LEJENS  レジェンス

 Epsisoed T ネクストノイド

 作者  飛葉 凌 (RYO HIBA)


 神々の鎧 Part12

 翌年4月
「もう1度考え直しては来れぬかのうー 浩司殿」 マークは、辞表を突きつけ荷物をまとめ 聖なる場所から去ろうとする浩司を必死に呼び止めていた。
あのクリスマス・イブのミサ、コンサートで、ピエールと露骨に対立して以来 ヤーナ内で、ピエール率いる大多数のC宗教派からの しつこい嫌がらせなどに遂に耐えられなくなった浩司は、ヤーナから離脱する事を決意した。
浩司自身に向けられるなら ここまでの事はしなかったてあろう だが矛先が、みなっちにまで向けられてしまった。
我慢の限度を超えてしまった。
聖なる場所の自宅で、手荷物をまとめている。
横ではみなっちがぶつぶつ文句を言いながらも同じように、最低限必要な荷物をまとめていた。
「全く自分勝手なんだからー  何でも勝手に自分1人で決めてしまうー」
かなり膨ら顔で怒っているのが解かる。
"あの俺のヤーナへの加入の件 お忘れでしょうか・・・? どなたの一存で・・・" (浩司談)
"うるさい・・・ うるさい・・・ うるさい・・" "怒" (みなっち談)
「嫌ならここに残ってもいいだぜ」
ぶらつきぼうな言い方の浩司であったが、内心は、全く異なっていた。
男特有の思考パターンの1つでもあるのだが・・・ 決して女には理解出来ないやさしさでもあった。
このヤーナを離脱すると言う事は、今 この地球を支配するアポリスの真っ只中に、突然放り込まれる・・・ いや乱入すると言った方が適切か? 周囲は全て敵だらけの世界に入る事を意味する。
ヤーナのこの聖なる場所ような安住地はなくなり 常に敵に囲まれ死と隣り合わせの環境になる。
出来れば、浩司は、みなっちを連れて行きたくなかった。
今地球上で最も安全と思われるヤーナ最高機密基地 聖なる場所に、みなっちを残し1人で、全てのカタを付けるつもりでいた。
みなっちがいては、足手まといなど酷い事は言わないが、自由動く事に対する制約が出来る。
何と言っても みなっちの生命の保証が出来ない。
出来れば 今1番安全と思われ仲間のいる ここ聖なる場所に残って欲しかった。
だが、浩司にはある秘策があった。
"はたしてみなっちが受け入れてくれるのか・・・" その点が問題であった。
物思いにふけ手が止まっていた浩司に、みなっちの罵声が飛ぶ。
「私がいて、やってあげないと何1つまともな事出来ないんだからー」
必要最小限度の荷物をリックに詰め込んでいない浩司を見てみなっちは怒った。
「普段から整理整頓していないらよー」
「本当にだらしない・・・」
続けざま文句を言いながら 浩司の荷物をまとめ始めた。
昨日 浩司がヤーナから離脱する話しを聞いて、仕方ないと思った。
C宗教側と、修復不可能まで、こじれていた。
このままヤーナに残った所で、浩司の精神衛生上好ましくない。
離脱する決意を語った時点 何も反論しなかった。
他だし 浩司が議長のマークに辞表を提出後 聞かされた。
この点に付いては文句を言った。
どう考えても順序が逆である。
浩司の欠点である。
まず初めに私に相談するのが、常識であるはずなのに、浩司は、1人で勝手に決めてしまい 事後承認を私に求めて来た。
尚且つ 私にここに残れと言って来た。
私の存在っていったい何なの?
確かに、戦争、戦闘に関しては、私は銃1つトリガーを引けない。
だけど、私は好きな相手に守ってもらうだけの何も出来ない手弱女(たおやめ)のか弱い存在ではないはず・・・
自立した1人の女だ。
それに浩司は、私がいなければ戦争、戦闘など以外は、身の回りのこと、生活に関して何1つ出来ない。
だらしないままである。
男って本当にめんどくさい、手間のかかる生き物である。
特に、浩司は、その典型例。
だから私はついて行く事に決めた。
浩司の言い方、思考パターンを借りれば、ここで浩司を見捨て、ここに残れば、後世の歴史家に、大事な恋人を捨て 自身の身の安全だけを図った 全く恋人を思いやる気持ちもなく 女の風上どころか風下にも置けない 最低、最悪の悪女として記されるかも知れない。
こんなにやさしくて、癒し系であり 恋人思いの私が この様な辛辣な評価を下されるのは耐えられない。
何よりあの1年以上の間 浩司が行方不明になりひたすら無事に帰ってくるのを信じて待ち続けた辛い日々の思いをまた味わたたくなかった。
どんなに不安な気持ちで、今にも心が押しつぶされそうになったか? もう2度とあんな気持ちを味わいたくない。
どこまででも着いて行く。
2度と離れたくない。
この時 浩司は、ある重要な事を忘れてしまっていた。
本人は、確実に処理したつもりでいたのだが、今まで使用していた2台のPCから 必要なデータをバックアップしCD-RWに納め 2台のPCの全データを完全に処理したつもりでいた。
PCを運ぶ事は出来ない。
だがデータは全く処理されていなかった。
浩司しか知らないIDとパスワードを打ち込まなければ閲覧出来なかったが。
そこには、浩司が思考していた複数の基本戦略構想が、書き残されていた。
ほとんどが、まだ構想途中段階であったが、注目されたのは、ほぼ完成まじかであった人類の新たな進化を基本ベースにした壮大で雄大とも言える基本戦略構想であった。
浩司の大嫌いなC宗教を始めとする複数の宗教の経典 旧約聖書に記述されている エクソダス(出エジプト記=Y宗教、C宗教などにおける最大の預言者の1人Mが、当時エジプトで、迫害の身であった同胞のユダヤ(イスラエル)の13支族の民をエジプトから奪還 紅海だと推定されるが、神々だと言われるUFOから反重力を利用 紅海を2つに割り (映画 十戒の有名なシーン) 逃げおせ 乳と蜜の流れる約束の地 カナン(当時その土地に住んでいた先住民族を 神々に反し敵対する者として、武力制圧、虐殺し奪い取ったのだが・・・)に逃げるから名を貰い プロジェクト・エクソダス(仮)とタイトルがなっていたが、(仮)はいかにも浩司らしい一面であった。
他に良いネーミングがあったら変えるつもりでいたのだろう。
エクソダス(出エジプト記)について、少し詳しく書けば、旧約聖書の中でも大事件として扱われるのが、Mのエジプト脱走である。それによれば、YAの子のYOの時代にユダヤ(イスラエル)人はエジプトに移住し、エジプト王の厚遇を得て栄えたが、王朝が代わって迫害が始まり、ユダヤ(イスラエル)人たちはMに率いられてエジプトを脱走し、40年間荒野を放浪して、乳と蜜の流れる約束の地であるカナンに辿りついたというものである。
旧来の解釈によれば、ユダヤ(イスラエル)人たちを厚遇した王朝は紀元前1730年頃から紀元前1580年頃のヒクソス(よその土地の王の意)であり、ユダヤ(イスラエル)人を迫害したのはアーモセス第18王朝、Mのエジプト脱走は諸説あるものの、前13世紀のエジプト第19王朝ラメセス2世(在位前1279-1213)の時代である。
しかし、文書資料が豊富なエジプト側には一切の記録が無いことから、旧約聖書にあるような壮年男子だけで60万人という大規模な脱走事件が起きた(出エジプト12:37、民数記1:46)という訳ではなく、ごく少数者の脱走事件であったのだろうと推定されている。
前述のイスラエル部族連合の中に「カリスマ的指導者に率いられてエジプトから脱出してきた」という伝承をもつ部族があって、その伝承が部族連合全体に広がって共有されていったのだろう。
さらにエジプト脱出の伝承に、シナイ山における神々の顕現に関する伝承が結び付けられて、シナイ山での契約の物語が成立したものと考えられている。
(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』他 多数参照)
話しを元に戻すが、それは人類が、本格宇宙進出における新たな起こると思われる 分化と進化を前提においた雄大な戦略構想であった。
そこには、ネクストノイド(新人類)との共存も前提に置かれている。
中長期無重力状態を始め、様々な惑星、衛星など地球と異なる環境下に置ける 多種多様化し全く異なる環境下に適応、対応し異なる形態に進化した複数種の人類の共存であった。
はたしてここまで、人類が長い年月生存出来るか? の注釈付きでもあったが・・・ こう言う一面は浩司らしい。
多種多様化を常に前提に思考する。

 浩司とみなっちは、人知れずの場所で、UFOから降りた。
見送りは、マーク1人であった。
ここは山中奥深い場所 鬱蒼と木々生い茂る。
浩司は、この場所を指定した。
UFOの開いたハッチからは、マークがまだ諦めきれないのだろう 必死に説得を繰り返していた。
浩司は、振り返った。
「マークじいさん 今まで本当に世話になった マークじいさんの恩は、決して忘れませんよ」
努めて明るく浩司は言う。
背中に必要最小限の荷物の詰まったリック1つ。
「浩司殿 評議員待遇の席は、そのまま空けておく いつでも戻っていいようにじゃ」
マークは、必死に懇願した。
マークに取って、浩司に対する最大限の誠意であった。
何も答えない浩司 他だ右手で簡単なサインを送った。
UFOのハッチが閉じ タラップは、収納される。
UFOは、音もなく急上昇し高速で移動する。
「ところでこーちゃん こんな所で降ろしてもらって、どこかアテあるの?」
みなっちは、周囲を見渡した。
午後少し太陽が傾き始めている。
近くには、舗装されている片道1車線の林道1つしかなく 山奥の何もない場所である。
敵 アポリスに見つかる危険性は少ないが、これからの生活には不便な場所でもあった。
「こっちだよ」 浩司ある方向を指差した。
その方向は、近くの舗装された1車線の林道で、更に山奥の方向であった。
「その道 登ってまだ奥へ行くの?」
みなっちは嫌な顔を浮かべる。
「大丈夫 徒歩5分もあれば着くよ」
何食わぬ顔で浩司は答えた。
浩司は、林道を歩き始めた。 仕方なくみなっちは後に続く。
徒歩5分程で、小さな山小屋が見えた。
「あそこだよ」 浩司は、山小屋を指差す。
浩司は、山小屋のドア開け中に入る。
中は暗く 様子が良く解からない。
「だれじゃ?」
中からしゃがれ男の声が聞こえる。 かなり老齢な感じである。
「じいさん 俺だ 預かり物貰いに来た」
浩司は、返答する。
どうやら顔見知りのようである。
「ようやくきたか若造」 少しうれしそうに感じる声である。
「前にも言ったが、俺は、そんなに若くないぜ」
浩司は、憮然とした表情である。
「わしから比べれば、まだオシメも取れぬ赤子じゃよ」
暗い奥から1人 男が姿を現した。
年齢は、どう見ても70歳を超えている だが山での生活が長いのだろう 身体は、鍛えられた重量級のスボーツマンタイプに見える。
「隣の女は?」
「前にも話した 彼女だ」
老人は、みなっちの顔を見つめた。
鋭い まるで獲物を狙うハンターの視線である。
みなっちの顔は、少しビビる。
「あ・あのー私・・・」
「名前など名乗らんでも良い ここは相手を検索せん」
老人は、浩司を見た。
「ついて来い」
老人は一言言って、山小屋を出て、隣の小屋へ向かう。 2人は後に続く。
小屋のカギを開け 目の前の何かを隠している大きなシートを外した。
そこには、大型と、中型のバイクが並べられていた。
新車ではなかったが、新車同様ピカピカに磨かれている。
「メンテナンス十分じゃ ほれ」 老人はキーを2つ差し出した。
バイクのキーである。
1台 レーシングタイプのHONDAのCBR1000RR ファイヤーブレード、もう1台は、400ccのアメリカンタイプであった。
いつの日か、ヤーナから離脱する日が来ると思い 浩司は、敵アポリスの軍事基地から戦闘中奪取した戦利品であった。
奪ったバイクを 川村のつてで知り合ったこの老人に保管してもらっていた。
この老人 元々個人経営の小さなバイクショップを経営していたが、アポリス ネクストノイドの支配する社会に嫌気が差し 1人山奥で、世捨て人となってひっそり暮らしていた。
「ガソリンも満タンにしてある」
老人は、近くの壁の隠し扉を開いた。
中からスポーツバックを取り出し浩司に手渡す。
「もう1つの預かり物じゃ 中身の確認せえ」
浩司は、中身を確認する。
かなりの大金、IDカードを始め各種クレジット、キャッシュカードなどが入っている。
「どこで、こんな大金・・・」
みなっちは、驚きながらつぶやいた。
「蛇(じゃ)の道はヘビ・・・・」
意味不明の諺(ことわざ)で答える浩司。
他だ笑みを浮かべるだけで教えてくれなかった。
「いつも大事な事 教えてくれないんだからー」
少しムクレルみなっち。
浩司は、現金の束を1つ老人に手渡そうとした。
「じいさん 預かり代だ」
だが老人は、受け取らない。
「前にも言ったが、金はいらぬ」
老人は浩司を見た。
「若造 お前の事は、良く知っておる その首に莫大な賞金も掛かっておる事もなあー だがわしは、そんな物に興味はない わしの興味のあるのは、これからお前が何をやらかそうとする事じゃ 代金は、お前の今後の行動じゃ 楽しませてくれるかな?」
老人は、薄く笑った。
「期待に添えるか? 解からないが、やるべき事はやる それだけだ」
浩司は、老人が何を期待しているか? 感じていた。
現金は、決して受け取らない。
つまり貸しである。 貸しを今後の行動で返せと言っている。
面白いと思った。 他だし高額だか・・・
さすがに自営業者 商売人だと思った。
金では買えない物を要求する。
浩司も目を閉じ意味ありげに少し笑う。
老人は、浩司の前を閉じていない、ジャンバー その左脇の下に隠している大型の物騒なオモチャに気付き 両目を閉じ 薄笑いを浮かべる。
ぬかりのないやつだと思った。
これから先 生き延びて行く為には、この程度は、必要不可欠である。
浩司は、護身用に例の44HPマグナムをショルダーホルスターにぶち込んでいた。
腰の右のフックには、金属で出来たバトン状の物をぶら下げている。
いつに敵に襲われてもみなっちを守る 堅い決意の表れでもあった。
浩司は、スポーツバックを CBR1000RR ファイヤーブレードの後部座席に紐で縛りつける。
「みなっち」 浩司は、声を掛け みなっちにIDカードを渡す。
みなっちは、IDカードを確認する。
写真以外は、偽名、住所もデタラメであった。
「これって?」 浩司に問いかけた。
「もちろん 本物だよ」 浩司は答えた。
この時代 ネクストノイドは、もちろん改造待ちを含む ホモサピエンス・サピエンス(旧人類)どころか 改造を受けられず、徹底的差別を受けるホモサピエンス・サピエンス(旧人類)でさえ 身分などを証明するIDカード所持が義務付けられていた。
これがなければ、この社会では生きてはいけない。
IDカードには、社会保障ナンバーから 車、バイクなどのライセンスまで、全てデータが磁気テープに入力されている。
徹底的一元管理する 完全管理下社会の証明とでも言える物でもあった。
みなっちは、大事に貴重品入れに入れる。
この辺は、さすがに浩司は、手抜かりがない。
だがいつこんな物用意していたのか?
みなっちは、疑問に思った。
「みなっち 行くぞ」
浩司は、みなっちを見た。
みなっちは、懐かしそうにアメリカン・タイプの400ccのバイクを眺めた。
みなっちは、400ccまで乗れる普通自動2輪車のライセンス(免許)を所持していた。
浩司は、排気量無制限の大型自動2輪車のライセンス(免許)も所持している。
浩司との初めての出会いが、みなっちの脳裏に懐かしい思い出として、蘇っていた。
運命の出会いと申すならば、これ以上無い最低、最悪 ロマンの破片(かけら)もない。
今でも思い出すと、笑えてしまう。
浩司の声に、みなっちは、慌ててバイクにまたがり、キーを差込エンジンをスタートさせる。
独特の低いエンジンが響く。
浩司と、みなっちは、老人が用意したヘルメットを被る。
「じいさん 期待に応えるか解からないがやれるだけの事はやる 見ててくれ」
浩司は、そう言いながらCBR1000RR ファイヤーブレードを小屋の外へ出す。
みなっちもアメリカン・タイプの400ccで後に続く。
「ところで、こーちゃん このバイクで、どこへ行くの?」
みなっちは問いかけた。
まだ行く先も、聞いていない。
「後ろについてくれば解かるよ」
浩司は、そう言いながら老人にサインを送り バイクをゆっくり走らせた。
少し憮然と表情を浮かべながらも みなっちも後に続く。
いつも大事な事は、浩司は教えてくれない。
老人は、両腕を組み 2人を見送った。
空は、太陽が沈み 真っ暗な夜の世界となっていた。
浩司の心の中には、26歳の若さで、生きる事と強制的に別航路に変えさせられた 若き天才ロック・シンガー・ソング・ライターのデビュー シングルの曲が流れていた。
15歳のある日の出来事を(実際は14歳の時のある出来事らしいが、決して他人に褒められるようないい事した理由ではなく、その逆であったらしい ある理由、問題がきっかけに、10人の友達と家出した その時の思いが詰まっている)歌った歌であった。
浩司の今の心情をよく現している そんな気がする詩でもあった。
浩司は、この歌を最も好んでいる。
暗い夜のとばりの中へ この先にだれにも縛られない自由がある そんな気がしていた。
これからの浩司と、みなっちの運命を暗示するかのような 真っ暗な世界が、どこまでも永遠に続くかの様に・・・。

 第2章 神々の鎧 THE END

 作者の後書き
 遂に、第2章 神々の鎧完結です。
結構長くなりました。 途中主人公が死にかけたり・・・ まあー主人公 レジェンスと融合しているとは言っても 無敵、不死身ではありませんし・・・
主人公 キャラン(浩司)は、遂に、ピエールと対立 恋人のみなっちだけを連れヤーナから離脱 今後 どう動くのか?
はたして勝算はあるのか?
一応 軍事面に関して、戦略家の資質を育む主人公 勝算なき戦いしないはず・・・
敵 アポリスの支配する地球で、恋人のみなっちだけで、どのように生き延び どのように戦いを進めていくのか?
戦略なくして、勝利無し この意味を知る主人公 はたして?
答えは、第3章 放浪です。
では読者の皆様 こうご期待を。




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