LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 放浪 Part10

 「出せる部隊はないのか?」 ギルのどなり声が響く。
イライラとした表情を浮かべ、苦虫を潰した表情で、モニター画面を睨むギル。
先程から何度も、妙子に向かいテレパシーを発射 だが、全くテレパーシを受け付けない。
ギルの精神支配下に入り コントロールが出来ない状態が続いている。
何か? 別の大きな力? エネルギー? により完全に防がれている。 それも妙子自身から・・・
有り得ない話だ。
今 妙子を強引に連れ戻すには、他の部隊を派兵し キャラン(浩司)の相手をさせ その隙に強引に連れ戻すしか方法がない。
妙子は、まだ未完成 今 ここで失うのは得策ではない。
「十分な兵力を整えないうちに、ある偶発的きっかけで、全地球を支配したのじゃが・・・ やはり見通しが甘過ぎたみたいじゅわい・・・」
苦虫を潰した表情でつぶやくギル。
全地球をカバーする程の十分な兵力は、まだ整えられていない。
世界各地で続発する単発的な反体制暴動・・・ 元々の敵対勢力であるヤーナのゲリラ活動・・・・ ヤーナから分離し 自らを神々などと呼称する物のメシア軍などほざかし 今こそ神々などと呼称する物の敵であるネクストノイドを絶滅させミレニュアム(祝福された神々の1000年王国)をなどと嘯く ピエール率いる外道なやつら。
十分な兵力がない為 対処が、後手後手に回っている現状。 それでも支配が確立しているのは、各勢力が、互いに分断しており;連携に欠けている為 どの勢力が、中心になるか?で揉めておる。
1つにまとまらぬ限り 所詮弱小勢力 格好の各個撃破の対象だが、こちらも戦力に余裕を欠いている。
戦力増強の為 全人類のネクストノイドへの改造を急がねばならないのだが、重要な拠点である改造施設のほとんどを あのキャラン(浩司)1人の手で、ことごとく破壊され 再建もままならぬ状況 偶発的ではあるが、世界各地で頻発している天地災害による被害 その対策の為 そこまで手が回らぬ状況であった。
頻発する天地災害の為 現在 全人類の人口は、緩やかであるが、減少傾向にある。
最盛期 70臆人を超える人口を誇っていたものの 現在70億人を大きく下回っている。
もちろん 世界各地で起きる反アポリス勢力によるテロ、紛争などによる巻き込まれた民間人を含む戦死者数も 決してバカにならない数に及んでいる。
この状況が続けば、最終目的である "大いなる計画" も危うくなる。
大いなる計画・・・ それは、ピエールなどが信仰する 我々が、かって神々と呼称したEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)に対する復讐。
我々の祖先のDNAを改造 エルとも呼ばれる この宇宙にどこかにいるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の戦闘用生体兵器として、開発途中に放棄された先祖の子孫である我々 その我々が、エルも呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)から真の意味で、呪縛から逃れ 本当の自由を手に入れる為 聖なる戦い。
エルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)が、この地球から 理由は不明だが、急遽全面撤退の為 かなりの数の遺産と呼ぶべき 現在の我々を遥かに凌駕する 驚異のオーバーテクノロジーを残していった。
その驚異のオーバーテクノロジーを利用し 対エル用の生体兵器 やつらエルが、開発中だったネクストノイドを作り上げた。
だが、我々の存在を知り 敵対するヤーナの存在 事もあろうか、あのエル呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)を まだ神々だと敬い信仰 その神々の正義を実行するなどとほざき敵対するピエールもその1人だが、C宗教の1部信者 何よりもエルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の最重要目的であったレジェンスと呼ばれる 驚異のエネルギー体 それをあのキャラン(浩司)が、いったいいつ、どこで手に入れたのか? 融合しており 我々に対して戦いを挑んできた。
キャラン(浩司)の最終戦略目的は、不明だが、一時属していたヤーナからも 当時同じく属していたピエールと対立し離脱 たった1人での戦いを挑んでいる。
そして、どこで手に入れのか? エルと別のEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)のオーバーテクノロジーとも思われる数々のハードウエアーの武器まで使用している。
由々しき問題。
我々の知るエル以外の別のEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)と、何らかの契約なりを結び数々のハードウエアーの武器まで供与を受け この地球に何らかの関与をしているのだろうか・・・・
だが、もしそうであるならば、エル以外の別のEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)は、大軍を引き連れ正面から現れるはず。
侵略が、目的とは思えぬ。
ただの模様眺めならば、わざわざあれ程のオーバーテクノロジーを供与する必然性はない。
キャラン(浩司)は、たった1人での戦いを挑んでいる。
キャラン(浩司)のやつは、まかになりにも戦略家としての資質を育んでいる端くれ。 勝ち目の無い戦いなど挑まぬ。
必ず何かあるはずじゃ 真の戦略上の目的。
今の戦いをみても それを読み取る事が出来る。
現在の世界各地で多発する異常な数の天地災害を巧みに利用 我々の最重要補給戦である ネクストノイドへの改造施設を たった1人で、ことごとく破壊し 俸給を絶つ 戦略の基本に立った戦い方じゃからのう。
あえて真正面から大軍を相手にせす、最重要な補給を絶つ事により 我々の自滅を誘う・・・・
現在の世界各地で多発する異常な数の天地災害により その復旧の為 破壊されたネクストノイドへの改造施設の再建がままならぬ事を計算しておる。
憎たらしい限りの戦略に元ずくゲリラ戦術を使ってのう。
補給の最重要性を熟知した戦い方。 補給を無視して戦争の継続が出来ない事を良くわきまえておる。
わざわざ正面から主力の本体を叩かなくとも 俸給を絶ってしまえばいい・・・・
そんな考えが、ギルの頭を過ぎっていた。
だが、今 そんな事を考えている余裕などない 勝手にキャラン(浩司)との1対1のサシ勝負を挑んだ妙子を連れ戻す事 まだ機は熟しておらぬ。
ここで゛妙子を失っては、戦略全体の構想に、大幅な狂いが生じる。
重要なのは、個として武勲ではない。
いずれは、大軍を率いてキャラン(浩司)と戦い勝利してもらう。
キャラン(浩司)と、妙子の戦闘を写し出している正面の大型モニター画面に眼が行く。
一方的に妙子が押している様に見える だが、キャラン(浩司)は、巧みに攻撃を避けているだけ。
「キャラン(浩司)のやつ いったい何を考えておる・・・」
何故? 反撃しないのか? ギルには、理解出来なかった。

 一方 キャラン(浩司)は、想像以上の妙子の瞬雛な動きに、手を焼いていた。
「これでは、デストロのBS(バトルスタイル)に変身後のスピードと、ほとんど遜色がない」
それに、妙子の動きが、妙に狡猾に感じていた。
妙子自身の考え、戦闘経験に元ずくとは、とても思えない。
「やはり 何か別のエネルギー? 自我? に操られているいるのか? それもデストロの1体 あのギルのテレパシーによるマインドコントロール(精神支配)? いや違う それならば複数のグロテノスを使い 必ず組織戦によるフォーメーションで戦って来るはず、やはりあの時のリンと同じ ネクスタルの暴走による ネクスタル自身が、自我に目覚め 妙子をコントロール・・・・ しかし眼や、表情が、あの時のリンとは違う まだ完全にコントロール下にはかれていない」
だれにも聞こえない様な小声でつぶやく。
キャラン(浩司)の読み通りであった。
現状 妙子は、まだネクスタル自身が自我に目覚めていたが、完全に妙子を乗っ取ってはいなかった。
まだ 妙子は、決して超えてはならない最後の一線 Absolute Area(絶対領域)には、入っていない。
その手前の段階であった。
確かに、自我に目覚めたネクスタルであったが、Absolute Area(絶対領域)に入らなければ、相手の精神を乗っ取り 肉体を支配する事は出来ない。
模擬戦以外の初めての実戦 キャラン(浩司)に対する憎しみだけでいきりたつ妙子に 的確な指示を与え キャラン(浩司)を追い詰めている。
自我に目覚めたネクスタル自身 レジェンスの持つ驚異の上限値の無い無そのもののエネルギーを自ら取り込み我が物にしょうと欲しているかのように、この驚異のエネルギーを手に入れる事が出来れば、全ての多重宇宙そのものを支配出来ると・・・・
融合しているが、ほとんど何も知らないキャラン(浩司)以上に、レジェンスの持つ本来のホテンシャルら気づいているのかも知れない。
そこから発するエネルギーによって。

 小都市上空から 人口の無い場所へ しきりに誘いこもうとするキャラン(浩司)だが、うきく先回りされ動きが封じられる。
ここでは、大技の各エネルギー弾が使えない事を知っている。
使えば、地上の小都市もタダでは済まない。
勝つには、強力なエネルギーを使用しなければならない。
使用すれば、間違いなく妙子を跡形も無く消滅させる事が出来る。
だが、それでは妙子を殺す結果をもたらす。
今 この状況を招いたのは、キャラン(浩司)自身 責任の一端はある。
妙子を殺す事が出来ない。
ネクスタルだけを破壊する事も考えていたが、ネクスタルを破壊すれば、妙子は死ぬ。
ネクスタルを取り除く方法も結果は同じ 妙子は死ぬ。
良い方法が、全く浮かばない。
「どうした キャラン(浩司) 私の攻撃が、余りにもすさまじく 反撃のチャンスもないのか?」
今までの妙子の音色とは、少し違ってきている。
そう少女らしい 少しキーが高く優しい声から かなりトーンの低い 何か深い漆黒の闇に包まれた様な どす黒い部分が含まれている。
自我に目覚めたネクスタルにより 精神と、肉体の支配が始まりだしたのか?
余り時間が残されていない。
完全に乗っ取られたら 多分 救いようがないだろう。
無限と思われる上昇するエネルギー ただ破壊の限りを尽くす・・・・ かも知れない。
「何とかして食い止めなければ・・・・」 小声でつぶやくキャラン(浩司)。
だが、何か有効的な対策方法のなど直ぐに思い浮かぶはずなど無い。
ノルンとテレパシーによる交信も 余り良い返事はない。
アポリスのマスターコンピューターをハッキングし、ネクストノイドに関する数々のデータが、蓄積されている。
戦死した川村と、百合のフィアンセコンビが、世界各地のアポリスの主要基地で仕掛けたハッキング機器 見た目 内部構造を調べても通常の部品としか見分けられない だが、実は、レグの驚異のオーバーテクノロジーで作られた探査不可能なナノレベルの特殊な通信装置が内臓されており それを地球衛星軌道上を回るステルス製スパイ衛星ホッパーを経由 多重宇宙の1つの別宇宙にあるアルファーベースのノルンに送信されている。
いつでも好きな時に、必要なデータをだれにも知られずハッキング可能。
アポリスのコンピューターネットワークを乗っ取る事もウイルスを注入 無力化する事も出来るが、今は、まだその段階ではない。
あえてデータのハッキングだけに止めている。
アポリス内部では、最高機密データが、ハッキングされているのは、気づいている。
だが、逆ハッキングしても途中痕跡が消えてしまい逆(トーレススキャン)探知が出来ず、通常のウイルスなどのセキュリティ対策を強化していた。
全く異なる未知の通信システムを利用されている。 その点には気づいている。
だが、特定出来ない。
全くお手上げの状態であった。
我々の眼に見える可視光の世界と同様 実は、可視光以外の赤外線、紫外線、X線などの別の波長では、違った世界で見える。
実際、眼に見える物以外の世界を認識するのは、中々難しい。
その対策とて、最重要機密は、現在使用しているコンピューターネットワークとは、別の全くリンクしていないエルの残したコンピューターシステム移し変えハッキングを防いでいる。
アクセス出来るのは、アピリムと、ギルのテレパシーのみ。
エルの残したコンピューターシステムには、ハッキングの形跡が全く見つかっていない。
だが、今までのハッキングによりかなり重要なデータを盗み出しており 膨大なデータが、ノルンに蓄積されていた。
その分析の結果 頭の額に埋め込まれているネクスタルは、エネルギーを無数に存在する多重宇宙の1つと繋がりそこから供給を受けているだけでなく 身体の各臓器と同様 生命維持に必要不可欠な存在 破壊は即死を意味する。
外科手術などで、取り除く事も不可能。

 妙子は、ネクスタルらのエネルギーが増大するにつれ 何か気持ちの良い安らかな眠りに陥るように意識が吸い込まれていく。
心の中にいる もう1人の自分の声が、まるで上空に浮かぶ雲が、柔らかで寝心地の良いベッドでの上であるように、やさしい温もりに包まれていくように その世界へと誘う。
その誘いに乗るよう いやまるで夢遊病者・・・ いや催眠術に掛かったように、何も考えず ただ誘いに乗るよう足を向ける。
そこには、暖かく、柔らかな居心地の良い 安らぎに満ちた世界がそこにある。
意識が飲み込まれていく。 深い、とてつもなく深いどこが底なのか解らない程の深い眠りに落ちる様薄れていく。

 妙子の表情が変化を始める。
眩いばかりの赤い光が、額のネクスタルから発せられ 妙子の全身を包み込む。
憎しみに満ちた表情であったが、リンと双璧の人類史上最高の美女 リンが大人の完成された美女であるならば、妙子は、まだ大人になりきれない どこかまだ幼さが残る絶世の美少女 どこがまだあどけなさ、幼さ、愛らしさなど残していたが、眩いばかりの赤い光の中で見る見る変わっていく妙子。
妙子を包み込んでいた眩いばかりの赤い光が、四方に四散し弾け飛ぶ。
現れた妙子。 その表情には、先程までの面影すら残していなかった。
見るも無残・・・・ と言う言葉がはたして適切なのか? 全く別人としか思えない。
鋭く吊り上った目尻 ゴールドでありながらも異様などす黒さを滲ませる瞳・・・・
まだどこか幼さを残していたプロポーションも完全な大人の完璧なプロポーションへと変化していた。
だが、全身から発せられるオーラは、まるで漆黒の闇の様が纏わり付き 近づく者全てを2度と出る事の出来ない漆黒の闇の中へと誘っているよ様に感じられる。
そして背中に生える2枚の翅 まるでどす黒い赤い血の様な薄気味悪い異様な輝きを放ちながら 更にエネルギー量が高まりを見せていた。
「ふ・ふ・ふ・・・・ またせたなキャラン(浩司)」 先程までのまだ幼さを残す少女らしい少しキーの高い愛らしい声とはまるで違う。 低いまるで地の底から響き渡る悪意に満ちた声を響かせる。
もはや人格も肉体も別の者に乗っ取られている。
「わらわ こそこの宇宙の支配者となる者ぞ」
不敵な笑みを浮かべ言い放つ。

 「何と言う事だ・・・・」 しきりに歯軋りし表情は、強張り両手を固く握り締めモニター画面を その鋭い今にも破壊しそうな眼光で、睨みつけるギル。
 どうやらこの事態が起こること、薄々感ずいていたのだろうか? だが、まさか現実になるとは思っていなかったのだろう 想定外の出来事。
 ネクスタルの研究者としては、第1人者 エルと呼ばれるかって我々人類が神々と呼称したEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の残した数々のオーバーテクノロジーに最も精通し、エルの残したマスターコンピューターに直接アクセス出来る たった2体のネクストノイド。
この事態が起こりうる事は、危険性の中で、詳細ではなかったが、可能性の1つとして、指摘されいた。
ある限界値を超えると、ネクスタルそのものが、自我に目覚め ネクスタルを埋め込まれた者の精神と肉体を支配する・・・・
あくまでも可能性の1つに過ぎない・・・・
だが、前回 リンが、キャラン(浩司)との対決中 その兆候を示した。
その為 その欠点を克服する為 更に研究を進めていた。
キャラン(浩司)を倒すには、あの領域の無限とも思えるエネルギーが、必要不可欠 だが、その領域に入ると、ネクスタルそのものが、自我に目覚め 埋め込まれている者を精神、肉体両面から完全に支配し、全く別の人格を持つ者に変わってしまう。
全くの別人に・・・・
そして、上位モデルである 我々デストロどころか、最上位モデルであるアピリムのテレパシーによるマインドコントロール(精神支配)をも受け付けなくなり 全くコントロール出来ない状態になる。
下手すれば、その鋭い刃を向けられる。
コントロール出来ないハードウエアーなど、無用の長物・・・・
その恐れていた事が、現実に起きてしまった。
今 まさにこの瞬間・・・・
「リンが・・・」 そう妙子を止める為 部隊を率いて向かったリンを思い出した。
仮に、リンが止めに入っても もう無理であろう もうあれは、妙子ではない。
自我に目覚めたネクスタルの支配する別人。
下手すれば、同じ改造を施しているネクスタルを持つリンが、今度こそ自我に目覚めたネクスタルによって支配される。
ミイラ取りがミイラになる・・・ その愚を犯す事になる。
「リンに、早急に、基地に戻るよう連絡をしろ!!」 ギルのどなり声が、司令所内に響く。
リンも この頃 余りテレパシーによるマインドコントロール(精神支配)を受け付けなくなりつつあった。
妙子程ではなかったが、どうも様子がおかしな部分がある。
前回 キャラン(浩司)との戦闘で、テレパシーによるマインドコントロール(精神支配)を受け付けなくなり 暴走 自我に目覚めかけたネクスタルに支配されかかったが、キャラン(浩司)の一撃で、ネクスタルにひびが入り 瀕死の状態に陥ったが、ネクスタルの自我が崩壊したのか? その後回復したリンは、元通りに戻った・・・ いやそんな演技をしているのか? 各種精神検査の結果 ネクスタルが、自我に目覚めた形跡は、見当たらなかった。
だが油断は禁物。
現在、ネクスタルの自我の目覚めを抑える有効的対策方法はない。
何故? 自我に目覚めるのか? その根本的原因が、全く不明。

 その頃 自我に目覚めたネクスタルを有する妙子に苦戦を強いられるキャラン(浩司)。
「・・・わらわの名は、アルテミーラ キャラン(浩司) 貴様の融合するレジェンスをわらわの手中に納め わらわこそ絶対の力を持つ最強の存在となる・・・」
激しい手足を使った肉弾戦の攻撃 至近戦で追い詰めるアルテミーラ。
確かに、完全に自我に目覚めたネクスタルの自我 アルテミーラに、妙子の精神、肉体は、乗っ取られている楊に感じられた。
だが、僅か数回であったが、その表情の一瞬の変化にキャラン(浩司)は、気づいていた。
この一瞬を見抜けたのは、レジェンスと融合しているキャラン(浩司)であれば話であった。
集中すれば、する程 相手の動きがスローに見えるレジェンスの特殊能力の一端でもある。
一瞬であるが、苦痛に満ち 助けを求める表情を僅か数回であったが、見せていた。
まだ、完全に乗っ取られ別人になってしまったのではない。 そうキャラン(浩司)には感じられた。
チャンスは必ずある 元の妙子に戻す事が出来るはず。 だがどのような方法をあるのか・・・・
うまく至近戦での攻撃を避けながら模索する。
周囲の置かれている状況など全く無視したアルテミーラの攻撃。
至近戦では埒が明かないと見るや 少しキャラン(浩司)の距離を置いた。
憎悪に歪んだ表情の口元が、少し不気味な薄笑いを浮かべる。
背中に生える2枚の赤黒い不気味な光を発するエネルギーで出来た蝶の翅が、自ら供給されているネクスタルからのエネルギー以外 周囲に展開する空間が、元々持つ本来のポテンシャル・エネルギーと呼ぶべきか? のエネルギーまで吸収を始めたかのように、周囲に展開する空間そのものが、小さな粒子となり小さな光を発しながら輝く その小さく輝く粒子が、赤黒く輝く2枚の翅に吸収され 更に不気味な輝きを増し始める。
高まるエネルギー 吸収されたエネルギーは、2枚の翅の表面の各々場所に、集まり球体に成長 にやっとアルテミーラを薄笑みを浮かべる。
その瞬間 各々場所で球体に成長したエネルギー体は、四方へ向かって発射されランタ゜ムに動きながらキャラン(浩司)目掛け光速に近いスピードで、突撃する。
全身を 球体のバリヤーで包むキャラン(浩司) 余りのエネルギー量に押され バリヤーに包まれた状態で、後方に弾き飛ばされる。
1部のエネルギー体は、キャラン(浩司)目掛けず、地上へ まるでゲリラ豪雨の様に、無数の大粒の雨となり降り注ぐの目撃。
「みなっち・・・・!!」 思わず叫び声を上げるキャラン(浩司)。
地上へ降り注ぐゲリラ豪雨の様の無数のエネルギー体の向かった先は、地方の小都市 そこには、みなっちが、この戦闘を避ける為 どこかに身体を隠している。
それに、小都市と言え ここには、少ないながら人々が、日々の生活を行い住んでいる。
老若男女問わず・・・ それもほとんどが、まだ改造を受けていない・・・ いや受ける事の出来ない旧人類(ホモサピエンス・サピエンス)と、蔑まされている自営業者などを中心とした人々 キャラン(浩司)に取って、守らなければならない人々。
着弾と共に、轟音を響かせ 爆煙と、小さなきのこ雲を上げ そこから発生するソニックブーム(衝撃波)で、周囲の物をなぎ倒し炎上。
まさに無数の多弾道ミサイルによる集中爆撃を喰らった都市爆撃の模様が、そこに展開される。
まさに、無差別都市爆撃によるジェノサイド。
地獄の業火に焼き尽くされるような小都市。
阿鼻叫喚 そこはまさに地獄図。
都市内部では、周囲のあらゆる建物は、爆破され崩れ落ち、炎を上げ 逃げまとう人々の行く手を阻む。
親とはぐれたのだろうか? いや親は、この爆撃で死亡したのか? 小さな子供が大声を上げ涙を流しながら立ち尽くし。
そんな子供をだれ1人として、助けようとしない。 だれもが、この状況から抜け出そうと、必死に安全な場所へ逃げようと、右往左往と、ただあてもなく逃げるだけ、どこが安全な場所なのか? だれにも解からない。
市街地、郊外関係ない。
ただあるのは生存本能のみ 逃げる 他人などかまっていられない。 自分が生き残るのに精一杯の状況。

 バリャーに包まれながらも余りの威力で、弾き飛ばされ 大きく後退、意識を失いかけたキャラン(浩司)。
ホバーリング(空中停止)状態で、何とか飛行状態を保っていた。
左腕のフレスレット型通信機の信号音に、ようやく失いかけていた意識が、はっりとする。
「この信号音・・・」 そうこの信号音は、みなっちから あの爆撃の中で、どうやら左腕にはめているレグのオーバーテクノロジーにより開発されたブレスレットのセフティー機能がオート(自動)で瞬時に働き バリヤーが、みなっちを包み込んだ。
無事である事を知らせる信号音。

 「いい加減にしなさい 妙子ちゃん」 大人の女が持つ 独特の燐とした音色の声が響く。
かなり怒りが篭っている。
まるで、わがままばかりを言って、言う事を聞かない小さな子供を しかりつける母親の様な口調。
だれも この小都市の状況を見れば、そう言う態度に出る。
余りに酷い状況。
妙子を精神、肉体 両面から乗っ取ったアルテミーラの前に、同じフォルムを持つ 1体のグロテノス そうハイパービューカーが、立ち塞がる。
そう妙子を自らの妹の様に可愛がっているリン。
だが、その表情は、言葉で言い尽くせない程の怒りに満ちている。
妙子の行った行為は、戦闘ではない 単なる無差別都市爆撃によるジェノサイド。
戦争は、確かに人殺しゲーム だが、守らなければならない最低ルールがある。
非戦闘員には、理由も無く危害を加えてはならない。 鉄則である。
ネクストノイドが、支配する現在地球 だが、この様な行為をおこなうと、人心は離れ 更に敵対する勢力が、相対的に支持を増やし漁夫の利を得る。
決して、行っても、見逃してもならない行為。
妙子の顔を凝視する。
確かに目の前にいるのは、妙子のはず・・・ だが、まるで別人。
「あなた 本当に妙子ちゃんなの?」 思わず口に出てしまった。 信じられない表情で見つめるリン。
司令部からの 至急本部に戻るよう命令を受けた。 だが、あえて命令を無視し 部隊を率いてここまで飛んで来た。
時々見せる 妙子のお転婆に手を焼く事がある。
今回も その1つだと思っていた。
姉として、しっかり注意しなければ・・・ これは、子供のお遊びではない。 生命を掛けた戦争。
自分1人のミスが、部隊・・・いや アポリスのネクステノイド全員の生命に関わる事すら有り得る。
まだ精神年齢は、肉体年齢成長促進前の年齢相応の妙子 相手は、百戦錬磨 年齢以上に数々の、修羅場、経験、場数を踏んでいる あのキャラン(浩司) 戦闘能力は、グロテノスの最強であっても まともに、戦って敵う相手ではない。
そんな妙子を なだめ しかる為 あえて、命令を無視して部隊を率いて、ここへ来た。
それは、妙子の姉としてのリンの義務。
だが、眼の前にいる同じネクストノイドのBS(バトルスタイル)のハイパービューカー 同じハイパービューカーは、2体しか存在しない。
リンと妙子のみのはず。
だが、同じハイパービューカーでありながら 眼の前にいるのは、全く異質に感じる。
異質に感じるのは、外観ばかりでない、ネクスタルから発するエネルギーも・・・・ 異質と言うより異様にすら感じられる。
それに顔も まるで妙子と違う まだどことなく少女らしさを残す愛らしい幼い顔立ちから殺意、憎悪、悪意・・・ まるで血に飢えた獣の様な醜く歪んだ女の顔。
それにスタイルもまるで別人 美しいスタイルの持ち主であったか、まだ完成された大人の女のスタイルではない こちらもまだどことなく幼さを残していたが、今目の前にいるのは、確かに、完成された美しい絶世と思える程のプロポーションを誇っている。 だが妙に生々しい毒だけを撒き散らす悪徳しか持たない淫んだらだけの女。
そして、全身から発する異様なエネルギー もしオーラと言う言葉で表すならば、まさに漆黒の闇の中ですらその存在を許さない様などす黒いオーラ。
だが、発せられるエネルギーの感覚 覚えがある。
「あの時と・・・」 小さな声が漏れる。
そうあの時 前回キャラン(浩司)と戦闘中に、リン自身に起きたあの忌々しい出来事と同じ。
突如 エネルギーが急激に高まると、同時に、自分の中に、もう1人の自分が現れ もう1人の自分に、精神も肉体も全て乗っ取られそうになったあの時感じた異様なエネルギーの感覚。
そうあれは、ネクスタルそのものが、自我に目覚め生み出した 私の心の中に潜むもう1人のアナザー。
だがあの時 私は、私自身の心の中で、精神も肉体もアナザーに奪われた状態で、囚われ必死に、精神と肉体を取り戻そうと、もがいていた。
そして、キャラン(浩司)の一撃で、ネクスタルにヒビが入り アナザーは消え 私は、私自身の精神と肉体を取り戻す事が出来たが、その代償は大きかった。 ネクスタルに亀裂が入り機能停止 生死を狭間を彷徨う事になった。

 「リンか・・・」 不敵な笑みを浮かべ見下すアルテミーラ。
勝負すらならない相手と思い上がっている。
リンが率いている飛行タイプの10体のグロテノス 相手に気づかれぬよう広く展開し周囲を取り囲む。
相手は、同じ仲間のネクストノイドではない。 もはや別物となった敵 相手の敵意、殺気を全員強く感じている。
それも言い知れぬ程の 底知れぬ強いエネルギー、戦闘能力を感じていた。
全員束になってかかっても はたして勝機があるのか?

 みなっちの生存を確認 少し安堵するキャラン(浩司)。
周囲を取り囲んでいたバリヤーを解除。
両手に握る高周波セイバーの剣先は下を向き。全身で、大きく喘ぐ呼吸を繰り返している。
「デストロのBS(バトルスタイル)以上の威力だぜ・・・」 小さくつぶやく。
今 まともに喰らったエネルギー弾の威力 そのすさまじい威力は、バリヤーで何とか防いだといえ相当強力であった。
バリヤーで防いでもダメージを受けた。 半端ではない。
少し離れた空域で、アルテミーラを取り囲むりんを中心とした10体のグロテノスを見つめる。
「勝ち目は無いなあー・・・・」 少し同情の入った言葉を漏らした。
自分自身に対する言葉ではない。
アルテミーラを取り囲む リンを中心とした11体のグロテノスに対する言葉。
ケタ違いの実力差 どうもがいても勝ち目が無いと感じていた。

 「・・・まだ真の覚醒をしておらぬそちに勝ち目などない」 言い放つアルテミーラ。
「雑魚共に用などない わらわのターゲット(獲物)は、キャラン(浩司)のみ そこを空けるが良い」
「そしてわらわの下僕(しもべ)となり わらわに忠誠を誓うなら それなりの待遇で遇するぞよ」
全てを支配する女王様気取り。
「もし空けない 戦うと言うのならば、相手になってやろう 他だしその時は、死あるのみ」
余裕の態度、特に、死と言う言葉を強調する。

 複雑な表情で見つめるリン。
自我に目覚めたネクスタルルのアルテミーラに、精神も肉体も乗っ取られたと言え 相手は、妙子 妹と思い それ以上に可愛がっていた妙子 やはり情がある。
今 あるのは、ためらいと困惑。
自分の時同様 何とか元の妙子に戻す方法を模索する。
だが、瞬時に思いつく事など、到底無理。
時間稼ぎ・・・などもはや絶望的状況 この状況を本部基地のモニターで見ているギルが、自身の最強の精鋭部隊を率いて、妙子の討伐に乗り出す。 見逃す事の出来ない状況 後顧の憂いは、絶たなければならない。
裏切り者には、"死" あるのみ。
頭では、その程度理解出来るが・・・・
ギル率いる.最強の精鋭部隊が来る前に、リン自身の手で処分するしか思い浮かばなかった。
だが、決断が鈍る。

 「束になっても わらわらには勝てぬ」 挑発するアルテミーラ。
「かかって来ぬなら こちらから行くぞ」 言い放つと同時に、2枚の翅が輝きを増す。
赤い・・・ まるで血で塗られた様なエネルギーで出来た小さな三日月が、無数に羽根の表面に現れ 周囲に飛び出す。
同時に、周囲を囲んでいた10体のグロテノスの断末魔の叫び声が上がった。
エネルギーで出来た無数の小さな三日月により 細かく斬り刻まれていく10体のグロテノス。
その光景を 唖然とした表情で見つめる事しか出来ないリン。
「ふ・ふ・ふ・・・・ 見たかリン わらわらの力の片鱗を・・・・」
まだこの程度ではないと言わんばかり言い放つアルテミーラ。
感じるエネルギー、戦闘能力は、この程度ではないと告げている。
斬り刻まれ肉片となって地上へ墜落する 周囲にいたグロテノスの死体を見つめるリン。
力の差は、歴然としている。
周囲にいた10体のグロテノスは、全てハイパータイプ。
身動き1つする前に、全て瞬殺された。
こんなケタ外れの強さを持つ者は、あのアピリム様だけだろう。 リンの知る限り・・・ そして、もう1人 そう忘れてはならないあの男 キャラン(浩司)。
仲間殺し 誤って同士討ちのフレンドリーファイヤーとは違う。
確信犯。
くやしさを現すかの様にも表情は強張り、奥歯が軋む そして真っ白になる程両手を強く握り締める。
「妙子ちゃーん!!」 悲痛な叫び声を上げ 怒りにまかせアルテミーラに突撃するリン。

 この戦闘を 少し離れた空域で傍観していたキャラン(浩司)
脳裏には、"勝つ事だけを考えると、途方も無く卑しくなる・・・" あの有名なSF小説 田中 芳樹著書 銀河英雄伝説の中で、最も気に入っているキャラクター ミラクル・ヤンこそ ヤン・ウェンリー フリー・プラネッツ(自由惑星同盟)軍元帥の名言が脳裏を過ぎっていた。
「敵の敵は、味方か・・・」 小さな呟き声。
呉越同舟。
利害の一致・・・
この状況をどう生かすか? 冷徹、冷酷な戦略家としての一面 戦術、戦闘上の勝利に固守せす、常に戦略上の勝利を求める姿勢の表れでもある。
強固な一枚岩と思われたアポリス 確かに、デストロの1体 龍(ロン)の裏切りがあったが、それ以降 磐石と思われた。
またここにきて、小さな綻び たった1体かも知れない だが、強力な力を持つ者が、反旗を翻した。
この小さな内部分裂であったが、巧みに利用し 互いを疲弊させる・・・
巨大で、強固に思われるダムも 崩れる時は、小さな亀裂からだ。 そこから滲み出た小さな水滴が、やがて大きな亀裂となり ダムそのものを崩壊させる・・・・
戦わず、出来る限り"楽"して勝つ方法の1つ。
もしこの状況を死んだ親友の川村が見たならば、喜び勇んで、あらゆる小細工の施しに骨惜しみをしないだろう。
失った者の大きさを 改めて実感させられる。
だが、本来の戦略目的と遺脱する。
本来の戦略目的は、視野が狭く、狭量で、教条主義的などのピエールと違う。 アポリスを倒し、ネクストノイドの全滅ではない。
もしそうであるならば、無限のエネルギーを持つ、レジェンスと融合しているキャラン(浩司) その無限のエネルギーの1部を解放すれば、地球ごと消滅させる事など容易い。 だがこれでは、アポリスを倒し、ネクストノイドを全滅させられるが、意味はない 勝利ではなく、他だの史上最悪のジェノサイド。
本来の戦略上の目的は、アポリスを倒し、ネクストノイドを全滅させ、自ら地球の支配者になる事でもない。
これは、ピエールの間違いの無い最終目的 あいつは、神々などと呼称する EBE's(イーバーズ=地球圏外生命体)の まさに蜃気楼の様な権威を唯一絶対化し利用、自ら君臨しようとしているだけ。
宗教などと、呼称する物の持つ 本来の本質の1つ。
最終戦略上の目的は、我々 ホモサピエンス・サピエンスと、ネクストノイド それに、これから誕生すると思われる新たなニュータイプと呼べる 色々な適応タイプに、分離、進化した多種多様性を持つ人類の共存。
その為の 歴史の流れを作る事。 これが本来の戦略上の目的。
これを実現させる為には、ネクストノイドの大多数を占めているグロテノスを テレパシーによるマインドコントロール(精神支配)している 上位モデルのデストロと、最上位モデルで、支配者のアピリムを倒し テレパシーによるマインドコントロール(精神支配)の呪縛から解放。
今 その戦略上の目的の為に、戦っている。
これが、人類に取って、歴史の流れの上で、正のか? 解からない。 こう言う事は、後世の歴史家に任せるしかない。
多分 アンチであり、ダーティなヒール役だろうが・・・
俺みたいな1匹狼には、最もふさわしいかも・・・・
呆れた笑みを薄く浮かべる。
自分自身の事すら 痛烈に皮肉くるキャラン(浩司)らしい思考パターン。
だか、今は、こんな事思考している場面ではない。
眼の前で起きている事に対して、どう対応するか?
リンは、確かに敵だ。 だが見殺しにも出来ない。

 その頃 リンは、防戦を強いられていた。
至近距離による激しい肉弾戦 だがアルテミーラに触れること事も出来ない。
繰り出す、突き、蹴り だが、かすることさえ出来ない。
「どこに眼をつけているんだ」 あざ笑うアルテミーラ。
少し距離を置くリン。 まだ前回キャラン(浩司)との戦闘による傷は、完全に癒えていない。
「このままでは・・・・」 ネクスタルからのエネルギーを高めようとした。
小さい 何か? 誘うような声が心に響く・・・ 「いけない・・・」 小声で呟きながら被りを振る。
慌てて ネクスタルからのエネルギーを通常モードに戻す。
このまま高めては、ネクスタルの自我が目覚め 精神も肉体もアナザーによって、乗っ取られ、支配される。
妙子の二の前になる。
その一瞬の隙を突かれた。
「もう攻撃は、終わりかい ならばこちらから行くぞ」 そう言い放つと同時に、アルテミーラは、動いた。
速い まるで瞬間移動したかのように、突如リンの眼の前に現れ 強烈なキックをリンに喰らわす。
大きく蹴り飛ばされるリン。
「これで、どうだ」 アルテミーラは、叫ぶと同時に、2枚の翅から先程 キャラン(浩司)に使用した 無数のエネルギー弾をリンに向け発射。
無数の小さなエネルギー弾は、ランダムな動きで、リンに襲いかかる。
命中直前 何か影がリンの前に立ち塞がり そのまま白い球体に包み込まれる。
「キャラン(浩司)」 リンは呟く。
「大丈夫か? リン」
顔だけを後ろに振り向くキャラン(浩司)。
苦悶の表情を浮かべつつも小さく少し微笑みを浮かべるリン。
キックの一撃であったが、かなりのダメージを受けている。
さりげなく右手で腹部を押さえている。
攻撃が、止むと同時に、キャラン(浩司)は、バリヤーを解除。 そのままアルテミーラに、攻撃を加えようとした瞬間 先にリンが動いた。
「そこを おどきキャラン(浩司)」 そう言いつつリンは、アルテーミーラに突撃 キャラン(浩司)の横を通り抜け 同時に、額に生える2本の渦巻き状の触手を伸ばしビームを発射。
だが、2本のビームは、アルテミーラの2枚の翅に吸収される。
「無駄な事を」 あざ笑うアルテミーラ。
「その程度のエネルギーピーム わらわらには、通用せぬ」
「わらわらと互角に戦いたくば、ネクスタルのリミットを超え その中にいる もう1人のアナザーを覚醒させる事じゃ」
不敵な笑みを浮かべる。
「だが、その時は、リンよ お前は、わらわらの下僕(しもべ)となろう」
笑い声を上げるアルテミーラ。
アルテミーラのの前に、ホバーリング(空中停止)し アルテミーラを凝視する事しか出来ないリン。
大技のエネルギービームを使っても 結果同じ あの2枚の翅に、吸収される。
互角に戦うには、同じ力を得る以外ない。
奥歯を食いしばり悔しさを滲ませる事しか出来ない。
ここまで、リミット近くまでエネルギー量を高めていた。
現状 勝ち目はない。 レベルの差は、歴然としている。

 「下がれリン!!」 後ろからキャラン(浩司)の声が響く。
「嫌よ 刺し違えても・・・・」 そう言い終わらないうちに、不意打ち鳩尾に、強烈なボディブローを喰らう。
薄れていく意識 目の前には、厳しい表情のキャラン(浩司)の姿が映った。

 お姫様だっこで、リンを抱き上げキャラン(浩司)の姿が、瞬時に消える。
アルテミーラの眼には、テレポーテーションしたかのように見えた。
同時に、地上にキャラン(浩司)は、姿は現す。
地面に、意識を失ったリンを寝かせる。
一言も言わない、表情1つ変えず、キャラン(浩司)は、リンを見つめる。 姿が、またも忽然と消え アルテミーラの前に、瞬時に現れる。
「待たせたな」
元をたどせば、キャラン(浩司)の責任もある。
今は、自我に目覚めたネクスタルにより覚醒したアルテミーラに、精神、肉体を乗っ取られた妙子を ここまでさせたのは、戦闘とは言えキャラン(浩司)が、殺した2体のグロテノスは、妙子の両親 それも妙子の眼の前で。
原因の一端はある。
自らの責任で、処理するしかない。
だが、何とか元に戻す方法も諦める理由にはいかない。
ジレンマ。
「あの女に惚れているのか?」 少しバカにした口調 眼も薄っすら笑っている。
「別に嫌っていないだけ」 表情1つ変えずポーカーフェイスで答えるキャラン(浩司)。
だが、その答えに、しっくりいかない表情を見せるアルテミーラ。
その表情をキャラン(浩司)は、見逃さない。
「精神年齢は、まだ子供?」 内心呟く。
ある一定年齢以上で、それ相応のキャリア、人生経験を積んでいる者であれば、この微妙な気持ち 何となくだが、理解出来るはず。
「それは、好きと言う事だな」 面白そうに言うアルテミーラ。
「こう言う面では、まだまだ子供だなあ・・・・」 内心そう思いつつアルテミーラを見つめる。
そのアルテミーラは、何がおかしいのか? 両手で腹部を抑え 大声で笑い出す。
「大人と言うの者は、実に面白い」
自分自身の未熟さをさらけ出している様に、キャラン(浩司)には思えた。
精神年齢が子供でも 許されない非戦闘員に対するジェノサイド 小都市1つをほぼ壊滅させてしまった。
本人は、無邪気な子供でいるつもりなのだろうか?
多数の尊い人命を奪った行為を・・・
その秘めているエネルギーを・・・
だが、このまま見過ごす事は出来ない 新たなる被害を未然に防ぐ為にも。
だが・・・ だが・・・ たが・・・ 決めかねるキャラン(浩司) 珍しく方針が決まらない。
いつになく優柔不断 命取りなりかねない。
"決断したら即実行する そうすればおのずと道を開ける・・・" ばす。
そう信じるしかない。
そうして今まで生きてきた。 今更人生は変えられない。
方向が決まらず、優柔不断 思い悩んでいるキャラン(浩司) だが、今は戦闘中 隙だらけ、そこを狙われた。
じっと動かず、ただホバーリング(空中停止)でいるキャラン(浩司)に、アルテミーラは、急接近 右回し蹴りをキャラン(浩司)に喰らわす。
「何を ぼっとしている」 あざ笑うアルテミーラ。
まともに、左腹部に回し蹴りを喰らい キャラン(浩司)は、そのまま地上に落下 地面に叩きつけられる。
身動き出来ないキャラン(浩司) その隙を狙い アルテミーラは、更に攻撃を加える。
2枚の翅の表面に、多数の小さなエネルギーの光点を発生させ キャラン(浩司)目掛け撃ち込む。
ハリケーン・ガトリング。
まるで、超大型のハリケーンの直撃を喰らったように、小さなエネルギー弾が、嵐の様にキャラン(浩司)目掛け降り注ぐ。
大きな爆煙が上がる。
手ごたえを感じたのか? アルテミーラは、ゆっくりとキャラン(浩司)の墜落地点に、降下する。
地上に降り立つアルテミーラ。
薄れる爆煙に向かって、叫ぶ。
「その程度の攻撃で、殺(や)られる貴様でもあるまい」
薄れる爆煙の中から、1人のシルエットが浮かび上がる。 キャラン(浩司)。
右手で、左腕を押さえ 少し苦悶の表情を浮かべながら大きく呼吸を乱している。
ある程度ダメージを受けているようだ。
だが傷は浅い この程度の傷 キャラン(浩司)の融合するレジェンスのエネルギーで、即座に、自己治癒力で、完治する。
この爆撃で、どうやら主要武器の1つ 高周波セイバーを破壊されたようだ。
手に武器を持っていない。
チャンスと思いきや キャラン(浩司)の右手に高周波セイバーのバトンが、突如出現 その手の中にある。
まるで高度なマジックショー。
時より戦闘中に、キャラン(浩司)の使用する武器が、突如現れる。
アポリスの誇るオーバーテクノロジーでも不可能な 未知のオーバーテクノロジー。
量子テレポーテーションの応用では? と推測されていた。
だが、どこからこの様な未知のオーバーテクノロジーを入手したのか?

 「ノルンのやつ・・・」 キャラン(浩司)は、突如 右手に出現した 愛用の武器の1つ高周波セイバーを持ち 心の中で、少し苦笑いを浮かべた。
そのはずであった。
レグのオーバーテクノロジーの1つ QCTTシステムで、破壊された武器の補充をテレパシーで、ノルンに依頼していない。
「気を使いやがって・・・」 また心の中で呟いた。
レグのオーバーテクノロジーの1つにして、最高傑作とも言える 思考を持つスーパーコンピューター 愛称ノルン。
この戦いは、地球衛星軌道上にある 複数のステルス製スパイ衛星 ポッパーか監視しており ホッパー経由で、ノルンも この戦闘をモニターしている。
マスターであるキャラン(浩司)が、愛用の武器の高周波セイバーを破壊された事に気づき 直ぐにスペアーの高周波セイバーを QCTTシステムを利用し、別宇宙にある秘密基地である アルファー・ベースから量子転換し、量子テレポーテーションで、転送したのだ。
エルの持つオーバーテクノロジーを 更に超えた驚異のオーバーテクノロジー。
だが、戦争は、武器などの優劣で決まらない事を だれよりもキャラン(浩司)自身 1番良く理解している。
高度な新兵器 それだけでは勝てない。
キャラン(浩司)は、右手に持つ、高周波セイバーのスイッチを押す。
バトンから白銀で出来た未知の金属が伸び 歯の部分には、高いハム音を響かせながら青白い高周波が発生する。
ゆっくり構えに入るキャラン(浩司) その瞳 もう何も迷いを感じさせない。
「狙いは、あの赤黒いエネルギーを発する 背中の2枚の翅・・・・」 内心呟く。
今までの戦闘 全てのエネルギー弾などを使った大技は、あの赤黒いエネルギーを発する 背中の2枚の翅から発せられている。
あれを切断すれば・・・ そう考えた。
ほとんどの戦闘能力が失われるはず・・・
だが、そんなキャラン(浩司)を 見透かす様にアルテミーラの表情に変化する。
まるで、元の妙子の顔。
「あなたは、私の両親を殺した・・・・」 声まで元の妙子。
出足をくじかれる。 ここまでの戦闘 思えよう戦えない 優柔不断で、踏ん切りのつかない・・・ などこの1点にあった。
「そして、私も あなたが殺した私の両親の様に切り刻むの・・・・」 悲しい、怯えた表情、涙目になり訴えてくる。
一粒の雫が、頬を伝わる。
単なる心理戦 その程度 キャラン(浩司)は、頭で理解している。
キャラン(浩司)の動きが、完全に止まった。
その隙を突かれる。
接近戦 強烈なキック、パンチが炸裂 なす術もなくまともに喰らうキャラン(浩司)。
近くの ビルのコンクリートで出来た壁に、背中から叩きつけられる。
ぐったりと背中から滑り落ち地面に倒れるキャラン(浩司)。
「貴様は、わらわを殺す事が出来ぬ」 アルテミーラの顔に戻り見下す。
「貴様の持つ レジェンスをわらわに渡すがよい そうすれば、貴様のその命 助けてやってもよいぞ・・・・」
勝ち誇ったように言い放つ キャラン(浩司)が、反撃してこないとを見抜いている。
急に、アルテミーラの表情 態度が変わる。
先程まで違い 妙に生々しい大人の女の持つ芳醇で、過剰なフェロモン(色香)を周囲に撒き散らし、周囲に群がる まさに飛んで火にいる夏の虫を狙う捕食昆虫の様な 毒々しい女を魅せる。
「さあー 貴様の持つレジェンスを渡すのだ そして、わらわらに忠誠を誓え そうすれば、側においてやっても良いぞ」
戦術変更?
剛柔両面作戦に変更?
この程度で、惑わされるキャラン(浩司)ではない。
キャラン(浩司)は、そんなアルテミーラを見ながら別の考えが過ぎっていた。
"俺以上に、レジェンスの事 何も知らないのか?" 少し朦朧とする意識の中で、キャラン(浩司)は思った。
レジェンスは、エネルギー体 それも量子論で言う "無" の状態 無数の状態が、同時に共存し どの状態になるか? 確定出来ない無限でありながらも非情に不安定で、常に揺らぎ変動する。
そのエネルギーを利用するには、意思を持たないエネルギー体でありながらも レジェンス自身の気まぐれで選ばれ融合した生命体のみ それ以外は、拒絶する。
どの生命体を選ぶか、レジェンスの気まぐれ 今 この瞬間 アルテミーラを選べば、キャラン(浩司)は、融合を強制解除され レジェンスのエネルギーにより 無に変換消滅する。
キャラン(浩司)自身の意思で決められない。
融合者をどの生命体にするのか? レジェンス自身の気まぐれ。

 その時だった 物陰から小さな物体が、アルテミーラに向けて突進する。
小さな子供 それも女の子?
手には、その手に余る程の大きな 大人が使用するサバイバルナイフが、両手にしっかり握りられている。
サバイバルナイフが光る。 同時に、「パパ、ママの仇・・・・!!」 小さな女の子は叫んだ。
それに気付いたアルテミーラ 何事もなかった様に、体当たり直前に、右手で、突進してきた女の子を振り払う。
大きく弾き飛ばされる小さな女の子 そのまま背中から地面に衝突 スライデングする。
だが、その程度で諦めてない 全身小さな傷を被いながらも 健気に立ち上がり またも両手に握るサバイバルナイフを突き出し またもアルテミーラに向け突進する。
両目には、涙を溜め 悲壮感に満ち溢れた表情。
このままでは殺される。
誰の眼にも明らか。
「なめんじゃないわよ!!」 怒り振るわせた声で叫ぶアルテミーラ。
そのまま突進して来た小さな女の子の頭を 右手で鷲掴みにする。
余りの痛みに悲鳴を上げ 手足をバタつかせもがく小さな女の子。
両手に握っていたサバイバルナイフは、地面に転げ落ちる。
「たかが、旧人類(ホモサピエンス・サピエンス)の分際で、このわらわに、刃を向けるとは不届きなやつ」
怒りに満ちた表情で睨みつけるアルテミーラ。
「私は、旧人類(ホモサピエンス・サピエンス)じゃない パパ、ママと同じくネクストノイドへの改造待ち・・・・」
そうこの小さな女の子も 恵まれたサラリーマン家庭で生まれ育った 生まれながらにしての特権階級 常に守られ、何もしなくても全てが用意周到に準備されたレールの上を走れば与えられる存在。
気づかぬうちに、それが当り前になっていた。 それが無意識から出た言葉。
「だから何だと言うの!!」
アルテミーラは、叫んだ。
もし この言葉を 元である妙子が聞いたならば、違った反応を示したはず。
同じ境遇 仲間意識・・・
だが、アルテミーラは違う 現在 人類社会を覆い、蝕む 根本的病巣の1つなど知るはずもない。
特に、日本は、この傾向が、最も露骨であった。
そんな事 アルテミーラには、全く関係の無い話。
アルテミーラの目的は、1つ。

 今にも 意識を失いそうな猛烈な痛みの中 必死に耐える小さな女の子。
そうこの小さな女の子 この日 両親と共に、この小都市へ父親の仕事で、一緒に訪れていた。
父親の仕事が終わり 父親と合流一緒に、商店街へのショッピングの最中 この戦闘に巻き込まれた。
そして、先程の上空からのアルテミーラの激しい空爆 アルテミーラの放った何発ものエネルギー弾が、近くに着弾。 猛烈な爆発が近くで何度も起き その爆発から小さな女の子を守ろうと、両親は、自分の身体を盾にし 小さな女の子を身体に包み込み 爆発に巻き込まれ死んだ。

 その瞬間 アルテミーラに異変が起こる。
鷲掴みにしていた小さな女の子を 近くに放り投げると、苦悶に満ちた表情になり 両手で頭を抑える。
もがき苦しむアルテミーラ。
アルテミーラの深層心理に異変が起きていた。
完全に消し去ったはずの 元の妙子の自我が、再び目覚め 深層心理内で、激突を始めたのだ。
そう この小さな女の子 あの時の私と同じ・・・
今度は、自分が過ちを犯してしまった・・・・
自責の念。
それが、完全に帰し去ったと思われた 元の妙子の自我を呼び覚ましてしまった。
全く異なる2つの自我。
1つの肉体・・・ 精神を巡る激しい攻防。
余りの苦悶に、顔から汗が滲み出て、更に、苦悶で表情が歪む。
何を言っているのか? 2つの異なる自我から発せられる 意味不明の言語。

 ようやくヨレヨレながら立ち上がるキャラン(浩司) 思った以上にダメージを受けていた。
身体の各所が、猛烈な悲鳴を上げている。
両手で、頭を抑えもがき苦しむアルテミーラを見つめる。
何が起こったのか?
精神面の深層心理など 見抜けない。
ただ アルテミーラ自身の中で、異なる何かが? 争っている様に感じる。
昔 あるTV番組で、多重人格(解離性同一障害=DID)で、苦しむ複数の患者の特集を見た事を思い出した。
もちろん患者のプライバシーを守る為 顔は、モザイクが掛けられ、音声も変換されていた。
複数の人格、いやこの場合自我か? が争っている そんな感じであった。
何となくだが、多重人格(解離性同一障害=DID)で、苦しむ患者と似ている気がする・・・ だが、本質的なところは、全く異なっているのかも知れない。
何がきっかけだか不明だが、元の妙子の自我が再覚醒し 自分自身を取り戻そうとしているのでは?
少し離れた場所で、ぐったりと倒れている小さな女の子を発見。
悲鳴を上げる身体を引きずり 何とか小さな女の子に辿り着く。
脈を調べる 脈が無い 既に死亡している。
いたたまれない気持ちに包まれるキャラン(浩司)。
助ける事が出来なかった。
そっと両目を閉じさせ 胸の上に両手を合わせてあげる。
戦争の理不尽さの1つ 弱い者が、必ず大きな代価 代償、犠牲を強いられる。
弱肉強食、適者生存・・・・ そんな言葉等で、片付けたくない。
生命の進化とは、勝利した生命の歴史ではなく、敗れた生命の上にこそある・・・ ばずだ。
だが、生存競争に関しては、敗れた者には、死しかない・・・ それが現実だ。
生き残る為の普遍的ルール・・・・

 相変わらず の太刀打ち回るよう苦しむアルテミーラ。
だが、どちらか一方が優勢になりつつある様に見える。
苦悶に満ちた表情から 血の一滴も感じさせない 冷酷、冷血な表情へ戻り始めている。
どうやら 元の妙子ではなく、アルテミーラが優勢であるらしい。
今まで、見続けていた悪夢から眼を覚ます様に、大きく、何度も 顔を左右に振る。
ようやくケリ(決着)が着いたようだ。
すさまじい眼つきで、キャラン(浩司)を睨む。
「待たせたなあ― キャラン(浩司)」 低く冷酷な声 どうやらアルテミーラの勝利。
不敵な笑みを浮かべる。
「勝負は、これからだ さあー来いキャラン(浩司)」 そう言い終わると 赤黒いエネルギーで出来た 2枚の翅を優雅に羽ばたかせ上空へと舞い上がる。
地上より 動きに制約の少ない空中勝負 元来基本ベースであるハイパービューカーは、飛行タイプ 空中戦を得意とする。
自己治癒力を高めようと、レジェンスのエネルギーを上げようとするキャラン(浩司) だが、思うように上がらない。 変調。 いつもの事だが、自分の意思でコントロール出来ない。
だが、このまま見過ごす事は出来ない。
キャラン(浩司)も アルテミーラを追う様 ゆっくりと上空へ飛行を開始する。
狙いは、あの背中に生える 赤黒いエネルギーを発する2枚の翅。
今までの戦闘 特に、大技のエネルギーを弾などは、全てあの2枚の翅の表面に発生させ発射している。
あの2枚の翅が弱点の1つのはず 斬り落としてしまえば・・・ ほとんどの戦闘能力をそぎ落とせるはず・・・ そう思っていた。
狙いを定め 高周波セイバーのスイッチを入れる。
同時に、アルテミーラの目前から キャラン(浩司)の姿が消える アルテミーラでさえ見切れぬ キャラン(浩司)の高速移動 瞬時に、アルテミーラの後方に姿を現すと同時に、まず右側の翅の生える部分目掛け高周波セイバーを振り下ろす。
青白い光を発する高周波と、赤黒いエネルギーを発っするエネルギー翅が激突。
振り下ろせない 激突部分で、何かに阻まれる。
何か、とてつもなく硬質の物にあたり その先が、斬る事が出来ない。
極度に強いエネルギーの壁 一種のバリヤー。
「ふ・ふ・ふ・・・ 何をしているのかい? キャラン(浩司)」
少しおちょくった笑い声を上げるアルテミーラ。
「その程度の威力しかない武器では、わらわの翅など切断できぬわ」
2枚り翅の輝きが増す。 同時に弾かれるようキャラン(浩司)の身体は、後方へ飛ばされる。
「仕方無い あれを使うしかないか・・・・」 小さく呟くキャラン(浩司)。
そのまま何を考えているのか? 少し距離は、離れているもののアルテミーラの正面へ出る。
手に持つ高周波セイバーのスイッチをOFFにし ベルトのフックに掛ける。
「ふん」 吐き捨てるアルテミーラ。
出来れば、使いたくないレジェンスの大技であった。
身体を駆け巡るレジェンスのエネルギーが、急速に高まるのを感じる。
余りいい気分ではない 珍しくキャラン(浩司)の意思に、レジェンスが反応している。
いつもコントロール不能であるのに。
両手 指先を手刀のように揃え上段に構える。
レジェンスの高まるエネルギーが、上段に構えた両腕に集中する。
同時に、下に向かって振り下ろす。
レジェンスの大技の1つ 次元刀 時空間そのものを切り裂く大技であった。
ターゲット(狙い)は、背中の2枚の翅の生える生え際 そこを切断出来れば・・・。
一瞬 アルテミーラの表情が変化する。
自身の身体に 何が起きたか? 理解に苦しむ表情を見せる。
同時に、2枚の赤黒いエネルギーを発する翅が、アルテミーラの身体から切り離され 空中を舞いながらゆっくりと消滅する。
「うまっくいったか・・・・」 内心 少し微笑むキャラン(浩司)。
だが、アルテミーラの表情は、何も無かったように元の表情に戻る。
「何かしたのかい? キャラン(浩司)」
今にも噴出しそうな笑みを浮かべるアルテミーラ 同時に切断したはずの2枚の赤黒いエネルギーを発する翅が、瞬時に再生する。
「すごい大技を持っているようね」
少し驚いた表情を浮かべる。
「さすがに、レジェンスのエネルギーと言ったところよね」
少し感心しているようであった。
「時空間そのものの1部を切り裂くとは・・・でも その大技で、わらわを斬り刻まぬ限り わらわに勝てぬぞ」
少し鼻で笑い 高慢な姿勢で見下すアルテミーラ キャラン(浩司)の本質的とも言える弱点の1つ 精神面での脆弱 "非情に徹し切れない・・・" を見抜いている。
何も答える事の出来ないキャラン(浩司)。
そんなキャラン(浩司)を見透かしたようにアルテミーラは、反撃を開始する。
「ならば、今度は、わらわじゃー!!」
2枚の赤黒いエネルギーで出来た翅の表面部分に無数の小さな光点が現れる 同時に、四方に向け発射 1部キャラン(浩司)のエネルギー弾と同様 光の性質の1つ粒子としての側面で見れば、時空間に対して直進しかしないはずが、ランダムな動き キャラン(浩司)に向け襲い掛かる それも無数の強力なエネルギーを持つ小さな粒子の光点のエネルギー弾 まるで集中・・・いやゲリラ豪雨時に、降り注ぐ大粒の雨のよう、巨大な水量を誇る大滝に叩き付けられるように襲い掛かる。
集中投下による無差別爆撃など比較にならないすさまじいエネルギー。
キャラン(浩司)は、瞬時に球体のバリヤーを張り防ぐも 先程同様 余りのすさまじいエネルギーに、上空ホバーリング(空中停止)状態を維持出来ず、少しずつ地表に向かって、押されるよう降下する。
キャラン(浩司)に命中しない流れ弾の1部は、そのまま近くの集落にも襲い掛かる。
まるで、小さな流星がシャワーのように降下 襲い掛かり 地表の建物を次々と破壊 集落は、地獄絵図化 その模様を上空から 何か楽しむ様 異様な表情で眺めていたアルテミーラ だがその瞬間また何か? 起こったように攻撃を突如中段 またも両手で頭を抱え込み もがき苦しみ出す。
「お・・・お願い・・・・」 何かにもがき苦しむような小さな声が、アルテミーラから漏れる。
だが、今までのアルテミーラの声とは、まるで違う そうこの声持ち主は・・・・ 元の妙子・・・・?
「今 私が こいつを抑えている・・・・ 今のうちに、私を殺して・・・・」 悲痛な声で、キャラン(浩司)に向け叫ぶ。
「何・・・何を言うか? この身体は、わらわのもの 勝手なマネは・・・」
今度は、別の声 そうアルテミーラの声。
先程と同様 1つの身体に、2の自我が争っている。
「貴様は、その世界で、そのまま・・・・」 アルテミーラの声 だが、かなりもがき苦しんでいる。
「早く・・・ 殺して 一思いに、私を消滅させて・・・ キャラン(浩司) あなたならそれが・・・・」 苦しみながら懇願する妙子。
「きゃー・・・・・」 妙子の悲痛な叫び声 同時に、2枚の赤黒い翅から無数の小さなエネルギー弾が発射される。
四方八方に向かって飛び散る小さなエネルギー弾 だが、先程と全く違う 確かにランダムで、予想不能の動き だが、向かった先は、全てバラバラ 全く狙いなど定めていない、ただむやみ撃ち周囲に飛び散り 地表の各所に着弾 爆発 地表には、次々と爆発後のクレーターが出来る。
「おのれは、わらわが、与えてやった世界で大人しくしていれば良いのじゃ・・・・・」
自分自身に対して、怒るアルテミーラ 次々と、自我が変わり収集が着かない状態になっている。
判断に迷うキャラン(浩司) 確かに、混乱するアルテミーラを倒すには、今が絶好のチャンス。
そんな迷っているキャラン(浩司)に、どこからともなく何が語りかける声が、心に響く。
テレパシー・・・? 間違いなくテレパシーによる声。
機械的ではあるが、どこか温かさや、感情などを感じさせる声の持ち主であるノルンとは、全く異なっている。
間違いなく人間の声 どこか幼さや、あどけなさなど残している少女の声であるが、かなり悲痛さを感じさせる声であった。
この声の持ち主? そうこの声は、あの妙子の声。
だが、キャラン(浩司)と、ネクストノイドでは、根本的テレパシーが、異なっている。 お互いテレパシーによるコミニュケーションは、取れないはず・・・・
キャラン(浩司)の場合 レグのオーバーテクノロジーによって生み出されたスーパーコンピューター ノルンとのテレパシーによるコミニュケーションは、量子テレポーテーションの応用であり ネクストノイド同士のテレパシーによるコミニュケーションは、実は上位モデルによる下位のグロテノスのマインドコントロール(精神支配)に利用しているのだが、額に埋め込まれているネクスタルの共鳴反応を利用している。
同じテレハシーでも 根本が全く異なっている為 互いにテレパシーによるコミニュケーションは不能なはず。
「・・・今よ キャラン(浩司) 私がアルテミーラを押さえているから・・・」 悲痛な妙子の声ガ、テレパシーを通じて響く。。
自身の心の中にある アルテミーラが作り出した世界に閉じ込められていた妙子の自我であったが、その眼で見ていた アルテミーラが、見ていた光景を 妙子もその眼で、同じ視線で見ていた だが見ているだけで何も出来ない。 次々と行う無慈悲の無差別の残忍の行為 1つの小都市そのものを徹底的に破壊し、無差別に殺す そして、あの時の自分と同じ境遇の小さな女の子を生み出し・・・ その子までわが手で、何のためらいもなく殺す瞬間さえも。
自身の自らの手で行った数々の行為 だが、妙子自身止める事が出来なかった。 ただそれを見ること、傍観者として・・・
あの少女を 自身の手で殺してしまった瞬間 余りの悲しみ、怒りなどの感情が爆発 アルテミーラが作り出した自身の心の中にある世界を突き破り アルテミーラの自我がいる場所へと、そして今 こうしてアルテミーラの自我と、対峙している。
自身を取り戻す為 そして、1つの答えを知った これも妙子自身が、望んだもう1つの自分 そうアナザーと呼ぶべき もう1人の自分 そして、アナザーと呼ぶべきもう1人の自分の犯してしまった数々の残忍行為は、自分自身の行為 アナザーと呼ぶべきもう1人の自分であるアルテミーラを倒すには、自分自身を消滅させる以外方法が無いことも。
アルテミーラは、決して他人ではない 自分自身の心の中にいる もう1人…いや他にも多数いる自分の1人である事も そして、多数いる自分の1人に、ネクスタルのAbsolute Area(絶対領域)を超えた時 その力、エネルギーを手に入れ 自我に目覚め自身の身体、意志を乗っ取り暴走してしまった事も・・・・
全ての責任は、自分自身にある。
とても少女とは思えない 大人びた静かな口調、考えで、キャラン(浩司)に、テレパシーを利用して語る妙子。
アルテミーラ自身 妙子を構築している1つの部分。
妙子自身の深層心理の中で、妙子自身が望んでいる事を体現している多数の自我の1つ。

 「は・・・や・・・早く・・・・」 妙子の悲痛な叫び、テレパシーで届く。
もはや限界に達している。
「わ・た・しが・・・消えてなくなる前に・・・ もう抑えられない・・・」
キャラン(浩司)は、アルテミーラから視線をそらしながらも 必殺の大技 スターバーストの構えに入る。
両手の先に小さなエネルギーが発生 全身を駆け巡るレジェンスのエネルギーが集中。
だが、撃つのにためらいが・・・
「早く 私 あんなバケモノになりたくない 私が、私自身でいる間に・・・・」
2つの自我が争い もがき苦しむアルテミーラを見る。
"人として、心を殺す・・・" 修羅の世界 非情に徹し切れないキャラン(浩司)の心の弱さ・・・
だが、こうしている間にも地上では、阿修羅のごとく地獄図と化している 時より苦し紛れに発射される 2枚の翅から発射されるエネルギー弾が、地上の小都市を破壊、炎上させる。
無関係、罪なき人々 傷つき、死んでいく その光景を目の前にし アルテミーラの本来の自我である妙子 更に苦悩する。
「何をぐずぐずしいるのー!!」 悲痛な声がテレパシーで届く。
そのテレパシーの声に、徐に顔をあげアルテミーラを直視する。
苦悩に満ちた表情。
だが・・・・
ゆっくりと、大技のスターバーストの構えに入る。 キャラン(浩司)の両手の前に集中するレジェンスのエネルギー 溢れんばかりに強く輝く。
そのまま両手をアルテミーラに向け突き出す。
太い一条の無限とも思える巨大なエネルギービームが、光速のスピードでアルテミーラに直撃。
巨大なエネルギーに飲み込まれるアルテミーラ。
その瞬間 アルテミーラの表情が、元の幼い妙子の愛くるしい表情に、一瞬変化した。
それは、両親の限りない愛に包まれ微笑んでいる少女の笑顔。
その瞬間 アルテミーラは、瞬時に全てが消滅する。

 「妙子ちゃーん」 意識を取り戻し この戦闘を見守ろうと空中に飛行を開始したリンがつぶやいた。
傍には、8大将軍の1体 ギルと直属の保安部隊数体。
完全に、妙子が消滅した事を確認する。
無言でただ消滅した妙子のいた空中を見つめる。

 ギル、リン そして、直属の保安部隊数体を確認するキャラン(浩司)。
だが、お互いに戦闘意志が全く感じられない。
このままの戦闘継続が無意味な事を 互いに理解している。
無言のまま撤退を開始するギル、リン そして、直属の保安部隊数体。

 それを見送ると、キャラン(浩司)も ゆっくりと地上へ降下を開始する。
みなっちが、無事なのは、確認が取れている。
みなっちのいる場所へ向かう。

 瓦礫が散乱 至場所から火災が発生 炎が舞い上がる もはや廃墟と化した街。
「こーちゃん お疲れ様」 地上へ着地した浩司に駆け寄るみなっち。 いつもの事であるが、いつも戦闘が終わり こうして無事に帰ってくる浩司の表情は、これ以上無い程 不機嫌。
戦争、戦闘と言え やはり他人を殺して、自分が生き残る 戦争の持つ本来の理不尽 浩司の心をかなり辛辣に痛めつけている。
瓦礫となっている大きなコンクリートの上に腰を下ろす浩司。
みなっちの顔を見ると、いつになく今日の戦闘について語りだした。
普段、戦争全体の見地からの大きな戦略目標などについて、かなり辛辣な皮肉まじり語る浩司であったが、個として戦う戦闘については、口は、いつも重く余り語らない。
珍しい事でもあった。
妙子との戦闘について語る浩司。
ただ黙って聞くみなっち。
「・・・でも その子 それで幸せだったかも・・・ 大好きなパパと、ママの元へ行けたのだから・・・ きっとあの世で、家族水入らずで・・・」
ぽつりと語るみなっち 浩司に対して、慰めの気持ちから出た言葉であったが・・・
だが、何ら解決にも、答にもなっていない。
ただ色々な想いが交錯 出口のない世界で苦しむ浩司を見つめる事しか出来ない。




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