光粒子弾が、キャラン(浩司)を襲う。
だが、そこには、まるで幻影の様に、光粒子弾が、キャラン(浩司)の身体を ただ空しく突き抜けていく。
キャラン(浩司)の実体は、既にそこにはいない。
ただの幻影・・・・。
全身サイボーグ化により 両目共に、超高感度光学電子アイのキースですら見切れない程のスピードで動くキャラン(浩司)。
だが加速能力では、キースも遅くない。
キャラン(浩司)が速過ぎる。
左腕の光粒子ガトリング砲 発射速度は、ほぼ光速に近い 約30万Km/sec 粒子 つまり質量が存在する為 光速に達する事も まして超える事も出来ない。
それに有効射程距離が短い 約300m程度 1秒で、地球を約7周半もの有効射程距離はない。
だが、ターゲットを完全にロックオンすれば、絶対に外さない 
光速に近いスピード 逃げるのは不可能なはず。
だが、何度も同じ結果しかもたらさない 完全に捕らえロックオンと同時に発射。
しかし まさに、蜃気楼、幻影の様に その実体のない虚無の身体を貫くだけで、実体にヒットしない。 その瞬間 別の場所に移動している。
「まさか あいつ光速を超えて動いているのか?」
思わず 口から漏れるキース。 驚愕の表情が浮かぶ。
一時期 ニュートリノの1種ミューニュトリノが、光速を超えているのでは? と言う実験結果が発表され話題となったが、各研究機関の追試実験の結果 実験そのものの信頼性に問題点が見つかり 他の研究機関による再度精度を高めた追試実験の結果 やはり光速を超えていないと言う結果になりつつある。
我々の住むこの宇宙では、光速が、唯一絶対の最速のスピードであると言う 物理法則の確定し存在する宇宙である。
無数に存在する可能性が指摘されている 異なる別の物理法則が確定し 存在している多重宇宙の中にある いくつかの別宇宙ならば、可能性があるが・・・
キャラン(浩司)の融合するレジェンス そのエネルギーの高まりにより 周囲に、無からトンネル効果により誕生直後のユニバーサル・ベビー状態の宇宙同様 10-44(10のマイナス44乗)から10-43(10のマイナス43乗)までに存在したと考えられる インフレーションを起す前のプランク時代 全ての力つまり4つの基本相互作用がまだ分離しておらず、つまり統一されている状態であり 何も確定していないカオス(混沌)の状態 この状態では、光速など単なる通過点にしか過ぎない。
この状態を キャラン(浩司)自身の周囲に展開 キャラン(浩司)を狙う 例え光速のエネルギー弾でも キャラン(浩司)の眼には、まるで牛歩の様なスローな動き、スピードにしか感じられない。
それに、自身まだ気付いていないが、光速を超えるスピードで動く事も可能。
他だし キャラン(浩司)が融合しているレジェンスは、無が無を産み出し 2つに分離した驚異の無限 何も確定されていない状態のポテンシャル・エネルギー体 それが2つに分離したうちの1つ ホワイト・レジェンス。
そのエネルギーは、無限であるが、無限である為 その変動幅は無限に揺らいでおり つまり確定出来ず、本人の意思でのコントロールは不能と言う 欠陥、弱点とも言えるものも存在する。
融合した 個人、個体のソフトウエアーの能力に大きく左右される。

 キャラン(浩司)は、右手に持つ銃を左脇のショルダーホルスターにいつの間にか戻し 少々ふざけ 慌てふためいた態度で、キースの左腕から発射される光粒子ガトリング砲を命中寸前避けている。
もはや勝負有と思っている。
時々見せるキャラン(浩司)の悪い癖。
お遊び。
お遊びはここまで、そろそろ勝負をつけようか・・・・ そう思ったキャラン(浩司)は、キースの正面に立ちはだかり停止。
キースの左腕の6連射の銃口が、キャラン(浩司)に向けられと同時にロックオン 6連射の銃口が光ると同時に、銃口が火を噴く・・・・ のはずであった。
だが、正面にいるキャラン(浩司) いつの間にか、右手に銃を持ち 右腕は、銃弾を発射した時の反動で、少し上に上がっている。
遅れて、1発の銃声が鳴り響く。
そして、キースの頭の額と、左胸に、何かが貫通する キースに取って、この世での最後の感覚 痛みを覚えた。
「バカな・・・・」 キースがこの世に残した最後の言葉であった。
そのまま後方に倒れるキース。
先程 2人のバウンティハンターを倒した時よりも速く2発の銃弾を発射させていた。
もはや誰の目にも止まらぬ速さで、2発 西部劇の早撃ちアウトローのガンマンの様に、左手で素早くハンマーを引く同時に、右手 人差し指デ、トリガーを引く。 シングルアクション。
実は、ダブルアクションで撃つよりシングルアクションの方が、速く銃口のブレを少なく正確な射撃が出来る。
主に、日本のTV、アニメなどでは、ダブルアクションで撃つシーンが多く 誤解されがちだが・・・ 少しでも銃 特にリボルバーの使い方を良く知っている者なら常識。
リボルバーは、シングルアクションでの射撃が、基本。
狙いは正確 キースの急所である 頭の額と、心臓の部分を正確に貫通させていた。
通常の44マグナム弾ならば、全身サイボーグ化により強化人工皮膚に覆われたキース 傷こそ付けられたかも知れないが、貫通出来なかったはず、だが、キャラン(浩司)の持つ 見た目は、S&W M29 44マグナム ガンバレル6.5inchモデル しかしレグのオーバー・テクノロジーにより開発された 対ネクストノイド BS(バトルスタイル)に変身後用の武器 威力などケタ違い。
人間を人工的に、戦闘用 主に、近接戦闘、白兵戦用に戦闘用機械化した改造人間 まるで壊れた機械のように、死体として、地面に転がる。 今 キャラン(浩司)自身がその手で倒した相手。
何も表情を変えず、ただ見つめている。
一瞬の迷いが、生死を分ける。
何を思って、見つめているのか? その無表情とも言える顔からは、読み取る事が出来ない。
いつもの癖である 銃を右人差し指で、数回転させ そのまま左脇に収めると、ゆっくりと立ち去る。
そして、恋人のみなっちと、この戦闘で戦士した川村の元へ歩き出す。
川村の死体を抱き上げる。
「川村 戦いは終わったぜ さあー帰ろう・・・・」
もう2度と返事をする事の無い川村に語りかける。
浩司の眼には、川村がにやりと笑みを浮かべている表情が映る。

 みなっちを連れ ゆっくりと歩き出した。
浩司の右横を並んで歩くみなっち。
「こーちゃん」 隣を歩く浩司に、何か? 語るより 自分に対して語るみなっち。
その周囲には、どこからともなく淡い白い霧が発生 浩司とみなっちを包み込むと、まるで幻影の様に、2人の姿は、ゆっくりと 淡い白い霧の中に、溶け込んでいく様に消えて行った。

 そして、数日後・・・・

 ある県の山奥にある何の変哲も無い小さく簡素な造り山小屋。
周囲は、鬱蒼と木々が天高くそびえ 近くに小さな渓流が、静かな山間に、美しい囁きの様なせせらぎを奏でる様に流れる 静かな まさに隠れ里、ここまで人が入り込んで来る事 ほとんどない。
ここは、浩司が地球上の拠点・・・ と言っても 敵の追手から潜める為に使っている隠れ家。
わざわざ地球上の人里離れた山深い場所に作らなくとも 多重宇宙の別宇宙にあるアルファーベースを拠点にすれば良いのだが、実は、みなっちの問題があった。
浩司は、レジェンスと融合している為か? 死んだ川村、百合もそうであったが、別宇宙に移動するテレポーテーションによる時空転移及び微妙に異なる物理法則の確定した宇宙(アルファーベースのある別宇宙では、我々の住む宇宙と同一物理法則が確定している)に移動しても 全く問題なく体調を崩さないが、みなつちだけは、体質的に合わないらしく体調を極端に崩してしまう。
この地球内でのテレポーテーションの歳は、全く問題がない。
その為 みなっちの体調を考慮して、地球上に身体を隠す為の隠れ家が必要であった。
だか、その場所にこだわる必要性もない。 まして秘密基地化する必要性もない。
単独、1匹狼で、この地球、人類社会を支配するアポリスに対して、戦いを挑む浩司は、自身の立てた基本戦略構想実現する為 あえて戦略上の拠点を作らず、自由な移動を重視 ゲリラ戦術を用いている。
暫くの間 敵の眼から逃れら 身体を潜められれば良いだけ この場所も 一時期 戦死した川村の紹介で、バイクや偽造IDカードなどを保管してもらっていた元個人経営のバイクショップの頑固一徹 職人気質のオヤジの山仕事用の為の小屋を譲り受けていた 全く人目に付かない隠れ家としては最適。
そして、山小屋から少し離れた場所に、少し土が盛り上がった場所が2つ その上には、小さく長方形の石が2つ並んでいた。
その前に立ったまま黙祷を捧げる浩司と。しゃがみ込み両手を合掌させているみなっちの姿があった。
小さく長方形の石の前には、野山に咲く花が置かれている。
近くの山で、みなっちが摘んできた花。
そう簡素だが、ここに川村と、そのフィアンセの百合が眠っている。
浩司もみなっちも そして今ここで眠る川村、百合も 賞金の掛かったお尋ね者 例え亡骸であっても公共共同墓地などに入れない。
亡骸でも賞金が掛けられている その為 墓石代わりの長方形の石にさえ名前すら刻まれていない。
だれかに見つかり 掘り起こされせっかくの安眠を妨げさせない為。
この戦いに決着が付き もし生き残っていれば、どこか静かな場所に再度埋葬しようと、浩司は思っていた。
それが、はたしていつの日か・・・・?
黙祷を捧げる浩司の脳裏には、川村と過ごしたかけがえの無い日々 波乱万丈の毎日 川村が残してくれた物 的確なアドバイス 特に、なんと言っても口癖の様に語っていた 「旦那・・・ 1匹狼もいいですがね、決して1人ではやれる範囲 たかが決まっていますぜー 大事な仲間 もっと外交的になって、造らなきゃ・・・」 脳裏に何度もリピートする。
これで、浩司は、本当の意味で、たった1人での戦いを余儀なくされた。
全世界を敵に回し 1人での孤独な戦い。
生来 不器用、要領の悪さ、社交性などの無い浩司 反面 独立心旺盛、自力、独力などには秀でている。 どう見るかは、見る人の主観によるものだが・・・ 中立性などと言う言葉は、その見る人の主観基準によって違ってくる。
時代によって、評価は大きく異なるだろう。
それと、浩司は、頭を悩ます問題があった。
手となり足となり耳となってくれた有能な2人のスパイを失った事。
川村、百合のスパイとしての能力は、ズバ抜けていた。
正確で、必要な情報を常に提示してくれていた。
ここまで、1人で戦えたのは、2人の存在があってこそ。
だがもう2人はいない。 それに代わる人材など・・・・
地球衛星軌道上から監視するステルス製スパイ衛星ポッパーからの情報によると、敵アポリス軍の動きが、あるポイントに向かって、動きが急激に活発化している。
どうやら こちらの思惑通り動き出したらしい。
戦力の分散化、逐次投入の愚劣を・・・・
戦略上の基本 戦力の集中・・・・
ようやく気づいたらしい。
それも ここに眠る2人の的確で、正確な情報をもたらしてくれたお陰であると事を 浩司はだれよりも知っている。
それに、前回の偶発的遭遇戦で、地球衛星軌道上から監視するステルス製スパイ衛星ポッパーの存在を 敵アポリス軍に知られてしまった。
最後まで隠すつもりであったが・・・
まだ この時点で、手の内の1部を見せるのは得策ではない。
だが、知られてしまった事は、仕方が無い。
逆に、情報戦 特に、これからの心理戦でうまく利用するしかない。
川村、百合を失ってしまった事の大きさ 川村のスパイ合戦時で 相手をトラップ(罠)にはめるテクニック 川村の右に出る者は多分いない 何度もこの眼で見てきた。 失ってしまった代償が余りにも大き過ぎる。
悔やんでも仕方無い。
それに、利用しているスパイ衛星は、1基ではなく それ以上複数基存在している事も レーダー、動体探知機はもちろん 各種センサー、探知不可能 レグの持つ驚異のオーバーテクノロジー・・・ もちろん肉眼でも ステルス製に優れた光学迷彩を利用している 今のアポリスの持つ エルと呼ばれたEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の驚異のーバーテクノロジーを利用しても発見は不可能。
現在 地球軌道上の宇宙空間で、アポリスの各人工衛星が、血眼になって捜しているが、ポッパーは、非情に動きが俊敏で、機動性にも優れている 捕える事が出来ない。
まさにステルス 眼に見えない。
決戦時に、まず敵アポリス軍の全ての人工衛星を潰し 眼、耳など潰す。
それから 地球衛星軌道上から監視するステルス製スパイ衛星ポッパーから もちろん対地攻撃用の武器 主に、破壊力に優れた熱火球弾型のブラスター砲、狙った1点を正確にピンポイント攻撃する大出力大型レーザービームなど装備されている。 他だし大量破壊、殺戮をもたらすミサイル系などの火薬を使った武器は装備されていない。
決戦開戦と同時に、主にブラスター砲を使い ピンポイントで、地上のアポリス軍の戦略上拠点基地を叩く そして、地上で戦う浩司を地球衛星軌道上から 主に、大出力大型レーザービームで、対地攻撃で支援する。
現在 制空権ではなく 更に上空の地球衛星軌道上の制宙権を確保した方が、戦略上優位に戦いを進められる。
上空からの支援は、絶対必要不可欠。
だが、何度もノルンを利用しシュミレーションした 敵アポリス軍の主力陸戦、空戦用 生体兵器ネクストノイドの戦力 見積もりによって、どうにでも変化する。
勝ち目の無い戦いに変わりない。 たった1人での戦い。
戦略上の目的は、上位モデルであり テレパシーによるマインドコントロール(精神支配)を行う事の出来る 最上位モデルのアピリムと、その次ぎに位置する 8大将軍デストロの残りビリー、デューク、ギル、シンの4体 この5体さえ倒せれば、テレパシーによるマインドコントロール(精神支配)を受けている 各種グロテノスを テレパシーによるマインドコントロール(精神支配)から解放する事が出来る。
そうすれば、必然的に、ネクストノイドとの共存へと向かうはず・・・
そう簡単に行かないだろうが・・・?
歴史の流れ 人類の多種多様化の為にも その最初の1歩として、まずネクストノイドとの共存する社会が必要 更に、ネクストノイド以外の新種の人類を生み出すべきである。
だが、もう1つの問題点 それは、あのピエール やつは、自ら信じるC宗教に凝り固まり それ以外は、盲目 この様な歴史の流れを望まず、自ら信じるC宗教の神々と呼称するものへの道以外 絶対に認めない。
俺よりも 更に、極端に視野が狭い。
今はまだ、この辺について考える余裕はない。
勝てれば・・・・ の話しだ。
たら・・・ れば・・・ 禁句 その為の用意、準備を整えておく事が何よりも重要。
戦略は、正しいから勝つのであり 戦術は、勝てば正しい・・・ まさに名言。
だが、たった1人で背負うには、余りにも重過ぎる課題だ。
だが、レグのオーバーテクノロジーを利用した今 考案中の戦術には、かなり抵抗もあった。
余りにも、オーバーテクノロジー ハードウェアーとしての殺傷兵器に依存、突出している。
下手な運用すれば、ジェノサイド(皆殺し、大量殺戮)をもたらす。
こちらの主力兵器である人工衛星ポッパーに搭載されている 1基に2門づつ装備されている 主砲とも言えるブラスター砲 超高熱火球弾 最高出力を出せば、一撃で、地上約数kmの範囲全てを 瞬時に蒸発させる破壊力を誇る。
核兵器のクラスの威力 ただ核兵器と違って、放射能問題がないが・・・ 例えアポリス軍の大部隊を衛星軌道上から攻撃すれば、一気に殲滅出来る だが、これでは戦闘ではない ただのジェノサイド(皆殺し、大量殺戮) こんなすごいハードウェアーとしての大量殺戮兵器など無用の長物 過去 新兵器など登場すると、その威力に溺れ 判断をミスし 敗北した例など数限りなく存在する。
結局 運用する側 特に、運用する個人のソフトウェアーとしての能力に大きく左右される。
気休めにもならない。
バリヤーを張れない主力生体兵器グロテノスでは、ブラスター砲の大型熱火球弾の直撃を喰らえば一溜まりも無く 蒸発、跡形も無く消滅する。
これては、例え勝っても戦略上の意味が無い。
ただ 戦術、戦闘上の勝利に固執し 溺れ・・・・ 勝つ事だけを考えると、途方も無く どこまでも地獄の底 2度と上がる事の出来ない底なしの世界に落ち 卑しい考えばかり思い浮かぶ・・・・
何よりも重要なのは、戦略上の勝利 歴史の流れ・・・ 自ら望むグランドデザイン(全体像)を画けるか・・・・?
その為の準備を整えつつある 補給、補給戦、情報・・・ 失ってしまった代償 川村、百合 余りにも大きな損失。
戦略とは、勝つ為の全ての条件を整える事。
これからは、本当の意味での たった1人 孤独な戦い。 毎度おなじみのいつものシュチュエーション・・・・


 色々1人で、いつもの自虐に、自らを皮肉ながら考え込んでいた。
みなっちが、何か物思いにふけ考え込んでいる浩司に声を掛けた。
「どうしたのかなあー 先程まで、あんなに天気が良かったのに・・・」
そう 急に雲行きが悪くなり始めた。
先程まで雲1つない晴天だったのが、上空には突然真黒な暗雲が立ち込めてきた どうやら雷を伴う大雨、嵐になりそうな気配。
大粒の雨が、少しずつ落ち始め、同時に、眩いばかりの怪光を伴う落雷が轟音を響かせる。
この時期としては、珍しい。
異常気象の多くなり始めた時代に生まれ育った浩司であったが・・・この所の 世界各地で異常気象、天変地、地震、火山の噴火など頻発している事に、気には掛けていたが、頭の思考の殆どが、対アポリス、ネクストノイドとの戦いに向けられており 色々調べ、原因追求に思考を回す余裕などなかった。
それに、地球誕生以来 気候など、常に一定不変ではなく、常に変動している。
現在も間氷河期(かんひょうがき)と呼ばれる時代 氷河期と、氷河期の間の割と温暖で、安定している時代・・・などと言う思いあり 気にこそしていたが、とことん原因を調べようとする気持ちはなかった。
一時的もので、活動期に入っただけ 暫くすれば収まるだろう・・・・ 今の浩司の考えであった。
この時点でも遅かれだったかも知れないが、原因究明を始めるべきであった。
だが、浩司は、この事について生涯 何も知る事はなかった。 人類・・・いや この地球上に生息する全生命体に取って、未曽有地の危機的状況の始まり、最初の初期の兆候であった事を・・・・。
地球内部で、着々と進行しているある大きな・・・・。
そんな状況を全く知る事もない浩司。
落ちてきた大粒の雨を ただぼんやりと見つめた。
「小説、ドラマなどのおなじものパターンでならば、涙雨、天も涙を流すか・・・」 独り言つぶやく。
もしバイオリズムなどが、本当に真実で、存在するならば、この頃浩司は、かなり低下していた。
肉体面では、レジェンスとの融合で、不老であり どんな大怪我などを負っても 驚異的自己治癒力で直ぐに回復するのだが、精神面では、この能力はない。

 その日の夜 浩司とみなっちは、囲炉裏の薪に火をつけ 薄汚れたバスタオルで身体を包み 焚き火を見つめながら暖を取っていた。
浩司に寄りかかるみなっち 少しもの悲しそうに、焚き火の炎を見つめる。
周囲には、何もない 山深い奥地にある小さな山小屋 外から吹き込む隙間風に焚き火の炎が小さく揺れる。
やはり この時期 夜になるとかかなり冷え込む。
「ねえー こーちゃん いつまで、こんな事、こんな逃げるような生活 続くのだろうね・・・・」 まるで自分にも問いかけるような口ぶりのみなっち。 みなっちもまた 今の生活に疲れていた。
2人の手には、それぞれ変形した金属製のマグカップが握られ カップの中には、インスタントではあった ほんのりと香るコーヒーが、白い湯気上げ この場の雰囲気を和ませている。
コーヒーを一口飲むみなっち 「温まるねー」 小さく微笑み浩司を見つめる。
見つめる浩司の頬が、随分やつれていた。
元々男としては、色白の部類に入る浩司だが、今では、まるで死人の様に青白い。
まるで生気を感じられない。
肉体面より精神面で、かなり疲労しているのが一目で解かる。
相当無理をしている。
そう思うみなっちですら 浩司と共に、世界各地を まるで放浪しているかのように、飛び回り そこで生死のやり取り 命がけの戦闘・・・・ 体力は、年齢から考えても 極平均的なみなっちも そろそろ限界に差し掛かっていた。
元々細身で、華奢 体力にやはり限度ある。 それに何よりも精神的負担 もう限界であった。
みなっちに取っては、命懸けの逃避行にしか思えない 死と隣合わせ 常に狙われ 気の休まる時間などない。
こーちゃんと比べれば・・・・ 私なんかマシよ・・・・ いつも自分にそう言い聞かせていた。
他人との接触は、極端に用心深く、常に周囲に気を配り 正体がバレないように、細心の注意を払う。
そして、浩司のアフターケア いつも戦闘の後 言葉でどう表現すべきか? とにかく、精神的落ち込み自己嫌悪に陥る浩司の精神面でのケア 最も重要視していた。
決して、精神面では強くない浩司を だれよりも良く知っている。
まるで、今にも壊れ、粉々に砕けそうなガラスの様にさえ感じられていた。
私が、支えなければ、だれが支えるの?
だか、みなっちも もう限界であった。 無理にも生身の身体限度はある。
みなっちは、浩司に頭を持たれたまま まるで死んだ様に深い眠りにつく。
疲れ果て、苦しそうな寝息を立てるみなっち。
そんなみなっちを見つめ 浩司はいつも思っていた。
みなっちがアルファーベースにいてくれれば・・・・ だが、別宇宙へのテレポーテーションの歳 バリヤーに包まれていても、アルファーベースのある別宇宙でも 体調を崩してしまうみなっち。 アルファーペースのある別宇宙は、奇跡的確率でしか存在しないこの宇宙同一物理法則の確定した宇宙 なのに、みなっちには、どうも合わない。
それに、思考を持つスーコンピューター・ノルンと、各種ロボットしかいないアルファーベースに、1人いる事を極度嫌がる。
やはり人の触れ合いがなければ、精神的におかしくなってしまうのだろう。
危険を顧みず、浩司の側を決して離れようとしない。
みなっちは、女だ。 本能的に、常に誰かに守られ包まれていたのだろう・・・ 決して口には出さないが、もし そんな事を言えば、みなっちの性格である 女性差別だの・・・ うるさくつかかってくる。
気が強く 決して自分から弱音を吐かない。
そんな事を考えているうちに、浩司もいつしか眠りに陥った。

 深い眠りの中 何か気配を感じた。
決して好意的ではない。 どす黒く渦巻く この場には有り得ない異質の感覚。
"殺気・・・"
そう 悪意に満ちた殺意、殺気を周囲に発散している。
レジェンスと融合している浩司 その感覚は、人間のレベルを遥かに超えている研ぎ澄まされた鋭い感覚を持ち合わせている。
意識が急速に覚醒する浩司。
"そんなに殺気だっては、プロじゃないなあー シロウトか・・・"
だが狙っている敵に悟られぬよう寝たふりをする。
この感覚 ネクストノイドではない ホモサピエンス・サピエンス。 それも1人か?・・・・
研ぎ澄まされた感覚で敵を把握する。
銃 それも軍用の高性能ライフルで狙い撃ち・・・・
"多分 俺の首に掛かっている賞金狙いか?"
"欲に眼が眩んだやつらか・・・"

 "ふ・ふんー バカみたいに眠っていやがる・・・"
浩司に、銃口のターゲット(照準)を合わせ狙いを付け小さくつぶやく男。
その表情は、欲に眼が眩み 異常な殺意を周囲に撒き散らしている。
ある情報筋から この山に不審な男女がいると聞き 様子を見に来た。
まさにビンゴであった。
それも最上級の獲物。
最高ランクの賞金首。
やつの首を取れば、何でも思いの物全てを手に入れる事が出来る。 地位も名誉も金も女も・・・・
"隣には、可愛い女を連れてやがる やつをバラ(殺す)した後 あの女を貰うとするか・・・"
2人が、深い眠りに付くのを待ち 動いた 今がチャンス。
持参したロシア製 軍用ライフル銃 AK-47 トリガーに掛かる右手人差し指に力が掛かる。
「アバよ・・・」 小さくつぶやく。
その瞬間 我が眼を疑った。
眼の前のターゲット(照準)が、忽然と消えると同時に、ライフル銃がガンバレル(銃身)から2つに斬られ 斬られた部分が地面に落下 同時に鋭利な刃物・・・・ いや違う 素手 素手が喉元に当てられる。
まるで、素手が鋭利な刀の様に感じられる そうそのはず 素手を当てられた喉元は、まるで鋭利なオペ(手術)用のメスで、皮膚 1mmにも満たないコンマ数mm斬られたように、薄く一筋の筋が出来 そらから生暖かく、少し粘り気のある赤い液体 そう血が少し滲む。

 「声を出すな」
静かで小さな口調であったが、凄みのある 何度も修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ独特の他の者を威圧する声。
浩司であった。
軍用ライフル銃を持つ男 余りの恐怖に縛られ顔面から一瞬にして、血の気が引き、まるで死人の様に青ざめ 汗が滲み出る。
人間離れなどの言葉ではない。 動いた事すら眼には映らなかった。
速い 速過ぎる。
噂では聞いていたが、実際とは、まるで違う。 キャラン(浩司)の戦闘シーンは、ほとんど公開されていない。
ほとんど戦闘に関しては、トップシークレット。
実際、映像などには、余りにも激しく、動きが速過ぎて、映らないのが現実だが、それに、酷い、悲惨なシーンが多く、映像などで、流す事が出来ない。 何よりも4体のデストロまで倒している。 アポリスの支配体制にも関わる。
個 つまり個体としての生体兵器としては、最強を自負し、13日間戦争で、それまで誇ってきた数々のハードウエアーとしての最新戦闘兵器以上の戦闘能力を持っていた。
それが、たった1人に、多数を持っても勝てない。
それらを 余りにも知られると、現状の支配体制に嫌疑を持つ者が増える。
現在の支配体制を維持する為にも 必要以上の情報を公開する事は出来ない。
権力者、支配者に取って都合の良い必要最小限度の情報だけを与える。
情報は、それを所持する者が、どのように運用するかで、その価値が決まる。
情報を制する者は、世界を制する・・・・

「下手に動いたら その首を切り落とす」
キャラン(浩司)以外の者が、このセリフを吐いても だれも信じない。 だが相手は、キャラン(浩司)である。
今 レジェンスからのエネルギーが、身体を駆け巡る戦闘モードに入っている。
生身の人間の首を手刀で切り落とすなど簡単に出来る。
「そ・・・そんな事 出来るはずねえー・・・・」 かなり怯えの入った声。 だが、キャラン(浩司)の全てを貫き通す様な冷酷で鋭い眼を見ると、ハッタリではない事が解かる。
軍用ライフル銃 AK-47が、何も手に武器すら持ち合わせていないのに、ガンバレル(銃身)を2つに切断された。
有り得ない話だ。
それに、永井やピエールの様にBP(バトルプロテクター)と呼ばれる驚異のオーバーテクロジーの産物のハードウエアーである戦闘用パワードスーツを装着すらしていない生身のままで、ネクストノイドの戦闘形態であるBS(バトルスタイル)と戦闘する。
いっいたどんな秘密があり どれ程の戦闘能力を秘めているのか? 余り情報として公開されていない。
噂・・・ 憶測・・・ だけが飛び交う。
ただ、賞金首としては、飛び抜けて高額の最高ランク。
"とんでもないバケモノ・・・・" 内心 相手にすべき者を間違えた。 しきりに悔やみだけが過ぎる。
"こんなヤツ 勝てるハズねえー・・・" 悔やんでも後の祭り。
「生命が欲しければ、このまま立ち去れ・・・・」 凄みのある低い声。
ゆっくりと怯えた表情で小さくうなづく。
切断された軍用ライフルを地面にゆっくり置き 小さな物音を立て足早に立ち去る。
その物音に気づき、眠そうに両目を擦りながら上半身をゆっくり起すみなっち。
浩司の姿が、側にいない。
周囲に見渡すと、出入口に立ち、外を見つめる浩司がいる。
何か不穏なモノを警戒している表情。
「こーちゃん 何かあるの?」 眠そうな声で問いかける。
その声に誘われる様振り向き、みなっちを見つめながら少し笑みを浮かべる浩司。
「何・・・ この山にいる 猿か、猪か・・・の野生動物だろう・・・・」 安心していいと言う表情を浮かべる。
心配させ、不安にさせる必要性はない。
かなり怯えていた。 口先だけで、本当の度胸の無い男だ。
ああ言うのに限って、多数の同類の仲間を引き連れ 再度襲ってくる。
何ら力もないのに、自ら強者だと自慢する為に。
本当に程度の低い男。
だかここは、もう隠れ家としては危険だ。 新たな場所を探さなければ・・・・
まさに放浪の旅路 落ち着いて安心して暮らせる日が来るのか?
浩司の表情を見て、安堵の色を浮かべ、起していた上半身を地面に倒すみなっち。
いつもこうして、周囲を警戒し守ってもらっている。
心配なのは、浩司のスタミナ。
毎日ほとんど寝ていない。
「こーちゃんも ここにきて早く寝よう・・・・」 少し甘えた声で誘う。
少しでも睡眠を取らせる事が、今の浩司には必要。
こうして、少し甘えた声で誘うのはその為。
「あー・・・・」 警戒を解きながらみなっちの横で、横になる浩司。
そして、いつもの様にみなっちを抱きしめる。
浩司に抱きしめられ 安心した表情で、眠り始めるみなっち。
その表情は、親の側で、何もから守られ安心して眠る小さな子供の様な無邪気な表情のように見える。
夜明けには、ここを発とう・・・・ そう思い 浩司も深い眠りについた。

 そして数日後・・・・
浩司とみなっちは、ある小さな地方都市にいた。
残り少なくなった所持金で、食料を中心とした生活必需品を購入していた。
足の付くカード系は、出来る限り使用を控えている。
高度にコンピューターネット化が進んだ現在の社会 ほとんど買い物は、カード払いが主流 余りキャッシュで物品の購入も変に怪しまれる。
出来る限り 小さな商店で、人目を避ける。
小さな個人商店は、やはりキャッシュの方が喜ばれる。
浩司も個人自営業出身 こう言う事は、良く知っている。
みなっちも やはり女性 ショッピングは、日頃のストレス発散に最適。 品定め、良い品を少しでも安く・・・ やはり抜け目がない。
みなっちも いつもに比べ顔色が良くなっている。
そんな ささやかなショッピングを済ませ2人仲良く小さな寂れた地方都市の商店街を歩いている時であった。
"殺気・・・・" 浩司の研ぎ澄まされた鋭い感覚が、異変を感じる。
"1人・・・ いや強力な戦闘能力 ハイパーグロテノスを超えている だが、デストロとは違う・・・" 先程までの顔つきと変わって、周囲の殺気を読み取ろうと鋭く眼が光る。
殺気の感じる方向には、1人の そう年齢は、18歳ぐらいの女子高生風・・・ と言っても 見た事がない程の絶世と言える美少女が、全身からすさまじいばかりの殺気を放ちキャラン(浩司)を 憎しみに満ちた鋭い眼光で睨んでいる。
"暗殺者・・・" だが、暗殺者にしては幼稚だ。 プロの暗殺者ならは、殺気を消し、気配すらうまく消す。
ターゲット(標的)に悟られるドジはやらない。
額には、赤のネクスタルがある だが赤と言うより深い深紅の紅色と言った方が適切 間違いなくグロテノス それもハイパーグロテノスを超えた とてつもなく内に秘めた大きなエルメギーを感じる。
このとてつもなく内に秘めた大きなエネルギー・・・・ そうあの世紀の絶世の美女 リンと匹敵・・・・ いやそれ以上・・・・。
「お久し振りねー キャラン(浩司)」 親しみを込めた声を発しながらゆっくりと近づいてくる。
だが、その眼は、決して親しみのある笑みを浮かべていない、その正反対 激しい憎悪と、異常なまでの敵意しかない。
「あのー どちら様で? それに俺 キャランなどと言う名前ではないし・・・ それに君見たいな年齢の離れた女性に知り合いなど・・・」 とぼけた態度と、表情。
いつも正体がバレそうになると、この様に、とぼけた態度、表情などの演技力を駆使 出きる限り戦闘にならないようにしてきた。
極力、無益、無駄な戦闘を避ける。 基本姿勢。
「とぼけても無駄よ あなたが、あの我がアポリス最大の敵にして、最高の賞金首 キャラン(浩司)である事は、解かっているわ」立ち止まり右手を突き出す言い切る。
「そして、私の大事な両親の生命を奪った憎き仇」
その顔、表情には、復讐の色しか浮かんでいない。
「私の名前は、妙子 ハイパービューカー・エボリューションの妙子」
キャラン(浩司)と名指した男の表情を見る 相変わらずとぼけて、人違いと言った、少し怯えの入った表情を浮かべている。 だが、これは、演技であるのは一目同然 その研ぎ澄まされた鋭い眼つき 態度に、全く隙を見せていない。 それに、とぼけた態度とは裏腹にねさりげなく一緒にいる女性を後ろへと隠している。
それに、この男から発する秘めた無限と思えるエネルギー 同類であるネクストノスドとは、全く異質の強大なエネルギー これは、間違いなくキャラン(浩司)自身が、融合しているレジェンスと呼ばれる驚異の無限のエネルギー体から発する未知のエネルギー 間違えるハズなどない。
今 眼の前いる とぼけた態度と、口調の 何ら変哲も無い極めて平凡な男 だが間違いない その顔見間違いなどしない 愛する両親の生命を その手に奪った憎き敵キャラン(浩司)。
「よもや この私を忘れたとは言わせまい」 憎しみの篭った口調。
「この俺に、君見たいな、年齢の離れた美少女など、知り合いにいるはずが・・・・」 とぼけた口調であった。 しかしキャラン(浩司)自身 記憶に全くない。 今 テレパシーで、ノルンとコンタクト ノルンからホッハー経由で、アポリスのマスターコンピューターをハッキング 大至急サーチさせている。
ノルンから回答が、テレパシーで届く、「あの時の・・・」 小さなだれにも聞こえない小言でつぶやく。
確かに記憶にある。 よく見れば、面影があるようだ。
あの時の戦闘が鮮明に蘇る。
だが、あの時の少女は、どう見ても年齢は、7〜8歳程度 今 眼の前にいる美少女は、17〜18歳 そして、リンと共に・・・・
次々と、ノルンからテレパシーによりデータが送られてくる。
・・・リン以来の稀に見るハイパーグロテノス向けのDNAの適性率を誇り その為 新開発のテクノロジーにより肉体年齢を改造に耐えられる最低年齢の17〜18歳程度まで、急激に促進 新型ハイパーグロテノスへの改造手術を受ける・・・・ この俺を抹殺する為の専用プロトモデル(試作型)となる・・・・
戦争による悲劇が、激しい憎悪を生み やがて復讐となり これが新たな悲劇を生み 新たな激しい憎悪を生み出し 新たな復讐を生む 負のスパイラル(連鎖)が続く 永遠に・・・ 少し哀れみの表情を浮かべ 眼の前に、復讐の紅蓮の炎を巻き上げる美少女 妙子を見つめる。
今の妙子には、両親の復讐以外 何も無い。 あるのは、激しいキャラン(浩司)に対する激しい全てを焼き尽くす紅蓮の炎に包まれた憎悪だけ。
まさか? こんな事になっているとは・・・・ そう思いつつ妙子を見つめるキャラン(浩司)。
みなっちが信じる神々と呼称する物が存在するならば、話しは別だが、こんな事になっているとは、想像出来る人間など、まず存在しない。
この俺を殺す為だけに・・・ ここまで・・・ そう思いつつも 正面から戦いを挑まれた 逃げる事も出来ない。
「出来れば この戦闘 避けたいのだが・・・」 まるで他人事の様な思いが過ぎる。
あの時 みなっちを守る為・・・ だが、そんな言い訳は通用しない。 それが戦争・・・ 頭では理解しているが・・・
人違い・・・ とすっとぽけても通用しない。
戦うしかないか・・・

 色々な思いが過ぎっている時だった。
「・・・ならば私から行かせてもらう」 妙子が叫ぶと同時に、頭の額に埋め込まれている深紅のネクスタルが輝く。
同時に、変身が始まる。
間違いなく 女性型ネクストノイドのBS(バトルスタイル)の中で、最も美しい 美り体現者 選ばれし者だけしか改造を受けられないビューカー それもハイパータイプの中でも最新のプロトタイプ(試作型)。
ハイパービューカー・エボリューション。
ハイパービューカーの特徴でもある 背からカラフルな美しい極彩色の2枚の翅が生える。
だが、あのリンとは違う 2枚の翅は、光・・・ いや何か? とてつもなく大きなエネルギー体で構成された翅であった。
BS(バトルスタイル)への変身が完了した妙子は、ゆっくりと優雅に、2枚の翅を1度羽ばたかせる。
まさに地上最強の美少女戦士。 見る者全てを美により虜にしてしまう程の圧倒的美しさを漂わせている。
妙子の眼が光る 同時に光のエネルギー体で出来た翅の1部から光球が発せられる。
ターゲット(狙い)は、キャラン(浩司)の後方のみなっち。
素早く戦闘モードに入るキャラン(浩司) 同時に、胸のペンダントに収納されているレジェンスからのエネルギーが身体を駆け巡る。
眼にも止まらぬ速さで、右ベルトのフックに掛けられている高周波セイバーを取り 同時に高周波を発生 みなっちを狙った光球を高周波を発生させている刀で弾き飛ばす。
「正体を現したわねキャラン(浩司)」 何とも言えない 年齢と掛け腫れた不敵な笑みを浮かべる妙子。 何か?様子が変に感じる。
キャラン(浩司)を睨む憎悪に満ちたその瞳の奥に、何か?別物が潜んでいる。 そんな感じを受ける。
確か・・・ 前 1度リンと対決した時 この様な眼をしていた だが、あの時程ではないが・・・
全ネクストノイドの頭の額に埋め込まれているネクスタル エルと呼ばれるかって我々人類が、神々と呼称したEBE's(イーバース=地球圏外知的生命体)が残したオーバーテクノロジーの1部 俺の融合しているレジェンスを人工的に生み出そうとした過程で、偶然に出来た多重宇宙の別宇宙と繋がっている それも高エネルギー宇宙と、極小ワームホールで繋がり そこからエネルギーの供給を受けている。 最大の欠陥、欠点の1つに、Absolute Area(絶対領域)と呼ばれる 決して超えてはならない領域があり その領域に突入 超えてしまうとネクスタルそのものが、自我に目覚め ホスト つまりネクスタルを埋め込まれている者の精神などを乗っ取り・・・・
嫌なデータが、頭を過ぎる。
だが、このAbsolute Area(絶対領域)と呼ばれる領域 甘い甘美な領域でもある。
レジェンス、ネクスタル共に、上限値の無い無制限、無限のエネルギーが、そこから得る事が出来る。
甘美な麻薬にも似た 持つ者をその甘美な世界へと誘う領域。
だが、絶対に触れる・・・ いや超えてはならない領域。
そこには、多分 破滅しかない。
その狂った様な強大な、無限とも思えるエネルギーで、全てを破壊してしまう。
妙子を見る まだその領域には突入してはいないようだ。
その手前で留まっている。 その眼を見れば解かる。
まだ自我、精神は乗っ取られていない。
多分 本人は、無自覚なのだろうが・・・
決して、その一線を超えさせ その彼方にある無限の地獄だろうか・・・ その世界に踏み込ませてはならない。
リンの時もそうであったように、完全に乗っ取られる前に何とかしなければ。
「どうしたキャラン(浩司) 何故 かかってこない」 挑発する妙子。
「そちらがこなければ、こちらから行く」 そう言いながら 2枚の翅を優雅に羽ばたかせ 上空へと舞い上がる。
戦術、戦闘の基本 上からの攻撃の方が、圧倒的有利。
「みなっち どこか安全と思える場所へ逃げろ もしもの時は、それわ使え」
浩司は、みなっちの左腕にはめられているレディース用の腕時計に似たブレスレットを指差す。
これは、見た目こそレディース用のブレスレットであったが、ノルンで作られたレグと呼ばれる この太陽系が誕生する以前 別の銀河系で、高度なテクノロジーを持ち 別の銀河系までも進出していたEBE's(イーバース=地球圏外知的生命体)の残したオーバーテクノロジーによって開発された物 別宇宙にあるキャラン(浩司)の隠れ拠点ベース(基地)であるアルファーベースの思考などを持つ驚異のマスターコンピューター ノルンと、地球衛星軌道上に複数機配備しているステルス製、各種スパイ及び攻撃型人工衛星ホッパーを経由し通信可能であり余り出力は、強くないが、所持者の周囲に、バリヤーを張り巡らせる機能も搭載されている。
他にも ホッパーを利用したGPS機能など各種驚異の機能が搭載されている。
真剣な表情で、無言で小さく頷くみなっち。
ここで、こーちゃんの側にいては、自らの生命が危険であるのは、もちろん 浩司の戦闘の邪魔になる。
こーちゃんが、自由に戦えるには、自ら安全と思われる場所に避難し、自らの安全を確保する事。
こーちゃんは、いつも私の生命を最優先に考える。
その為 いつも戦闘に大きな制約がある。
「制約の無い戦いなんてないさー 周囲の状況・・・ まあー色々制約はつきまとっているよ・・・・」 こーちゃんの口癖。
みなっちは、急いで安全と思われる場所を探す。
しかしここは、小さい地方都市の商店街 身体を隠す場所は、それ程多くない。
キャラン(浩司)も それを考えている。 ここでは戦えない。
周囲に大きな被害を及ぼす。
今の所 敵は、あの美少女 ただ1人。
どうやら偶発的遭遇戦? それとも見張られていたか? そんな事は、今 重要ではない。
人通りの少ない商店街であったが、この様子を見ていた者達は、少しパニック状態になりながら慌てて逃げ始めている。
数少ない商店もシャッターを急いで降ろしている。
何故? こんな場所で戦闘が始まるのか? 理不尽な不平不満な表情を浮かべ。
憎しみに満ちた眼で、浩司を睨んでいる。
ここに来るから こんなバカげた戦闘が、ここで行われる。
被害を受ける側の身にもなってみろ・・・睨む人々の顔に書いてある。
キャラン(浩司)も 敵は、上空に舞い上がった。
地上では不利 そのまま飛行を開始する。
上空で、妙子は、キャラン(浩司)が来るのを 待っていた。
得意の空中戦で、勝負。
無言で睨み合う キャラン(浩司)と、ハイパービューカー・エボリューション・妙子。

 「何だと・・・ 妙子のやつ早まった事を・・・」
長い白いひげを生やした老人が、叫んだ。
ここは、日本にある 極東、アジア地区アポリス最大の拠点基地の司令所。
妙子が、2〜3日前 突然姿を現さなくなった。
テレパーを使用し、強制的に居場所を見つけ出し そのままマインドコントロール(精神支配)で、戻す事を出来たのだが、年頃の女の子 遊びたい盛り。
どこかの繁華街の遊び場で、遊んでいるのだろうと思い 無理して探し出し 連れ戻そうと思わなかった。
ここの所 よく夜遊びをして、朝帰りが、目立っていたが・・・・
余り厳しくも・・・ 年頃だけに、微妙な・・・・面もある。
年頃だけに、非情に難しい。 特に、妙子の場合 肉体の成長と、精神年齢が不一致。
急激な肉体の成長を促進させている。
精神年齢は、改造前の年齢のままである。
姉代わりのリンは、その辺の事をよくわきまえ妙子と接し うまく導いていたが・・・・
周囲と遊ぶ者は、改造前の同年代では、浮いた存在になる為 肉体の成長年齢に合わせた者と、よく遊ぶようになっていた。
その為 年齢の成長と共に、学び、経験、周囲の環境に対する免疫のない何も知らないまま ちょっと大人になりかけの1番微妙な時期の世界に入ってしまった。
「あのお転婆娘めが・・・」 歯軋りし巨大なマルチモニターを睨むギル。
まだキャラン(浩司)に、妙子を戦わせるのは、時期尚早 肉体面、精神面・・・何よりも まだハイパービューカー・エボリューションモデルは、まだプロトタイプ(試作型) 完成品ではない。 まだ謎の部分、未解決の部分が多々ある。
「リンよ」 近くにいたリンを呼び寄せる。
ギルの前に立つ 絶世の美貌を持つ 人類誕生以来の史上最強の美女リン。
「今直ぐ 精鋭部隊を引き連れ妙子を連れ戻せ」
ギルの勅命が下る。
表情1つ変えず従うリン。
だが、新たな情報が飛び込んできた。
「大変です。 ギル閣下」 オペレーターの1人が叫び声を上げる。
「何だ」 少し機嫌が悪そうに答えるギル。
日本の関西にあるO市のホモサピエンス・サピエンス(旧人類)用居住地区で、ホモサピエンス・サピエンス(旧人類)による反乱が発生 どうやら神々のメシア(救世主)軍と呼称するテロリストどもが、この反乱を煽っている模様 頭目のあのピエールが、自らB,P(バトルプロテクター)を装着 先頭に立ち次々と治安維持に向かった公安部隊を撃破 救助要請が出されております」
「うーん・・・ 仕方あるまい」 腕を組み考え込むギル。
「リンよ」 出撃しようとしたリンを呼び止める。
「直ちに、精鋭部隊を率いてO市に向い やつらを抑えろ」 命令を変更する。
「たえちゃんは?」
「心配はいらん わしが、テレパシーを使い 呼び戻す」
「はっ かしこまりました 直ちに」 再度敬礼をし 司令所を後にする。
"だが、妙子のやつ この頃 わしのテレパシーを余り受け付けぬ様になっておる。 ネクスタルのセフティー機能を解除すると、様々な問題が続出する・・・・" そのまま腕を組みながら考え込むギル。
「Absolute Area(絶対領域) 絶対超えてはならぬ領域・・・・ しかしこの領域のエネルギーを得なければ、キャラン(浩司)に対抗しうる方法は無い・・・」 小さな小言をつぶやく。
そして、正面の巨大なマルチモニターに映し出されている 戦いが始まったばかりのキャラン(浩司)、妙子の戦闘を見つめる。
「大いなる計画の達成には、あの領域に踏み込み あのエネルギーを得なければのう・・・」
そう思いつつ ギルは両目を閉じ精神を集中させる。
「妙子 聞こえるか? わしじゃギルじゃ」 テレパシーを使い語り掛ける。
「・・・・」
だが、何も反応がない 確かに届いているはずだが・・・

 「妙子・・・・」
心にギルの声が届く だが、自分の中にいるもう1人の自分 "アナザー" とでも呼ぶべきか? に遮られる。
「だめよ・・・ その声に惑わされては・・・ 今 あなたの眼の前には、憎き両親の仇がいるのよ・・・・」
今の戦闘を煽る様に語りかける。
いつの頃か? 憶えていない だがいつの頃からか、こうして、自分の中にいるもう1人 いつもこうして語りかけて来る様になった。
甘美と、魅惑に満ちた甘い音色の囁き、その先にある世界へと誘う様に語りかけてくる。
BS(バトルスタイル)に変身後 エネルギーを高めると、もう1人の自分が、いつも語りかけて来る。
今もこうして語りかけて来る。 その声は、導いてくれる。
まるで、恋の魔法にかかった お伽話のプリンセス(お姫様)の様に・・・・
そう今 目の前にいる敵 それこそ眼の前で、愛する両親を切裂き殺害した憎き仇 キャラン(浩司)。
あの日 幸せだった家族を一瞬にして奪い去った憎き仇。
あの日の記憶が鮮明に蘇る。
決して・・・決して、忘れる事も まして許す事も出来ない。
この日の来る事を 今がその日。
青白い高周波の光を放つ高周波セイバーを構え 空中で静止するキャラン(浩司)に襲い掛かる妙子。
近接戦闘で、果敢に肉弾戦を挑む。 だが、キャラン(浩司)は、寸前でまるで、幻影の様に瞬時に避けるだけ。
決して、反転し攻撃を仕掛けて来ない。
「なめているのかー 何故? 反撃してこない!!!」 いきり立つ妙子。
キャラン(浩司)の眼を見る。
哀れみ? 悲しみ? 妙子には、まだ理解出来ない その瞳の奥にある物を・・・ 見つめられている。
「何故? 私をそんな眼で見る!!」
キャラン(浩司)再接近 猛攻をかける。
しかし繰り出す各種の技・・・ 1発もヒットしない まるでキャラン(浩司)と言う実体を持たない幻影、空虚を虚しく切り裂くだけ。
少し離れ距離を置く。
額のネクスタルが輝きを増すと同時に、2枚のカラフルに輝く美しい翅が、エネルギー量を増大させ輝きを増す。
「喰らえ!!」 妙子が叫ぶと同時に、 エネルギー体の2枚の翅から 10発のエネルギー球が発生 2枚の翅が、羽ばたくと同時に、キャラン(浩司)に向け発射。
10発のエネルギー弾は、キャラン(浩司)に直撃・・・ いや直撃直前 全て弾かれる。
バリヤー・・・ キャラン(浩司)は、バリヤーを張る能力がある。
だが違う バリヤーではなない。 両手で持つ高周波セイバーで、1発のエネルギー弾を全て弾いた。
「少しはやるわね」 余裕の表情を浮かべる妙子。
この程度で、殺られる相手ではない。
あの神に等しいお方であるアピリムのBS(バトルスタイル)への変身前と言え 互角以上に戦った相手。
だが、今の妙子は、その相手 対キャラン(浩司)専用に、特化し開発されたプロトタイプ(試作型)。
秘められたポテンシャル、スペックは、計り知れない。
今まで何度も行ってきた、圧倒的不利な状況下に於ける実戦さながらの模擬戦など、常に圧勝 ケタ違いの戦闘能力を見せ付けてきた。
常に傍らで、コーチ役として、普段はやさしい姉としてリンの存在もあった。
実戦さながらの模擬戦では、いつもリンからの的確なアドバイスに従っていた。
何よりも 自分自身の心の中にいる "アナザー" とも呼べるもう1人の自分に従っていた。
まだ妙子自身では、周囲の状況などに応じた戦闘など無理。
まだ10歳にも満たない子供では、無理があり過ぎる。
肉体面では、急激な成長促進により ほぼ大人まで近づいていたが、心、精神などの面では、まだ元々の年齢相応。
これから色々な事を経験し、学んでいかなければならない。
それを補う為 妙子に対して、ギルは、テレパシーによるマインドコントロール(精神支配)で、補う考えであった。
だが、何度も行われた実戦さながらの模擬戦でも ギルのテレパシーによるマインドコントロール(精神支配)は、余り効果がなく、ほとんどテレパシーによるマインドコントロール(精神支配)に反応しない。
全くと言って良いほどコントロール出来ずにいた。
その原因も良く解かっていない。
だが、実戦の修羅場は、今回が初めて、いきなり戦うには、相手が悪過ぎた。
はっきりと言って準備不足 いやまだ何も準備されていない。
特に、精神面に置いて、まだ何も経験も学んでいない子供。
相手のキャラン(浩司)は違う。
歩んできた人生の時間、数々の戦闘以外にも修羅場を潜り抜けてきた。 それもいつもたった1人の孤独な戦い。
サラリーマン、OL、公務員などと違う 常に周囲に多数の仲間と、組織に守られてきた甘ったれた温室育ちと違う。
個人経営の自営業者の逃れられない宿命 多数を相手にたった1人で・・・ それも職人気質の厳しい世界。
サラリーマン、OL、公務員などの様に、手取り足取り丁寧に仕事など教えてもらえない。
先輩の仕事を見て、見よう見まねで、誰の目にも見えない場所で反復練習を繰り返す。
自らの力で這い上がって来た者だけしか認められない厳しい本物の職人の世界。
会社だ、組織だ、周囲だ、上司の命令が悪いなど ただの泣き言でしかない世界。
全て自力で勝ち取るしかない。
それが、今のキャラン(浩司)を形成している。
反面 独断専行の1匹狼的資質を持ち合わせてしまったのだが・・・・
キャラン(浩司)では、相手の妙子は、相手にならない。
何も周囲の状況を考えず、キャラン(浩司)憎しで、果敢に攻撃を繰り返す妙子に対して、キャラン(浩司)、常に周囲の状況を考慮しつつ 妙子の攻撃を避けていた。
上空の戦いであったが、地上では、街があり そこには、多くの人々の営みがある。
妙子の放つエネルギー弾を避けつつも地上に、エネルギー弾の流れ弾が、着弾しないように、気を配っていた。
エネルギー量の大きなエネルギー弾 地上に着弾すれば、大きな被害が出る。
人のいない場所の上空空域に誘おうとしているのだが、うきく妙子が乗ってこない。
相変わらず、妙子の高機動力を活かした一撃離脱のヒットアンドウエーを攻撃が繰り返される。
瞬時に場所を移動 激突のたび そこには、巨大なエネルギー同士の激突によるソニックブーム(衝撃波)が発生 空気がまるで水面に出来る巨大なエネルギーを持つ波紋の様に震え広がる。
この戦いの模様を心配げに見上げる地上の小さな地方の小都市の人々 だが、余りに動き、スピードが速過ぎて、いったいどんな戦闘を行われている見切れる者は、だれ1人としていない。
不安げに、上空をただ見つめるしかない。 この戦闘で、この小さな地方の小都市が破壊されない事を祈りつつ。




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