LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 神々の鎧 Part3

 キャラン(浩司)は、苦戦を強いられていた。 コントロール不能のレジェンスのエネルギー まるで上がってこない 最低レベル程度でしかない。
ゴングが鳴って 早くも4分以上を経過していた。
早めに決着(ケリ)をつけようと、スピード勝負に出たのだが、思うようにスピードが上がらない。
マグナムアタックなどのエネルギー弾は使えない。
そんな時だった "しまった・・・" くわがた虫に似たハイパーアギラの2本の角に正面から両脇腹を捕まえられた。
強力なパワーで締め付けられる。
苦痛で表情が歪む。
そんな苦しむ浩司の表情に、みなっちは、両手で顔を押え床に両膝をついた。 「もう止めて・・・」 思わずつぶやいた。
キャラン(浩司)は、両手を握り僅かしか上がらないレジェンスのエネルギーを集中させ 両脇腹を締め付ける2本の角に対して、何度も両手の拳を叩き付けた。
「無駄な悪あがきだ  このまま絞め殺してやる!」 ハイパーアギラの角の締め付けが更に増す。
ようやくエネルギーが少し上がり始めた 身体からバリヤーが発生し 締め付けていた2本の角を少しずつ開かせ始めた。
"しめた・・・" キャラン(浩司)は、緩んだ角に向かって 再度エネルギーを集中させた両手拳を叩き込んだ。
その瞬間 2本の角はヒビが入り砕けた。
「まだまだ甘い!!」 そう叫びながら後ろで、この様子を見ていた1体のハイパーバーカスが、額から生える1本の角の2つに別れる先端部分を高速回転させ キャラン(浩司)の後ろから背中に向け突撃してきた。
ハイパーバーカスの必殺技の1つ ハイパードリルキラーである。
ハイパードリルキラーは、一瞬無防備になったキャラン(浩司)の背中に直撃 レジェンスの防衛機能により瞬時に張ったバリヤーのお陰で、背中から突き破られる事こそ免れたが、そのまま突き上げられ大きく空中に浮き弾き飛ばされた。
空中で1回転し背中から地面に叩きつけられる。
止めを刺そうと、ふらふらと立ち上がったキャラン(浩司)の腹に向かって、再度 ハイパーバーカスは、角の先端のハイパーキラードリルを前方へ突き出し突進する。
無意識に身の危険を察知 瞬時に身体を回避 超高速の左手チョップをハイパーバーカスの角の中央部へ叩き付けた。
そのままハイパーバーカスの角をへし折る。
両肩を大きく上下させ、何度も大きく息をするキャラン(浩司) レジェンスの戦闘モードに入って初めての経験であった。
過去 戦闘モード中に、息切れなどした事が無かった。
思うようにエネルギーが上がらず、エネルギーの暴走の危険性が少ないが、逆にエネルギー不足によるスタミナ不足が露見した。
角をへし折られたハイパーバーカスは、すぐさま反転 何事も無かった表情を見せ、猛烈な勢いで、再度キャラン(浩司)に向かって突撃 右スレートパンチを繰り出した。
気付いたキャラン(浩司)も応戦 顔面にヒットする寸前に僅かな差で上半身を低くしパンチは、頭部の少し上を通過 そのままハイパーバーカスの腹部に向かって、渾身のエネルギー上がらないレジェンスのエネルギーを集中 右腕全体が、淡い白い光が発光 そのまま手刀のように、水平に振り払った。
ハイパーバーカスの腹部は、真二つに切り裂かれた。
瞬間 自分の身体に何が起きたのか 解らない表情を見せるハイパーバーカス 真二つに切り裂かれた上半身と下半身が、地面に崩れ落ちる。
後に次元刀と呼ばれる技である。 夢に何度も出てきた技の1つであった。
聖なる場所で、みなっちと同棲生活を始めてから 見るようになった夢であった。
深夜 幾つもの技が、夢に現れ 現れた技を駆使 襲い掛かる変身したネクストノイドの大軍に対して、1人 殺伐とした殺戮本能に精神が支配され、次々と襲い掛かるグロテノスを惨殺 まるで血に飢えたケダモノのよに、冷酷な表情で、薄笑いさえ浮かべ・・・ 大量の血を流す事に喜びすら感じる自分自身・・・
とても精神的耐える事の出来ない無残な光景が目の前に広がっていた。
夢の中でふっと我に帰り周囲を見渡す そこには、自らの手により惨殺した無数のグロテノスの死体が散乱 流れ出る血によって地面真っ赤に染めていた。
返り血を浴び 両手を真っ赤に染め 呆然自失となり無数に転がる死体を見つめる自分自身・・・
そんな夢を見るたびうなされ 冷汗をたっぷりとかいた状態で、突然 眼が覚ましていた。
「また怖い夢でも見たの・・・」 眠気眼(ねむけまなこ)で心配しながら みなっちは、声をかけていた。
同棲を始めてから、深夜たびたび浩司がうなされ 冷汗を大量にかき 突然 眼をさましていた。
顔面からは、血の気が引き 蒼白の状態で・・・
大きなバスタオルで、浩司の身体を丁寧にふき取りながら浩司に言っていた。
「どんな夢だったか? 話したくなければ、話さなくてもいいけど・・・ でも普通じゃないよ かなり深刻な状態よ 1度 ワグナー医師に相談して、精神科医の医師紹介してもらうから カウンセリング受けた方が・・・」
本気で心配していた。
レジェンスのエネルギーを 手や足などに集中させ 量子レベルから 切り裂いてしまう大技の1つてあった。
レジェンスのエネルギーが暴走し、無限に上昇すると、次元、時空間まで切り裂いてしまう技の1つでもある。
「貴様・・・そんな技・・・持って・・・」 両肘を地面に立て、上半身を起しながら ハイパーバーカスは、弱々しい今にも消え入りそうな声であった。
キャラン(浩司)に向かって、左肘1本で上半身を支え 右手を伸ばそうとしたが、力尽き そこで絶命した。
キャラン(浩司)は、両肩を大きく上下させ、大きく息をした。
振り返り まだ残っている2体のハイパーアギトを視線に捕らえる。
言葉では表現出来ない 言いようのない不快感に襲われる。
しかし時間が余り無い 残り5分を切っていた。
「死にたいやつからかかって来な!」 珍しく挑発した。 しかしその瞳の奥には言いようの無い深い・・・言いようのない絶望感が滲んでいた。
右にいたハイパーアギラが動いた。
同時に、左のハイパーアギラは、2本の角を発射した。 ハイパーキラーブーメランである。
2本ま角は唸りを上げ高速回転し、各々の方向からキャラン(浩司)を襲う。
しかしキャラン(浩司)は、微動だしない。 バリヤーさえ張ろうしない。
確実に2本のハイパーキラーブーメランの動きを捉えていた。
命中する直前 キャラン(浩司)は、かすかに、動いた・・・いやそんな気がしたのかも知れない。
だれの目にもその動きを見切れる者はいなかった。 1人デストロであるギルを除いて・・・
2本のハイパーキラーブーメランは、キャラン(浩司)に、命中する直前 粉々に砕け散った。
自身に対する怒り、絶望感などと共に、キャラン(浩司)のレジェンスからのエネルギーが、急速に上昇した。
超スローな動きにしか見えない2本のハイパーキラーブーメランを手刀で砕いた。

「エネルギー量 測定不能!!」 各オペレーターの声が飛ぶ。
戦いのモニター画面を悠然と構え見ながら薄笑いを浮かべる人物が1人
「あやつ・・・ようやく本来持つエネルギーを利用しはじめたか・・・」 1人そのモニター画面を見ながらギルはつぶやいた。
「まだこの程度であるまい」 薄笑いを浮かべた。

その光景を唖然と見ながらも次ぎの攻撃に移ろうとした2体のハイパーアギラが、自身の身体に何か? 異変を感じた。
目の前に立つキャラン(浩司)は、微動だにせず動いていないように感じた。
「もう勝負はついているぜ」 キャラン(浩司)は、そう言うと後ろへ振り返り人質と捕らえられている牢獄へ向かってゆっくりと歩き始めた。
「何を抜かす・・・ 勝負は・・・」 そう言い終わらないうちに、2体のハイパーアギラは、地面へと崩れ落ちた。
2体共 腹部には、大きな風穴が開けれていた。
瞬時・・・いやだれの目にも見えないスピードで、キャラン(浩司)は、2体のハイパーアギラの腹部に、拳を叩き込んだ。
余りのスピードと威力で、腹部を突き破っていた。
同時に、透明の超合金で出来た牢獄の1部がスライドした。
タイマーは、1分21秒前で停止していた。
みなっちを含む4人の人質は、開いた扉から出てきた。
最後に出てきたみなっちは、涙をこらえた目で、浩司の元へ駆け寄り飛びついた。
「こーちゃん 本当に、本当に・・・怖かったよー でも・・・でも・・・ 必ず助けに来てくれると思ってた・・・」 浩司に抱きつき思わず涙をこぼしそうになった。
「それより ケガしていない? さっき両脇腹と・・・」 心配そうにみなっちは聞いた。
「これぐらい 直ぐに治るよ」 浩司はやさしく答えた。
パイハーアギラの2本の角で締め付けられた両脇腹やハイパーバーカスのハイパードリルキラーで突かれた背中であったが、レジェンスの自己治癒力で、ほぼ全快状態であった。
どこからともなく百合が現れた。
浩司とみなっちの前に立つと1度咳払いをした。
「あのーお取り込み中・・・・申し訳ありませんが・・・」 こんな所で、グズグスしている理由には行かなかった。
「ここは、まだ敵の基地内ですし、直ぐに新手が現れます。 まず救助部隊とのランデブーポイントへ向かうべきかと・・・」
百合の声に、浩司とみなっちは、思わず赤面した。 バツが悪そうな表情である。
「それと、浩司さん・・・」 百合は手に持っていた 浩司のS&W M29 44マグナムが収められているショルダーホルスター差し出した。
「この人は・・・?」 思わずみなっちは、浩司に聞いた。
目の前にいる女性とは、初対面で面識がなかった。
それに、敵アポリスの女性用戦闘服を着ており 年齢は30歳代後半か? 戦闘服が、まるで似合わない 純和風、純日本的、落ち着きのある物腰が柔らかで、艶やかな美人であった。
まさか・・? と思ったが単なる思い過ごしであった。
「あー こちらの女性 例の川村のフィアンセで・・・」 浩司がしゃべりかけたのをみなっちが遮った。
「百合さんですね」 みなっちは、少し微笑んだ。
「ところで、ランデブーポイントは?」 百合は本題に入った。
「A-1ポイントだ、あそこで、ドレークが率いる部隊が、通路と周囲を確保してあるはず・・・」
「それより ピエール神父の姿が・・・」 百合は人質となっていた人の顔を確認していた。
「ピエール神父は、別の場所へ連れて行かれたの」 みなっちは、やや心配顔で答えた。
みなっちは、ピエールの連れて行かれたいきさつを話した。
浩司は、SVL通信機のスイッチを入れた。 ピエールが、居場所を探る為である。
聖なる場所のマスターコンピューターにアクセス この基地内の図面を呼び出し ホロスコープ(立体映像)が映し出された。
「ここよりかなり地下か・・・」 小さな光点が3つ点滅している。 それを見ながら何気なく浩司はつぶやいた。
「永井の率いる部隊が向かっているようだが・・・」 そう言いながら浩司は、考えた。
"このまま人質になっていた者達をここへ残して、単独で、救出へ向かう事も出来ない・・・ まずはランデブーポイントへ向かい 人質になっていた者達をドレークの部隊へ引き渡してから 永井の部隊に合流するか・・・" そう考えた。
浩司は、SVL通信のスイッチを入れ ドレークを呼び出した。
ピエールを除く 残りの人質救出した。 直ちにそちらへ向かうと告げた。
ドレークからは、現在A-1ポイントで、グロテノスではないが、アポリス軍と交戦状態で、こちらへ救援部隊を割けないとの事であった。
これを聞いていた永井から通信が入り 1部兵力を浩司の方へ回し通路内から攻撃してくるアポリス軍の1部を挟み撃ちするようにと司令を下した。 浩司もこれを了承した。
永井は、このまま部隊を引き連れピエールの救出に向かうと告げた。
浩司は、先頭に立ちみなっち、百合などを連れA-1ポイントへ移動を開始した。
最後尾は、百合が自ら買って出た。
「日本の女子(おなご)をなめてはいけません」 とはっきりと言い切ってであった。
すぐその言葉を証明して見せる場面に出くわした。
永井が回した部隊と合流する前に、アポリスの一般兵士4人に、突然前後を襲われた。
全員グロテノスではなかったが、前の2人の兵士は、浩司は、戦闘モードに入ると同時に、あっさりと腹と後頭部に、拳や手刀を叩き込み気絶させ、後ろで襲われた百合を助けようとしたが、百合もまた2人の兵士を地面に叩きつけていた。
不意に後ろから襲われたのだが、百合は素早く反応した。
相手の力を受け流しながら利用し返す 日本独自武道の1つである合気道である。
相手が女だと思ってなめてかかった2人のアポリス兵士は、あさりと地面に倒され気絶させられてしまった。
百合は、日本の古都K府K市の古くから続く旧家の長女として生まれた。
厳しい躾を重んじる祖父母に、日本女性のたしなみとして、幼い頃から日本の誇る伝統美を習わされていた。
華道、茶道など・・・ そして、男が外で働いている間 家と子供を守るのが、妻となる女の役目と言う事で、武道の1つ合気道も習わされ師範クラスの実力を有していた。
その様子を見ていた 浩司を含む男性人から思わず口笛を吹き 驚きの表情を浮かべた。
「合気道・・・」 思わず浩司は、百合の顔を見てつぶやいた。
「こんなものですわ」 何食わぬ表情で百合は答えた。
ようやく永井が割いた部隊の1部と合流 A-1ポイントへ向かった。
途中 大規模な反撃に遭遇せず、小さな小競り合い程度で、A-1ポイント手前まで到達した。
グロテノス兵がいないのが幸いであったが、両軍からの激しい銃撃戦も 戦闘モードに入った浩司の目には、銃弾ですらほとんど止まっているいるようにしか見えない。
1人 アポリス軍の渦中に入り、瞬時に兵士全員を気絶させてしまった。
だれ1人のそのスピードを見切れる者はいなかった。
余りの動きの速さに、あ然としていたドレークに、みなっちや人質となつていた者、百合などを引き渡した。
1人 また通路へ戻ろうとした浩司に、ドレークは、声をかけた。
「浩司さん マーク議長もしくは、永井司令官からの命令があるまで、この部隊で、待機との命令が出ていますが・・・」
「永井司令官の部隊と合流する」 浩司は後ろに振り返りながら言った。
「それと、人質になっていた者を後方のマークじいさんの部隊へ連れて行ってくれ」
浩司は、また通路へ向かって歩き出した。
「命令無視はなりません」 ドレークは強い口調で言った。
「何も聞こえない・・・」 呆れた表情を見せ 少し両腕を挙げポーズを取る。
そう言い残すと浩司の姿が消えた。
戦闘モードに入り高速で移動を開始した。
浩司の特徴である 命令無視の独断専行である。
組織の一員としてなじめない点であった。
自営業者である浩司は、1匹狼的資質を育んでいる。 他人の命令を待つよりも自己判断を優先し直ちに実行する側面が強い。
それに、ドレーク神父に対する評価もあった。
ピエール神父の側近の1人であったが、ピエールに対する忠誠心過多 判断力過少だと思えていた。
神の意向だとか、ピエールの何だだとか・・・ をよく口癖のように振りかざしていた。
浩司は、こう言うタイプの人物に対する評価は、かなり手厳しい。
浩司の関心は、ピエールの救出に向かった永井率いる部隊であった。
浩司には、感じていた。 グロテノス兵本体が永井の率いる部隊を待ち伏せているのを気配として感じていた。
今あれだけのグロテノス兵に、襲われたら永井の率いる部隊を瞬時に殲滅させられる。
ピエールは、その為のエサ ようやくグロテノスと戦えるレベルまで、レジェンスのエネルギーは、上昇してきた。
永井率いる部隊を見殺しには出来ない。
まともに戦えるのは、浩司1人であった。
これは、この基地内のある場所に、浩司をおびき寄せる為の罠である事に気付いていなかった。

「キャラン(浩司) D-84ブロックに出現!!」 オペレーターの声が飛んだ。
正面の巨大なマルチスクリーンの中央に、キャラン(浩司)の姿が映し出された。
何やら通路の壁に身を寄せ 通路の出口を気にしている様子が映し出されていた。
「さあー そのまま進むのじゃ・・・」 ギルは、その映像を見ながらつぶやいた。
「あやつを そのまま例の場所へおびき寄せろ」 ギルの司令が飛ぶ。

浩司は、通路の壁に身を寄せ 通路出口から見える巨大なシルバー色の物体に注意を払っていた。
実物を見るのは初めてであった。
それは紛れも無く巨大なラグビーボール型のマザーシップ(母船)タイプのUFOであった。
UFOのアマチュアの研究家でもある浩司は、何度もTVのUFO特集で、映像として見た事はあったが、実物を見るのは初めてであった。
小型のフライングソーサタイプ(円盤型)のUFOの何種類かは、ヤーナ所属してから ヤーナが所有しており実物に乗船までしているが、マザーシップ(母船)タイプは、さすがに圧倒的迫力、威圧感、大きさなど比較にならなかった。
ヤーナに所属し、トップシークレット(最高機密情報)として、アポリスが、何機かのマザーシップ(母船)タイプのUFOを所持し、そこからかって我々人類が神々と呼んだ エルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の驚異のオーバーテクノロジーを得ている事を知っていたが、さすがに本物を見た瞬間は、かなりの衝撃であった。
浩司が所属したヤーナでさえ、エルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の驚異のオーバーテクノロジーの1部を利用している 浩司の左腕のブレスレットタイプの通信機 SVL通信機や新型エネルギーライフルタイプの銃 ER01Tライフル銃などだ。
だが、アポリス程ではない。
驚異の生体兵器ネクストノイドは、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなど、エルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の各種オーバーテクノロジーによって生み出されている。
外部からの攻撃の後か? 所々大きな穴が開いており 先端の方から垂直地面に突き刺さった状態になっていた。
その複数の大きな穴に向かって何本もの通路が掛かっている。
全長は、少なく見積もっても1kmは、超えているだろう・・・
永井の部隊との合流を急がねばならないのだが、何故か? 気持ちが、マザーシップ(母船)タイプのUFO内部に向かっていた。
何かに引き寄せられる感覚である。
"う〜ん 永井の部隊は、この近くにいるはずなのだが・・" 少々タメ息をつきながら左腕のSVL通信機のスイッチの1つを押した。
ホロスコープ(立体映像)が浮かび上がる。
現在自分の位置と永井の位置を再確認した。
光点による反応は、間違いない この層である。 近くにいるはずだ。
多数のグロテノス兵のすさまじいばかりの殺気を感じている。
ピエールが捕らえられている牢獄は、間違いなくこの最下層に近いこの層からの反応であった。
その時だった。
少し離れた場所の壁の1部が爆破し吹き飛んだ。
ソニックブーム(衝撃波)よって、全体が少し揺れた。
土煙が立ち込める中 浩司は、爆発が起きた場所を確認した。
"かなり近いなあー" 直径約2m程開いた近くに出来た穴を確認。
すさまじいエネルギーを感じた。
"やばい・・・" 慌てて身を地面に伏せた。
無数のエネルギー光線、エネルギー弾が、穴から飛びだした。
間違いなくER01Tライフル銃のエネルギー光線、エネルギー弾である。
あの開いた穴に、永井の率いる部隊がいる。
数体のグロテノス兵が、穴から飛びだし 体勢を立て直すと穴に向かって、火炎放射などの各々の技を発射した。
断末魔の叫び声が上がった。
数人の火だるまになったヤーナの兵士が、穴から這い蹲るよう出ると、その場に倒れ絶命した。
何とも表現出来ない 嫌な臭いがただよう。
戦闘モードに入った浩司は、立ち上がり 数体のグロテノス兵に向かって飛び掛った。
ノーマルタイプのグロテノスである。
目にも止まらぬスピードで、瞬時に数体のグロテノスは、自分の身体に何が起こったのか解らぬまま地面に叩き付けた。
右手を突き出し マグナムアタックの構えを取る。
エネルギーを右手の平の前に集中させた。 小さな光点が発生する。
しかし撃てない。
ためらい・・・ 相手を殺すと言う不快感が脳裏をよぎる。
「早く とどめを・・・」 後ろから大声が飛んだ。
ER01Tライフル銃を構えた永井が穴から飛び出した。 後ろから残っている兵士が出てくる。
途中戦死した者、負傷し後退した者が出ていた。
ここへ到達するまでに、何度も待ち伏せに会い、その都度激戦をくぐり抜け数を減らしていた。
最も離れた場所で、地面に叩きつけられていた1体のグロテノス かまきり虫に似たダガトが、キャラン(浩司)の一瞬のためらいを見逃さなかった。
瞬時に立ち上がると、キャラン(浩司)に向かって、変形させた両腕を槍に突き出した。
「浩司さん あぶない!!」 永井は、大声を発した。
発すると同時に、ダガトに向かって、永井は、ER01Tライフル銃のトリガーを引いた。
無数の小さなエネルギー弾が、ダガトを襲う。
身体に幾つかのかすり傷をが付く、だが致命傷にならない、額のネクスタルに直撃しなければ、たいして効果がない。
しかしダカトの足が止まった。
後数歩の所で、キャラン(浩司)を突き刺す事が出来なかった。
「この虫けらどもめー!」 エネルギー弾を喰らったダガトは、怒りに身を震わせ 叫び声を上げ 素早く両腕を鎌に変形させ 永井に向かって突進した。
ダガトの動きに、浩司は、反応した。
瞬時に、ダガトの前方に現れ、身体を低くし、右足で、ダガトの両足を足払いした。
ダガトが、背から地面に倒れた所を今度は、左足にバリヤーを集中させ、回し蹴りでダガトの鎌に変形させた両腕をへし折った。
「浩司さん そこをどいて下さい」 永井は、ER01Tライフル銃を構えた。
レバーをマックスに上げ エネルギー弾から光線に素早く切り替えた。
浩司が、どくと同時に、トリガーを引く。
エネルギー光線は、ダガトの額のネクスタルに命中。
小さな爆発とともに、ダガトの頭は吹き飛んだ。
間をおかず周囲にいたヤーナ側の兵士が、浩司に倒された残りのグロテノスの額のネクスタルに対して、一斉射撃を浴びせた。
小さな爆発とともに、倒されていた残り数体のグロテノスの頭が吹き飛んだ。
「何故? 命令を無視してここに来たのですか? ここまでのいくつもの命令無視 評議員待遇とは言え目に余ります。 見過ごす事は出来ません」 浩司の前に立った永井は、強い口調で言った。
聖なる場所での軍事訓練中から見せていた浩司の独断専行、単独行動であった。
それと、軍事訓練中に1度も見せていなかった 浩司のレジェンスのエネルギーを利用した 驚異の戦闘能力もあった。
永井の目にも止まらぬ いや人間の限界を遥かに超えるスピードとパワー あのグロテノスを瞬時に地面に叩きつける驚異の戦闘能力 軍事訓練中 大粒の汗を大量にかき 息が上がりギブアップ直前だった同一人物とはとても信じる事が出来なかった。
"何故・・・?" 
そんな永井の言葉に、まるで意に返さず、悪びれた表情も見せない浩司。
「それよりピエール救出が先じゃないの? 文句なら後で聞くよ」 そう言うと、1人周囲を警戒しつつも歩き出した。
浩司は感じていた 多数のグロテノスの殺気・・・ この近くにいる これが本隊だろう・・・と、それと巨大なラグビーボール型のマザーシップ(母船)のUFO 内部から何か? 引き寄せられる感覚が気になっていた。
それよりピエール救出が先決であった。
それに、先程からアポリスの動きも妙に引っかかる思いもあった。
アポリスの戦術である。 主力のグロテノスや兵力を小出しに出てくるだけだ。
ここは、地底にある狭い基地内である。 地上のように、大軍を自由には、動かせないし 動きにも制約が多い。
基地の外 特に、出入口付近を中心に兵力を展開させるはずが、わざわざ不利になる基地内へ誘い込み 逐次投入に近い兵力投入の愚を犯している。
"何か? 罠・・・ どこかに誘い込む為・・・"
そんな気がしていた。
"あのラグビーボール型の巨大なマザーシップ(母船)タイプのUFO内に誘い込む為か?"
"ここには、例のB,P(バトルプロテクター)がある。 まだアポリスでも取り出す事が出来ない。 取り出し装着すれば、装着者自身の能力をケタ違いにアップさせる エルと呼ばれたEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)の驚異のオーバーテクノロジーの産物だ。 
あんな品物 グロテノス・・・いや あの龍(ロン)を始めとする 格上のデストロなどに装着されたらたまったものではない 変身前てあの戦闘能力 変身後に装着されたら その戦闘能力 想像出来ない・・・ チャンスがあれば破壊しておくべきかも知れない・・・"
ふっと色々な考えが脳裏をよぎっていた。
"B,P(バトルプロテクター)を取り出す為に、レジェンスと何か関係があるのか? 基地を破壊される覚悟がなければこんな戦術を取るとは考えにくい・・・"
「あのー 和田評議員待遇・・・」 考え込みながら1人歩く浩司を 1人兵士が呼び止めた。
「向かう方向が・・・」 浩司は振り返り呼び止めた兵士を見た。
浩司を除く全員 別の方向へ向かって歩き出していた。
ピエールが閉じ込められている牢獄は、浩司の向かっていた方向ではかった。
「ちょっと考え事をして・・・」 バツの悪そうに浩司は答えた。
追いついた浩司に、永井は、強い口調で言った。 「浩司さん 今度命令無視、単独行動を取る事があれば、厳罰ですよ」
牢獄のセキュリティロックをビームで破壊 扉が開くと同時に、数人の兵士が身体を低くし牢獄のある部屋に突入した。
広く薄暗い大きな部屋・・・いや空間と呼ぶべきか? しーん静まり返り 人の気配を感じない。
突入した兵士は、すかさず地面に伏せER01Tライフル銃を構える。
後方では、先行した兵士のバックアップの援護射撃の為 数人の兵士がER01Tライフル銃を構える。
トリガーにかかる指に力が入る。
しかし何ら反応がない。
敵 アポリスのグロテノスどころか、兵士の気配すら感じられない。
銃口を下に下げ 悠々と態度で永井が入った。
しかし その表情、動きに全くの隙がない。
全身で敵 アポリスの気配を感じようとしていたが、だが何も感じなかった。
浩司も同様であった。
ここには、殺気・・・いや人の気配を感じなかった。
しかし 別の場所から多数のグロテノスの強烈なエネルギー、殺気を感じていた。
"ここに閉じ込めて、勝負をかけてくるつもりだろうか…" ふっとそんな考えが頭をよぎった。
「あそこに、ピエール神父が・・・」 1人の兵士がある方向を指差し叫んだ。
薄暗い空間のかなり離れた場所に、十字架に磔にされ 口には粘着テープを張られたピエールの姿があった。
こちらを見ながら 大きく左右に首を振っている。
こちらに来るなと言うゼスチャーであるのが、だれにでも解る。
罠か何かが仕掛けられている。
「俺が行こう・・・」 先に永井が、ピエールに向かって歩き出した。
だが先に浩司が動いた。
全くの無警戒で、さっさと歩き出した。
「永井司令官 まあここは、俺に・・・」 そう言い残すと、少し小走りに走り出した。
その時だった。
浩司の足元が、突然 大きく2つに割れた。
落とし穴である。 先程 A真理宗教の隠れ幹部を処刑する時利用した穴であった。
その穴の落ちる先には、失敗体の血に飢えたグロテノスが待ち構えている。
しかし 浩司は、穴に落ちない。 そのまま空中に浮かんでいた。
両手を少し上げ 呆れたポーズを取る。
飛行能力のある浩司には、落とし穴など全く意味を持たない。
そのまま空中を散歩するよに前に進み 穴を越えた。
"まったく古典的な・・・ その次は、槍が出て来るかな・・・" 呆れて思った。
しかし何事もなくピエールの前にたどり着いた。
"嫌なやつだが・・・" そう思いながらまずピエールの口に張り付けられていた粘着テープを剥がした。
「浩司さん よく御無事でここまで・・・」 ピエールは言った。
浩司は、右足ふくらはぎのホルスターからサバイバルナイフを取りだし ピエールを縛っていた縄を切った。
「ありがとう 浩司さん」 ピエールは感謝の言葉を述べた。
"あっけなさ過ぎる・・・" 浩司は少し油断した。
その時だった 浩司は見えない力・・・いや物体に大きく弾き飛ばされた。
それは透明化していたカメレオンに似たグウルスであった。
気配、殺気を消しキャラン(浩司)に忍び寄り 油断した隙を狙って 長く伸びる舌で強烈な一撃を喰らわした。
1度 キャラン(浩司)に叩きのめされ復讐の機会を狙っていた。
何かが起こった理解出来ず 呆然とした表情を見せるピエール。
地面に叩きつけられながらも キャラン(浩司)は立ち上がり 気配を感じた。
「そこか!!」 右腕を突き出し右手手首を立てた。 マグナムアタックの構えである。
「うあー!!」 ピエールが叫んだ。 何か見えない腕らしき物に後ろから抑え込まれた。
ゆっくりと姿を現すグウルス。 「これでは撃てまい・・・」 口元が薄く笑った。
だがグウルスにも油断があった。
この部屋にいるのはここの3人だけではなかった。
大きく開いた穴の向こうに、永井の率いる部隊がいた。
永井は、ER01Tライフル銃にスコープを取り付け 背中を無防備に見せるグウルスの背に狙いを付けた。
グウルスは全く気付いていない。
永井はトリガーを引いた。 射撃の名手でもある永井の狙いは正確であった。 一発のエネルギー弾が、グウルスの背中の真ん中に命中。
致命傷にこそならないが、グウルスは、一瞬ピエールを抑え込んでいた腕の力が緩んだ。
その隙をピエールは逃さなかった。 緩んだ腕から抜け出し全力で走りだした。
「逃さん!!」 グウルスは叫びながらピエールを捕まえようとした。
キャラン(浩司)は、この一瞬を逃さなかった。
素早く高速の動きで、グウルスの前に現れ 腹に向かってキックを繰り出した。
大きく蹴り飛ばされ地面に叩きつけられるグウルス その瞬間グウルスの姿が消えた… いやグウルスの持つ能力である透明化である。
透明化と同時に、殺気、気配も同時に消した。
しかしキャラン(浩司)もレジェンスのエネルギーを高めた。 同時に身体全ての感覚を研ぎ澄ました。
目を閉じ精神を集中させる。
「そこかー」 叫ぶと同時に、右手人差し指をある方向に向けた。 一条の光線が発射される。 フィンガービームである。
何も無いはずの空間から真っ赤な血が飛び散った。
何かがゆっくりと姿を現しだした。
透明化したグウルスの姿であった。 長く伸ばした舌を キャラン(浩司)のフィンガービームで切断され もがいている。
姿を現したグウルスに向かって、永井は一斉射撃を命じた。 「撃て!!」 無数のエネルギー光線、エネルギー弾が、グウルスを襲う。
その中の一発がグウルスの額のネクスタルに命中 同時に、グウルスの頭部は、小さな爆発とともに吹き飛んだ。
「ピエール神父大丈夫でしたか?」  1人若い兵士が、ピエールにER01Tライフル銃を渡しながら言った。
「私はこの通り大丈夫です」 ピエールは、ER01Tライフル銃を点検しながら答えた。
「それより 永井司令官」 ピエールは、近くにいた永井を呼んだ。
「ピエール神父 何か?」 永井はゆっくり歩いてきた。
「ここに連れてこられる途中 やつらグロテノスの生産現場を見せられた。 ここの近くです。 アポリスの戦力増強を少しでも抑える為も今破壊しておくべきだと・・・」
ピエールの話に、永井は腕を組んだ。
「俺もその意見には賛成だ」 浩司もゆっくり近づきながら言った。
あのポットと呼ばれる円筒状の中での改造・・・ 余りにも非人道的過ぎると思っていた。 とても耐えがたい光景であった。
浩司も龍(ロン)の基地の中で1度目撃している。
「よし そこを破壊してから脱出する」 永井は決断した。
ピエールを先頭に、全員が続いた。

「やつらは、マザーシップ(母船)に向かって移動を始めました」
ここは、この基地の中心部である作戦本部 中央後方の少し高い場所にあるギル専用の指令所 大きな椅子にゆったりと座り腕を組みながら 正面のマルチスクリーンを見ていたギルは、オペレーターの声に薄笑いを浮かべながら小さくうなづいた。
「さあーキャラン(浩司) そのままマザーシップ(母船)に入れ」 小声でつぶやいた。
「マサーシップ(母船)内に待機する 全グロテノス及び兵士に徹底させろ キャラン(浩司)が例の物に近づくまで、決して手出しをするな」 ギルは立ち上がりながら指令を発した。
「そしてやつが例の物に近づいたら、当初の作戦通りだ、他の雑魚は、キャラン(浩司)と引き離し麻子率いる部隊に制圧させろ」 ギルは、そう言うと、また腕を組み ゆっくりと椅子座り足を組んだ。
"キャラン(浩司) 例の物 B,P(バトルプロテクター)を取りだすのに、貴様のレジェンスのエネルギー 利用させてもらうぞ・・・" ギルは薄く微笑んだ。

マザーシップ(母船)に向かう通路の1つに、浩司、永井、ピエールが、先頭に通り始めた。
周囲を注意深く警戒している。 永井、ピエールは、ER01Tライフル銃を構え 全く隙がない。
しかし浩司は、何も手に武器を持っていない。 左肩に下げているショルダーホルスターには、S&W M29 44マグナムが収められているが、抜こうとしなった。
ここへ来る前 兵士の1人が、浩司にもRE01Tライフル銃を手渡そうとしたが、浩司は、受け取らなかった。
「先程 俺の能力見ただろう 必要ないよ」
永井が真ん中で、少し前 浩司とピエールが両横少し後ろのトライアングル(三角)隊形を取っていた。
"ここに、やつらアポリスの本当の主力部隊 多分 グロテノスが中心に配置されているなあー" そう思いながら浩司は戦闘モードに入り 感覚をより研ぎ澄まそうとしていた。
しかし 思うように、レジェンスからのエネルギーが上昇しなかった。
だがわずかな感覚、気配で何となく感じていた。
横目でピエールを見た。
"ここに多分 例のB,P(バトルプロテクター)があるはず・・・ そうでなければピエールのやつ わざわざこんな危険なマネを犯すはずがない。 確かにだれもが目に眩むようなハードウエアーだ。 あれさえ装着出来れば、人類を救う救世主(メシア)になれるかも知れない。 グロテノス以上の戦闘力が手に入る。 だが所詮2つしかない。 物量面を中心とした アポリスの戦略上の有利差を覆す事は、不可能に近い。 少々の科学技術つまりテクノロジーの差など、取るに足りないもの 事実自分自身がそうだ、量子論上 無数の多重宇宙をも生み出す事の出来る無そのものかも知れない 無限のポテンシャル・エネルギーを持つと言うレジェンスと融合していても 同時にアポリスが、全地球上で活動を行えば、全地球を1人でカバーするなど不可能だ。 ましてこのレジェンスときたらコントロール不能と来ている。 下手すれば宇宙そのものを瞬時に消滅させる暴走を起こす危険性もある・・・ B,P(バトルフロテクター)を取り出し量産化すれば、話が違ってくるが・・・ 量産化出来るようなテクノロジー今の人類には無い。 メシア(救世主)信仰の骨頂の宗教の神父 自ら装着して、過去のメシア(救世主)だの預言者などと呼ばれた人物と並び称されたいのだろう・・・" 浩司はそう思った。
"あれは、かって我々人類が神々と呼んだエルと呼ばれるEBE's(イーバーズ=地球圏外知的生命体)が、1万2000年以上前に、この地球に残して行った 驚異のオーバーテクノロジーの骨董品…? ピエールに言わせれば、神々の残して行った物 その忠実たる下僕(しもべ)である自らが装着し神々への道を歩む為にある物と思っているのだろう・・・" そう思いながらも周囲を一応警戒していた。
"メシア(救世主)信仰・・・ ヒーロー(英雄)崇拝か・・・ そんな物は、子供向けのマンガ、アニメや、スポーツ界だけの世界で十分だろう・・・ 自分達に降りかかってきた災難、災い、苦難、厄介事などの危機的状況を自らの力、努力など解決しょうとせず、全てを他人に押し付け解決させようとする。 解決すれば、メシア(救世主)だ、ヒーロー(英雄)だのと持ち上げられ、祭り上げられ、最後は決まって独裁者の道を歩む、典型的パターン 独裁者は、最初から独裁者として、この世に現れない。 人々を苦難から救ったメシア(救世主)、ヒーロー(英雄)などとして現れるか・・ 人々をあらゆる苦難から救ったメシア(救世主)、ヒーロー(英雄)などと言う物 それ程 甘美で、魅力のある物かね・・・?" 皮肉たっぷり 浩司はそう思った。
周囲を注意深く監視した。
"それにしてもおかしいなあー 何故? やつらは攻撃して来ない?" ふと浩司は思った。
永井、ピエールも同様に思っていた。
"今 何故? このタイミングで攻撃して来ないのか?" と・・・
巨大な穴の入口に差し掛かると、永井は大きく手を振りサインを送った。
残っている兵士全員 ER01Tライフル銃を構え 少し身体を低くし 小走りに通路を渡り始めた。
何事もなく全員 巨大な穴の1つの入口に差し掛かった。
こうしてすぐそばから見ると圧倒的大きさが実感出来る。
"どんな金属で出来ているのだろうか?" 色はシルバー そして何よりも 穴の開き方であった。 "外側から強力な物理的エネルギー・・・ 多分 何らかのエネルギーピームもしくは、エネルギー弾を喰らって、内側に向かって開けられている。 大きな戦闘があり 何発ものエネルギービームやエネルギー弾を喰らって撃墜 先端から墜落した・・・ 多分その辺だろう…" 浩司は、何となくそう思った。
永井は、全員集まったのを確認すると、ER01Tライフル銃を構え 先頭に中へと入って行った。 浩司もその後に続く、ピエールも全兵士を束ね続いた。
内部に入った 最初に想像以上に広い空間に出た。 光源が無いのに、空間は明るい この基地同様 壁が発光パネルになっているのだろう・・・
ピエールが、永井に指示を出した。
「この数層下に、グロテノスに改造する工場とでも呼べる場所があります」 そう言いながらある方向を指さした。
「あそこの壁が、自動ドアになっており ドアの向こうは大きなエレベーターです。 あれで下の層へ下りられます」
永井は振り返りながらピエールに言った。
「いやエレベーターは危険だ どこか階段は?」
「私は、見ていません」 ピエールは、少しゼスチャーを入れた。
永井は、数人ずつのグループに分け 周囲を調べさせた。
「永井司令官 ここに階段が・・・」 1つのグループが階段を発見したらしい 大声を上げた。
全員が、声のした方へ向かう。
壁の何ヶ所には、アーチ型の多分出入り口だろう・・・ 開いておりその1ヶ所であった。
アーチの中に入った直ぐの場所は大きな踊り場になっており 手すりのついた階段が上下に向かっていた。
やはりこのマザーシップ(母船)タイプの大型UFOは、ヒューマノイド(人型)生命体が主に利用する為、設計されたのであろう・・・
後からアポリスが、この階段を作っていない。 UFOの外販の未知の金属同様 見た事もない金属で出来ており やや古ぼけた感じがした。
設計、製作時に作られているのがわかる。
まず永井が、先頭にゆっくりと階段を下りはじめた。
永井のサインと共に、数人ずつが、グループとなって後に続く。
数層下の階の踊り場に全員が下りてきた。
アーチ型の出入り口の先からは、眩いばかりの光が発せられている。
永井は、後ろにいた2人の兵士を呼び寄せた。
永井の命令にうなづくと、ER01Tライフル銃を構え 小走りにアーチの中へと入って行った。
先行偵察の任務である。
永井は、周囲に見張りを立たせ 浩司とピエールを呼び寄せた。
これからの作戦についての打ち合わせであった。
3人共 ここまで来るのに、余りにもスムーズ、全く妨害受けていないのに、違和感を感じていた。
ネクストノイドへの改造を行う重要な場所である。 罠にはめられたのではないか? と言う思いで一致していた。
「ここは、脱出路を確保しつつ 爆破の準備に取り掛かった方が賢明では・・・」 最初に浩司が口を開いた。
永井も同感の様子である。
しかしピエールだけは、違っていた。 「せっかくここまで来たのです。 ただ破壊するだけではなく ネクストノイドの研究データなど、必要なデータをも持ち帰るべきだと考えます。 それに、このマザーシップ(母船)タイプの大型UFOのどこかに、例のB,P(バトルプロテクター)があるはずです。 出来ればそれをも持ち帰るべきだと考えます」
"やはり目的は、B,P(バトルプロテクター)か・・・" 浩司はそう思いつつ少し呆れた表情を見せた。
「それは、リスクが大き過ぎる それにここは、敵アボリスの基地内 今A-1ポイントで、待っている部隊との連携もうまく取れない現状では・・・そのような危険は冒すべきでないはず」 浩司は、そう言った。
浩司の意見に、永井は傾きつつあった。
しかしピエールは、納得出来ない表情を見せる。
そんな時であった。 先行偵察に出た2人の兵士が戻ってきた。
2人の兵士は、永井の前に立った。
「報告します。 ピエール神父の申した通り この先には巨大な空間があり そこには、多数のポットと呼ばれる ネクストイドへの改造用の機器があります。 しかしポットの中には、だれ1人入っていません。 それに、目視した限り この施設の中には、だれ1人としていません」
「罠か・・・?」 永井は、つぶやいた。
「私が見た時は、いくつものポットの中に、人が入っており その周囲では、多数の人がいた」 ピエールは、信じられない表情を見せた。 僅か数時間前にピエールは、その目で確かに見ていた。
その時だった。
突然 周囲の壁が持ち上がり 多数のグロテノス、及びアポリス兵が現れた。
やはりここにおびき寄せる為の罠であった。
周囲及び階段の上下まで、アポリス軍に完全に包囲されている。
浩司は、瞬時に敵の数を大雑把だが、確認した。
"やれやれ どう見てもこちらの5倍はいるなあー 約半数は、グロテノスときている・・・ 兵力差が大き過ぎるなあー"
ため息をつきながら呆れて思った。 相手を大幅に上回る戦力を整え投入するのは、戦略の初歩的基本である。
この時点 ヤーナの兵力は、20人 アポリスの兵力は、約100人 約半数が、変身したグロテノス兵であった。
"僅かながら感じていた 多数のグロテノスの気配はこれか・・・ これがアポリスの主力の本隊だろうー どの顔(つら)も場慣れしている顔(つら)構えしてやがる、やっかいだぞこれは・・・"
相手を鋭く観察しながら思った。
永井もピエールも同様の思いである。
ここにいるヤーナ 全員 悔しさが表情に出ている。
正面中央の一団から麻子が現れた。 不敵な笑顔を浮かべている。 「これは、これはヤーナのみなさま」 麻子は前に出た。
まずピエールを見つめる。 「愛おしのピエール神父様 またお会いしましたね」 そう言いながら ピエールに右目でウインクする。
次に、キャラン(浩司)と永井を睨んだ。
「永井司令官、お元気でしたか? それにお初にお見えにかかりますわ キャラン(浩司)様 私は、麻子と申す者」
更に、麻子の後から1体と1人が現れた。
1人の男の方は、30歳中盤か? コーカソイドである。 身長180cm程度であったが、ピエール同様非常に引き締まりバランスの取れた肉体の持ち主であった。
「貴様 ロイ!!」 その男の顔を見て、永井は叫んだ。
「ふ・ふ・ふ・・・ 久しぶりだなあー 永井」 ロイと呼ばれた男 永井の顔を見ながら 不敵な笑みを浮かべた。
「ロイ・・・」 永井が、つぶやいた。 アメリカ合衆国 陸軍 特殊部隊 グリーンベレー留学時代の同僚であった。
2人の中は決して悪くはなかった。 だが、グリーンベレーで、お互いにNO1を目指した 終生最強にして、最大のライバルと自覚する関係であった。
実力は、全くの互角 決着は、つかぬまま 永井の留学期間が終わり 日本の陸上自衛隊に復帰 決着は持ち越しとなっていた。
「何故 貴様がアポリスに・・・」 少し信じられない表情を浮かべる永井。
「それは、永井 貴様が日本の陸上自衛隊を辞め ヤーナに加入した為だ まだ貴様とのお預けだった勝負にケリ(決着)をつける為に、俺はアポリスに入った」 敵意ではない、その目つき すさまじいばかりのライバル心が燃え上がる気迫に満ちた目つきで、ロイは永井を睨んだ。
永井も同様の目つきで、ロイを睨み返した。
2人の間から すさまじい闘気がみなぎる。
そんな2人の間に、大型のグロテノスが割って入った。 身長は2.5mを超え 横幅も広いがっちりとした体型である。 「悪いが、まだ俺様の自己紹介が終わっていないぜ」
ゴリラに似た 全身黒の剛毛に覆われたエレコングと呼ばれるグロテノスの1種であった。  パワーとスピードの両方を兼ね備えた グロテノス最強と目されるタイプである。 だが全身から伝わる異様な雰囲気 並みのグロテノスとは違う そう間違いなくハイパータイプであった。
"あのリンより上・・・" ふと浩司は思った。
"それも デストロと称される 将軍の1人 龍(ロン)の変身前だが、ほとんど近いレベル・・・" 浩司は、ハイパーエレコングの戦闘力を感じた。 "超やっかいだなあー 弱点とでも言えるのは空を飛べない・・・ ここでは無意味・・・"
「俺こそが、グロテノス最強戦士 ハイパーエレコング キャラン(浩司) 貴様の首は俺が貰う」 そう言いながらハイパーエレコングは、キャラン(浩司)に右手人差し指を向けた。 鋭い殺気に満ちた眼光が光る。
「まあー お2人共 そんな慌てる必要はございませんわ 楽しみはこれから味わえますのよ」 いきりたつロイとハイパーエレコングを麻子は、なだめた。
1ヶ所に固まる ヤーナ側に対して、「それよりも あなた方は完全に包囲されていますのよ まず武器を捨てなさい」 勝ち誇った表情で麻子は言った。
"何とか グロテノスだけでも、俺に集中させ 脱出の為の血路を開くしかないか・・・" 浩司は、グロテノスだけの部隊の位置を確認した。
混成部隊でない グロテノスだけで構成されている部隊が3つ だが 3ヶ所に展開している。
永井は、抵抗しても無駄だと思ったのか? 構えていたER01Tライフル銃の銃口をゆっくりと下に向けた。
他の兵士も永井に従う。
だが永井の表情には、余裕が感じられた。
その時だった。
階段の上に布陣していた グロテノスではない一般兵士の部隊の間に、突然爆発が起きた。
数発のエネルギー弾の直撃である。
間を置かず、4ヶ所で、同時爆発が起きる。
同時に、ヤーナ兵士の戦闘服を着た部隊が、4ヶ所から突入を開始した。 ブラウン率いる第3班の部隊であった。
永井の策であった。 常にSVL通信機のスイッチオン状態にし、永井の部隊の詳細情報をブラウンに知らせていた。
ブラウンは、その情報に合わせ基地内を 別働隊として行動していた。
不意を突かれた速攻に、アポリス側の包囲網が大きく乱れた。
この瞬間を浩司は、逃さなかった。
戦闘モードに入っていた 更にエネルギーを高めようとした しかしまるで反応しない 何とか最低レベルを維持するのがやっとである。
"こうなったらやけくそ・・・" そう思いながら素早くハイパーエレコングの前に立ちはだかった。
最低レベルとは言え 常人に考えられないスピードである。
左足で、少しジャンプしながら右回し蹴りをハイパーエレコングの左首筋に向けて蹴り込んだ。
ハイパーエレコングは、そんなキャラン(浩司)の動きを読んでいた。
左腕をL字型にし、キャラン(浩司)の蹴りをガード びくともしないハイパーエレコング。
「貴様の戦闘力はその程度か・・!!」 右スレートパンチを キャラン(浩司)に向かって、放った。
身長差約80cm 真上から強力なパンチが振り下ろされる感じである。
寸前で避ける。 しかしパンチ1発でも、すさまじい威力であった。 ソニックブーム(衝撃波)だけで、キャラン(浩司)の身体は、弾き飛ばされそうになった。
超合金で出来た床には、パンチが直撃していないのに、クレーター(穴)が出来た。
浩司が動くと同時に、永井、ピエールも動いた ER01Tライフル銃を左肩に素早く掛け 右手で、ベルト右側のホルスターからサイバイバルナイプを取り出し アポリスのまだグロテノスではない、兵士部隊の間に突撃した。
ブラウンの率いる部隊の突入で、アポリスの包囲網は、崩れ混乱した。 敵味方が入り乱れの混戦模様になった。
下手にライフル銃や、グロテノスのエネルギー弾などの武器を使用すれば、この状態では、かえってフレンドリーファイヤー(同士討ち)の危険性を伴う。
それに、浩司が、ハイパーエレコングに立ち向かった為 ここにいたグロテノスは、全て浩司に向かって集中した。
1対50の戦いであった。 50体のグロテノスの中で、20体が最新鋭のハイパータイプ、残り30体が、通常タイプを強化したタイプである。
ブラウン率いる第3班の加勢で、ヤーナの総兵力も約50人となり アポリスのグロテノス以外の兵力50人と数の上では、同数となった。
キャラン(浩司)は、少し両膝を曲げ ファイテングポーズを取る 周囲はグロテノス兵によって取り囲まれ 円陣の中心部に追い込まれた。
じり・・・じり・・・とある方向に向け少しずつ移動させられている。
"やつら 俺を部隊から引き離し 孤立化させ 各個撃破するつもりか・・・" そう思いつつも次々と襲い掛かるグロテノス兵の対処で、余裕がなかった。
一方 ヤーナ兵対アポリス兵 ホモサピエンス・サピエンス同士の混戦 ややヤーナ側が押し気味に展開していた。
ヤーナ兵は武器をER01Tライフル銃からサバイバルナイフや、ER01Tライフル銃を棒の代わりにして戦闘 一方アポリス兵も軍用ライフル銃から、腰のベルトからショックバトンと呼ばれる武器に切り替え応戦していた。
ショックバトンは、約20cm程度の円柱形の物体で、底のスイッチを押すと約70cmの刀に変形 更に刀の峰の部分を相手に当て、もう1つのスイッチを押すと高圧電流が流れる仕組みになっていた。
サバイバルナイフ、ショックバトンなどの武器を中心とした肉弾戦になっていた。
この混戦の中で、際立つ人物がいた 永井、ブラウン、ピエールの3人である。
永井、ブラウンなど、1人で3〜5人のアポリス兵を相手に奮闘しながら味方のヤーナ兵に適切な指示を与えていた。
アメリカ合衆国陸軍特殊部隊グリーンベレー出身 白兵戦での戦いは、やはりお手の物 人間ばなれした実力の持ち主であった。
ピエールも全く隙がなかった 1人で3人前後を相手しながら 「悔いを改めなさい・・・ 神々は、決してあなた方を見捨てません・・・ 神々を信じなさい・・・ 信じる者は救われます・・・」などと 街角での勧誘と見違うばかりの言葉を発しながらサバイバルナイフを片手に、場違いの殺伐とした戦闘に奮闘していた。
アポリスの兵士も決して素人ではない、叩き上げの鍛え抜かれたプロの兵士である。
だが実力の差は歴然としていた。
他の特殊部隊、SP(シークレット・サービス)出身の永井直属部隊のヤーナの兵士とは、1対1ならば、互角であった。
しかし3人の戦闘能力は、それを遥かに上回っていた。

「キャラン(浩司) 目標ポイントへと追い込みました」 ここは、この基地の心臓部 中央司令室 正面には巨大なマルチスクリーン 向き合う形で、何列もの横に長いテーブルが並んでおり テーブル事に何人ものオペレーターが、1人1台専用のモニター画面を注視し キーボードを叩き、マウスを忙しく動かしていた。
更に後ろの数m高くなった場所の専用ブースに、8大将軍の1人 デストロと呼ばれるネクストノイドの上位者である ギル専用司令所である。
手と足を組み専用の大きな椅子に座り 正面の巨大マルチモニター画面を注視するギルはつぶやいた。
"さあー キャラン(浩司) レジェンスのエネルギー 高めてもらうぞ・・・"
「B,P(バトルプロテクター)は、どうなっておる」 
「はっ ギル様 現在中央部にあるレアスタルに反応があります。 僅かながら7色の極彩色に点滅を開始しました」
「シールドは?}
「現在の所 変化無し」
「やはりのうー レジェンスのエネルギーに対して反応しおる・・・」 ギルは、小さくつぶやいた。
"わしの想像通りかも知れぬ あの2つのB.P(バトルプロテクター)の機能は、元々レジェンスを奪取する為に開発された物かも知れぬなあー" そう思いながらギルは、正面にある巨大なマルチスクリーンのB,P(バトルプロテクター)が映し出されているモニター画面を見た。
一定の間隔で、中央部のレアスタルと呼ばれる部分が、7色の極彩色の1つ1つの色に変化し 少しずつその輝きを増し始めていた。
「いよいよじゃのうー」 小さくつぶやきながらギルは、立ち上がった。



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